X

データで見る「20兆円貿易赤字」の削減は意外と簡単

貿易面で、日本にとって「基本的価値を共有する国」(たとえば米国や台湾)の重要性が、「基本的価値を共有しない国」(たとえば中国や韓国)を上回りそうになっていますが、このことは日本が進める「価値観外交」が順調に進んでいる証拠といえるかもしれません。その一方、日本は2022年を通じて20兆円を超える貿易赤字を計上しましたが、貿易赤字国は中国、豪州、サウジ、UAEの4ヵ国だけで25兆円に達していることもわかりました。

データ分析の基本

経済分析はヒト、モノ、カネのデータが基本

「山手線の駅名を冠した怪しい自称会計士」は、みずからを「金融評論家」「ハンバーガー評論家」「エクセル評論家」、などと名乗っているようです。ただ、昨今のハンバーガー価格急騰の折、この者の関心の多くは、やはりどうしても金融・経済に向けられてしまうようです。

こうしたなか、「日本と世界の関わり」という観点から物事を論じるうえでは、「必ず基本データを見なければならない」というのがこの「金融評論家」の持論なのですが、その際の視点は大きく3つあります。それが、経済活動の3要素とも呼ばれる「ヒト、モノ、カネ」の動きに関する統計データです。

このうち「ヒト」に関していえば、コロナ禍発生後にほぼ途絶えていた外国人のインバウンド需要が回復しつつあるなか、日本政府観光局(JNTO)が公表する『月別・年別統計データ(訪日外国人・出国日本人)』などをもとにした分析ができるようになりました。

たとえば「日本に入国した外国人の人数は大きく回復しつつあるが、入国者は特定国に極端に偏っている」、とする話題については、先月の『観光需要の落とし穴:入国外国人は急回復も韓国に偏る』でもとりあげたとおりです。

11月の入国外国人が93.4万人と、前月(49.9万人)からさらに増えました。ただ、冷静に入国者の構成割合を見ていくと、韓国人が全体の33.75%を占めています。およそ3人に1人は韓国人、というわけです。そもそも入国者が「特定国」に偏るという状況もさることながら、韓国人は「あまり日本にカネを落とさない」ことでも知られています。インバウンド需要の回復を手放しで喜んでも良いものでしょうか。今年11月の訪日外国人は20年5月と比べ562倍日本政府観光局(JNTO)は2022年11月における訪日外国人の国籍別データの速報値を公表...
観光需要の落とし穴:入国外国人は急回復も韓国に偏る - 新宿会計士の政治経済評論

また、「カネ」に関していえば、国際決済銀行(BIS)が公表している『国際与信統計』(Consolidated Banking Statistics, CBS)を筆頭に、いくつかの国際統計をもとに、日本が世界最大級の債権国である、といった話題を、これまでも取り上げてきました。

また、その副産物として、「中華金融のお寒い実態」などについても分析ができるようになっている(たとえば『WSJ「通貨スワップを使って影響力の拡大図る中国」』等参照)など、当ウェブサイトは「国際的な資金の流れに関する一般向けの解説」という点で一定の役割を果たしていきたいと考えている次第です。

当ウェブサイトでは先週指摘した「通貨スワップを使った中華金融」について、米メディアのWSJにも同様の趣旨の記事が出ていました。WSJの情報自体、当ウェブサイトよりもやや遅れているという点はさておき、中華金融の実情については冷静に把握することが何よりも大切ではないかと思います。中華金融:データを統合してみる中国が外国に貸しているカネの総額は、いったいいくらなのか――。これについては、なんだかよくわかりません。ただ、当ウェブサイトでは以前から「中華金融」、あるいは「一帯一路金融」の総額について、研...
WSJ「通貨スワップを使って影響力の拡大図る中国」 - 新宿会計士の政治経済評論

貿易統計について国別総額を入手してみた

もっとも、これらのうち、最近は「モノ」の流れに関する分析が、やや手薄になっています。

「モノ」に関し、著者自身が本来的に重視しているのは、財務省税関が毎月公表している『普通貿易統計』と呼ばれる統計です。

しかし、この『普通貿易統計』自体、容量が非常に大きくて扱い辛いうえに、「金融ハンバーガーエクセル評論家」自身が現在、とある理由により、データベースが一時的に使用できない状況にあるため、最近はどうしてもこの分析が手薄になってしまっているのです。

