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韓国、米軍に「日本海」表記修正を要求=日米韓訓練で

「日本海」の呼称を巡り、米国が韓国に配慮しない事例が増えてきたように思えます。韓国メディアによると22日に日本海上で行われた日米韓3ヵ国合同訓練を巡って、米軍インド太平洋司令部が「日本海で訓練を行った」と発表したところ、韓国側は「日本海という表記を変更してほしい」と要請したのだそうです。米軍がこれに応じるかどうかは不明ですが、米軍が最初からわざわざ「日本海」の表記を用いた点は、注目に値します。

自称元徴用工問題はたしかに注目されているが…

日韓諸懸案といえば、ここ数年は自称元徴用工問題(※)が最も注目されています。

※自称元徴用工問題とは?

本来、「戦時中、日帝の強制徴用の被害に遭った」と自称する者たちやその関係者ら、そして韓国という国家が、「強制徴用」という虚偽の主張に基づき、損害賠償や謝罪など、まったくいわれのないのない行動を日本企業や日本政府などに対して要求している問題。

(【出所】著者作成)

ドイツで現地時間18日夜7時過ぎから開催された日韓外相会談に関する報道発表が、19日朝、日韓の外交当局から発表され、一部メディアもこれに続いています。発表文や朴振(ぼく・しん)韓国外交部長官の発言を読む限り、今回の外相会談で林芳正外相が「政治的決断」をしたわけではなさそうです。ただ、もしそうだとしても、それは林外相自身が確固たる立場に基づいてそうしたのか、それともたんに「上司」に決断を丸投げしただけなのかはわかりません。日韓外相会談・日本側の発表はほぼ「コピペ」『自称徴用工問題で宏池会は騙せても...
日韓外相会談進展なし:韓国は日本に「政治決断」要求 - 新宿会計士の政治経済評論

この自称元徴用工問題、「韓国によるウソ、捏造に基づく無法な請求」、という意味では、当ウェブサイトが以前から提唱する「二重の不法行為」の典型例であり、その意味では日韓諸懸案を象徴する事例のひとつであることは間違いありません。

日韓諸懸案に関する韓国の「二重の不法行為」とは?
  • ①韓国側が主張する「被害」の多くが韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである
  • ②韓国側が日本に対して要求している謝罪や賠償の多くは法的根拠がないか、何らかの国際法違反・条約違反・合意違反などを伴っている

(【出所】『【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』等参照)

世間では少し勘違いしている人が多いようですが、日韓諸懸案とは韓国の日本に対する「二重の不法行為」の問題です。解決する全責任は、韓国側にあります。そして、日本が議論しなければならないことは、「どうやって韓国に譲歩して折り合いをつけるか」、ではありません。「約束を守らない韓国を、どうやって罰するか」、です。本稿では「総論」として、これまでに当ウェブサイトで触れてきた「韓国の対日不法行為」の数々を、大ざっぱに振り返っておきます。韓国の対日不法行為、尹錫悦政権発足後に「風化」していないか?2022年5月1...
【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任 - 新宿会計士の政治経済評論

一部の国会議員(※しかも自民党「安倍派」所属の議員)が「韓国が保守政権である間に『徴用工』問題を解決し、日韓関係を改善せよ」などと唱えている(『「徴用工解決で安保協力が進む」という松川議員の詭弁』等参照)のも、この問題が日韓諸懸案の「一丁目一番地」とみられている証拠でしょう。

「あの議員」の詭弁が再び出てきました。「朝鮮半島生命線説」とでも言えば良いのか、自称元徴用工問題を「解決」することが、日韓・日米韓の安全保障連携にも寄与する、といった主張です。端的にいえばお粗末と言わざるを得ません。「日本が韓国に譲歩したら日韓・日米韓連携が円滑になる」という主張自体が、そもそも理論的に間違っているからです。国益こそ重要著者自身がここ10年ほど取り組み、いまや一種の「ライフワーク」と化しているのは、「日本にとって円滑な日韓関係が国益である」とする主張の誤りを理論的に証明する作業...
「徴用工解決で安保協力が進む」という松川議員の詭弁 - 新宿会計士の政治経済評論

