自称元徴用工問題を巡って、韓国側が日本側の意思と関係なしに、「財団方式」での問題解決を図る可能性が浮上したのかもしれません。韓国メディアの報道によれば、韓国外交部関係者は「われわれが解決策を発表すれば日本側からも誠意ある呼応措置があると思う」などと述べたのだそうです。こうしたなか、年末に思い出すのが、韓国側に勝手に破棄された「慰安婦合意」です。約束破りの前科を踏まえると、韓国との約束に意味はありません。
目次
昨日の続報:「財団方式」
そろそろ年末です。
昨日の『半永久的に続く?日韓局長級協議で「率直な意見交換」』では、この年の瀬に、韓国側から外交部(日本の外務省に相当)の局長がやってきて、外務省で日韓「協議」を行った、などとする話題を取り上げました。
年の瀬に、韓国外交部の局長が日本にやってきて「協議」をしたのだそうです。そもそも諸懸案は韓国が一方的に発生させたものですので、それを「日韓が協議する」というのもおかしな発想ですが、それ以上に「率直な意見交換を行った」といった両国の発表を読む限りは、進展はまったくなかったようです。なにせもう何年も「率直な意見交換」を続けているのですから、このままあと10000年くらい率直に意見交換を続けているだけで良いのかもしれません。岸田「首相」と岸田「政権」は分けて考えよう昨日の『「岸田首相が辞めればバラ色の未... 半永久的に続く?日韓局長級協議で「率直な意見交換」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
これについて、日本の時事通信に加え、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)に、ちょっとした「続報」がありました。
「韓国企業が賠償金負担」 尹政権、元徴用工訴訟で方針提示
―――2022年12月26日19時32分付 時事通信より
韓日局長が東京で協議 徴用問題巡り日本の呼応措置を集中議論
―――2022.12.26 17:35付 聯合ニュース日本語版より
このうち時事通信の方の記事は非常に短く、韓国で自称元徴用工の弁護士が26日、ソウルで記者会見し、韓国外交部が原告側に、「韓国企業の出資で運営される財団が日本企業に代わって賠償金を負担する方針」だと提示した、などとしています。
韓国メディアなどで繰り返し報じられてきた、いわゆる「併存的債務引受」のことでしょうか。
その一方で聯合ニュースの方の記事では、昨日の日韓局長協議について、この「併存的債務引受」を巡っては、韓国側はあわせて「日本側の誠意ある呼応が必要」との立場を取っているものの、日本側は「1965年の日韓請求権協定で解決済み」との立場を崩していない、などとしています。
慰安婦合意で読み解く徴用工
慰安婦合意から早くも7年
この記事の続きを読む前に、「年末ならでは」の話題として、今から7年前、2015年12月28日の、いわゆる「日韓慰安婦合意」について考えておきたいと思います。
著者自身は例年、この時期になると、この慰安婦合意を思い出します。
これは自称元慰安婦問題を巡り、岸田文雄外相(当時)が安倍晋三総理大臣の意を受けて韓国に出掛け、尹炳世(いん・へいせい)外交部長官(当時)とのあいだで、日本政府が10億円を支払うなどの措置を講じることを条件に、最終的かつ不可逆的な解決で合意したものです。
【参考】いわゆる「日韓慰安婦合意」(2015年12月28日)のポイント
- ①慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感し、安倍晋三総理大臣は日本国を代表して心からおわびと反省の気持ちを表明する。
- ②韓国政府は元慰安婦の支援を目的とした財団を設立し、日本政府はその財団に対し、政府予算から10億円を一括で拠出する。