大変申し訳ございません。

国別総額表で見る貿易の姿

輸出相手国で「米>中」「台>韓」

もっとも、この状況については当面解消しないと思われるため、とりあえずはデータ分析に入る前の「大きな流れ」の整理くらいはしておきたいと思います。その際の手がかりとなるのが、1月下旬に財務省税関から発表された『国別総額表』に基づく2022年12月時点のデータです。

これを集計するだけでも、いろいろと興味深いことが判明します。

まずは、2022年12月における日本にとっての輸出相手国を、上位10ヵ国ほど並べてみましょう(図表1-1)。

図表1-1 輸出金額(2022年12月)
相手国 金額 割合
1位:米国 1兆7309億円 19.70%
2位:中国 1兆6178億円 18.41%
3位:台湾 6152億円 7.00%
4位:韓国 6029億円 6.86%
5位:タイ 3670億円 4.18%
6位:香港 3561億円 4.05%
7位:シンガポール 2510億円 2.86%
8位:ベトナム 2177億円 2.48%
9位:ドイツ 2103億円 2.39%
10位:インド 1908億円 2.17%
その他 2兆6272億円 29.90%
合計 8兆7870億円 100.00%

ここで興味深いポイントは2つあります。

輸出相手国として、ひとつ目は米中の再逆転が生じたこと、ふたつ目は台韓の再逆転が生じたことです。

少なくともコロナ禍以降、日本から見て最大の輸出相手国は中国が占め続けてきたのですが、この相手国に再び米国が浮上することが増えてきました。また、長らく「3番目」の地位は韓国が占めていたのですが、昨年あたりから台湾が韓国に代わって「第3位」に浮上することが増えてきたのです。

日本の輸出構造の特徴

この点、2022年の通年で見ると、米中、台韓の逆転は、それぞれ実現しませんでした(図表1-2)。

図表1-2 輸出金額(2022年1月~12月累計)
相手国 金額 割合
1位:中国 19兆0066億円 19.36%
2位:米国 18兆2587億円 18.60%
3位:韓国 7兆1064億円 7.24%
4位:台湾 6兆8577億円 6.98%
5位:香港 4兆3574億円 4.44%
6位:タイ 4兆2674億円 4.35%
7位:シンガポール 2兆9380億円 2.99%
8位:ドイツ 2兆5711億円 2.62%
9位:ベトナム 2兆4514億円 2.50%
10位:豪州 2兆1728億円 2.21%
その他 28兆1967億円 28.72%
合計 98兆1842億円 100.00%

しかし、1位の中国と2位の米国が、3位の韓国と4位の台湾が、それぞれ激しく競り合っている様子は手に取るようにわかるでしょう。

また、輸出相手国上位については、香港(5位)、タイ(6位)、シンガポール(7位)、ベトナム(9位)など、東南アジア諸国などがランクインすることが増えていますが、これも「日本企業が生産拠点を中国から徐々に東南アジア諸国にシフトしつつある」という仮説を裏付けるデータでもあります。

というのも、現在、日本から外国への輸出品の多くは、自動車などを除けば、基本的には「最終製品」ではなく「モノを作るためのモノ」であり、日本からの輸出量を見れば、日本企業がどこの国に生産拠点を移しつつあるかを想像することができてしまうからです。

このあたりの詳細については、著者自身のデータベース環境が復活次第、最新の品目別分析を別稿にて議論したいと思う次第です。

中国+資源国からの輸入が膨張している

では、日本にとっての輸入はどうなっているのでしょうか。

これについては昨今の資源価格の急騰もあり、資源国からの輸入金額が総じて大きく膨らんでいることがわかります(図表2-1)。

図表2-1 輸入金額(2022年12月)
相手国 金額 割合
1位:中国 2兆0194億円 19.72%
2位:豪州 1兆1146億円 10.89%
3位:米国 1兆0836億円 10.58%
4位:サウジアラビア 5288億円 5.16%
5位:UAE 5080億円 4.96%
6位:台湾 4411億円 4.31%
7位:韓国 3576億円 3.49%
8位:インドネシア 3366億円 3.29%
9位:マレーシア 2917億円 2.85%
10位:ベトナム 2863億円 2.80%
その他 3兆2712億円 31.95%
合計 10兆2389億円 100.00%

