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意外と低い公金割合:数字で読む「Colabo問題」

いわゆる「Colabo問題」を巡り、ネット上の議論が活発化しているフシがありますが、ここで著者自身も同団体の活動報告書のなかから過去5年分の収支をざっと確認してみました。すると、2020年に一般からの寄付金の受入が急伸していることがわかりました。あくまでも結果論ですが、同団体としては公的資金を受け入れなくても自力で事業継続が可能だったはずです。しかし、公金を受け取ったがために、結果的に同団体がネット上であれこれ詮索されてしまうのは仕方がない話でもあります。

赤い羽根基金による助成金

いわゆる「Colabo問題」――、すなわち東京都の事業を受託している一般社団法人において、経費を不正に使用していた疑いが生じている問題が、ついに「赤い羽根募金」にまで「飛び火」したとする話題は、昨日の『沈静化しないColabo問題への社会的関心:次は?』でも取り上げたとおりです。

「Colaboと『連帯』するならば責任も取るんでしょうか?」いわゆる「Colabo問題」は、単独の問題というよりも、隠れているさまざまな問題が表に出て来る端緒となるのかもしれません。ツイッター上では「#Colaboと連帯します」などとするハッシュタグがトレンド入りするなど、この話題が途切れることがないからです。こうしたなか、いわゆる「赤い羽根基金」から「Colabo」や「ぱっぷす」に対し、それぞれ3年間で約2700万円の助成が行われたとする話題も出てきました。「Colabo問題」の特徴はオールドメディアの問題いわゆる「Colabo問...
沈静化しないColabo問題への社会的関心:次は? - 新宿会計士の政治経済評論

改めて、「中央共同募金会」による報道発表を確認しておきましょう。

中央共同募金会による一般社団法人Colabo等への助成について

―――2023年01月10日付 中央共同募金会HPより

同サイトの記述をもとに事実関係をまとめておくと、次の通りです。

  • 「Colabo」と「ぱっぷす」に対する助成は、中央共同募金会が独自に寄付募集を実施している「赤い羽根福祉基金」によるものであり、いわゆる「赤い羽根募金」による助成ではない
  • Colaboに対しては、2018年~20年度までの3年度にわたって計2680万円の助成が実施され、「バスカフェ Tsubomi Café」の実施のためのマイクロバス購入費及び同事業の運営費に充当された。すでに助成は終了している
  • ぱっぷすに対しては、2020年~22年度までの3年度にわたって計2700万円の助成が実施され、ぱっぷすが行う相談事業における相談員の人件費、電話代等に充当された。2022年度の助成事業は3月まで実施される予定

実際にColaboの経常収益と経常費用を調べてみた

このため、Colaboに関しては、「活動計算書」に出て来るとしたら、それは2018年度から20年度までの3年度分であり、21年度分に関しては計上されていないはずです。

これについて「Colabo」の活動報告書のうち、「経常収益」の部を確認してみると、「受取助成金等」という項目があります。募金などからの助成金が計上される可能性があるとしたら、おそらくはこの「受取助成金等」ではないでしょうか。

こうしたなか、「一般社団法人Colabo」が報告した経常収益(とその内訳)、経常費用を、2017年度分以降について手入力し、グラフ化したものが、次の図表です。

図表 一般社団法人Colaboの経常収益・経常費用

(【出所】一般社団法人Colaboの過年度活動報告書をもとに著者作成)

一般からの巨額の寄付金=2020年度

これで見ると、2018年度から20年度にかけて、経常収益のうち「受取助成金等」の額は、2018年度が2415万円、19年度が1993万円、20年度が2490万円であり、たしかに巨額ではありますが、正直、20年度に関していえば、同団体の収益全体(186,039,199円)に占める割合は13%程度です。

というのも、20年度と21年度については、会費収入、寄付金収入が急増し、とくに20年度では寄付金だけで1億円を超える資金が集まったからです。あくまでも結果論ですが、20年度に限定していえば、助成金、東京都からの受託金や交付金などを受け取らなくても、事業としては十分に廻っていた計算です。

一般社団法人Colaboの経常収益のうちの「受取寄付金」
  • 2017年度…14,785,205円
  • 2018年度…16,304,632円
  • 2019年度…8,969,258円
  • 2020年度…125,288,497円
  • 2021年度…69,349,754円

(【出所】一般社団法人Colaboの過年度活動報告書をもとに著者作成)

ちなみに一般社団法人Colaboの活動報告書の記載によれば、この2020年度の1億2529万円という寄付金収入は、例の「ひとり10万円」という「特例定額給付金」を、そのまま同団体に寄付した個人が多かったことによる影響なのだそうです。

その記載が正しければ、この寄付金は文句なく正当な手段で同団体が集めた寄付金です。

東京都などから受け取った「事業収益」は?

