保守分裂となった奈良県知事選を巡り、高市早苗氏自身が11日の会見で「自身の責任を痛感している」と述べました。いちおう、統一地方選の後半戦もあるため、高市氏自身は当面、自民党奈良県連の会長に留まるそうですが、今後の動向次第では何らかの責任を取ることはありそうです。ただ、こうした話題を目にしていると、5つの県議会で議席がゼロになったにも関わらず、責任問題が一切出ていない「あの政党」の異質さが目立ちます。
保守分裂の責任は茂木、森山両氏にあり
統一地方選の「前半戦」のうち、日曜日に実施され、「保守分裂」となり自民党が敗北した奈良県知事選を巡っては、『奈良県知事選での「高市責任論」否定する読者コメント』と『茂木氏「関西圏の体制立て直し必要」発言にネット反発』で相次いで取り上げたところです。
著者自身の見解を申し上げておくならば、「自民党の敗北」という観点では、今回の第一義的な責任は、茂木敏充幹事長と森山裕・選挙対策委員長の両名にあります。そもそも分裂選挙とならないように調整をするのが自民党本部の役割だからです。
ただ、二階俊博・元幹事長の時代から一貫して、自民党本部の「候補者調整」という機能はうまく働いていないように見えます。今回も高齢で多選批判され、かつ、県民からの支持も低かった現職の荒井正吾氏に対して、自民党は最初の段階から「党の推薦基準に合致しない」と申し渡しておくべきでした。
しかし、須田慎一郎氏などの一部ジャーナリストらの指摘によれば、どうも党本部が今回の奈良県知事選を、「高市潰し」として利用しようとしたものだとしていますが、これはまったくそのとおりでしょう。結果的に奈良県連会長でもある高市早苗氏の「責任問題」に発展しているからです。
高市氏自身は「責任を痛感」
こうしたなか、高市氏自身が、責任問題に言及したようです。
高市氏「維新躍進に責任」 保守分裂の奈良知事選
―――2023/4/11 11:38付 産経ニュースより
産経によると高市氏は11日、記者会見で、「党県連会長として、維新の躍進に至った責任は痛感している」と述べたそうです。ただし、高市氏は同時に、「統一地方選の後半戦を乗り切らないといけない」として、「当面は県連会長を続投する考え」を示したとしつつ、「分裂に至った経緯を検証する必要性にも言及した」そうです。
これについてはまったくそのとおりで、「分裂に至った経緯」については、きちんと検証する必要はあるでしょう。
また、この「検証に至った経緯」については、こちらの記事にさらに詳しく触れられています。
高市氏「責任痛感」も森山氏に〝恨み節〟 自民党内に波紋も 奈良県知事選
―――2023/4/11 11:38付 産経ニュースより
この記事では、高市氏は「党本部が県連推薦以外の人を応援したのではないかという疑問の声が上がっている」、「きちんと検証することが大切だ」、と述べたそうです(どうでも良い話ですが、高市氏は正当な疑問を表明したに過ぎず、これを「恨み節」と報じるのはいかがなものかと思います)。
いずれにせよ、(須田氏などの指摘が正しければ)高市氏は「高市潰し」に選挙が利用された被害者のようなものでもあります。ただ、それと同時に、やはり高市氏の「責任問題」の追及を避けるのは難しいようにも思えます。
いっそのこと高市氏が責任を取り、経済安保担当相を辞任し、1年ほど無役になる、というのはひとつの可能性としてあり得るかもしれません(高市氏が進めるセキュリティ・クリアランスが停滞するという懸念はありますが、それと同時に、この場合には2024年9月の自民党総裁選に出馬するという可能性も出てきます)。
志位委員長「当選者は合計78人となりました」
いずれにせよ、自民党内でこうした「責任問題」が浮上しているという点は興味深い現象です。
なぜなら、選挙で負けようが、絶対に責任を取らない人物もいるからです。
日本共産党の志位和夫委員長は昨日、自身のツイッターを更新し、統一地方選の前半戦における日本共産党の当選者が、公認75人、推薦3人、合計78人に達した、などとして「ご支持、ご支援に心から感謝します」と述べているものです。
しかし、このツイート、ずいぶんと卑怯です。日本共産党からの当選者に「推薦者3人」を含めているというのはさておき、「選挙前に何人で、それが選挙後に何人になったのか」という「比較」を行っていないからです。
現実には日本共産党の「75議席」は、改選前と比べて24議席減っています(4月10日20:25付 SMART FLASH『統一地方選前半戦、共産党が各地で大幅議席減「党員除名」の影響否定も志位委員長の責任を問う声拡大』等参照)。
さらには、『日本共産党、5つの県議会で「議席ゼロ」=統一地方選』でも取り上げたとおり、今回の選挙では新潟、福井、静岡、福岡、熊本の5県議会で議席がゼロになってしまいました。まさに、これらの県の有権者は、議会からの「共産党フリー」を達成した格好です。