日韓諸懸案は自称元徴用工問題に限られない

ただ、勘違いしてはならないのは、日韓諸懸案は自称元徴用工問題に限られるわけではない、という点です。実際、日韓諸懸案としては、文在寅(ぶん・ざいいん)政権時代に発生したもの(たとえば火器管制レーダー照射事件など)だけではなく、それ以前の政権の時代から積み上がったままのものも多数含まれています。

たとえば、日本が何度解決しようと努力しても、韓国が都度合意を破ったり、蒸し返したりしてくる自称元慰安婦問題のようなものもありますし、日本固有の領土である島根県竹島を韓国が違法に占拠し続けている問題に至っては李承晩(り・しょうばん)のころから未解決のままです。

これらの一部をまとめたものが図表です。

図表 韓国の対日不法行為の一覧表(※引用・転載自由)

(【出所】著者作成)

したがって、日韓諸懸案を「解決」し、日韓関係を「改善」すると主張している人たちは、まず、これらの懸案について、どれから順にどう解決すべきなのか、提示する義務があると思います。

ちなみにこの点について当ウェブサイトでは、日韓諸懸案をひとつずつ丁寧に解決する義務はすべて韓国側にあると考えています。こうした考えの延長で、もし韓国が諸懸案の解決に失敗するならば、十数年という単位で見て、日本が韓国との関係を清算するというのも有力な選択肢として浮上します。

具体的には、とりあえず短期的には目先の課題(たとえばサプライチェーンの維持や日韓・日米韓連携)をそれなりにこなしつつ、それとツートラックで、「韓国がなくても大丈夫な国造り」を急ぐべきだというのが著者自身の基本的な考えです。

日本海呼称問題を巡る米国のスタンスは明確

もちろん、いますぐ日韓関係を破綻させるわけにはいきませんが、その「ベクトル(方向性)」を確認するという意味では、ひとつの興味深い尺度があります。それが、日本(と韓国)にとって最も重要な同盟国である米国の態度です。

日韓諸懸案のひとつに、日本海呼称問題というものがあります。

これは、「日本海(Sea of Japan)」という海域の名称を巡り、韓国が「東海(とうかい、East Sea)」という呼称を世界中に押し付けようとしている問題です。これも広い意味では韓国の日本(と世界)に対する不法行為のひとつでしょう。

ちなみに韓国が主張する「東海」という呼称については、世界中で部分的に受け入れられつつあるのですが(たとえば英米メディアなどの報道では、地図上で「日本海」の呼称にカッコつきで「東海」と表記する事例も増えています)、これも韓国のプロパガンダを侮ってはならないゆえんです。

もっとも、米国政府自身、この「日本海」の呼称を巡っては、たとえば人民請願(WE the PEOPLE)のウェブサイト上に、おそらくは韓国人により作られたと思しき)「東海の名称を復活させるべき」とする請願に対し、当時のカート・キャンベル国務次官補が明確な答えを出しています。

The East Sea – a FALSE history in our textbooks!

―――2012/03/22付 WE the PEOPLEウェブサイトより

リンク先は基本的に英文ですが、末尾に韓国語と日本語でハッキリと、「米国政府は日本海の呼称を用いる」と明記されています。ここでは日本語訳のものを紹介しておきましょう。

日本海命名問題に関する 人民陳情に対する回答

カート・キャンベル執筆

「我ら人民」のプラットフォームを使って、「日本海」という言葉の使用に関する見解を表明していただいて、ありがとうございます。

各々の海洋を単一の名称で言及することは、米国の長年にわたる方針です。この方針は全ての海洋に適用されており、その中にはこうした水域についてそれぞれ独自の名称をつけている複数の国々の国境が接している海域も含まれます。日本列島と朝鮮半島の間にある水域については、「日本海」と呼ぶのが長年にわたる米国の方針です。我々は、韓国が同水域を「東海」と呼んでいることに気付いており、米国は韓国にその命名法を変更するよう求めてはいません。米国が「日本海」という名称を使用することは主権に関連した何らかの問題についての意見を示唆するものではありません。