- ③韓国政府は在韓国日本大使館前に慰安婦像が設置されている問題を巡って、適切に解決されるように努力する。
- ④上記②の措置が実施されるとの前提で、日韓両国政府は、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されたことを確認し、あわせて本問題について、国連等国際社会において互いに非難・批判することを控える。
(【出所】外務省HP『日韓外相会談』より著者作成)
この合意、著者自身も昨日のことのように鮮烈に覚えています。
というのも、内容もさることながら、肝心の合意の文書自体も作成されず(一部メディアの報道によれば、これは「韓国側に配慮」したものだったそうです)、当日の岸田外相・尹炳世外交部長の会見も質問を受け付けないなど、私たち日本国民に対する配慮も欠いた、極めて不誠実なものに見えたのです。
そもそも自称元慰安婦問題自体、事実上の捏造であり、こうした捏造に対し安倍政権ですら正面から否定しようとせず、あろうことか韓国側に国民の血税を支払うという選択を取ろうとしていることに対し、心から失望を覚えた、というのが偽らざる感想です。
慰安婦合意の背景として考えられる「3つの理由」
ただ、当時の著者は、まだ本格的なウェブ評論を始めていませんでしたが、努めて冷静になろうと考え、当時運営していた個人ブログで、「敢えて政権の視点に立つならば」として、この合意に何らかの理由があったとすれば、考えられるものは次の3つだとする仮説を提示したことがあります。
- 日本政府内に親韓派などの裏切り者がいた
- 安倍総理が何らかの「深い思慮」に基づき行った
- 米国などからの強い圧力があった
手間味噌で恐縮ですが、2015年12月28日の当日に提示したこの3つの仮説、結論的にいえば、そう遠いものではなかったのではないでしょうか。より正確にいえば、この3つのうちに断定的なものはなく、このすべてが重なり合った結果が上記慰安婦合意だったのではないかと思われるからです。
まず最初の仮説です。
「日本政府内の裏切り者」という表現は多少過激ですが、これについては「日本政府の職員(役人)でありながら、日本国の国益に背く動きをする者たち」が存在することについては紛れもない事実と断言して良いでしょう(「日本経済より増税の方が大切だ」という財務省の関係者らなど、その典型例でしょう)。
ただ、慰安婦合意自体、「親韓派」が「日本の国益を顧みずに、日本を韓国に売り渡すような合意をしたものだ」とはあながち断言し切れません。合意のなかに「最終的かつ不可逆」という文言が入っていることもさることながら、実際、この慰安婦合意自体は「10億円」を一種の「手切れ金」として手渡すという側面があるからです。
もちろん、一部の政府関係者のなかには、「日本の国益よりも日韓関係をなあなあにし、(表面上は)うまく行っているように見せかけること」で利益を得る者がいることは間違いないのですが、そのような者たちが「暗躍」
したのであれば、「最終的かつ不可逆」という文言自体は入っていない可能性が高いです。
米国に恩を売った慰安婦合意
次に、順番は前後しますが、3番目の仮説です。
「米国からの強い圧力」があったことに関しては、これはおそらく事実です。というのも、当時のバラク・オバマ政権下でジョー・バイデン副大統領が安倍総理と朴槿恵(ぼく・きんけい)韓国大統領(当時)に対し、日韓関係を「改善」するよう、強い圧力をかけていた(らしい)とする報道が、後になっていくつも出ているからです。
当時、米国は「日米韓3ヵ国連携」の考え方に従い、北朝鮮の核・ミサイル開発問題に対処するうえで、たとえば朝鮮半島への高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の配備などを求めていましたし、日米韓を円滑に機能させるうえで、韓国が日韓GSOMIAに署名することを求めていました。
