非常識な行動・反社会的な行動を行い、それをツイッターなどのSNSにアップロードするという者は、10年周期で出てくるものなのかもしれません。回転ずしチェーン店で不衛生な行為を撮影し、それを投稿した者が話題になっているようです。今から10年前の「バカッター行為」を思い出してしまいます。ただ、問題は単なる回転ずし業界への風評被害にとどまりません。社会全体に対する挑戦でもあるのです。
社会のインターネット化のメリット
当ウェブサイトではしばしば、「社会のインターネット化」を議論しています。
インターネット化が進めば、世の中は間違いなく便利になります。今までできなかったことが、インターネットの出現により、できるようになるからです。その典型例が、「情報の発信」でしょう。
インターネットが出現する以前であれば、私たちのような「無名の一般人」が全国に向けて情報を発信するのは至難の業でした。もしも「無名の一般人」が有名になるためには、それこそ血のにじむような努力が必要だったのです。
「なにか一芸を磨き、テレビ番組や雑誌、芸能プロダクションなどのオーディションなどに応募して、そこでうまく合格し、そこからさらにテレビに出るための長くて苦しい練習期間を経て、やっとデビューする」
「一生懸命に漫画を描き、上京して出版社に持ち込み、運良く編集者の目に留まれば短編を描き、そこで人気が出るなどすれば、連載を手にすることができる」
…。
つまり、歌手にしても俳優にしてもお笑い芸人にしても漫画家にしても、とにかくその「一芸」を磨かねばならず、しかも、何とかメディアの目に留まらなければ始まらないのです。
当然、有名になりたいという人はいくらでもいますので、あなたがもし本気でそれらの人々との競争に勝ちたければ、それこそ死ぬ気で努力するだけでなく、宝くじに当たるような幸運をも手にしなければならなかったのではないでしょうか。
ところが、インターネットが出現し、誰もが気軽に情報を発信することができるようになったことで、こうした「一般人が有名になるプロセス」が変化しました。
インターネット自体も、出現した当初は使い勝手が非常に悪く、UNIXなどの知識がなければメールやホームページ構築などもままならなかったのですが、こうした状況も徐々に改善し、使い勝手が良いブラウザやメールソフトも世の中に続々と出現しつつあります。
さらには2010年ごろからスマートフォンが爆発的に普及し始めたことで、PCやネットワークなどの知識がほとんどなくても、それこそ子供から老人に至るまで、その気になれば誰もが気軽にインターネットを使うことができるようになりました。
最近だと親が使わなくなったスマートフォンからSIMカードを抜き、自宅のWiFiに接続できるようになった状態で子供にスマホを渡すという事例もあるようです。
もはや新聞・テレビの独占物ではない
そうなると、いったい何が生じるか――。
「不特定多数の人々に向け、日常的に情報を発信する」という社会機能が、新聞・テレビを中心としたオールドメディアの独占物ではなくなってきます。
NetFlixやAmazonプライム、YouTubeなど、おもにインターネット上で動画を配信するサービスは日を追うごとに成長していますし、インターネット空間には、新興のウェブサイト、ニューズサイトなども、雨後の筍のごとく乱立しています。
また、ツイッターやTikTok、FacebookやInstergramなどのプラットフォームを使えば、個人がスマートフォンで撮影した写真や動画を、本当に気軽にアップロードできますし、カメラや動画編集用PCなどの「ちょっとした設備投資」さえやれば、それこそ誰だって「ユーチューバー」として情報発信業を始めることができてしまいます。
正直、YouTubeなどを見れば、「素人」が投稿した動画が数万回、数十万回と再生され、テレビ局の公式チャンネルで投稿されたものを遥かに上回る再生回数を誇っているケースなどざらにあります。
しかも、「素人が撮影した動画」のなかにも、何度も撮影して動画編集し、投稿するという作業を繰り返すうちに動画のクオリティが劇的に向上するケースも多く、その結果として、テレビ局が制作した動画と比べても遜色がないもの、あるいはそれを上回るものが出現しているのが実情でしょう。
とくに、著者自身の私見ですが、最近だと「質の劣化」が激しいテレビ番組に対し、「素人」が撮影した動画の質の向上が続いており、なかには品質が逆転しているというケースもあるに違いないと睨んでいます。
そして、「面白い動画があるから多くの人が動画サイトなどを訪れる」、「インターネット空間に多くの人がやってくるから、クリエイターもインターネット空間に集まる」という好循環がインターネット側に出現しているのかもしれません。
すこし身も蓋もない言い方をするならば、これからの時代、才能がある人ほど、直接インターネット空間において自身で情報発信すれば良いのであって、わざわざ手間暇かけて新聞やテレビに活躍の場を求める必要などないのです。
これは、本当に面白い時代になったものだと思います。
バカッター行為の思い出
ただし、この「誰もが気軽に情報発信できるようになったこと」が、情報の発信者と受信者にとって、100%良い効果だけをもたらしているわけではありません。