我々は、この命名問題が韓国と日本両国にとって重要で慎重に扱うべき問題であることを理解しています。米国が韓国と日本との深くかけがえのない同盟関係、共有する価値観と相互信頼に基づく関係に対するコミットメントを維持し続けていくことを、私は保証します。我々は、地域的・世界的な挑戦課題に共に対処するため、韓国および日本と協力し続けます。

カート・M・キャンベルは、東アジア太平洋問題担当の国務次官補である。

平たく言えば、「韓国が『東海』と呼びたければそう呼べば良いが、米国政府は『日本海』と呼ぶ」、という回答です。これがすべてでしょう。

米軍が「日本海」呼称を用いたことに韓国側が「変更を要請」

ただ、この日本海呼称問題に関連し、韓国メディア『ハンギョレ新聞』(日本語版)には24日付で、いまさらこんな記事が掲載された表です。

その都度違う「東海」表記…韓国合同参謀本部、米軍に「日本海表記の修正」を要請

―――2023-02-24 07:30付 ハンギョレ新聞日本語版より

ハンギョレ新聞によると、日米韓3ヵ国が22日に「東海(※日本海)」で実施したミサイル防衛訓練を巡って、米軍が訓練場所を「『東海(トンヘ)』ではなく『日本海』と表記し、物議を醸し」、韓国軍も米国側に「日本海という表記を変更してほしい」と要請した、というのです。

これについて、たしかに米軍インド太平洋司令部のウェブサイトで確認すると、訓練が「日本海で」実施された、と明記されていることがわかります。

U.S., Japan, Republic of Korea Conduct Trilateral Ballistic Missile Defense Exercise

The Arleigh Burke-class guided-missile destroyer, USS Barry (DDG 52) conducted a trilateral ballistic missile defense exercise in the Sea of Japan Feb. 22, alongside Japan Maritime Self-Defense Force Atago-class guided missile destroyer JS Atago (DDG 177), and Republic of Korea Navy destroyer ROKS Sejong the Great (DDG 991).

This exercise enhances the interoperability of our collective forces and demonstrates the strength of the trilateral relationship with our Japan and Republic of Korea allies. This trilateral cooperation is reflective of our shared values and resolve against those who challenge regional stability.

We remain committed to peace and prosperity in the region to uphold a free and open Indo-Pacific.

―――2023/02/22付 米軍インド太平洋司令部HPより(※下線は引用者による加工)

米国にとって重要なのは日本

これについてハンギョレ新聞は「東海と日本海を併記しなかった」、(過去には)「韓国と日本の間の水域、朝鮮半島東の水域という表現も使ったことがある」などと指摘。くしくも「竹島の日」でもある22日に実施された合同訓練でわざわざ日本海の呼称を使ったことを巡り、次のようの述べます。

奇しくも訓練が行われたこの日は、日本が独島を自国の領土だと主張して制定したいわゆる『竹島の日』でもあり、米軍が日本側の意思に従ったのではないかという声もあがっている」。

このあたり、かつてであれば「とりあえず面倒くさいから日本海の呼称を使わないようにしよう」という判断が米国側にも働いていたフシがありますし、ハンギョレ新聞の指摘通り、韓国側からの抗議を受けて日本海の呼称を使わないように修正したという事例もあります。

したがって、今回についても米国が文章を修正する可能性はもちろんあります。

ただ、米国だって「日本海」の呼称を巡って日韓が対立していることを知っているわけですから、米軍が最初から「日本海」の呼称を使用しているという事実は、米国が日韓のどちらをより重視しているのかを推し量るうえで非常に重要です。

米国から見て、「日韓・日米韓協力」はたしかに重要ですし、日韓間に無駄な摩擦を生じさせないような配慮をしているフシもあるのですが、それと同時に、「対中国」で考えるならば、米国がそこまで韓国を信頼しているようにも見えません。

もしも米国が本気で中国と対決しなければならなくなった場合、韓国は肝心なところで対中戦線から離脱する可能性が高いからです。

こうした点を踏まえたならば、米国としてはいかなる場合であっても韓国の「ワガママ」に配慮しなければならない、という判断は下し辛いのではないでしょうか。というよりも、米国側も徐々に韓国への過剰な配慮にうんざりしているのかもしれません。