しかし、その韓国は、「日本との歴史問題」を理由に、こうした「日米韓3ヵ国連携」の円滑化を拒んでいました(韓国観察者の鈴置高史氏に言わせれば、韓国のホンネは「恐中症」によるものですが、「中国が怖い」というホンネが言えないがために、「日本との歴史問題」を言い訳に出してきていたに過ぎないのですが…)。
だからこそ、バイデン氏は「日米韓3ヵ国連携」のために、韓国に対してのみならず、日本に対しても、やはり「韓国と和解せよ」と要求していたのでしょう。
安倍総理だからこそ実現できた合意
ただ、著者自身はやはり、この慰安婦合意は安倍晋三総理という人物だからこそできたものだったする思いを、最近になってますます強めています。
安倍総理自身が鬼籍に入ってしまった現在、慰安婦合意の真相について安倍総理自身の口から語られることはありませんが、状況証拠から敢えて著者自身が想像するならば、「韓国は絶対に合意を破るに違いない」という点を見越したうえで、この合意に至ったのではないかと思うのです。
そして、あくまでも「結果論」ではありますが、この慰安婦合意自体、日本に数多くのメリットをもたらしました。
その最たるものは、「米国に対して」、恩を売ったというものです。
というのも、慰安婦合意から約半年後の2016年7月8日には、当時の朴槿恵政権が在韓米軍へのTHAADの配備に正式合意していますし、さらに同年11月23日には、長年の懸案だった日韓GSOMIAの署名が実現しているからです。
その意味で、「慰安婦合意」もじつは「THAAD」「GSOMIA」と合わせた「3点セット」のひとつであり、副大統領だったバイデン氏らが渇望した「日米韓3ヵ国協力体制」を、いったんは実現させるうえでこの慰安婦合意が大変に役立ったのです。
これによって、米国政府は日本政府に対し、「日韓歴史問題」でこれ以上の圧力をかけることがなくなりました。
FOIPは日米韓連携を「過去のもの」に葬り去る
ただ、安倍総理の凄いところは、それだけではありません。やはり地球儀を俯瞰する能力にあったのです。
じつは、この慰安婦合意から8ヵ月後、安倍総理は訪問先のケニア・ナイロビで、歴史的な演説を行いました。
TICAD VI開会に当たって・安倍晋三日本国総理大臣基調演説
―――2016/08/27付 外務省HPより
この演説のなかで安倍総理は、こう述べたのです。
「世界に安定、繁栄を与えるのは、自由で開かれた2つの大洋、2つの大陸の結合が生む、偉大な躍動にほかなりません」。
これが「自由で開かれたインド太平洋」、あるいは “a Free and Open Indo-Pacific” 、そしてこれを略した「FOIP」の直接の語源でしょう。
そして、このFOIPの考え方は、2017年1月に大統領に就任したドナルド・J・トランプ氏にも深く受け入れられ、その後、FOIPは日本だけでなく、米国と共通の戦略になりました。「一帯一路」を掲げて台頭する中国など全体主義国家群に対する、強いカウンターとして機能することになったのです。
さらに、FOIPは日米に加えて豪州、カナダ、英国、フランスといった「自由・民主主義国」にも広まっただけでなく、中国と米国の間で長年「どっちつかず」の態度を取って来たインドを、「日米側」に近づけることにも成功したのです。
これが「日米豪印4ヵ国」(クアッド)連携です。
そして、この「FOIP」や「クアッド」は、安倍総理が辞任したのちに菅義偉総理が強力に推進し、トランプ政権が終了して発足したバイデン政権にもそのまま引き継がれ、結果的にバイデン政権自身も独自の「インド太平洋戦略」を発表するに至りました。
いわば、日本の安全保障の基軸が、「日米韓3ヵ国連携」ではなく、「日米豪」、「日米英」、あるいは「日米豪印クアッド」などに移行していくきっかけできたのです。もっといえば、FOIPこそが日米韓連携を「過去のもの」として葬り去るものなのです。
