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日韓外相会談進展なし:韓国は日本に「政治決断」要求

ドイツで現地時間18日夜7時過ぎから開催された日韓外相会談に関する報道発表が、19日朝、日韓の外交当局から発表され、一部メディアもこれに続いています。発表文や朴振(ぼく・しん)韓国外交部長官の発言を読む限り、今回の外相会談で林芳正外相が「政治的決断」をしたわけではなさそうです。ただ、もしそうだとしても、それは林外相自身が確固たる立場に基づいてそうしたのか、それともたんに「上司」に決断を丸投げしただけなのかはわかりません。

日韓外相会談・日本側の発表はほぼ「コピペ」

自称徴用工問題で宏池会は騙せても日本国民は騙せない』で取り上げた、自称元徴用工問題を巡って韓国政府が全力で日本に非を認めさせようとしている問題を巡って、いちおう、日韓外相会談に関する情報が出てきました。

早ければ本日にも行われるであろう日韓外相会談で、またしても日本は韓国に騙されるのでしょうか。自称元徴用工問題を巡り、韓国紙は「強制徴用問題」の「終盤の協議」は「日本側の謝罪方式」と「基金に日本戦犯企業が出捐するかどうか」だ、などと勝手に決めつける記事を配信しています。もしもこの方式で日本が韓国に譲歩しようものなら、国民の怒りは宏池会政権に向かうでしょう。ただ、このネット全盛時代に、日本政府にそれができるものなのでしょうか?見えてきた日本の対韓譲歩朝日新聞・牧野氏の論考に見る韓国政府の目論見自...
自称徴用工問題で宏池会は騙せても日本国民は騙せない - 新宿会計士の政治経済評論

事前の報道通り、林芳正外相と朴振(ぼく・しん)韓国外交部長官の会談は現地時間の18日に行われました。これに関する報道発表は、日韓ともに19日の朝、更新されていますが、双方の外交当局の発表を読んでも、あまり目新しい点はありません。

日本の外務省の発表内容は、北朝鮮によるICBM級ミサイル発射を糾弾する内容を除けば、ほぼ毎回同じです。

日韓外相会談

現地時間2月18日午後7時10分頃(日本時間2月19日午前3時10分頃)から約35分間、ミュンヘン安全保障会議出席のためドイツを訪問中の林芳正外務大臣は、朴振(パク・チン)韓国外交部長官と日韓外相会談を行いました。

  1. 両外相は、日韓が国際社会における様々な課題への対応に協力していくことは重要であるとの認識で改めて一致しました。特に、両外相は、本18日、北朝鮮がICBM級弾道ミサイルを我が国から約200kmの我が国排他的経済水域(EEZ)内に着弾させたことを強く非難した上で、国連安保理決議に従った北朝鮮の完全な非核化に向け、日米韓の安全保障協力を始めとする地域の抑止力強化、安保理における対応等について、日韓、日韓米で引き続き緊密に連携していくことを改めて確認しました。
  2. また、両外相は、昨年11月の日韓首脳会談において両首脳が日韓間の懸案の早期解決を図ることで改めて一致したことを受け、旧朝鮮半島出身労働者問題を含め日韓関係全般について率直な意見交換を行いました。
  3. 両外相は、日韓関係を健全な関係に戻すべく、懸案の早期解決に向けて外交当局の各レベルで両国間の緊密な意思疎通を継続していくことで一致しました。

―――2023/02/18付 外務省HPより

正直、前回の発表内容を「コピー&ペースト」するだけだと、ほとんど意味がありません。

警戒が必要なゆえん

もっとも、少し注目点があるとしたら、協議の時間が「35分間だった」という情報くらいでしょうか。

先日、米国で行われた日韓外務次官級協議が2時間半の長丁場に及んだのと対照的です。韓国側が日本側に対し、何らかの「政治決断」を促すために会談を引き延ばそうとするなら、35分で終わるというのも不自然です。

ただし、これについては「日韓交渉が外相レベルでなにも進展しなかった」と見るのは尚早です。林外相自身が「決断」せず、「決断」を「上司」に丸投げする肚づもりを固めているのだとしたら、さほど長い時間の協議は必要ないからです。

