韓国、今年の2ヵ月で対中貿易巨額赤字を計上していた

日本の輸出管理適正化措置を巡り、「ホワイト国再編入」という話題に関連し、韓国の貿易統計を調べていたところ、なかなか興味深い事実を発見しました。今年1月、2月に関しては、韓国は貿易高上位10ヵ国のうち、じつに8ヵ国に対して貿易赤字に転落しているのです。とくに対中国では51億ドルと最大の赤字を計上しているほか、貿易赤字上位国には豪州、サウジ、日本、ドイツなどが並びます。

対韓輸出管理適正化措置の「撤回」…?

韓国がらみで最近気になる話題がひとつあるとしたら、日本政府が2019年7月に発表した対韓輸出管理適正化措置(韓国政府の用語でいう「輸出規制」)を巡り、「(旧)ホワイト国」に韓国を再指定する、という流れが議論されていることです。

これについて、どうして韓国がこの「ホワイト国」(現在の用語でいう「グループA」)への指定を狙っているのかについては、諸説ありますが、これに対するひとつの説明は、「再び日本から自由に戦略物資を輸入できるようにすることにメリットがある」、というものです。

ただ、これについて著者自身はどうにも疑念を抱いています。そもそも日本が韓国に対する輸出管理適正化措置を講じて以降、日韓貿易が滞ったという事実は見当たらないからです。

図表1は、韓国銀行のデータから取得した日韓貿易高の状況です。

図表1 韓国の対日貿易の状況

(【出所】韓国銀行データをもとに著者作成)

これで見ても、日本からの輸入が2019年7月の「輸出『規制』」を契機に増減したという事実は見当たりませんし、それどころか日韓貿易のうち、少なくとも日本から韓国への輸出と韓国の対日貿易赤字については一定水準を維持し続けていることがわかります。

なんだか、意味がよくわかりません。

副産物として思わぬ発見

それはともかく、本稿の「目的」は、この点ではありません。「副産物」として発見した事実です。

もともと韓国の貿易構造には、サウジや豪州などの資源国に加え、日本、ドイツといった先進国から製品にするための材料を買ってきて、それを加工して外国(中国、米国など)に売る、という特徴があります。

図表2は、2022年における1年間の韓国の貿易額(輸出+輸入)の大きい順に、韓国の貿易相手国別の輸出、輸入、貿易収支を並べたものです。

図表2 韓国の貿易の状況(2022年1月~12月)
相手国輸出輸入貿易収支
合計6836億ドル7314億ドル▲478億ドル
1位:中国1558億ドル1546億ドル+12億ドル
2位:米国1098億ドル818億ドル+280億ドル
3位:日本306億ドル547億ドル▲241億ドル
4位:豪州188億ドル449億ドル▲262億ドル
5位:台湾262億ドル283億ドル▲21億ドル
6位:サウジアラビア49億ドル416億ドル▲368億ドル
7位:ドイツ101億ドル236億ドル▲135億ドル
8位:シンガポール202億ドル103億ドル+99億ドル
9位:香港277億ドル19億ドル+258億ドル
10位:インド189億ドル89億ドル+100億ドル

(【出所】韓国銀行データをもとに著者作成)

輸出、輸入ともに中国が圧倒的に巨額で、これに米国、日本が続く、という構図です。昨今の資源価格高騰の影響もあってか、豪州は4位につけています。

韓国は中国との間で巨額の赤字を計上している

もっとも、最近だと資源価格の上昇の影響に加え、対中輸出の減速もあってか、韓国は中国相手に貿易赤字を計上しているようです。図表3は、今年(2023年)の1月、2月の韓国の貿易額を相手国別に集計したものです。

