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「日韓の」寄付で自称元徴用工問題の解決を画策=朝日

自称元徴用工問題を巡る、財団を使った「債務者契約に基づく並存的債務引受方式」を韓国政府が検討していると、朝日新聞も報じました。ただ、改めて指摘しておくなら、正直、疑問です。こんな方式で解決にならないからです。そして、韓国国内の手続や解決「案」を巡っては、肝心の自称元徴用工側からも異論が噴出しているようです。

「韓国側が日韓寄付で肩代わり案を最終調整」=朝日報道

自称元徴用工問題を巡っては、すでに読者コメント欄でもご指摘をいただいたとおり、朝日新聞が今朝、「日韓双方の寄付で肩代わり」とする「解決策」を「韓国側が最終調整している」と報じました。

徴用工賠償「日韓双方の寄付で肩代わり」 韓国側が解決策を最終調整

―――2023/01/11 5:00付 Yahoo!ニュースより【※朝日新聞デジタル日本語版配信】

(※リンク先は『Yahoo!ニュース』のものですが、当ウェブサイトのポリシーにより、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞などの記事については可能な限り示さないことにしていますので、ご了承ください。)

朝日新聞は「日韓関係の懸案となっている徴用工問題」を巡って、韓国の尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権が「日韓双方の寄付などで訴訟の原告への賠償を肩代わりする仕組みを『解決策』とすることで最終調整に入った」と報じました。

この「財団が賠償を肩代わりする方式」自体、すでに何度となく報じられている話題であり、これ自体に目新しさはありません。

ただ、ここで気になる文言があるとしたら、それは「日韓双方の」、という部分です。

これまで韓国メディアなどが報じてきた話題は、「韓国の企業などが財団に拠出し、いったん賠償金を立て替える」、というものでしたが、今回の朝日新聞の報道だと、日本企業も何らかの寄付金を拠出するかのような書き方に代わっています。

日本の外務省は日本企業を売り飛ばそうとしている…のか?

違和感はそれだけではありません。朝日新聞の記事には、こんな続きがあります。

この仕組みを準備しつつ、日本側に寄付金の拠出や謝罪などの『誠意ある呼応』を求め続ける方針で、日韓での『合意文書』を交わさない意向も固めた」。

この報道が正しいのかどうか、現時点で判断することはできません。

ただ、仮に韓国政府がこの報道記事の通りのことを考えているのだとしたら、それは、日本の外務省が次のような「流れ」で暗黙の合意を与えている、という可能性が出てきてしまいます。

  • ①韓国企業が財団に資金を拠出する
  • ②これを背景に韓国で日本企業への圧迫強まる
  • ③日本政府は「民間同士の問題」と静観
  • ④日本企業は泣く泣く謝罪してカネを払う

上記の流れは、とある方からメールで教わった仮説ですが、これが事実なら、日本の外務省は日本企業を韓国に売り飛ばそうとしているようなものです。そして、現在の岸田文雄政権だと、本当にこんなことをやりかねない危うさもあります。

当たり前の話ですが、自称元徴用工問題は、2つの意味で日本企業が謝罪も賠償もしてはならない問題ですし、日本政府も全力でこれを止めなければならない問題です。

ひとつめは、日韓間のあらゆる請求権の問題が、1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に」解決したことを、日韓双方が確認済みである、という点です。日本企業が結果的に謝罪と賠償を強いられることになれば、韓国側だけでなく、日本側も協定を破ったことになります。

ふたつめは、この自称元徴用工問題自体、捏造、事実歪曲などに基づく韓国側のウソである、という点です。いわれなき「歴史問題」を仕掛けられている以上、日本企業や日本政府がこれに毅然と反論しないこと自体、国際社会においては韓国のウソを黙認したことにもなりかねません。

そもそも韓国は連携すべき相手国ではない

一方、これに対する「日韓関係改善論者」の言い分は、こういうものでしょう。

韓国は日本にとって、基本的価値を共有し、戦略的にも非常に重要な場所にある。中国、北朝鮮、ロシアなどの無法国家群に対抗するうえで、日韓・日米韓連携も重要である。そんな韓国との関係改善は必須だ」。