この7年における大きな変化
2015年当時と比べ明らかに低下した「日米韓」
すなわち、「FOIP」と並べることで、この「慰安婦合意」の本当の意味が見えて来ます。
慰安婦合意は米国と韓国双方に対し、日本として「日米韓3ヵ国連携」が本当にうまく行くのかどうかを突き付ける「試験」だった、という意味を持っているのであり、その試験に韓国は見事に落第したのです。
そして、米国も「日米韓3ヵ国連携」だけでは中国や北朝鮮、ロシアに対処することは難しいということを悟り、日本が提唱した「FOIP」の概念に乗っかり、日米同盟を「日米韓」だけでなく、「日米豪」「日米英」「日米豪印」などに重層化していくことにしたのです。
もちろん、現時点において「日米韓3ヵ国連携」の枠組みが消滅したわけではありませんが、日米両国から見た「日米韓」の重要性は、2015年当時と比べ、明らかに低下しています。
かわってバイデン大統領・菅総理らのイニシアティブにより、日米豪印4ヵ国クアッド首脳会合が定例化されましたし、日本は日本で米国との同盟関係を基軸に据えつつ、豪州、英国などとの安全保障面での連携を強化しています。
この流れが続けば、日韓・日米韓協力は、いずれ過去のものになるでしょう。
それも、結局は安倍総理が2015年に課した、「韓国という国家は慰安婦合意を誠実に守り、履行することができるか」という「試練」のおかげのようなものなのです。
米国は(少なくとも表向きは)日本への「圧力」を加えていない
実際、この7年間で「日韓」「日米韓」に生じた極めて重要な変化があるとしたら、「米国の圧力」が、ほぼ消滅してしまったことでしょう。
たとえば、バイデン大統領は今年5月に日本、次いで韓国を訪れ、岸田首相や尹錫悦(いん・しゃくえつ)大統領と相次いで首脳会談を持ちました。
これに先立ち、「米国が日韓双方に対し、関係改善を求めるのではないか」といった見方を提示した人が複数存在したようですが(たとえば『東洋経済ONLINE』に掲載された次の記事がその典型例でしょう)、現実にはバイデン氏は岸田首相に対し、表向き、「歴史問題」での「譲歩」を要求しませんでした。
アメリカが「日韓関係改善」を強く迫れない背景/バイデン大統領のアジア訪問で進展はあるか
―――2022/05/20 5:30付 東洋経済ONLINEより
いや、密室の会合ではもしかするとそれっぽく要求したのかもしれませんが、少なくとも5月23日の日米共同声明では、韓国について触れられているのは次の一文のみです。
「岸田総理及びバイデン大統領は、韓国の新政権発足を歓迎し、安全保障関係を含む、日本、米国及び韓国の間の緊密な関係及び協力の決定的な重要性を強調した」(同P3)。
「日米韓の緊密な関係および協力の重要性」などの表現は、韓国が文在寅(ぶん・ざいいん)政権時代だったころも含めてしばしば登場していたものとほとんど同じであり、このことから、「尹錫悦政権が発足したから日本は韓国に譲歩しろ」というニュアンスを読み取ることはできません。
むしろ同共同声明の2ページ目にあるとおり、日米首脳が力点を置いたのは「FOIP」や「AOIP」、「クアッド」や「AUKUS」といった「日米を基軸とする多国間連携」であり、そこに韓国が登場する必然性はありません。
安倍総理が今日のこの姿を予見して、2015年の時点で「慰安婦合意」を仕掛けたのかどうかについてはわかりませんが、著者自身はその可能性が極めて高いと見ています。
自称元徴用工問題を巡って日本は韓国に「譲歩できない」
こうした文脈で、日韓諸懸案を読み解くと、やはりまったく違った姿が見えてくるのではないでしょうか。
現時点における日韓諸懸案の「一丁目一番地」は、自称元徴用工問題でしょう。