図表3 韓国の貿易の状況(2023年1月~2月)
相手国輸出輸入貿易収支
合計965億ドル1143億ドル▲178億ドル
1位:中国191億ドル242億ドル▲51億ドル
2位:米国171億ドル130億ドル+41億ドル
3位:日本46億ドル82億ドル▲35億ドル
4位:豪州28億ドル76億ドル▲48億ドル
5位:台湾26億ドル36億ドル▲10億ドル
6位:サウジアラビア8億ドル55億ドル▲47億ドル
7位:ドイツ15億ドル42億ドル▲26億ドル
8位:シンガポール27億ドル19億ドル+8億ドル
9位:マレーシア16億ドル28億ドル▲11億ドル
10位:インドネシア15億ドル26億ドル▲11億ドル

(【出所】韓国銀行データをもとに著者作成)

これで見ると、韓国の貿易相手国上位10ヵ国については、対米、対シンガポールを除き、いずれも貿易赤字に転落していることがわかります。なかなかに興味深い現象です。また、図表3を「貿易赤字が大きい順番に並べ替えたもの」が図表4です。

図表4 韓国の貿易の状況(2023年1月~2月)
相手国輸出輸入貿易収支
合計965億ドル1143億ドル▲178億ドル
1位:中国191億ドル242億ドル▲51億ドル
2位:豪州28億ドル76億ドル▲48億ドル
3位:サウジアラビア8億ドル55億ドル▲47億ドル
4位:日本46億ドル82億ドル▲35億ドル
5位:ドイツ15億ドル42億ドル▲26億ドル
6位:UAE7億ドル30億ドル▲22億ドル
7位:インドネシア15億ドル26億ドル▲11億ドル
8位:マレーシア16億ドル28億ドル▲11億ドル
9位:台湾26億ドル36億ドル▲10億ドル
10位:ロシア10億ドル17億ドル▲7億ドル

(【出所】韓国銀行データをもとに著者作成)

これも、大変興味深い図表です。

韓国の貿易赤字相手国は豪州、サウジ、日本、ドイツ、UAEなどの「伝統的な貿易赤字相手国」だけでなく、中国が最大の貿易赤字の相手国に浮上したからです。

韓国の貿易赤字は常態化?

とくに全体貿易、対中貿易の状況については、昨年半ば以降は貿易赤字が常態化していることがうかがえます(図表5図表6)。

図表5 韓国の貿易の状況(合計)

(【出所】韓国銀行データをもとに著者作成)

図表6 韓国の対中貿易の状況

(【出所】韓国銀行データをもとに著者作成)

このあたり、「豪州・サウジなどから資源を、日独などから素材・部品・装置を仕入れ、韓国国内で加工して外国に売る」というビジネスモデル自体が、この資源高の影響で変調をきたしていることは間違いなさそうです。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

    とうとう中国様とも貿易赤字国になりましたか(爆笑)。
    中国、日本、豪州、台湾、サウジアラビア、、皆赤字ですか。まあ、日頃のおこないから言って、わざわざ買ってあげるもん無いし。サヨナラ〜。

    1. 迷王星 より:

      >とうとう中国様とも貿易赤字国になりましたか(爆笑)。

      対中貿易収支に関しては,日本は韓国を嗤っている場合ではないと思いますが.

      日本は遥か以前から対中貿易では大赤字ですよ.

      本件に関しては,遂に韓国も以前からの日本同様に対米貿易で稼いだ黒字を中共に貢ぐ構造になりつつあるというだけです.

      言い換えれば,トランプ前大統領時代からのアメリカ政府が中共からの輸入を締め付けて米中間の直接貿易で中共に稼がせないように必死に努力したにもかかわらず,アメリカの子分であるはずの日本と韓国との貿易を活用してアメリカから金を巻き上げている構造を巧みに作り上げてしまったのが今の現実だということです.

      対中赤字になった韓国もそうですが,それ以前の大問題として,日本は韓国を遥かに上回る巨額の対中貿易赤字を計上し続けているのです.

      日本政府が(台湾を取り巻く状況と有事の際の日本の立ち位置に基づいた)中共のカントリー・リスクを日本企業に対して厳しくかつしつこく繰り返し説くことによって,速やかに生産拠点の中共からの(国内や東南アジア等への)移転によって輸入での対中依存を大幅に削減しないと,アメリカ側の陣営から中共に金を巻き上げられ続ける状況が際限なく続くことになり,日本は中共を肥え太らせアメリカ海軍を上回る中共艦隊の建設に貢献し続ける犯人になってしまっている.