これも、詭弁そのものです。

そもそも日韓諸懸案は自称元徴用工問題だけではありません。

自称元慰安婦問題を巡る韓国による慰安婦合意破り、2021年1月の主権免除違反判決、2018年12月の火器管制(FC)レーダー照射、さらには竹島の不法占拠、仏像の窃盗、日本の海産物に対する不当な輸入規制など、韓国が発生させた未解決の問題は山積みです。

これらの問題を解決させないこと自体、韓国が無法国家であるといわれても仕方がありませんし、「韓国が日本と基本的価値を共有している」という主張自体に信憑性がない証拠です。韓国自体が無法国家なのだとしたら、韓国は無法国家群に対抗するうえで連携すべき相手国ではありません。

自称元徴用工側が公開討論会を直前でキャンセル

もっとも、この朝日新聞の報道が仮に事実だったとして、そうすんなりと事が運ぶのかは微妙です。

韓国メディア『中央日報』(日本語版)に本日掲載された記事によれば、韓国外交部が12日に開催する予定の「公開討論会」自体、空中分解する可能性が出てきたようです。

「被害者を脇役にする」…日本強制動員被害者側が公開討論会ボイコット

―――2023.01.11 14:51付 中央日報日本語版より

中央日報によると、この討論会を巡って、「強制動員被害者と市民団体、代理人団」が「全面ボイコットを宣言した」というのです(「強制動員被害者」とは、おそらくは中央日報のほかの記事に出てくる「強制徴用被害者」、すなわち自称元徴用工のことでしょう)。

そのうえで記事では、「被害者側」は「先週まで討論会に参加するという立場だった」ものの、「外交部との意思疎通の過程で雑音があり、結局、『被害者を脇役にする粗雑な討論会は直ちに中断すべきだ』として不参加の意思を明らかにした」のだそうです。

では、なぜ彼らは「討論会」を巡り、「被害者を脇役にする粗雑なもの」と舌鋒鋭く批判しているのでしょうか。

これについて中央日報は、外交部が討論会前日の11日午前10時になっても、行事の概要や参加者名簿を含めた基本的な情報を提供しなかったとする市民団体側の証言を引用し、次のような自称元徴用工らの言い分を紹介しています。

「(強制動員被害者賠償は)加害者の日本被告企業が負うべき賠償金だが、政府は突然、韓国企業から寄付金を集めて原告に支払おうとしている」。

直前キャンセルは一種の「伝統」

このあたり、この点、韓国人の自称被害者が公開討論直前になって「参加しない」と言い出すのは、べつに今回が初めてのことではありません。一種の「伝統」のようなものです。

たとえば著者自身、とある件で韓国人と関わった際、非常に大事な会合を直前でキャンセルし、その場に現れないということを、何回か経験したことがありますが、それだけではありません。

今から約10年前、2013年5月24日に、当時の橋下徹・大阪市長と大阪市役所で面会する予定だった自称元慰安婦2名が、「都合が悪くなった」と称して面会を直前で取りやめたという「事件」もありました。

しかもそのうちの1人は、橋下氏が「強制連行の証拠がない」と発言したことなどを巡って、直前まで「私が強制連行の証拠だ」、「これ以上の証拠がどこにあるのか」などと息巻いていたことを思い出してしまいます。

強制連行「私が証拠」 元「慰安婦」金さん、橋下氏に反論

―――2013年5月19日 09:37付 琉球新報より

当たり前ですが、自称元慰安婦問題に関しても自称元徴用工問題と同様、「強制連行」の証拠はありませんし、それどころか、自称元被害者側の証言が歴史的事実やさまざまな状況証拠と矛盾していることからも、むしろ虚偽である可能性が高いのは、彼らの主張の方でしょう。

いずれにせよ、「公開討論会を経て自称元徴用工関連の解決策を発表し、日本企業などが『誠意ある措置』を講じることで日韓関係『改善』を加速させる」という韓国外交部(と日本の外務省?)の思惑は、現時点で空中分解の可能性が高まったといえるでしょう。

日本企業にとって法的リスクが高すぎる

もっとも、『併存的債務引受方式の「決して低くない法的ハードル」』などでも指摘したとおり、そもそも韓国政府が出してきている「債務者との契約方式に基づく並存的債務引受」自体、日本企業にとって実現可能なものではありません。

