11月の入国外国人が93.4万人と、前月(49.9万人)からさらに増えました。ただ、冷静に入国者の構成割合を見ていくと、韓国人が全体の33.75%を占めています。およそ3人に1人は韓国人、というわけです。そもそも入国者が「特定国」に偏るという状況もさることながら、韓国人は「あまり日本にカネを落とさない」ことでも知られています。インバウンド需要の回復を手放しで喜んでも良いものでしょうか。
目次
今年11月の訪日外国人は20年5月と比べ562倍
日本政府観光局(JNTO)は2022年11月における訪日外国人の国籍別データの速報値を公表しました。2003年以降の詳細データは『月別・年別統計データ(訪日外国人・出国日本人)』のページでダウンロード可能です(※ただし直近2ヵ月分に関しては、一部の国・地域のデータが空欄のままです)。
これによると、入国した外国人の総数は934,500人で、コロナ禍発生前のピークだった2019年7月の2,991,189人と比べると3分の1以下ですが、公表されている2003年1月以降最低だった2020年5月の1,663人と比べれば、562倍にも膨らんだ計算です。
これを主要国別に、最も古いものからグラフ化したものが、図表1です。
図表1 訪日外国人データ(月次)
(【出所】JNTOデータをもとに著者作成)
ただし、図表1だと少し細かくなりすぎてわかり辛いので、これを2017年11月以降に限定してグラフ化したものが、次の図表2です。
図表2 訪日外国人データ(月次)
(【出所】JNTOデータをもとに著者作成)
どちらのグラフで見ても、2022年10月と11月に訪日外国人数が急増していることが確認できるでしょう。
ただし、「暦年」、つまり1年間で見ると、やはり入国者については2019年と比べて激減した状況にあります(図表3)。
図表3 訪日外国人データ(暦年)
(【出所】JNTOデータをもとに著者作成。なお、2022年の「246万人」とは11月までの累計)
2022年12月の数値がどのくらいになるかはわかりませんが、おそらく今年の着地は350万~400万人、といったところでしょうか。
韓国人が全体の3割を超える=11月
では、2022年10月と11月の訪日外国人総数を国籍別に展開すると、どうなるでしょうか。
10月の総数は498,600人で、コロナ前に全体の4分の1前後を占めていた中国は21,500人にとどまり、割合も4.3%に過ぎませんでした。これに対し韓国は122,900人で全体の24.6%を占めたほか、米国が53,200人で10.7%、香港が36,200人で7.3%、、台湾が35,000人で7.0%でした。
また、11月は総数934,500人のうち中国は21,000人で全体の2.2%にとどまる一方、韓国は315,400人で全体の33.8を占めたほか、台湾は99,500人で10.6%、米国は84,300人で9.0%、香港は83,000人で8.9%に達しています。
10月…498,600人
- 中国21,500人(4.3%)
- 韓国122,900人(24.6%)
- 台湾35,000人(7.0%)
- 米国53,200人(10.7%)
- 香港36,200人(7.3%)
11月…934,500人
- 中国21,000人(2.2%)
- 韓国315,400人(33.8%)
- 台湾99,500人(10.6%)
- 米国84,300人(9.0%)
- 香港83,000人(8.9%)
とくに11月に関しては、韓国人だけで全体の3分の1を超えた計算です。一方、これに対して中国からの入国者は依然として低調ですが、その理由はおそらく、中国政府がゼロコロナ政策の一環として、現在でも出国制限を設けていることにあるのでしょう。
そもそも「人数目標」は正しいのか?
ところで、2年半前の『【宣伝】正論2020年5月号に論考が掲載されました』でも触れましたが、著者自身は観光客の「人数」を政策上の目標値として設定することについては強く反対する立場です。
本稿は、ちょっとしたお知らせです。本日発売の『正論』に、「金融評論家 新宿会計士」名義の論考が掲載されています。当ウェブサイトでは今から約3年前の『日本政府は「訪日客4000万人目標」を撤回せよ!』で、日本政府が掲げる「2020年4000万人訪日客」目標を巡って、「数値目標が独り歩きするリスクがある」と主張しました。当時、わが国を訪れる外国人観光客数は「うなぎのぼり」であり、多くの人々が「2020年に4000万人という目標が達成されることは間違いない」と考えていたのではないでしょうか。そういうなかで、「4000万人... 【宣伝】正論2020年5月号に論考が掲載されました - 新宿会計士の政治経済評論 |
その理由は簡単で、「人数ありき」で観光目標を設定してしまうと、その「人数」という目標を達成するために、政策上好ましくない相手国からも大勢の観光客を招き入れてしまう、という弊害をもたらしかねないからです。
あくまでも一般論ですが、政策目標を設定する際に具体的な「数値」を掲げること自体は悪いことではありませんし、目標があった方が「達成度合い」がわかりやすくなるというのもまた事実でしょう。しかし、数字が独り歩きすることは、非常に危険でもあります。
繰り返しになりますが、外国人訪日客の急増について素直に歓迎して良いものかどうか、改めて整理しておきます。