この問題は①韓国がありもしない内容を捏造し、②日本に対し法的な根拠がない内容(この場合は日本企業の謝罪と賠償)を不法に要求している、ということに尽きるのですが、その意味では自称元慰安婦問題と構造はソックリです。
自称元慰安婦問題の場合は「戦時中、日本軍が20万人の少女を誘拐し、戦場に連行して性的奴隷にした」などとする与太話ですが、この「日本軍が」を「日本企業が」に、「戦場で性的奴隷として使役した」の部分を「工場などで強制労働させた」などと置き換えれば、ほぼ同じ構造です。
違いがあるとしたら「強制的に徴発した」とされる主体が「日本軍」なのか、「日本企業」なのか、という部分と、人数が未確定である、といったあたりです。
しかし、自称元慰安婦問題との違いがいくつかあるとしたら、その最たるものは、これが日韓諸懸案として浮上したのが2018年のことだった、という点です。
2018年といえば、すでに自称元慰安婦問題を巡る慰安婦合意が取り交わされ、しかもその合意を文在寅政権が事実上、反故にしようとしていたタイミングでもあります。
さらに、『【総論】崩壊始まる官僚・メディア・野党「腐敗利権」』などを含め、当ウェブサイトで繰り返し指摘している「社会のインターネット化」の影響により、とくに官僚、オールドメディア、特定野党の社会的影響力が急速に弱まりつつあるタイミングでもありました。
社会のネット化が進展して、一番困る人たちは新聞・テレビを中心とするオールドメディア産業関係者であることは間違いありませんが、それだけではありません。官僚・役人や野党議員なども、かなりの割を食うことが予想されます。いったいどういうロジックでしょうか。ここで考えておきたいのが「腐敗トライアングル」という重要な論点です。腐敗トライアングル昨日の『騙せなくなる日本:「自称徴用工」年内妥結は困難に?』では、自称元徴用工問題に見せかけて、当ウェブサイトなりのちょっとした「問題意識」を展開しました。それが... 【総論】崩壊始まる官僚・メディア・野党「腐敗利権」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
社会のインターネット化が進んだなかで、自称元徴用工問題は少なくない日本国民の関心を集め、「山手線の駅名を冠した怪しげな某自称会計士」のウェブサイトを含め、複数のサイトが繰り返しこれについて議論してきたこともあり、かつてのような「日本が折れる」式の「解決」は事実上、不可能になってしまっています。
また、上述の通り、米国も「FOIP」の概念の成立に加え、慰安婦合意の失敗という苦い経験を経たためか、日本に対して無理な譲歩を要求し辛いという状況にあります。
じつは、自称元徴用工問題がいつまで経っても「解決」できない理由は、こうした日米の決定的な変化にあるのではないでしょうか。
韓国外交部関係者の「ずいぶんと踏み込んだ見解」
こうした点を踏まえ、冒頭に示した自称元徴用工問題を巡る韓国政府内の「解決策」とやらを眺めてみましょう。
聯合ニュースによると、日本企業の謝罪や賠償といった「誠意ある呼応」を巡り、韓国外交部の当局者は協議後、記者団に対し次のように述べたそうです。
「(日本企業の)謝罪と(財源への)寄与という誠意ある呼応措置について(日本側と)集中的に議論した。日本企業の寄与と謝罪に同じ重みを置き、日本側の誠意ある呼応を引き出すため交渉している」。
そもそも論として、捏造した問題に対して謝罪を要求している時点で非常識というほかありませんし、「誠意ある対応」を取らなければならないのは、日本ではなく韓国の側です。
ただ、この点は脇に置くとしても、今回の聯合ニュースの記事では、気になる記載が2箇所あります。ひとつめはこれです。
「だが、日本側は被告企業の財源への参加を巡り、韓国の裁判所による賠償判決は国際法違反という立場と食い違うため、強い拒否感を示しているようだ」。