      既に中共の赤い艦隊はアメリカ海軍を上回りつつあります.少なくともいわゆる「イージス艦」相当の高度な対空戦闘能力を有する水上戦闘艦(つまり高性能の艦隊防空艦…もちろん対地・対艦ミサイルも搭載できるので,防空のみならず対艦戦闘や対地攻撃でも優れた性能を有する艦である)は質・量共に中共海軍がアメリカ海軍を既に上回っており,建造ペースの差から,中共が経済的に破綻しない限り,見通せる将来に亘りこの高性能の水上戦闘艦の中米格差は今後も広がる一方の構造になってしまっています.

      アメリカ海軍が唯一アドバンテージを有する航空母艦と艦載航空兵力に関しても,中共海軍も既に原子力動力化と電磁カタパルトを搭載した空母の建造は順調に進んでいるので,アメリカを遥かに凌ぐ中共の建造能力を西側陣営が経済封鎖等でへし折れない限り,中共海軍が空母の数に関してもアメリカ海軍を凌駕するのは時間の問題になってしまっている.

      そして日本が現状の多額の対中貿易赤字を放置すれば,中共海軍がアメリカ海軍を凌駕する時期を早め,アメリカ海軍が西太平洋から撤退せざるを得なくなる状況の早期実現に貢献するのは間違いない.

      これは昨今の韓国の対中貿易赤字よりも遥かに重大な問題ですよ.

      1. 団塊 より:

        う~ん
        >アメリカ政府が…中共に稼がせないように必死に努力した
         と
         いうのでなく中華人民共和国から半導体を取り上げようとしているのですよ、5G潰しのために!

      2. 団塊 より:

         ウクライナでアメリカの兵器にボコボコにされているロシア(&ソ連)の兵器の劣化版でしかない武器兵器の中華人民共和国解放軍が
        >アメリカ海軍を上回る中共艦隊


        か。。。無 理 無 理 無 ~~ 理!

  2. 匿名 より:

    あー、だから現金を稼ごうと、東欧に兵器を売ってるわけですね。あんまりやり過ぎると、アメリカに怒られそうですが。

    1. カズ より:

      >東欧に兵器を売ってる

      適切な設備投資なくして、生産能力が即座に増強される訳もなく。
      きっと、韓国軍に納品予定の在庫を横流ししてるのではないのかと。

      北の脅威からの「防御」を日米に放り投げてですね。

    2. 団塊 より:

       大丈夫ですよ、砲筒が花開いたり戦闘機から発射したミサイルが『自然落下』とか『後ろに飛んだり』『戦車が木の根っこを乗り越えられなかったり』とか
       キャンセルの嵐になるから

    3. はにわファクトリー より:

      カズさま

      >韓国軍に納品予定の在庫を横流ししてるのではないのか

      そうらしいです。しばらく前にどこかで読みました。「飢餓輸出」を実践しているのかとその時感じてました。
      おりしもポーランドが膨大な量の韓国製砲弾をウクライナに引き渡そうとしているとの動画が投稿されました。等閑視は禁物です。

  3. よし より:

    技術の無い組み立て屋。
    大陸に組み立て技術盗まれたら
    そりゃ人件費安い大陸に仕事奪われる。
    ま、日本には関係ないけど。

    1. 団塊 より:

      >人件費安い大陸

      いう幻想!

  4. sqsq より:

    アジア通貨危機、リーマンショックとも貿易赤字の月が多かった。
    今回も外貨不足でいつ逝くか。

    藁をつかもうとして日本に寄ってくるはずだから相手にしないこと。

  5. はにわファクトリー より:

    若年失業者の大量送り込みを彼らは画策していると思います。こうやって乗っ取りを実行中なのです。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告