2022年12月の単月で見ると、最大の輸入相手国は中国で、輸入額は2兆円を超え、全体の約20%を占めていることがわかりますが、これは日本が中国から最終製品(PC、スマホ、衣類、雑貨など)を大量に輸入しているためです。

ただ、中国以外の上位国、たとえば豪州(2位)、サウジアラビア(4位)、UAE(5位)などは、いずれも日本に対し資源を輸出している国であり、とりわけ鉱物性燃料(石油、石炭、LNGなど)の輸入が膨らんでいることがその要因であろうと推察されます。

輸入面では「台>韓」傾向が定着へ

こうしたなかで、個人的に注目しておきたいのが、6位の台湾と7位の韓国です。

両国は以前であれば、輸入額においても「韓国>台湾」となっていましたが、最近は「台韓逆転」の傾向は続いており、2022年を通じてこの順序は完全に確立したかにも見えるのです(図表2-2)。

図表2-2 輸入金額(2022年1月~12月累計)
相手国 金額 割合
1位:中国 24兆8344億円 21.02%
2位:米国 11兆7218億円 9.92%
3位:豪州 11兆6245億円 9.84%
4位:UAE 6兆0233億円 5.10%
5位:サウジアラビア 5兆5691億円 4.71%
6位:台湾 5兆0808億円 4.30%
7位:韓国 4兆4151億円 3.74%
8位:インドネシア 3兆7763億円 3.20%
9位:タイ 3兆5001億円 2.96%
10位:ベトナム 3兆4751億円 2.94%
その他 38兆1430億円 32.28%
合計 118兆1635億円 100.00%

2022年1月~12月を通じたデータで見ても、豪州、UAE、サウジという「3大資源国」が日本にとっての貿易相手国の上位に食い込んでいますが(それぞれ3~5位)、もし資源価格の急騰という局面が一巡し、日本国内の原発再稼働・新増設が進めば、やがて再び順位は下がっていくと思います。

しかし、台湾と韓国に関していえば、輸入しているのは資源ではなく、産業のサプライチェーンに関わる品目(機械類など)が中心であると考えられ、この「台湾>韓国」という構図が輸入面でも確立し始めているというのは、日本の産業構造に大きな変動をもたらすものでもあります。

さらには、インドネシア、タイ、ベトナムという東南アジアの3大生産拠点が、ひそかに日本にとっての輸出相手国の10位圏内に入っているというのも、動きとしては大変に興味深いものです。

輸入相手国としての台湾、ASEAN諸国の地位が上昇し、中国、韓国の地位が下がるのは、大きな流れでは日本の「脱・中国」「脱・一帯一路」、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)推進」の動きとも大きく関わってくる可能性があるからです。

貿易高や貿易収支から見える姿

貿易高から見る日本と外国との関わり

さて、図表1と図表2は輸出、輸入のそれぞれに関するランキングでしたが、両者を合算した「貿易高」ではどうなっているのでしょうか。

図表3-1は、2022年12月の単独での貿易高を示したものです。

図表3-1 貿易高(2022年12月)
相手国 金額 割合
1位:中国 3兆6372億円 19.07%
2位:米国 2兆8145億円 14.76%
3位:豪州 1兆2971億円 6.80%
4位:台湾 1兆0563億円 5.54%
5位:韓国 9605億円 5.04%
6位:タイ 6436億円 3.37%
7位:UAE 6273億円 3.29%
8位:サウジアラビア 6106億円 3.20%
9位:インドネシア 5140億円 2.69%
10位:ベトナム 5040億円 2.64%
その他 6兆4061億円 33.59%
合計 19兆0711億円 100.00%

貿易高で見ると、1位は中国ですが、2~4位に米国、豪州、台湾という「日本と基本的価値を共有する友邦」がランクインしているのは興味深い点です。また、6位にタイ、9位にインドネシア、10位にベトナムと、やはり日本にとって重要な相手国であるASEAN諸国が10位圏内に入っています。

中国は日本にとって輸出高では米国と並ぶ、輸入高では他国を突き放す、最も重要な国であるため、貿易高でもトップに来てしまうのは仕方がないのですが、それでも日本が現在、国を挙げて中国との関係を整理するなかで、この地位が将来的にどう変わっていくかは興味深いところでしょう。