たとえば、あまりにも気軽に情報発信ができる反面として、「発信すべきでない情報を発信してしまう」というケースもあります。その一例が、一時、社会的な問題となった「炎上行為」、あるいは「バカッター行為」です。
今から約10年前の2013年7月、高知県にあるコンビニエンスストアの店舗で男性従業員がアイスクリームの販売用ケースの中に入り込んで寝そべり、その姿をFacebookに投稿したところ、フランチャイズ本部がただちに謝罪声明を出し、当該従業員を解雇させたうえでFC契約を解除した、という事件がありました。
「コンビニのアイスケースに入ってみた」写真炎上でローソンが謝罪 問題の男性は解雇、当該店もFC契約解約へ
―――2013年07月15日 14時59分付 ねとらぼより
この事件、本来ならば食品を収納するケースに寝そべるという行為の非常識さもさることながら、それを悪ふざけでSNSに投稿したという点で、多くの社会的な批判を浴びたという「画期的な事件」だったのではないかと思います。
ただ、この事件以降も、似たような行為(たとえば非常識な行動をしてその様子を写真などで撮影し、SNSなどにアップロードすること)は、ときどき社会的な話題となっています。
たとえば▼回転ずし屋で客が使用する醤油差しを鼻の穴に突っ込む、▼地下鉄の線路に不法侵入、▼屋外に設置されている家具店の看板に登る、▼飲食店のアルバイトの女子高生が勤務中に服を脱ぐ、▼大学生がスーパーの店内で大騒ぎ、▼高校生(未成年)が飲み会に参加――、といったものです。
当たり前ですが、こうした騒ぎを起こせば、一時的に「注目」はされるかもしれません。しかし、ほんの一瞬注目されておしまいですし、本人が特定されれば、それなりに巨額の損害賠償を請求されるかもしれませんし、ケースによっては立件されるかもしれません。
まだ若いのに、お先真っ暗、というわけですね。
ネットには、こうした「負の側面」があることを、十分に理解しておかねばなりません。
バカッター10年周期説
こうしたなか、ここ数日、今度はスシローやくら寿司、はま寿司などの回転ずしチェーン店で、相次いで迷惑行為が報告されているようです。個人的に数日前にSNSで本件を発見して以来、「バカッター10年周期説」なる表現が著者の頭をよぎったのはここだけの話です。
ネットで拡散されている情報によれば、たとえば一部の者が「レーンを回っている寿司をひとつ勝手に食べる」、「レーンの寿司にワサビを塗る」、「唾液がついた指でレーン上の寿司を触る」、「醤油ボトルの注ぎ口をなめる」などの行為を行い、それをネットに投稿しているというのです。
こうした迷惑行為に回転ずしチェーン側も頭を悩ませているようです。
回転寿司に「回転レーン」もういらない? 相次ぐ迷惑行為でSNS懸念…大手3社に今後の提供方法を聞いた
―――2023/01/31 22:05付 Yahoo!ニュースより【J-CASTニュース配信】
J-CASTニュースの取材に対し、くら寿司は2011年に導入した寿司カバーの仕組みを改良し、レーン上の寿司を客が触ったことを検知するシステムを改良することで対応を急ぐとする一方、はま寿司はタブレットで注文した商品を客の席に高速で運ぶ「ストレートレーン」に完全に切り替える方針を表明。
スシローはもともと、客の少ない時間帯に効率化のためにレーンに寿司を流しておらず、「ただ今、レーンでのおすし提供を控えております。タッチパネルからご注文ください」といったポップを流しているものの、今後の提供方法については検討中とのことです。
回転ずしチェーン店は幼い子供から高齢の方まで、すべての世代が楽しめるからこそ人気を博した業態ですが、一部の不届きな者の行為は、それらすべての人々の回転ずしチェーン店に対する信頼を破壊することにつながります。
社会全体に不安を与える行為
もっとも、こうした迷惑行為については正直、イタチごっこという側面もあります。これに加えて問題は回転ずし産業にとどまりません。実際、J-CASTニュースによると、ある回転ずしチェーンの関係者は取材に対し、次のように訴えたそうです。
「この問題は回転寿司業界だけの問題ではない。迷惑行為は常軌を逸した行動。いくら対策を施したところで、飲食に限らず客の前に商品を陳列する業種全体で起こりうる問題だ」。
まったくそのとおりでしょう。衛生面その他において不安を与えるという意味では、物事の本質は、回転ずしのレーンの問題ではないからです。たとえば、「牛丼屋や定食屋の箸箱になめた箸を戻す」、「ハンバーガー屋のストロー入れになめたストローを戻す」など、パターンはほかにもいくらでも考えられます。
すなわち、本件は社会全体に不安を与える行為にほかなりません。
自動車が出現・普及したことで世の中が便利になった反面、交通事故が激増したのと同じで、ネットが出現・普及して世の中が便利になった反面、こうした「ネット事故」が増えるのも必然なのかもしれません。
結局のところ、ネットは利用する側もそれなりの見識が必要ですし、「ネットでふざけた動画を投稿すれば、その者の人生が台無しになるほどの、刑事上・民事上の責任を負う可能性がある」という点を認識しなければ、抑止力になりません。
いずれにせよ、被害に遭ったチェーン店は、これを機に是非とも毅然とした対応をしていただきたいと思う次第です。
View Comments (17)
実際、こういうバカッター問題ってどうやったら予防できるんでしょうかね?