また、林外相自身がG7外相会合を主催するなどの多忙の折、物理的に日韓外相会談「ごとき」に時間を使うことが難しいのは、ある意味では当然だからであり、「宏池会政権」が韓国に「譲歩する」ことを政治決断するリスクは、まったく消えていません。

これについては引き続き、警戒が必要なゆえんです。

一方で、韓国外交部の発表は、日本側のそれと比べて少し長いのですが、そのわりにあまり新しい情報が含まれていないという点については、日本側と事情はあまり変わりません。

日韓外交長官会談(2.18)結果【※韓国語】

パク・ジン外交部長官は、ミュンヘン安保会の出席契機林林正日本外務大臣と2.18(土)午後19:10-19:45(現地時間)間の日韓外交長官会談を行った。今回の会談は昨年5月以降、林外務大臣と5回目の開催された韓日外交長官会談だ。

両長官は今日(2.18)北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射を強く糾弾し、これは多数国連安保理決議の明らかな違反であり、朝鮮半島と域内緊張を高める深刻な挑発であることを指摘した。

  • 両長官は、北朝鮮の挑発は、韓米日安保協力強化を含む国際社会の強力で団結した対応に直面することを強調し、韓日・韓米日間の緊密なコミュニケーションと共助を持続強化していくことにした。
  • 両長官は、多様な地域・グローバル懸案対応において民主主義と市場経済など普遍的価値を共有する韓日両国間の共助を持続強化していく必要性について意見を合わせた。

両大臣は、強制徴用問題を含む日韓間の主要懸案と相互関心事についてこれまでに構築してきた信頼に基づいて真剣で深い意見を交換した。

  • 両長官は、首脳間の合意により、早急な懸案解決及び関係改善のために、外交当局間の各級で緊密な協議が続いていることを評価した。

両長官は、今後も相互信頼関係を基盤に日韓間諸般懸案解決及び両国関係発展のため、外交当局間の各級で緊密にコミュニケーションしていくことにした。

―――2023-02-19付 韓国外交部HPより

「これまでに構築してきた信頼に基づいて真剣で深い意見を交換した」のくだりは笑うところでしょうか。

自称元徴用工問題を巡って韓国側は一貫して「日本に非を認めさせるための努力」しか行っておらず、韓国側からはなんの誠意も示されていないのに、「両国の信頼関係」もなにもないからです。

朴振氏は「政治的決断を求めた」

それはともかくとして、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)は韓国側が日本側に対し、「徴用訴訟問題」(※原文ママ)を巡り、「政治的な決断を求めた」と報じています。

韓日外相が会談 徴用問題で日本に「政治的決断」求める

―――2023.02.19 07:09付 聯合ニュース日本語版より

聯合ニュースによると朴振氏は会談後、記者団に対し「主要争点について言えることはすべて言った」、「日本側に誠意ある呼応に向けた政治的決断を求めた」としたうえで、「お互いの立場は理解したから、双方の政治的決断だけが必要な状況」と述べたのだそうです。

普通の日本国民であれば、「あそこまでふざけた提案をしておきながら、『双方の政治的決断』もなにもないじゃないか」、「『譲歩』するのは日本側だけじゃないか」、などと激怒しそうな発言です。

ただ、視点を変えれば、朴振氏のこの発言、今回の日韓外相会談では林外相が朴振氏に対し「答え」を出さなかったという間接的な証拠でもあります。

これについてはもちろん、林外相が確固たる立場に基づいてそうしたのか、それとも単に優柔不断で最終決断を「宏池会政権のヘッド」に委ねただけの話なのかはわかりません。その意味で、「日本が韓国に譲歩する可能性」を巡っての警戒監視が必要であることは言うまでもないでしょう。

新宿会計士:

View Comments (45)

  • 仮に上に投げたとしても、去年の秋に日韓首脳で懇談して何も起きなかったんだから、またその繰り返しになるだけでは?