韓国メディアの記事には「希望的観測がやたらと多い」(※著者私見)という特徴がありますが、その韓国メディアで、「日本側が強い拒否感を示している」と報じるのは異例に見えます。
また、ふたつめは、冒頭の時事通信の記事でも取り上げれていた、「韓国企業の寄付だけで財源を確保し、自称被害者に賠償金代わりに弁済する案」に関する記述です。聯合ニュースによると、この「韓国側の財源で賠償する」とする案を巡り、この外交部当局者は「決まっていない」と反論したうえで、次のように述べたそうです。
「われわれが解決策を発表すれば日本側からも誠意ある呼応措置があると思う。(韓国と日本が)同時に合意文として発表するものではなく、われわれが解決策を発表した後、日本が誠意ある措置を発表する形になるのではないかと思う」。
これはまたずいぶんと踏み込んだものです。これを、どう考えるべきでしょうか。
日本政府「好きにすれば?」
敢えて著者自身の主観で申し上げるならば、韓国側が日本政府の了解なく、「見切り発車」的に「併存的債務引受」方式による「解決策」を発表し、日本政府がこれに対し「好きにすれば?」という立場を取る、という可能性が出てきた、ということです。
当ウェブサイトでもこれまでに提示してきたとおり、自称元徴用工問題は「韓国の国内問題」に過ぎません。したがって、この「韓国の国内問題」に対し、日本企業に不当な損害が生じない限り、韓国政府が日本政府の了解なく、勝手に「解決策」を出しても構わないことになります。
極端な話、日本政府は「我関知せず」の立場を取り、日本企業が「自発的に」謝罪や賠償に応じるかどうかは日本企業の意思に委ねる、といった「解決策」も、理論的にはあり得ます(※もっとも、日本企業がそんな行動を取れば、株主代表訴訟に直面するであろうことは容易に想像がつきますが…)。
もっといえば、韓国が出してくる「併存的債務引受」なる案を巡っても、日本企業に対し「安易な謝罪や賠償に応じるな」くらいの牽制をするに留め、日本企業に不当な不利益が生じない限りは日本政府がこの問題を「放置」する、という選択を取る可能性も出てきました。
つまり、日本としては、韓国側が勝手に期待しているであろう「誠意ある呼応」とやらをせず、この問題を事実上棚上げしてしまうという可能性です(日本政府がそこまで狡猾なのかどうかは置いておくとして)。
ただ、もしそうだとしても、自称元徴用工らが日本企業の「売るに売れない資産」を差し押さえているという問題を、韓国側が容易に解決できるとも思えません。
これに加えて2018年の一連の大法院判決が国際法違反であるという事実は変わりませんので、日本企業にとっての「サウス・コリア・リスク」が消えるわけではありませんし、政権が代わればこの問題が再び浮上する可能性が極めて高いという状況は続きます。
したがって、日本企業にとっても、自称元徴用工問題自体、「併存的債務引受」なる方式でいったんは「臭いものに蓋」式の解決としつつ、尹錫悦政権が終わるまでの4年少々の時間を稼ぐことができます。その期間を「韓国ビジネスの清算」に充てるというのは、考え方としては賢明でしょう。
というよりも、昨日も指摘したとおり、自称元徴用工問題が「解決」しようがしまいが、日米韓3ヵ国連携にはあまり重要な影響を与えていません。「日米韓連携を円滑化させる」ことだけを目的に問題解決を図ること自体、無意味なのです。
そして、少なくとも日本にとって、「約束を守らない国」よりも「約束を守る国」の方が重要ですし、実際、日本社会は慰安婦合意後の7年で、大きく変わりました。今後数年から十数年というタームで見るならば、日本社会の「韓国離れ」は、意外と速くで進むのではないかと著者自身は予想しているのですが、いかがでしょうか。
View Comments (20)
>韓日局長が東京で協議 徴用問題巡り日本の呼応措置を集中議論
正味は、陳情外交ではなかったのだろうか?