下手に併存的債務引受を承諾すると株主代表訴訟のリスクも!本稿でも自称元徴用工問題を巡る債務引受についてじっくり考えてみたいと思います。前回の債務引受に関する当ウェブサイトの記事に対し、とある方から「なぜ韓国がいきなり『併存的』と言い出したのか不自然だ」とするご指摘をいただきました。これについては著者のなかである程度答えは出ているのですが、それ以上に痛感するのがこの「併存的債務引受」方式を実現するうえでの法的ハードルです。ポイントは「日本企業の承諾」と「株主代表訴訟」です。債務引受を考える併存...
併存的債務引受方式の「決して低くない法的ハードル」 - 新宿会計士の政治経済評論

日本企業が財団との債務引受契約を締結した瞬間、日本企業は債務が存在することを認めることになってしまうからであり、その後は無限に存在する韓国国内の自称元徴用工らやその遺族・関係者などから損害賠償を請求されてしまうリスクが極めて高いからです。

これに加えて近年、日本でもコーポレート・ガバナンスの一環として定着しつつある株主代表訴訟のリスクも、日本企業にとっての大きなハードルです。

つまり、「債務者契約方式に基づく並存的債務引受」を実現させるためには、「①韓国国内で自称元徴用工らの意志を束ねること」、「②日本企業の合意を取り付けること」という、少なくともこの2つのハードルを乗り越えなければならず、とくに②のハードルに内在する「日本の法律」は、外務省にもコントロールできません。

これを画策している者たちは、そのことをちゃんと理解しているのでしょうか。

あるいは、こんなふざけた「解決策」で納得するほど日本国民が愚かだと勘違いしているのでしょうか?

謎は深まるばかりです。

新宿会計士:

View Comments (32)

  • 二度も三度も騙される人が日本の首相だからなぁ~。今回も騙されている可能性が高い。

    • 中国の広島出身の首相では駄目でしょう。過去、宏池会の首相のやってきたことを見れば自明で、国益は損なわれるだけ。
      早く辞任させて、第二次菅政権にした方が良いのでは(自民党政権出続けるなら)。憲法是正はいつになったらできるんでしょうかねぇ、今の自民党では無理なんでしょうね。

  • 多分ですけど、日本企業の寄付は訴えられた企業とは関係ない、株主代表訴訟のリスクのない非公開企業によって行われるのではないかと思われます。そうやって韓国国内を収める発想なのでしょう。
    ただ、そもそもの間違いである最高裁判決の不当性を反省しない解決法は韓国自身にとってもなんら意味のないものだと思うんです。司法の後進性、政治の後進性を自覚して反省して、迷惑掛けた外国に対して謝罪出来ないと、いつまでたっても後進国扱いです。

    現状韓国は日本に相手してもらえていない。大統領が首脳会談したくても断られるって余程恥ずかしいことだと思うんですよ。敢えてその恥ずかしさを日本から指摘しないのが、表向きは配慮ですけど、実は意地悪なんじゃないかと思うんです。

    もう既に韓国は困っても日本に無償助けてはもらえません。今までは泣きついたら見返りなくとも対応してくれてたのですが(外交としてはかなり異常です)。今は極度の音信不通で、1対1のバーターですら成立しない。

    これから先日本は、「普通の国」を越えてもっと冷たく、隙あらば蹴落とすような対応をしていくべきです。多分それによるデメリットは極めて少なく、国民は喝采することでしょう。ここ30年日本はそれほどひどいことを韓国にされ続けてきましたから。

  • >日韓双方の寄付”など”で訴訟の原告への賠償を肩代わりする仕組み

    慰安婦合意での”拠出金の残金?”とかも含まれてたりするのでしょうか?
    受領を望む女性がいなくなった以上、目的は達したともできる訳で・・。

    ”など”は深まるばかりですね。

    • 慰安婦合意みたいなことになるのが目に見えますな。

      元慰安婦(自称)「韓国政府が日本政府との間に交わした慰安婦合意は、請求人の人間としての尊厳と価値等、憲法で保障された基本権を侵害するもので違憲」

      憲法裁判所「合意は文書によらず、国内法上必要とされる手続きを経ないものであり、条約のような『法的拘束力をもたない』ことから、国民の法的地位にも影響を及ぼさないため、違憲審査請求は認められない」