資源国であるUAEとサウジの両国は、輸入が貿易額全体を押し上げる格好で上位に入っていますが、資源価格が落ち着き、日本の原発の再稼働・新増設が進んでいく局面となれば、場合によっては再び圏外に押し出されるかもしれません。

また、日本の隣国である韓国は輸出入ともにそれなりに多いために5位に入っていますが、日本が半導体産業で台湾との結びつきを強めつつあるなかで、すでに「台韓逆転」が生じており、台湾のTSMCの熊本工場が稼働し始めるなどすれば、輸出入ともに金額・ランキングがさらに低下していく可能性もあるでしょう。

なお、図表3-1を2022年の通年で集計し直したものが図表3-2ですが、ランキング的にはあまり大きく変わるものではありません。

図表3-2 貿易高(2022年1月~12月累計)
相手国 金額 割合
1位:中国 43兆8411億円 20.29%
2位:米国 29兆9805億円 13.88%
3位:豪州 13兆7973億円 6.39%
4位:台湾 11兆9385億円 5.53%
5位:韓国 11兆5215億円 5.33%
6位:タイ 7兆7675億円 3.60%
7位:UAE 7兆1388億円 3.30%
8位:サウジアラビア 6兆2369億円 2.89%
9位:ベトナム 5兆9265億円 2.74%
10位:インドネシア 5兆7555億円 2.66%
その他 72兆1541億円 33.40%
合計 216兆0581億円 100.00%

日本の貿易赤字は4ヵ国に集中している

さて、ここからは少し視点を変えて、貿易収支(輸出-輸入)についても確認してみましょう。

日本の貿易収支は2022年12月単月で1兆4655億円の赤字であり、2022年を通じた赤字額は、なんと20兆1271億円(!)という途方もない額に達しています。21年を通じた貿易収支(1兆9204億円の赤字)と比べ、赤字幅は10倍以上に拡大した計算です。

では、いったいどこの国に対して日本は赤字を計上しているのでしょうか。

図表4-1は、2022年12月の単月で見た貿易赤字のランキングです。

図表4-1 貿易収支(2022年12月、赤字順)
相手国 金額 割合
1位:豪州 ▲9320億円 63.60%
2位:サウジアラビア ▲4471億円 30.51%
3位:中国 ▲4016億円 27.40%
4位:UAE ▲3888億円 26.53%
5位:インドネシア ▲1593億円 10.87%
6位:マレーシア ▲1162億円 7.93%
7位:ブラジル ▲1118億円 7.63%
8位:カタール ▲1113億円 7.60%
9位:南アフリカ共和国 ▲894億円 6.10%
10位:クウェート ▲848億円 5.78%
その他 +1兆3768億円 93.95%
合計 ▲1兆4655億円 100.00%

3位の中国を別とすれば、やはり豪州、サウジ、UAEという3大資源国が貿易赤字の相手国のトップです。そして、1~4位の4ヵ国だけで、単月の貿易赤字は2兆円を超えます。

もし世界的な資源高が続き、日本の原発再稼働が進まなければ、こうした貿易赤字構造は長続きするであろうと予想されますが、話はそれだけにとどまりません。逆にいえば、この4ヵ国との収支状況を改善すれば、日本は再び貿易黒字に浮上する可能性が高い、ということでもあるのです。

というのも、この4ヵ国に対する貿易赤字(合計2兆1650億円)だけで、単月の日本の貿易赤字額全体(1兆4655億円)を上回っているからであり、たとえば日本が国を挙げて資源輸入量を減らし、中国の生産拠点を撤収して日本に持ち込むだけでも、日本は貿易収支が改善可能です。

赤字解消なら原発再稼働+製造業が最も手っ取り早い

つまり、貿易赤字の相手国は4ヵ国に限られているということであり、日本にとって貿易収支の改善策は、意外と簡単でもある、ということです。これを通年ベースに書き換えたものが図表4-2ですが、こちらでもまったく同じことがいえます。