・・・・・
約束の概念問題(ご都合主義)
謝罪の概念問題(清算ではなく”手付”)
日韓関係は、基本的価値観の相違の問題
恒久的な”引き潮スタンス”でどうぞ・・。
岸田政権に慰安婦合意のような妥協を取りまとめる能力はなく、それが幸いしているように思います。
韓国が身を削る思いで解決策を出して、それを日本がそっけない対応であしらう。被害者団体様が激怒してやり直し。それを何度でも繰り返せばいいのです。
日本はなんも呼応してやる必要はないのです。彼らのやっていることは条約違反。それを復元するのは当たり前のこと。感謝する話でもなんでもない。万が一現金化したって、日本も企業もなんら困らない。別にはした金だし制裁する名目にも出来る。
そういう状況の整理が今の日本政府に出来るかどうか。間違うと政権の支持を酷く落とすのは明白だから多分間違わないとは思いますが・・・
「誠意」
という単語の使われ方は、要するに
「金よこせ」
ですから、反社会的勢力と似てますね。
(笑)
>「韓国は絶対に合意を破るに違いない」という点を見越したうえで、この合意に至ったのではないかと思うのです。
日韓問題の半分は 日本の問題です
日本が韓国の言い分を聞きすぎる 最大の理由は
日本の有権者が左翼マスコミに流されすぎるからです
これが原因で 日本は韓国との外交戦争に負け続けてきました。
慰安婦合意は 大多数の有権者に 「韓国は裏切る」と
理解させるため行った安倍総理の外交戦争のパフォーマンスだとすれば
たった10億で素晴らしい戦果を挙げたと思います。
>支援財団が賠償金を肩代わりするために定款の変更を推進していることが明らかに
韓国政府はその特定の「日帝強制動員被害者支援財団」とやらと連携して国内で「解決」した形を作ろうとしているのかもしれませんね。政治決着を意図しているのかもしれませんが、すべての被害者が納得する形には程遠いので(というか無理だけど)、政権が変われば吹き出すリスクは相変わらずなんでしょう。
日本政府が敢えてケチを付けないとすると、何が起こるんでしょうね。韓国側は「日本の共感が得られた」→「同意した」と吹聴するのは思いつきますが。
韓国の大統領が代わってから、日本政府内で「保守政権に変われば韓国は変わる」説が支持を得ている可能性を感じます。それによってどこまで譲歩していいと考えているのか、ラインがよく見えないのが不安を掻き立てます。
自民党外交部会が昨年12月に立ち上げた韓国制裁検討WTってどうなっているんでしょうねぇ?
あれだけヒゲ議員がドヤ顔で発表しておきながら、最近はスルーしています。そもそもこの夏には中間報告すると言っていました。こんな程度の外交部会ヤルヤル詐欺士を外相や防衛大臣に期待する有権者の考えがわかりません。もし、外相になっても岸田に一喝されて終わりでしょう。耳障りの良いことばかり言っている議員は要注意だと思います。
対韓制裁の自民党WTは佐藤隊長自身が大きく宣伝していたことなので、その顛末に全く触れないのはいかがなものかとは思います。
>もし、外相になっても岸田に一喝されて終わりでしょう
もし首相・総裁の考えが対韓制裁に積極的であれば力を発揮する可能性もある、と言う見方もできるかと思います。
もし、対韓制裁が首相・総裁の意向に反し、自民党内で少数意見or反対多数ならば、成果は出にくいかも知れません。
佐藤隊長は参院比例議員で、内政のしがらみ抜きに外交安保の主張ができる希少な立場です。おそらく自民党内では対韓姿勢では最右翼だと思います。
佐藤隊長を批判することは叱咤激励であろうとは思いますが、救いのない批判が増えれば自民党内の対韓強硬な意見の減退につながるとも思いますが、いかがでしょうか?