「バカッターをやったら人生破滅した者達の末路」を教育資材としてSNS利用者に
強制的に勉強させる……うん、SNSを提供する側がそんな「SNSって危ないんですよ」
なんてイメージを持たせる活動、やりたがる訳ありませんね。
もし法律で強制したとしても、それでもゼロには出来ないだろうし……
こういう馬鹿たちには、企業は毅然と対応していただきたいですね。
決して和解などせず、きっちり損害賠償請求で、1000億円くらい請求すればいい。
少なくとも、寿司屋のやつは、自分はもう回転すしに行きたくないし、そういう機会損失や業界の信用、スキームの棄損などを勘案すれば、数百億くらい行くんじゃないかと思います。
「たった一度の過ち」で家族も含めて人生破滅するくらいのインパクトがないと、今後もこんな輩が出てくるに違いありません。是非とも被害企業にはお願いしたいです。
この件、工業高校の生徒がやったという情報が流れていますね。
工業高校は普通科よりも高卒での就職を意識しているでしょうから、今後の就活に悪影響が出るんじゃないかと思います。
過去のバカッター案件の結果が世間に知らされていないのが逆効果になったのかなという気もしますね。
電車に飛び込み自殺をすると莫大な請求がくるという風説があるように、一罰百戒じゃないですがバカッター行為に対して人生オワタレベルの請求が来るという認識が世間に広まれば抑止力になるのかな?
この手の迷惑行為をする人物(とその家族)は、収入も貯蓄もないことがほとんどでしょうから、実際の損害額は回収できないのですよね。。
今時は学校で朝礼があるかすら知りませんが校長先生は時事ネタからめてうまく説明してほしいですね。私の小学生時代の朝礼は退屈でしたが、それは平和な証拠だったかもしれません。
昔なら若気の至りとして地域の問題の範囲で内々に処理されてものが表に出るようになりました。
寛容性が無くなったと見るか公平性が高まったと見るか見解が別れるとおもいます。
馬鹿は決して滅びないと思いますが罪に対して罰が明確になると相場の感覚が出来て神聖な魚様を弄び遊ぶ不届な輩は減ると思います。
飽くまで私の会社における一例ですが、面接前に本人名義でのSNSの有無、もしあればおかしな思想が無いか、またその名前での不法行為がないかの検索を行っております。
勿論それを本人に伝えることはありませんし、かつてそういう行為があったとしても心を入れ替えてそれ以降努力したことが見受けられれば採用に問題はありません。
ただし、採用においての参考にはさせていただいております。
スシロー“食器ペロペロ“問題、当事者と保護者が謝罪も「厳正に対処」へ 法的措置を継続(ITmedia NEWS)
https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/c36e000f3852ea8e7bfc1e89d664ae3cbcceef54&preview=auto
>「引き続き刑事・民事の両面から厳正に対処する」(同社)という。
刑事処罰
信用毀損罪・業務妨害罪(しんようきそんざい・ぎょうむぼうがいざい)
偽計業務妨害罪ではないかと報道されてます
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
未成年である可能性がたかいので
https://asiro.co.jp/media/keiji/10934/
保護観察処分になると思います
https://wellness-keijibengo.com/hogokansatsu/
民事(損害賠償)
鉄道自殺の場合は(状況によるが)一般的に数10万〜数100万円ですが遺族が「相続放棄」するので鉄道会社は泣き寝入り
今回も数10万〜数100万の請求になるのではないかと思います
twitterが「バカ発見器」などと揶揄されるようになったのは、もうかなり以前のことでした。今や、facebook, Instagram, Tiktokなど、発見器(候補)は数多く存在しますし、バカッターに限らず、迷惑系Youtuberなんて人も実際に存在している(た)ようです。