図表4-2 貿易収支(2022年1月~12月累計、赤字順)
相手国 金額 割合
1位:豪州 ▲9兆4517億円 46.96%
2位:中国 ▲5兆8278億円 28.96%
3位:UAE ▲4兆9077億円 24.38%
4位:サウジアラビア ▲4兆9013億円 24.35%
5位:インドネシア ▲1兆7970億円 8.93%
6位:カタール ▲1兆5750億円 7.83%
7位:ロシア ▲1兆3523億円 6.72%
8位:マレーシア ▲1兆2670億円 6.29%
9位:クウェート ▲1兆1030億円 5.48%
10位:カナダ ▲1兆0496億円 5.22%
その他 +13兆1055億円 65.11%
合計 ▲20兆1271億円 100.00%

通年で見ると、上位が多少入れ替わりますが、それでも「世界の組み立て工場」である中国、資源国である豪州、サウジ、UAEの4ヵ国だけで、日本は25兆0886億円もの赤字を計上しており、この額は日本全体の赤字額(20兆1271億円)を超えています。

したがって、製造業の国内回帰などを通じて中国からの輸入が減少し、資源価格が落ち着くとともに原発の再稼働・新増設が進むことで資源の輸入が減少すれば、肥大化した貿易赤字は自然に解消されるはずだ、という見立てができます。

いずれにせよ、20兆円を超える貿易赤字は日本経済にとって大きな負担ではありますが、解消できない話ではありませんので、政府にはしっかりと原発政策を進めていただく必要がありそうです。

貿易黒字相手国の状況

その一方で、日本にとっての貿易黒字相手国についても並べておきましょう。

図表5-1は、2022年12月単月での貿易黒字相手国です。

図表5-1 貿易収支(2022年12月、黒字順)
相手国 金額 割合
1位:米国 +6473億円 44.17%
2位:香港 +3423億円 23.36%
3位:韓国 +2453億円 16.74%
4位:台湾 +1741億円 11.88%
5位:シンガポール +1347億円 9.19%
6位:インド +1284億円 8.76%
7位:オランダ +1140億円 7.78%
8位:タイ +904億円 6.17%
9位:メキシコ +845億円 5.77%
10位:英国 +545億円 3.72%
その他 ▲3兆4810億円 237.54%
合計 ▲1兆4655億円 100.00%

これで見ると、1位の米国に対しては、日本は6473億円という黒字を計上していますが、この金額を多いと見るか、少ないと見るかは微妙でしょう。中継貿易港である2位の香港(3423億円)を別とすれば、3位の韓国(2453億円)、4位の台湾(1741億円)などと比べ、さほど突き放した数値ではないからです。

また、貿易額、輸出額、輸入額のそれぞれで「台韓逆転」現象が生じつつある、というデータを確認しましたが、貿易「収支」で見ると、この「台韓逆転」は解消します。というのも、日台間では輸出入ともに伸びているのに対し、日韓間では輸出だけが伸び、輸入が停滞しているからです。

なお、図表5-1を2022年通期ベースに書き換えたものが図表5-2ですが、こちらについては1位から5位までの順序は、単月データと変わりません。

図表5-2 貿易収支(2022年1月~12月累計、黒字順)
相手国 金額 割合
1位:米国 +6兆5368億円 32.48%
2位:香港 +4兆2233億円 20.98%
3位:韓国 +2兆6913億円 13.37%
4位:台湾 +1兆7769億円 8.83%
5位:シンガポール +1兆6465億円 8.18%
6位:オランダ +1兆1776億円 5.85%
7位:インド +9789億円 4.86%
8位:タイ +7674億円 3.81%
9位:メキシコ +5992億円 2.98%
10位:英国 +5478億円 2.72%
その他 ▲41兆0728億円 204.07%
合計 ▲20兆1271億円 100.00%

日本経済への処方箋

以上、貿易統計に関する基本的な地位の変動について確認しました。

輸出面、貿易総額面では、「米中逆転」、「台韓逆転」という傾向が定着するのかどうかに注目する価値がありそうです。日本と基本的価値を共有しない国(中國と韓国)よりも、日本と基本的価値を共有する国(米国と台湾)の重要性が上昇すれば、それは日本の「価値外交」が進んでいる証拠となるからです。

また、その一方で、輸入面では中国と「3大資源国」(豪州、サウジ、UAE)からの輸入が膨らんだ結果、貿易収支としてみればこの4ヵ国との貿易赤字が日本全体の貿易赤字を上回っているのは興味深い「発見」といえます。