そして、もともとツイッターなどネット空間で火がついたのは、東京都の受託事業における不明朗な会計の問題だったはずですが、そもそも論として2020年と21年に限定していえば、(あくまでも結果論ではありますが)東京都などからおカネをもらわなくても、莫大な寄付金収入だけで事業継続を行うことが可能でした。

実際、同団体の「事業収益」(おそらくはその多くが東京都などからの受託金)については、21年度こそ4439万円に増大しているものの、19年度と20年度に限定していえば、どちらも2000万円台前半に留まっていました。

この「事業収益」、同団体の経常収益全体に占める割合でいえば、2019年度こそ全体の42.6%に達しているものの、その他の年度はいずれも多くてせいぜい4分の1、少ないときでは全体の10%少々に過ぎませんでした。

一般社団法人Colaboの経常収益のうちの「事業収益」と経常収益全体に占める割合
  • 2017年度…7,782,916円(24.11%)
  • 2018年度…8,847,964円(16.77%)
  • 2019年度…24,367,937円(42.60%)
  • 2020年度…22,835,842円(12.27%)
  • 2021年度…44,387,757円(25.18%)

(【出所】一般社団法人Colaboの過年度活動報告書をもとに著者作成)

助成金等の額についても調べてみた

また、今回新たにネットで騒がれている「助成金」については、同団体にとって2018年には経常収益の半額近くを、2019年には3分の1強を占めていますが、2020年に関しては10%少々、21年についても4分の1程度です。

一般社団法人Colaboの経常収益のうちの「受取助成金等」と経常収益全体に占める割合
  • 2017年度…7,156,550円(22.17%)
  • 2018年度…24,154,144円(45.77%)
  • 2019年度…19,930,794円(34.84%)
  • 2020年度…24,901,470円(13.39%)
  • 2021年度…46,605,960円(26.44%)

(【出所】一般社団法人Colaboの過年度活動報告書をもとに著者作成)

このように考えていくと、なんだか意外な姿が浮かび上がっています。

この点、公金や助成金を、もしも乱脈に使用していたとでもいうのであれば、これは大いに問題ですし、これについては別途「暇空」氏が起こすであろう住民訴訟、あるいは一部の都議らがすでに始めている調査等により、明らかにされていくでしょう。

しかし、同団体の収支を見る限りにおいては、公金や助成金などがなかったとしても、同団体は一般寄付金で十分に運営できそうに見えます。

しかも、2020年度の巨額の寄付金収入の影響もあってか、「次期繰越一般正味財産額」(企業会計でいう内部留保に似た概念)は、21年度末時点でじつに2億5442万円に達しており、これとは別に公益財団法人パブリックリソース財団より受け入れた1億円のアパート建設用の助成も積み立てられています。

したがって、この団体は財政的に相当余裕があるはずであり、正直、無理をしてでも受託金や助成金を獲得しに行く必要があるのかは微妙でしょう。

公的資金を受け入れるリスク

いずれにせよ、あくまでも一般論ではありますが、公的資金を受け入れるかどうかについては、非常に微妙な判断が必要な論点です。なぜなら、安定した収入源になる可能性がある反面で、さまざまな説明を求められるほか、「何かあったとき」には会社ごと吹き飛ばされてしまう可能性があるからです。

じつは、著者自身も吹けば飛ぶような中小企業を運営しているのですが、ごくまれに公的な組織から仕事の依頼が舞い込むこともあります。

しかし、非常に申し訳ないのですが、これについてはお断りしているのが現状です。その理由は、「公的な組織」からの仕事を受注してしまうと、さまざまな「報告義務」が発生する可能性があるからです。

逆にいえば、極端な話、公的な資金を受け入れていなければ、どんな「乱脈」な(?)経費の使い方をしたところで「公金との関係で」問題になることはありませんし、経営の自由度も飛躍的に上昇します。

もちろん、同団体の件を巡っては、「受取助成金」などの出所を巡る詮索は今後もネット上で続く可能性が濃厚ですが、これについても同団体が公金などを受け入れている以上、仕方がない話だと言わざるを得ないのでしょう。

新宿会計士:

View Comments (26)

  • 会計士さんの判断を基にすると、金に困っていたわけでは無く、実績を作るために利用したという事でしょうか。
    国の有識者会議にも出席して提言してますし。

    • よ様
      >国の有識者会議にも出席して提言してますし。
      有識者会議の出席者が本当に有識者か、という問題にはならないのでしょうか。

      • 有識者会議に出席しているから有識者なのです。
        選定する側とされる側がズブズブだとこのようなマッチポンプも可能となります。

        流行語大賞やベストマザー賞と同じ手口です。

        • 有識者会議の首席者を決めるための有識者会議を開催します。

      • 団体の政治力と地方自治体の事業の受託が判断基準だったのではないかと思います。
        有識者か否かについては、この分野について知識を有していると思うので程度はどうあれ有識者だとは思います。