  • ひとつの山場となる会談で、実質ゼロ回答だったようですね。
    大温情で、新政権の言い分を直接聞いてあげたので、あとは自動音声案内と質問メールだけでいいのでは。
    現金化は実質不可能なので、日本側の事情として決断を迫られるきっかけが何もないように思うのですが。
    外務省の一部+松川議員は、いまだに用日派の政権にバラ色の幻想を抱いているんでしょうか。

  • 毎度、ばかばかしいお話しを。
    日韓外相会議で林外相:「今の岸田総理には、他のことで体力を使って、日韓関係で政治決断する余力は残っていません」
    この話は2023年2月19日時点では、笑い話である。

  • 林さんは、”現時点では売国しなかった”と私の閻魔帳に書いておきます。

    岸田さんに確固たる国家観があれば良いのですが。

    • 確固たる国家観があれば私たちは心配せず安心していられると思います。

  • 35分間だと、逐次通訳が入りますから、実質的には17分。自称徴用工の話はその一部ですから、原則を述べて終わりじゃないでしょうか。

  • 何というか…

    毎回ハラハラしながら見守り、どうやら今回は前回からの「さらなる後退」は無かったようだと分かるとホッとする。
    この繰り返し、胃に良くないですねえ…

    既に韓国の国内問題を日韓協力して解決する、と言ってしまっているので、これ以上の後退が無いようお願いしたいものです。

    • >>日韓協力して解決する・・・
      貴方素直で真面目な人ですね、忖度し過ぎでは?

  • 韓国の政権が交代し、日本と仲良くしようとしてるので、この機会を逃さずガッチリ韓国の手を掴んで離さない様にすべき という論を言う輩がいます。
    韓国は変わった。日本と仲良くすべきだ。今のうちに。等。

    確かに彼等は日本との関係改善を望みその様に動いています。
    それは事実です。

    しかし、この論を唱える輩が黙ってる事があります。

    韓国は、関係改善を求めてはいるが “条約を守るための行動”は一切していません。

    それには複合的な理由があります。

    朱子学的儒教の考え方で
    “意志は実現する”と考えてるからです。
    彼等は韓国から手を差し出せば必ず日本も手を差し出すと考えてるのです。
    何かを計画したら、それだけで九分九厘成功したと考えます。

    また、彼等は自己評価がエベレストとより高いのです。
    米中から引っ張りだこで“つれーわー”。そんな韓国から日本に関係改善しようと声をかけたら必ずや日本が手を出すのは必然。

    そして、次が重要です。
    彼等は、上と下の関係しかありません。そして、上の者は全てを手に入れ下の者は全てを差し出して当たり前の考え方を持ってます。
    だからこそ、韓国が自らの非を認め謝罪しての関係改善などもってのほかなのです。それでは、韓国の欲しいものを日本から手に入れる事は出来ません。
    日本が植民地支配の非を認め韓国に謝罪しての関係改善でないと、日本から必要なモノは貰えません。

    これらの理由から、彼等は“自らの非を認め、条約を守った上での関係改善”を受け入れられないのです。

    もちろん彼等の考え方は正しく、今さら韓国が全ての非を認め謝罪し、竹島と仏像を返したとしても、日本からしてみればマイナスがゼロになっただけで、韓国に感謝の念など起きようもありません。
    これでスッパリ手を切って、持ちつ持たれつではなく、一生の内に数回挨拶を交わすくらいのウスーイ関係になりたいと思ってるからです。

    だからこそ、彼等が欲しいものを日本から手に入れる為には日本の謝罪が必要なのです。

    • まったくその通りだと思います
      韓国人の外交が奇妙に見えるのは、ほぼ、それが原因ですね。
      加えて
      真の日韓友好とは
      韓国人に頭を下げ続ける日本人 という構図にならない限りありえないのです
      日韓友好を主張する大半の人は、そういう認識は無いから
      友好の何が悪い?日韓友好大歓迎と簡単に言うのだと思います

      • oinko様の言う通り、韓国人の行動は日本人には理解不可能なので、向こうが友好を醸し出すと簡単に騙されてしまうんですね。
        そんな時、「で、韓国は条約を守るための努力をしてますか?たった一言全ては65年の協定で解決済みだと何故言えないのか?」
        と聞くだけで簡単に論破出来ます。
        韓国人が納得出来ないと言うなら、その納得させる努力を何故してないのですか?