その意味では、もしも日本が貿易赤字を手っ取り早く減らしたければ、「製造業の国内回帰を進める」、「原発の再稼働や新増設を進める」という「ごく当たり前の結論」が、貿易統計からも導けるのでしょう。

新宿会計士:

View Comments (24)

  • 更新ありがとうございます。

    原発再稼働や新設・増設をすれば、日本のエネルギー問題の大部分は解決しそうですね。核融合発電で長年続いてきた「あと十五年」が、早く実際の十五年になってくれればと思います。実験炉はすでにいくつかできていたかと思います。次の段階の原型炉もそろそろ形になってきています。

    それまでの繋ぎに核分裂炉を使うこと自体は間違えではないと思います。

    問題としては日本人の核アレルギーでしょうか。もちろん一度大きな事故を起こせば多大な損害に繋がるという点は理解できます。福島での事故のこともあるでしょう。

    何より大衆受け、メディア受けが良い点でしょう。反原発派はこぞって、そこを突いてきます。中には原発が多い日本は中国を刺激すべきではないという、一種の相乗り論調も見受けられます。

    中国と争うことになっても、尖閣諸島以外は、現状の経済路線の延長でしかないと想定しています。台湾有事においても米軍基地のある沖縄までは取られないと思います。まあ嫌がらせを兼ねてどこかに上陸ぐらいされるかも知れませんが。

    ですので、防衛力や法整備も必要ですが、日本の国力のうち、中国に依存しない経済力を高めることを優先すべきだと思います。それらを怠ってしまうと、競合することすらできず、知らぬ間に経済的植民地化されかねません。

    いや既にかなり蚕食されていると感じます。

    法整備の際にはスパイ防止法の強化も必須でしょうが、現政権の間は無理の様な気がして仕方ありません。

  • このテーマとはちょっと外れるが、昨日(2/3)の日経に「服への支出20年で半減」という記事が出ていた。
    統計によれば日本人は20年前と比べて衣服に半分程度の支出しかしないということ。
    朝日新聞なら「日本は貧しくなった」くらいのことを言いそうだが、私は逆だと思う。
    日本は経済が成熟して、日本人は豊かになり服のようなものに金をかけなくなったということだろう。今から40年前、私はすでにサラリーマンだったが、当時1万円台の背広はなかった。
    2万円台の背広は恥ずかしくて着れなかった。背広はやはり3万円台後半から。
    今は1万円台で十分見栄えのいい背広が買える、しかも替えズボン付きで。それどころか1万円を切るジャージー素材のスーツまで出てきた。
    背広で最もコストのかかる縫製部分を人件費の安い海外に出したのが大きい。人件費はGDPの一部を構成するため、縫製に係るGDPは海外に行ってしまったことになる。縫製を日本に戻せば日本のGDPが増えるが、また高い背広を買わなくてはならない。どっちがいいのかは自明だ。
    私の父親くらいの時代は背広は仕立てて着るものだったという。既製の背広は「つるし」といってバカにされたらしい。昭和30年代の映画で会社の中で学生服を着ている社員が出てくることがある。あれは新入社員では買えないほど背広が高かったためらしい。初任給をもらうと月賦で背広を買ったのだ。

    • 昭和の時代までは、銀座へ出かけるときは老若男女おめかしして行ったとのこと。
      カジュアル化が進んで見栄を張らなくなるのは、可処分所得が低くなっているか
      あるいは少子化の影響もあるのではないでしょうか。
      製造業の国内回帰も完全自動化でなければ、少子化に対応できずインドにいくかも。
      「服への支出20年で半減」
      他の産業も注意ですね。

    • カジュアル服でも同じことが起こっている。
      僕はそこそこのオッサンで、ユニクロはワンシーズンで着潰しても後悔ない服の代表だった。当時の世の中じゃ「ユニバレ」と言われて外で堂々と着てたら恥ずかしいレベル扱いだった。
      ところが今ではユニクロは高級服で、某タレントがテレビで「ユニクロみたいな安い服」と発言して炎上したらしい。
      今でもユニクロの値段はそれほど変わっていないと思う。より安く手に入る服やメルカリ中古が溢れるようになったのだろう。