これと関係あるかどうかはわかりませんが、
https://shinjukuacc.com/20220617-04/
護る会の申し入れに対して、岸田首相の(意外な)対韓強硬的発言があったそうですが、これが一切報じられなかったことなど、この辺には妙な力がはたらいている気がしてなりません。
このことはいつまでも頭の片隅から消えません。
韓国側としても、いつまで経っても「様々な案を検討中」だの「日本と話し合いを進めている」
だのだけでは自国民を誤魔化し続けるのは限界がありますからね。
いつかはどこかで”危ない橋”を渡らないといけないのでしょう。
日本側としては韓国政府と韓国人が殴り合うのを白けた目で高見の見物をしているのが一番。
でもそれだと「甘い汁が吸えなくなる」「韓国側に弱みを握られている」人達が
困るから、邪魔が入ってきそうなのが今後の問題ですね。
財団方式で韓国側全額負担。
まあこれでやって来るんでしょうね。これしかやりようがないだろうし。
あくまで肝は「ウリはこれだけ汗をかいたニダ。あとは・・・」で
日本側の「誠意ある対応」。
「損して得とれ」。それがホントの狙いでしょう。
無論、「戦犯企業」の謝罪なんぞ、得られるわけもないのは百も承知。
別に表立ってバーターだとする必要はない。結果的に
半導体関連「輸出規制」の撤廃、Aランク国待遇の復活さえなれば、それで大勝利。
「日韓関係の未来を考慮して」なんて台詞が、日本側から出てくるのを待っている。
「慰安婦」「徴用工」が、最早手札として使えなくなっても、まだまだあります。
済州あたりで言い出してる、「汚染水」による水産、観光業の予想被害が○兆ウォンとやら。
こんなもん、どうやったって掠め取れる道理がないのは、十分分かってる。
多少値引きされるのは仕方ないとしても、「本能寺」はあくまで日韓漁業協定の再締結。
しつこく絡めば、途は開ける。
「濱の真砂は尽きるとも、強請集りのタネは尽きまじ」ってとこでしょう。
日本大使館・領事館前前の邪神像、差し押さえスリーダイヤのロゴ、盗難観世音座像。
エンガチョ三点セット、これを有効に活かしたいですね。
これある限り、日本への厚かましいおねだりなんぞ即行で却下できる。
そこのところ勘案すれば、「正義連」だの「徴用工支援団体」だの、「浮石寺」だの、
不快な連中ではあっても、元気に騒ぎ回ってくれてる限り、案外役に立つ。
ショボくならないように陰でお小遣い握らせて、なんて手もアリかなという気が(笑)。
悪い意味で予想通りでワロエナイ。
韓国「(請求権協定に基づかない無期限の)協議に応じて欲しい」
外務省「まあ、譲歩して協議くらいしてやるか」
韓国「協議に応じたな。お前は乙だ格下だ! 協議に応じんだから誠意を見せろ!」「俺はこんなに頑張っているのにお前は何もしていないじゃないか。今度はお前の番だ、誠意を見せろ!」
こうなるのは分かりきっていたことだ。
ルール・ベースの秩序を自ら崩す外務省の自業自得ではあるが国民が大迷惑。
輸出管理も私企業の出資も外務省の権限じゃないが、一度ルールを外したら韓国がそんな言い訳聞く訳がない。
逆に外務省も(今回は蹴ったが)一貫した立場に基づいて蹴り続ける胆力があるかどうか(そもそも「一貫」を崩して始めた協議だし)。
放置は放置でも
韓国「債権を原告から財団に付け替えてやったぞ感謝しろ!(ドヤァ」
外務省「それでは一旦『放置』ということで、とりま日韓協力の話しでも」
こんな『放置』はイヤだなあ。
2015年の慰安婦合意について、安倍総理は韓国が約束を守るならそれもよし、破られるのであれば蒸し返しが決定的なダメージになるよう考えたのだと思います。この交渉で日本側が最もこだわったのは「最終的かつ不可逆に解決」という文言を入れることでした。結果として、合意破りにより、日本政府は今後韓国に何を言われても約束を守れと言うだけで済むとともに、多くの日本人には韓国は約束を破る国という確固としたイメージと何十年も残るような決定的な不信感が定着したと思います。韓国の真の姿を日本人に認識させたわけです。
また、慰安婦についても「当時の軍の関与の下に,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」とあっさり表現することで、河野談話で細かく記述した色々と事実に反する「軍の関与」の内容を若干薄めることにも成功したと思います。もちろん、本当は河野談話の撤回がベストではありますが、慰安婦合意は安倍総理が様々なバランスを考慮して最善の一手として決断したものだと思います。