今回のスシローの件では、やらかした高校生が保護者同道の上でスシローに謝罪に赴いたそうですが、受け入れをきっぱり拒絶されたとか。おそらく件の高校生は刑事(威力業務妨害罪あたり?)と民事(損害賠償請求かな)の両方で愚行のツケを払うことになりそうです。きっと彼は二度とそんな真似をしないに違いありません。
でも、今回の愚行が広く知られるようになり、さらにお咎めの内容までが広く知られるようになったとしても、同種の愚行が発生しなくなるなんてことは決してないでしょう。理由はごくごく単純で、「バカ」が存在しなくなるなんてことなどありえないからです。そして「バカ」が存在し続ける限り、この種の炎上事件がなくなることもまたありません。
結局のところ、「誰もが気軽に情報発信できる時代」というのは、同時に「『バカ』が気軽に愚劣な言動を情報として発信できる時代」でもあります。そのこと自体の良し悪しを問うても意味はありません。ただ「そういう時代になった」というだけのことです。そして、個人的には、「そのような時代」になったことでどれほど人類の幸福増進に寄与したのか、明快に判断できるだけの材料を持っていません。あくまでも印象ベースでしかありませんが、誰もが気軽に情報発信できるようになったことにより、人類の幸福は増大したかもしれないが、それと同じだけ、下手をするとそれ以上に人類の不幸を増大させたのかもしれないと思うことがあります。もはや現在の趨勢は止めようがありませんし、止めるべきだとも思いませんが、その行き着く先がどのような世界でありうるのか、けして楽観視はしていないのです。
『石川や 浜の真砂は 尽くるとも 世に「バカ」の 種は尽くまじ』 w
親の事を思ってしまいました。
青年期の馬鹿さはよく知っているつもりです。
私もやっていたかも知れません。
でも今回は許されない馬鹿さです。
損害賠償は高額になると思いますが仕方ないでしょう。
追伸
同様な事はこの一人だけでしょうか。
仲間内で以前から同様のことが行われていたのでは無いでしょうか。
「若気の至り」とか「青年期の愚行」などは、別に最近発生したわけではなく、大昔から連綿と行われ続けてきたものです。そして、かなりの割合の人が何らかの「愚行」について、身に覚えがあることでしょう。「認めたくないものだな。若さゆえの過ちというやつを」
ただ、前世紀までと大きく違うのは、SNSの発達により、そのような愚行を誰もが気軽に全世界に対して発信することができるようになったという点です。今回のスシローでの一件にしても、昔であればせいぜい出禁を食らうくらい、最大限に見ても、店主にぶん殴られてオシマイ(今はそんなことしたら逆に訴えられかねませんが)だったでしょう。
だからと言って、今更SNSを使えなくするべきだとは思いません。そんなことは不可能ですし、そうしたからといって「バカ」が絶滅したり、陰謀論が消滅したりすることなんてけしてないからです。
既存マスメディアが信頼性を大きく失墜させたのは自業自得という側面が強いですし、既存マスメディアによる情報発信独占体制が崩れたのも、インターネットという情報空間の発展によるプラス面ですが、同時に少なからずマイナス面も増幅されたことを決して忘れるべきではありません。「新聞・テレビが滅びそうだ、万歳」などと無邪気に喜んでいるだけでは、あまりにもナイーブであると思います。
バカッターが社会を騒がすと、そのときにそのニュースを知る人間は学び、同じ行為を避けます。社会知になるのかな。
このニュースを意識に刻めるのがせいぜい5歳以上だとすると、この意識を持たない子どもたちは10年後には15歳以上となり、外食もするしバイトもするなど社会と関わりを持ち始める一方で、SNSの発信力も持つわけです。
自由な意識をもって。(笑)
バカッター10年周期説は私も気になっていて、こんな感じかなーと想像してます。
> そのニュースを知る人間は学び、同じ行為を避けます。社会知になるのかな。
コンビニのショーケースに横たわったり、醬油皿を舐めたりする動画が投稿されなくなるというだけですよ。同レベルの「愚行」がなくなるなどとは思いません。
「バズる」とか「映える」という語が生き続ける限り、あとは単に程度の問題でしかないと思います。そして、炎上具合もたまたまのものでしかないでしょう。なので、個人的には周期説にそれほど意味はないと思っています。