  • 稼働している原発のある地域とない地域で電気料金に差が生じているという非常にわかりやすい構図となっております。

    まずは原発再稼働です。震災以降テロ対策だなんだと色々要件を追加して再稼働を遅らせた原子力規制委員会をまず刷新しなければ。震災対策としては、津波による浸水防止策と万が一の浸水時の電源喪失防止策、バックアップです。それが済んだのならさっさと再稼働です。

    岸田さんのリーダーシップではきついですね。ここ10年の原子力行政を否定しなければいけないですから。

    強力なリーダーシップを持つ首相を熱望します。それで貿易赤字の解消です。貿易赤字とか小さなことでなく、日本の国際的地位の上昇につながるでしょう。

  • 素朴な疑問ですけど、日本も経済安全保障のために経済的合理性を無視して、事実上、海外からの輸入を制限すれば、貿易赤字は減少するのではないでしょうか。

    • なーに地球視点で見れば輸出額と輸入額は同額なので実質赤字なんてものはゼロですよ。

  • 「環境原理主義者」たちを論破し社会の方向性を転回させることが必要ですが、なんちゃって首相のなんちゃって資本主義な現政権の胆力では無理です。まずは新聞記者と NHK の更生から始めないと。

    • はにわファクトリー様

      >「環境原理主義者」たちを論破し社会の方向性を転回させることが必要

      これ、なんちゃって首相のなんちゃって資本主義信奉者ならずとも、
      言うは易く、行うは難し、だと思うんですがねぇ。

      わたし、田舎に農地を借りて、野菜はすべて無農薬有機栽培の自給自足です。
      とか、
      わが家は、屋根にソーラーパネルを取付け、原発の電気は一切使用してません。
      とか、
      一家揃って、使い捨て容器に入ってる商品は、エコじゃないから絶対買いません。
      とか。

      こういう方々って、結構な数いるんですよね。
      経済合理性などをいくら説いてみたところで、馬の耳に念仏。
      大体は誰それのご高説の、受け売りなんですけどね。

  • 「核施設」特に原発再稼働や新設・増設という重要事案に日本人はアレルギーが強過ぎます。原爆2弾と民間原発のスリーマイルやチェルノブイリ、フクイチと並べれば如何に大災難かという事は理解出来ます。また、ちょっとしたヒューマンエラー、それでも万事秘匿する体質、一度起これば数百年以上続く放射線の恐ろしさを考えれば、当然かもしれません。

    東電が原発再稼働、新設にまったく動きが無く、他の電力会社は継続して動かす事もしているのに、情けない限りです。東電が日本政府が舵取り役をこなさないで、日本のエネルギー問題の解決はありません。

    原発反対派はメディア受けが良い点でしょう。反原発派はそこを突いてきます。絶対に負けれませんネ(^^)。

  • 日本人が iPhone から国産スマホに乗り換えてくれるだけで,かなり貿易収支は改善するはずです。

      • デジカメ愛好家の中には、

        「ニコンはソニーのお下がりのイメージセンサーを使用している。」
        「iPhoneはXperiaのお下がりのイメージセンサーを使用している。」

        と信じて疑わないソニー信者が多いとか。ホンマかいな。

        話逸れますが、キヤノン信者は、産経の下記記事に御不満だとか。

        「オランダ企業ではASML社、日本企業は東京エレクトロンとニコンが対象になると報じた。」

        https://www.sankei.com/article/20230128-KYFPDRBTPVLWZPOLOCNF7SF67I/

        キヤノンは半導体製造装置を作っている筈なのに、対象外。

  • 製造業の国内回帰も、良く聞かれる人手不足を考えると良し悪しですね。

    こう言っちゃなんですが、社会的生産性が見込めない介護業界を切り捨てて教育や防衛などにお金を回すという非常な決断が為されないと、抜本的な解決にはならないでしょうし。

    中国は、この点では日本より身軽に切り捨てれるのが為政者からすると楽なところ。

    安楽死尊厳死を合法化した上で、一定以上の要介護になって一定期間経ったら全額自己負担とし、負担出来ないなら死んで貰うのが世の為人の為なのは否めないかと。

    • 「働く」とは「傍の人を楽にする事」だとする言葉遊びがあります。

      なので、老いた後も過去の経験からくる農業なり料理なり各々の知識を後進に伝えて後進の生産性を上げるのも「働く」のひとつだと言えて、「老い恥を晒す」とは、介護を受ける身になったとかではなく、「働く」事が出来なくなった状態の事ではないかと。

