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「法的解決」を否定する駐日大使

「日本ではこの問題が法的に解決済みとされているが、被害を受けた人にはそうではない」。駐日大使からまたしても強烈な発言が出てきました。この「歴史問題は法的手段では解決できない」とする認識は韓国人の口から頻繁に飛び出すものですが、言い換えれば、韓国という国は日本と基本的価値を教諭していないということでもあります。

愚かな岸田ディール

自称元徴用工問題に関する韓国政府としての「解決策」が発表されてから1週間が経過しました。

この「解決策」とは、韓国・行政安全部傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が自称元徴用工やその遺族の支援、被害者の救済の一環として、2018年の大法院判決の原告らに対し、判決金と遅延利子を支払うというもので、その財源は韓国企業などが拠出することとされています。

あわせて日本政府は岸田文雄首相自身が6日、この韓国政府の措置を「日韓関係を健全な関係に戻すためのものとして評価する」と表明し、歴史認識についても「1998年10月に発表された日韓共同宣言を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場、これを全体として引き継いでいる」と述べました。

これをもって、自称元徴用工問題は「解決した」のでしょうか。

これについては『岸田ディールで垣間見える「キシダの実務能力」の低さ』でも指摘したとおり、正直、まったく解決になっていません。

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そもそも2018年10月と11月、韓国の最高裁に相当する大法院が下した、国際法違反の状態を作り出した違法判決の問題が、まだ解決されていないからです。というよりも、韓国政府が発表した案では財団が取得する求償権についての放棄すら言明されていません。

また、『徴用工「韓国が全額負担」でも問題解決にならない理由』などでも説明したとおり、韓国側が一時的に全額負担したとしても、「韓国がいわれのないウソをついて日本企業や日本国民に不当な損害を与えた」という事実は消えません。

慰安婦財団という立派な前例があってだな…本稿は、ちょっとした思考実験です。自称元徴用工問題を韓国企業「だけ」が資金拠出する財団で解決させることは可能なのか――。結論からいえばそれは不可能です。なぜなら自称元徴用工への「補償問題」が片付いたとしても、韓国がありもしない問題を捏造して日本の名誉と尊厳を貶めている問題については、まったく解決しないからです。徴用工財団の顛末「韓国が全額負担する財団なら問題ないのでは?」昨日の『日韓が徴用工「肩代わり案」軸に年内決着目指す=共同』では、自称元徴用工問題を巡...
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さらにいえば、この「財団方式」を日本政府が事実上、容認してしまったことで、そこを足場に韓国側は「日本は債務の存在を認めた!」と大騒ぎするであろうことは火を見るより明らかです。

現在の岸田政権が韓国の尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権といかなる合意を結んだとしても、韓国側の政権が変われば、どうせその合意も反故にされるでしょうし、「岸田政権が強制徴用の事実を認めた」という事実のみが残るという最悪のシナリオも、私たち日本国民としては覚悟しなければなりません。

駐日韓国大使が「法的解決」を堂々と否定

こうしたなかで、案の定、韓国側からは「日本は被害者の立場を理解し、後続措置を取らなければならない」とする寝言が聞こえてきました。

駐日韓国大使「日本、徴用被害者を理解しなければ…後続措置が重要」

―――2023.03.13 07:18付 中央日報日本語版より

発言したのは韓国の尹徳敏(いん・とくびん)駐日大使です。

中央日報は12日付の朝日新聞のインタビュー記事を引用する形で、この尹徳敏氏の発言を紹介しているのですが、これが非常に噴飯ものです。真っ先に目に飛び込んでくるのは、尹徳敏氏のこんな発言です。

徴用問題が事実上白紙化された慰安婦合意の二の舞を踏まないためには、被害者に対する共感が何より重要だ」。

「事実上白紙化された」とは、いったい何なのでしょうか。「韓国が合意を破った」という事実を、どうしてハッキリと述べないのでしょうか?このように韓国人はときどき、自分たちが行った不法行為を「~された」などの「受動態」で表現しますが、これだとまるで他人事です。

ただ、それ以上に看過できないのは、尹徳敏氏のこんな発言です。

韓国には『雨に降られる人がいれば、私は傘を差してあげる人より一緒に雨に降られる人になりたい』という言葉がある。日本ではこの問題が法的に解決済みとされているが、被害を受けた人にはそうではない」。

「法的解決」を正面から否定するこの発言、シンプルに驚きます。

この「法的に解決していても実際には解決していない」というロジック、韓国人の口からはよく出てきます。以前の『韓国弁護士「過去の問題は法的手段では解決できない」』でも取り上げた、とある韓国人弁護士の発言などは、その典型例でしょう。