日本共産党の機関紙『しんぶん赤旗』を読むと、昨日投開票が行われた統一地方選の前半戦で、日本共産党が「大躍進」したかの印象を持つかもしれません。しかし、現実には新潟、福井、静岡、福岡、熊本の5県で、日本共産党の「空白区」が出現してしまったようです。統一地方選の前半戦が昨日行われました。これについてはさまざまな意味で、じつに興味深い結果が出たと思いますが、その最たるものは日本共産党の「躍進」でしょう。愛知で議席空白を克服/道府県議選 大阪・吹田議席守る【※PDF】―――2023/04/10付 しんぶん赤旗より... 日本共産党、5つの県議会で「議席ゼロ」=統一地方選 - 新宿会計士の政治経済評論 |
絶対責任を取らない志位氏
志位氏といえば、べつに日本共産党の党員による民主的な選挙で選ばれた人物でもありませんし、それどころか、『100年を迎えるも組織の若返りに失敗する日本共産党』などでも議論したとおり、選挙のたびに議席が減っているにもかかわらず、引責辞任論が出てきたという話もありません。
先週金曜日は、日本共産党の結党100周年の記念日だったのだそうです。ただ、その日本共産党は近年、党勢の退潮に歯止めがかからないとされているのですが、それと同時に、時事通信の報道だと、機関紙『しんぶん赤旗』の購読者は、2020年時点で依然として100万人ほど存在するのだそうです。この政党が「結党200年目」を迎えられるかどうかは、日本国民が賢明であるかどうかにかかっているのかもしれません。組織政党の退潮が続く先日の『過去7回分の参院選比例で振り返る「民主党系の凋落」』では、参議院議員通常選挙のうちの比例代表... 100年を迎えるも組織の若返りに失敗する日本共産党 - 新宿会計士の政治経済評論 |
すでに20年以上、民主的な手続なしに党首の座に居座り、議席を減らしてもいっさい責任を取らず、それどころか党首公選制を主張した党員を除名するなど、日本共産党は非民主的かつ日本社会においては極めて異質な組織であるという言い方もできるでしょう。
今回の統一地方選の前半では、改選前と比べて24議席も勢力を減らしているにもかかわらず、また、とくに5つの県議会から議員が「全滅」しているにもかかわらず、志位委員長ら党執行部は決して責任を取らない――。
なかなかに、強烈です。
いずれにせよ、日本には「トップが絶対に責任を取らない組織」がある、という点については、ひとつの事実として、私たち日本国民が認識しておいて良い論点ではないかと思う次第です。
View Comments (17)
まぁ政治というよりも宗教ですね
中身も組織も
逆らうやつは粛清されるということですね。ここは日本だから殺されはしないですが。(昔はそういう例もあるようですが)
共産党やそれに類する政党が政権を取ってそれが根付いたらどうなるか、怖いですね。
おそらく目指す最終形態が同一なのでしょう。プーチン、プーさんに並ぶプー三兄弟の末にふさわしい命名はないものかしらん。
プー太郎!
語呂はいいしぴったりだが、何故か縁起が良くない気がする。
プー夫でいいのでは?しかし、後藤田が勝ったから結果オーライとはいえ徳島とか三分裂してるような幹事長や選対委員長・・・
いつまで委員長を続けられるのか知りませんが、独裁体制を継続する限りは自浄作用もないでしょう。
ありがちな展開としては、ここから始まる内ゲバなんですが……。
気に入らない党員は辞めさせているようですから、どんどん党の規模は小さくなるでしょう。
共産党のスローガン、困った人に優しい政治。
ブーメランの名手だけに味わい深いです。
共産党=独裁者
志位氏が居なくなったらその時はもう共産党がなくなる時なのだろう、と
推測しています。そして志位氏自身もそれを善しとしているのではないかと。
最近あった除名騒動は「そんなの嫌だ!いい加減席を譲れ!」と言う
プチ反乱だったんじゃないかなあ。
共産党が牛耳る「日本学術会議」
同様に共産党が陰から牛耳るコラボが小池海苔子から引導を渡されたように岸田政権は引導を渡すことが出来るのか?
とても興味があります。
素朴な感想ですけど、議席を大幅に減らしても、党首が責任を問われないというのは、ダメな政党の条件の一つではないでしょうか。
>しかし、このツイート、ずいぶんと卑怯です。日本共産党からの当選者に「推薦者3人」を含めているというのはさておき、「選挙前に何人で、それが選挙後に何人になったのか」という「比較」を行っていないからです。
数字は嘘を吐かないが、嘘を吐く奴は数字を用いる、という格言そのまんまな志位和夫の言動ですね。
人間として最低だなぁって感じますが、志位和夫なんだから人間として最低な事をしても当然ですね。