      「老い恥を晒したくない」と死を選ぶにしても、「ただ生きるだけで居たくない」とか「もう自分に出来る事はない」とかが「頃合い」じゃないかなーと考える次第です。

    • 僕はかなりのチキンなのでリアルでは口が裂けても言いませんが、コロナの初期対応で老人を手厚く救護したのはかなりムダだったとけつ

      • ありがとうございます。

        >僕はかなりのチキンなのでリアルでは口が裂けても言いませんが、コロナの初期対応で老人を手厚く救護したのはかなりムダだったと結構真面目に思っています。

        私としては、「働けない人」イコール「老人」ではないので、老人を手厚く介護した事自体は無駄ではなかったと考えます。

        人は最初、他人から与えて貰う存在として生き、やがて他人に与える存在として生きます。

        他人に与える事の出来ない状態が「はた・らく」事の出来なくなった状態であり、その状態の人を生き続けさせる仕事は社会的生産性の無い仕事なのでは?と。

    • >負担出来ないなら死んで貰うのが世の為人の為なのは否めないかと。

      仰る通りなのですが、相続税対策のために時間稼ぎをする必要がある方が多いのではと思います。
      その間の延命治療にも公費が投入されています。
      現行では、相続開始前3年以内の贈与は、相続税の対象になります。
      これを「生前贈与加算」といいますが、2024年以降の贈与から7年に延長されます。
      つまり、延命治療の期間が3年から7年になります。
      医療費の増加に加えて、病院のベッド数も大幅に増やす必要が出てくるでしょう。
      また、増大する医療保険費負担のため保険料の増額は不可避です。
      過去の実績を考えると、公務員や政治家はあまり賢明ではありませんし、まともな意見が通ることもあまり無いようです。
      公務員の視野が狭いのは致し方ないとして、政治家がもう少し幅広く長期的に判断できれば良いのですが。
      現状、公務員のほうがまだましという状態で、まともな判断は望むべくもありません。
      世界を見れば、歴史的に色々な体制が興隆し滅亡してきましたが、体制内改革が成功した事例は多くないようです。
      イギリス、フランスあたりが自ら改革を行ってきましたが、殺し合いという犠牲を払っての改革です。
      世の中合理的であれば良いのですが、そんなに単純ではないというのが歴史の教訓です。
      体制が行き詰まるまでは、改革派なかなか難しいのではないでしょうか?

    • > 中国は、この点では日本より身軽に切り捨てれるのが為政者からすると楽なところ。

      マスゴミが言う事なので、どの程度信頼できるかは疑問ですが、中国では、「コロナ関連死者の9割以上は65歳超。」との事。

      率的には習近平の狙い通りですね。ただ母数は足りてない様な気が。
      人口ピラミッドを僅かに是正しただけで終わってしまうのか、新たな変異株を出してくるのか?

      • https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/corona_portal/info/shibou.files/shibourei.pdf

        「東京都における新型コロナウイルス感染症による死亡症例について」
        都の公式dataですが、例えば5ページ目を参照願います。

        老人の死亡者数
        中年の死亡者数
        若年の死亡者数

        これは志村けんが死んだ頃のごく初期に公表されているデータですが、東京都だけに限らず全国的にも、その後の時期を含めて概ねこんな傾向です。
        日本の厚労省も老人ばかり狙って殺したみたいですね。

        陰謀論は好きではありませんし、するならせめてデータに立脚した緻密な理論構築をしましょうよ。(笑)

        • 実際に起こっている現象を、為政者が利用したり期待したりするのは陰謀論なんですか?

          仰っている事がよく解らないですが、無理に要約すると、「環境条件の違いのは無視して、日本と中国の高齢者死亡率はほぼ同じであるべき。従って、マスゴミの言う『9割』はフェイクニュースである。」と仰りたいのでしょうか?

          まあ、NHKが流した情報ですから、それほど信頼できるとは思ってませんが、貴男の仰る事も、上記要約の様なら、同じ位怪しいのでは?

1 2