なぜ正論を指摘する論者が、たった1人もいないのか――。「韓日ビジョンフォーラム」には多くの論者が参加しているようですが、「韓日諸懸案は本来、すべて法的に解決済みであるのに、これを蒸し返すわが国の側に問題がある」と指摘する論者は見られません。それどころか、「韓日問題は法律で解決することができない」などと言ってのける弁護士の方もいらっしゃるようです。「台頭で未来志向の関係」否定しているのはどちらかとても当たり前の話ですが、外交関係においては、基本的に「対等で未来志向の関係」を目指さなければなりませ...
韓国弁護士「過去の問題は法的手段では解決できない」 - 新宿会計士の政治経済評論

しかし、今回は尹徳敏氏という「駐日大使」の口からこの発言が出ていることに注意が必要です。特命全権大使は、日本国において韓国を代表する人物だからです。ということは、この「法的手段は解決にならない」という認識自体、韓国という国そのもののありようを示していると受け取られても仕方がありません。

将来絶対に蒸し返される

その尹徳敏氏の発言は、こう続きます。

韓国人には『日本が間違ったことになぜ韓国がお金を払うのか』という印象がある」。

この発言は日本側の後続措置を促したものだそうですが、これもおかしな発想です。

中央日報によると尹徳敏氏のこの発言は、「日本政府が企業の自発的な寄付には関与しないという意思を明らかにしただけに、企業の基金参加など積極的な呼応が必要ということ」を意味するのだそうですが、むしろ韓国の度重なる「二重の不法行為」を振り返ると、「加害者」は韓国、「被害者」は日本でしょう。

その尹徳敏氏は、「被害者が解決策を納得できなければ引き続き問題を提起する可能性がある」とし、「両国政府は被害者の感情を刺激しないように発言に慎重を期すべきだ」とも述べたそうですが、なぜ日本が韓国の国内問題について韓国に配慮しなければならないのでしょうか。

控え目に申し上げて、何かと意味不明です。

いずれにせよ、日韓諸懸案で日本が韓国に譲歩すれば、そこを手掛かりにして、韓国が次々と追加で譲歩を迫ってくるという韓国側の姿勢は、尹錫悦政権においてもまったく変わっていません。そんな韓国に少しでも譲歩をするとは、つくづく、岸田文雄「宏池会」政権の能天気ぶりには呆れます。

どうせ将来、絶対に蒸し返されるからです。

ただ、韓国が中途半端に「キシダを騙す」ことに成功したことが、長い目で見て韓国のためになるのかどうかはわかりません。少なくとも日本国民の圧倒的多数が自称元徴用工問題や火器管制(FC)レーダー照射事件を通じ、韓国という国を深く理解したからです。

そのことに気付いていないのは岸田首相自身を含めた「宏池会」の面々と外務省、そして読売新聞やNHKを含めたオールドメディアの皆さんなのかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (35)

  • 未来に禍根を残した岸田は宮澤喜一と並ぶ歴代クズ首相の一人としていいと思う。

    それはそれとして、『駐日韓国大使が「法的解決」を堂々と否定』という事であれば、今後日韓の外交文書の中に「基本的価値を共有」と言う文言を絶対に入れないで頂きたい。
    元々価値観を共有などして無かったのに、無理やり友好演出で入れてこられた経緯が強いと思う。しかしここに至れば、もう無理です。ホントやめて欲しい。外務省さん。

  • 菅総理の頃と思いますが、隣国の大手メディアが『問題解決、問題解決と言うけど、日本は何が問題なのかは提示しない、ケシカラン!』と報じているのに呆れた記憶があります。が、
    本当に彼らには何が問題なのか分かっていないのでは?一度きちんと、何を日本は問題にしていて、どうしないと日本人は納得しないと、整理して明確に、隣国も含む諸外国に伝えた方が良いのでは?もちろん面倒で不要な事です。でも、あの人達はそれでも分からないのでは?

    • これこそ余計なお世話。
      どうせ言ったことしかやらないし、それさえも満足にできない。
      自分で考えさせなければ、何時まで経っても一人前の国にはなれません。

      人の言葉を理解できない、犬猫の躾け方が参考になると思います。

    • 既に松川るいが、駐日韓国大使とWBC観戦でニコニコ写真撮影。やっぱりという感じです。

  • 「被害者がもうよいと言うまで謝罪しなければ、謝罪ではない」
    =>それは韓国自身が加害者である場合も、そうなんだな。ネロンダブルは許さねえぜ。

    • 序列的上位者は

      「下の存在に加害して序列的優位性を見せつける義務が有る」

      だから彼らにとってネロンダブルは無いですね(少なくても常にムービングゴールポストする彼らの頭中では)

  • 日本には、
    ひさしを貸して母家を盗られる、
    という言葉があります
    下朝鮮大使殿へ。

  • 外交で「弱気」や「思いやり」がいかに物事を複雑化させるかという見本だ。
    尹はいまごろ訪日前の「ほしいものリスト」を作っているだろう。その中にはスワップも入っているかもしれない。実利と国内世論を鎮めるため。

    岸田が妥協すれば今度は日本の世論が沸騰する。結局次の選挙で票を失い与野党とも「韓国への融和的態度」は票にならないことを悟り、ますます両国関係は悪くなる。
    まあ「評価する」程度でやめておき何も与えないことが肝要だ。

    • 其れはそちらの都合。
      日本国でそういう発言をすれば、日本国内に立場があるとでも思っているのかな?