      韓国政府と何らかの合意を交わす場合には、文書の形式をとるのはもちろん、その内容に裁判条項を盛り込むぐらいでないと。

      ちなみに、東部グリーンランド法的地位事件のように、外国の意思表示に応じる形で行政あるいは外交の長が行った宣言は、たとえそれが一方的行為であっても法的拘束力が認められたケースがあるぐらいですから、日韓の外交の長が相互に義務の履行を約し宣言を行った慰安婦合意について、その法的拘束力が国際裁判で争われるようなことがあれば、憲法裁判所の判断は一蹴されるでしょうね。

  • もう手札がなくて、折れたフリして日本が食いついたら噛み付くぐらいなのではないかと思います。

  • 岸田首相でも韓国は、もう関わらない相手となったのか。忌み嫌われたんだね。首脳会談も無し、G7もゲストに入れないか?というぐらいだし。もう察知してくれよ。断られてるんやで!何べんもいうけど、「もう韓国はナイ!」。

    それとは別に、韓国の徴用工については、「日本企業が韓国被害者徴用工に寄付金の拠出と誠意ある謝罪をする」(爆笑)。
    「合意文書は交わさない」(笑)。書いたもんは、後で困るからやろ?そんな約束は出来ないの!

  • 昨日も少しコメントいたしましたが、自称徴用工問題の解決に向けた動きが、外務省と韓国外交部が結託した仕込みの下で、「④債務者の契約に基づく併存的債務引受」で話をまとめる方向で進められてしまう可能性について、十分に警戒する必要があろうと思います。

    「④債務者の契約に基づく併存的債務引受」で話をまとめるということは、日本企業に責任を押し付けて、日本政府としての、日本の国益を守るという責任を放棄するも同様の愚行ですが、外務省の立場からすると、国の責任(というか、外務省の責任)ではないという言い訳が立つ形で問題が解決したということにできるこの方法は、外務省としては大きなメリットがあるので、自分は、外務省が躊躇なくこの方法を採用するのではないかという危惧を非常に強く持っております。

    外務省の動きには決して目を離さず、上記のような愚かなことをしでかさないように、しっかり警戒監視する必要があると思います。

    • つまり、日本政府は日本企業の財産や人を護るのではなく、2015年のユネスコ総会で失言した外務省のユネスコ大使佐藤地氏の責任逃れを優先させる…。

      まさに、国益よりも省益ですね。

  • 誰も言わないけど,最近は朝鮮半島有事を想定した軍事対応を優先した米国主導の日韓関係になりつつあるようにも見えます。仕掛けるのは米軍のほうかもしれません。
    ロシアへの武器輸出などで,アメリカの北朝鮮に対する態度が,放置から積極制裁に変わりつつあるように感じるのですが。
    韓国も文在寅政権のころ反日をしていた人達は,戦争が始まるとスパイ扱いされて一気にパージされるかもしれません。慰安婦,徴用工関係も一蓮托生。

  • サムライアベンジャー(「匿名」というHNを使うことは在日の通名を使うのと同じ行為) says:

     朝日新聞、何をやってもだめですね。

     500歩譲って仮に強制徴用工とやらがいたとしても、「日韓基本条約で解決済み。併合時代のすべての問題は韓国政府が解決することになる」と言い切ることがなぜできないのか不思議です。

     朝日新聞をパラパラめくると「韓国」「在日」の記事が多いです。どういう人達が作ってるのかよく分かる新聞社ですね。

  • 明日開催の討論会に自称被害者どもが
    欠席するそうです
    めでたしめでたし

    徴用問題巡る討論会 被害者側が「常識外れ」と不参加表明=韓国
    ttps://jp.yna.co.kr/view/AJP20230111002400882

    日本による植民地時代の徴用問題を巡り、被害者を支援する市民団体と
    被害者側の代理人は11日、政府主導で12日に開かれる公開討論会に
    参加しない意向を表明した。当初は同問題を巡る政府の認識を積極的に
    指摘するとして参加する方針を示していた。
    市民団体「日帝強制動員市民の集まり」と元朝鮮女子勤労挺身隊の
    訴訟代理人側はこの日、「外交部が部外秘であることを理由に討論会を
    翌日に控えた現在まで発題文(発表資料)すら提供していない」と
    参加しない理由を説明した。当初の予定と異なり、外交部と与党の
    特定国会議員の共催に変更されたことも「常識外れ」と指摘した。

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