        これは、日本人の良い所でもあり、弱点でもある“相手の事を慮る”が原因です。

        相手を慮るのはそれが通じる相手だけ。
        韓国人にとって、騙された馬鹿にしか感じません。

        日本人全員が韓国人のプロになれたら解決します。

    • おっしゃる通り!自称徴用工だけでなくレーザー照射とか竹島とか仏像とか日本海とかいろいろある全ての問題が解決したとしてもマイナスがゼロになるだけなんですよね。
      尹政権になってからの実質的な変化は仏像返還訴訟の差し戻しだけ(論旨はおかしいですが)。ほぼ何もしてないに等しい。むしろ、相変わらずアルプス処理水に対する難癖とか無断海洋調査とかいまだにやり続けてるので関係改善の意思すら怪しいというべき。

      • ムッシュ林様

        何を言ってるのかわからないかも知れませんが、彼等はあれで本気で日本との関係改善を望んでるのです。

        彼等は関係改善を望んでるのですが、そのために努力は絶対にしません。
        韓国は日本との関係改善を望みます。
        そのための努力は日本がするべきです。

        本当に何を言ってるんだと自分でも思います。
        が、これが現実です。
        彼等は日本が日韓関係改善をしなくても困らないとかは考えません。
        何故なら韓国が関係改善を望むので、それは実現されるべきです。
        故に、関係改善の努力をしない日本が悪いとなるのです。

        いや、真面目に彼等の行動を解析すると 自分の常識が狂ってるのかと思ってしまいます。

        深く考えず そ~いうもんだと するのが精神的にいいのかも知れません。

  • 会計士様が依然に「緊密に意志疎通」とか言ってる時点で半分負けと書かれていましたが、「韓国側が政治決断を要求」とか「日本側の誠意ある呼応が焦点」という言い方がされること自体、既に韓国の術中に嵌まっているように思います。財団案が決まれば日本企業の自発的寄付は株主代表訴訟の恐れはあっても阻止することは事実上困難でしょう。後は韓国側が「日本側は非を認めた」と解釈できる玉虫色の声明なりを取り付ければ韓国側は大勝利です。松川氏のいう「過去の立場の維持の再認識」などしようものなら、未来永劫韓国人と顔を会わせるたびに「過去の植民地支配の痛切な反省とお詫びを維持しています」と言わされるでしょう。そうならないことを望みますが、マスコミの酷い誘導、政官界の媚韓勢力の強固さを見るにつけ悲観的な気持ちが拭えません。

    • 「我が国の一貫した立場に基づき韓国側と意思疎通を行う」という安倍政権、菅政権で踏襲されてきたセットパターンを岸田が「緊密に意志疎通」に変更した時から術中にハマり始めたように思います。特に安倍総理がお亡くなりになってから明らかに日本が譲歩するかのような報道(韓国に融和的な関係者のリーク?)が増えたように思います。自民党内で綱引きしているのでしょう。韓国が実質的には何も行動してないのに口先に惑わされてセットパターンを変えるからこうなるのです。
      これまでの歴史を振り返ると、私も過去の談話の踏襲すら一切せず韓国には2度と謝らないというのが大事と思います。

      • 本当にそうだと思います。謝罪は公式にそれを取消したりしない限り維持されていることは自明であり何度も繰り返したりする必要はありません。今回のような何一つ謝る要因のないものに対して過去の謝罪の再認識などを行えば、「過去の謝罪の言葉を借りて今回の件でもその意を示した」と解されても何の抗弁もできないでしょう。松川氏の言うような意味不明な言い回しの「過去の立場の維持の再認識」などという官僚用語は騙されたふりをして日本国民を騙すものに他ならないと思います。しかしながら岸田政権は明らかに菅政権からトーンを変えてまたその方向に導こうとしているように見えます。警戒怠ることなく見ていく必要がありますね。

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