      • そもそも、任期が切れたら帰る人ですよ。
        この手の発言が、韓国に伝わらないはずもありませんし。

        国と職務を捨てる覚悟が無ければ、こういうしかないでしょう。

          • 国と国民のスタンスがはっきりしていて、
            マスコミの監視が効いていることが必須条件ですね。

            それなりの期間、外務大臣と内閣がガッチリ決めないと難しいですね。
            こういうのは。

  • だから所詮は自民党の中で11か12%しか存在しない宏池会ごときを過大に見すぎと何度言えば・・・
    基本的に他派閥トップも含めて自民党中枢自体が軒並み
    尹大統領の姿勢を評価しているのはそんなに都合が悪いのだろうか?

    それに「宏池会が外交ハト派だから河野談話を出した」というのは事実誤認に近いだろう。
    よもや管理人さんほど知識のある人間がタカ派と謳われた中曽根元総理が
    「植民地支配は悪いというほどでもなかった」と発言した
    閣僚を更迭したエピソードを知らぬわけではあるまいと思うのだが。

    個人的にはディール扱いするのがまず大袈裟と思うが、どのような評価になるにしろ
    宏池会や外務省ばかりに責任を押し付けるのは間違いと言わざるをえない。

    • 中曽根元総理の時代と現在の違いが認識できていないと頓珍漢なことになりますね。

    • 完全にその通りです。

      麻生の露払いと菅の日韓議連会長就任でこの件は自民党の総意と見るべきです。
      一説にはこの解決策は日本から韓国に提示したと言うではありませんか。

      よってこの件は自民党、外務省、マスコミの総意と見るべきです。
      それをすべて岸田・宏池会の責任にするには無理がありすぎますね。

      今回、岸田・宏池会は韓国利権を取りに行ったのですよ。

      それまでは二階派が長年独占していました。
      だが河村が引退し二階も力が衰え次回で世襲引退。

      この好機に韓国利権を獲得した岸田はむしろ優れているとみるべき。

      https://twitter.com/kishida230/status/1634155666221694977

      この岸田をごらんなさい。

      一つの大仕事を成し遂げた男の立ち居振る舞いです。

  •  「韓国には『雨に降られる人がいれば、私は傘を差してあげる人より一緒に雨に降られる人になりたい』という言葉がある。」
     この言葉は、『雨に降られる人』=被害者、『傘を差してあげる人』=被害者に賠償する人(加害者)という意味で、要するに「被害者を見かけた場合、私も被害者になって賠償を受けたい」という意味なのでしょうか。それなら良く分かりますが。

    • うまい!
      なるほど、めっさ腑に落ちました。

      「泣いた子は余計に…」
      みたいな損得打算の諺なのですな。

    •  全く同じことを思いました。「困った時はお互い様」と似ているようで逆ですね。
       もっといえば、本当に困っている人が求めるのは「一緒に困りに来る人」ではなく「助けてくれる人」の方が一般的なのでは思います。何か故事があるのかもしれませんが、人助けそっちのけで立場のアピールにこだわる、この格言?の意味が純粋にわかりません……
       所謂慰安婦にしろ労働者にしろ、どちらも「もういいから金をくれ」という方が居たはずです。しかし支援団体や韓国政府も被害者救済を二の次にして交渉に妄信…じゃなかった猛進していますし。良かった、本当に困っている被害者なんて居なかったんだ。

       韓国文化の何を見てももう驚かないだろうと思いつつ、なんだかんだまだまだ驚かされます。気持ちの良い感動ではなく、珍奇な生物や汚い物をつい見てしまうような心情ですけども。

    • 「困っている人に寄り添う」といった好意的な解釈もできなくもないとは思いますが、これが韓国の言葉なのであれば「幸せのお裾分けは要らない。それより不幸のお裾分けをさせろ」と言っているようにしか聞こえなくなるから不思議。

    • みんなで傘をシェアする方法を考えよう→(みんなで世の中を良くしよう)、じゃなくてみんなで傘を打ち捨ててずぶ濡れになろう→(みんなで不幸になろう)ってのがものすごく気持ち悪いですね。

  • 岸田首相は、日本の譲歩による問題解決に前のめりになっていますが、ネットでは多くの日本国民は納得していないように思います。
    この辺りで再度事実認定と論点整理が必要では無いかと思います。
    岸田首相は、宮澤喜一その2になりたく無いのなら、逃げ腰にならずに冷静かつ論理的に、日本国民に対して説明を尽くすべきです。
    今は、聞く力よりも説明する力が必要な局面です。

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