いずれにせよ、日韓・日米韓連携自体は重要だという「建前」はありつつも、米国が日本と韓国を等しく信頼しているわけではないことだけは間違いないでしょう。

新宿会計士:

View Comments (43)

  • いつもながら、韓国のキレ味の鋭さには感心します。宗主国には全く発揮されませんけど。

  • 東海というのは、日本の愛知県、岐阜県、三重県、静岡県の領域を指す名称で、昔からある名前。同じく、中国というのも日本の広島、岡山、山口、島根、鳥取の地方名で中華人民共和国ができるずっと前からある名称。なので、日本海、支那と、世界標準の名称を使ってもらわないと日本の西に住んでいる者としては違和感が大きいですね。

    • チョセン版愛国行進曲
      (日本の戦前軍歌 愛国行進曲のパクリW)

      見よ! 東海(トン屁)の空明けて
      光明星高く輝けば
      将軍様の示す道に
      我らいささかの懸念なし
      おお! 晴朗の朝雲に
      聳ゆる白頭山の姿こそ
      金王朝は揺るぎなき
      韓民族の誇りなれぇ~

      なお、ちなみに光明星こと金星は
      太陽系の中で地球より内側の周回軌道なので
      彼らと同じで空に高く輝くはずなど
      てんであらしまへ~ん(笑)

  • 意外にも中露の呼称は日本海です。
    赤組の中でも南北朝鮮だけが東海にこだわってるようですね。

    • 違います!北朝鮮は朝鮮海と呼ぶように主張してます。南は東海。世界中の古地図を調査すると一番多いのは、多い順に日本海、朝鮮海、東海なのです。韓国の主張は最初からおかしいのです。

    • 中も東海艦隊って東海にこだわっていますよ。
      東海艦隊って
      ただk国の東海と違うような気が・・・

  • メンドクサイ国と思われるのは、
    かれらにとっては、
    それだけ重視しなけりゃいけない国
    って意味になるんでしょうね。

    お客様苦情係、相手にするんじゃあるまいに(笑)。

  • 呼称が何であれ、とにかく日本に嫌がらせをしないと生きていけない国だから。
    日本は南北朝鮮を直接相手にせず、その他の世界に日本の考えを知らせていれば良いと思います。

  • 韓国軍って言いがかりばかりつけてくる韓国の中でもピカイチのろくでなしかと。有事に韓国軍に背中を預けることなど自殺行為と思います。

    ・国際観艦式で艦旗掲揚拒否
    ・自衛隊機へのFCレーダー照射
    ・その後の嘘と逆ギレ
    ・GSOMIA日本への情報出し惜しみ
    ・今度は日本海呼称へのイチャモン

    おまけ
    ・韓国国防相、ベトナム戦争時民間人虐殺は「一切なかった」と主張し、上訴する意向。

  • マリアナ諸島とフィリピン諸島の間の海域は「フィリピン海」と呼ばれています。
    といっても出入り口すべてに「○○海峡」と名づけられている日本海などに較べるとその範囲はいささか曖昧なのだけれど、
    マリアナ諸島は小笠原・伊豆諸島に連なりフィリピンは台湾・沖縄・奄美に連なるという見方をすると
    伊豆半島から大隅半島のあいだはフィリピン海なのだろうかという変なことを考えてしまったりする。

  • 自称徴用工問題、日本側の呼称に疑問です。向こうは徴用工問題かも知れませんが、日本が問題にしてるのは違法判決なのだから「国際法違反判決問題」とか言うべきではと思うのですが。

  • 日米の重要な価値観:ルールに基く国際秩序の強化、北へのミサイル対応、中国、ロシアを念頭に置いた日米韓の連携強化
    韓国の価値観:東海をどう呼称するか。

    韓国が枝葉に拘り。仮に実戦で応援を求めた際に呼称の問題でヘソを曲げて協力を拒否されたら後世に残る笑い話になります。
    大切に思っているモノが日米韓で食い違っていますが合理的に考えて何故違うのか、よく分かりません。理性で考えてはいけない問題なのかも知れません

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