    • 的を射ていると思います。
      この先は何を目標にしていたのかわかりませんが活動維持のためのシステム作りには半ば成功しかけていたのが恐ろしいです。

  • >しかし、公金を受け取ったがために、結果的に同団体がネット上であれこれ詮索されてしまうのは仕方がない話でもあります。

    北朝鮮の対日工作機関である朝鮮総連の強い影響下、管理監督下にある朝鮮学校が、日本社会に対して「公金で支援しろ、でも口は出すな」ってな事をずっっと主張し続けてますが、「虫の良過ぎる考え方」って事ですね笑

    児童の権利条約を持ち出して「民族教育を受ける権利」を主張してるのに、児童の権利条約に書かれている「教育内容」に関する問題性を直視しない、無視するところなんて、ダブスタ・ネロナムブルの見本です笑

  • ただ、東京都の委託を受けているから、
    寄付金が集まっているという面も大きいでしょうね。

    今回のような話で、地方自治体から、不適と判断された場合のダメージは大きいかと。

  • ちなみに一般社団法人Colaboの活動報告書の記載によれば、この2020年度の1億2529万円という寄付金収入は、例の「ひとり10万円」という「特例定額給付金」を、そのまま同団体に寄付した個人が多かったことによる影響なのだそうです。・・・ ずさんな管理が明らかになりつつある現在 この寄付金も疑われる。

  • 報告書の記載どおりに「特例定額給付金」の寄付を受けて急成長したのであれば、自由意志の結果であれ公金獲得で拡大した組織であることの事実が広く知られるべきです。もっともっと儲けたくなったんじゃないですか。
    当方はかつて文科省の某公募に挙手することになってカスミまで応募内容の説明に行ったことがあります。額も大きいしひとつ挑戦してみないかと持ち掛けられてのことです。強力なバックがついておりましたので、書類選考段階で蹴飛ばされなかったのは関係諸氏のメンツを潰さないよう配慮があった結果でないかと思いますが、もしも当選してしまうと大変なことになっていたはずなので、とほほなトンでも系人生経験のひとつにすぎません。

  • 「記載が正しければ」
    これ、定型句のようなものですがColabo問題においては重要な疑義がかかってきているようです。
    いわゆる「表3」の根拠となる証憑が客観的に検証できないというような報告書の時点で……

    ただ、私も最初に話を聞いたときは「自分で集めた寄付だけで運営してるなら好きにやればいい」とは思いましたが、出てくる情報があまりにも「杜撰な運営」ぶりを示唆していて呆れてます。

  • 相乗効果もあるのかもしれませんね。

    まず「困難な状況に置かれている若年女性の保護」を前面に、個人から寄付を集める。

    その寄付を“見せ金”にして、東京都をはじめ、自治体に「これだけ一般市民の支持を得ている団体です」とアピール。

    で、自治体から委託された実績を掲げ、個人に寄付を呼びかける、という。

    • 公的な支援を受けることで箔をつけたいんでしょうね。使途を詮索されるリスクがあるにもかかわらず、関係者グルなのでバレないと思っているんでしょうか。Colaboに限りませんが、公金で反日活動をしたり支援したりするのはいかがなものかと。

  • 寄付はアカい羽からでは?あれもまた問題発掘感ありますよね。
    あと公金は減るどころか増えてますし、寄付は減ったりしてますから、安定して公金チューチューは狙っているのでは。

  • 先に数人の方が奥歯に物の挟まったような感じでおっしゃってますが、新宿会計士さんはこの問題を取り上げるのが遅れたせいか、Colabo擁護的な論調(少なくともこの問題の本質にまともに向かい合おうとしない姿勢)を含んでいるような記事が多いように思います。
    公認会計士らしい、もっと詳細な議論を期待します。

  • 不相応に受領した助成金。無理に使い切ろうとするから隠し切れなくなるのです。
    助成金を受ける利権だけではなくって、助成金を授ける利権もあるんでしょうね。
    きっと。

    • カズさま
      >無理に使い切ろうとするから隠し切れなくなるのです。
       無理にでも使い切らなければ、同じく東京都から委託されている他の3団体に迷惑(?)がかかります。また、来年度の予算要求に悪影響(?)を及ぼします。(なんだか、Colaboに限った話ではなくなりました)
      蛇足ですが、今回の件でColaboは、寄付してくれた一般の人から、「自分の寄付金は、正しく使われているのか」という疑惑の目で見られるようになるのではないでしょうか。ということは、寄付してくれた一般の人を納得させるためにも、東京都から委託され続ける必要があります。

      • 不相応な助成にはキックバック(癒着)の疑いが・・。
        女性だけではなく、助成を保護したい組織なのかと。

        >東京都から委託され続ける必要があります。
        ・東京都から痛くされ続ける必要があります。
        m(_ _)m

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