そもそもの目的は「カネ+日本の宣伝」
著者自身の理解に基づけば、「観光立国」を推進する最大の目的は、堅苦しくいえば「旅行収支改善などを通じた国民経済の発展」、わかりやすくいえば「外国人観光客におカネを落としてもらうこと」にありますが、それだけではありません。
より多くの外国人に日本に来てもらい、日本を体感し、そして日本という国の「良き理解者」になってもらうことも、観光政策の重要な目的のひとつでしょう。
日本の場合、独自の伝統文化に加えて変化に富んだ国土に美しい四季と自然、最先端の技術の粋を集めた都市・インフラ設備、なにより治安の良さに加えて安くておいしい食事など、観光地としての魅力が詰まっています。
また、私たちの近隣には「反日」を国是とするような国がごく少数存在しているようですが、そのような国々からも多くの人々がやってきて、彼ら自身の目で直接日本の姿を見れば、もしかしたら自国の反日教育・反日政策の間違いに気付くこともあるかもしれません。
もっといえば、国民レベルで相互理解が進むことで、国同士のいさかい(あるいは最悪の場合には軍事的衝突)が発生するリスクを大きく下げることもできるかもしれません。その意味で、観光立国の推進は、さまざまな点で国益にかなっているという言い方をして良いでしょう。
このような理解に基づけば、インバウンド観光振興政策がうまくいっているかどうかについては、「さまざまな国からさまざまな人が旅行者として日本を訪れ、おカネを落としてくれたうえで日本のファンになってくれる」かどうかで判断すべき筋合いのものです。
コロナ前の「入国者4000万人」といった「数値目標」が、この「日本におカネを落としてくれたうえで日本のファンになってくれる」可能性のある国からの入国者を増やすという、政策本来の趣旨に沿っているかどうかは、まったく別の問題でしょう。
韓国人入国者と日本の観光政策
その典型例が、韓国です。
図表4は、日本を訪れた外国人の総数に、訪日韓国人の人数を重ねたものです。
図表4 訪日外国人・訪日韓国人(月次データ)
(【出所】JNTOデータより著者作成)
※グラフの左右で縦軸の単位が異なりますのでご注意ください。
これによると、訪日韓国人は、訪日外国人総数の減少に先立って、2019年8月ごろから減少し始めていたことがわかります。訪日外国人の激減の理由はコロナ禍の発生にありますが、訪日韓国人の激減の理由は、2019年7月に日本政府が講じた対韓輸出管理適正化措置にあります。
韓国では日本政府の措置を「不当な輸出規制だ」、などと勝手に曲解したうえで、韓国国民の間で広範囲に「ノージャパン」運動が発生し、その結果、訪日客が激減したのです。
これなど、特定国に観光収入を依存することの脅威を私たちに見せつけています。
幸いにして韓国人の観光客が日本に落とすカネは、主要国のなかで最も少ないため(※これについては口述します)、韓国人の「ノージャパン」は日本経済に対し(九州の一部地域などを除き)ほとんど影響をもたらしませんでした。
(※どうでも良い話ですが、インバウンド観光需要を牽引しているのが韓国人だというのは不思議でなりません。ノージャパンはどこに行ったのでしょうか?)
しかし、コロナ禍以前のように、中国人観光客が全体の4分の1を占めるという状況が生じれば、国家安全保障上も非常に好ましくない事態に陥りかねません。日中関係を巡ってなにか問題が浮上したときに、中国が対日揺さぶりの一環として、日本旅行の制限措置などを講じる可能性は十分にあるからです。
というよりも、中国が「中国人観光客」を政治利用した実績は、実際に存在します。
たとえば米韓両国が2016年7月、当時の朴槿恵(ぼく・きんけい)政権のもとで、韓国への高高度ミサイル防衛システム(THAAD)配備を容認した際、その直後から中国政府が韓国に対しTHAAD配備撤回を要求し、次いで韓国に対する団体旅行の禁止措置を発動したのです。
こうした「禁韓令」が韓国の観光産業を直撃したという状況については、日本も笑っていられないでしょう。
経済効果は1人あたりの観光支出で測るべき
また、「その外国人が日本にどれだけカネを落としているか」という視点も重要です。
観光庁が刊行している2019年版の『訪日外国人の消費動向』の4ページ目にある『国籍・地域別の訪日外国人1人当たり旅行支出と旅行消費額』という図表によれば、クルーズ客を除く一般客の1人あたり旅行支出額は158,531円でしたが、このうち韓国は76,138円で最低です。
やはり日本から地理的に近いという事情もあるのでしょうが、それにしても最高の豪州(247,868円)と比較すると、1人あたりの観光支出は、じつに3分の1以下です。「経済効果」という点だけで見ると、韓国人観光客を3人招くより、豪州人観光客を1人招く方がパフォーマンスが良い、ということです。
いずれにせよ、インバウンド需要振興は、地域経済のためにも重要であるとともに、日本に対する世界各国の理解を深めてもらうためにも非常に有益な政策であることは間違いありませんが、具体的な人数目標を掲げてしまうことには、大きな落とし穴があるのです。
くどいようですが、本来、訪日外国人数はあくまでも「めやす」であり、「絶対的な目標」であってはなりません。
やはりインバウンド観光は、地域振興とセットにした良質な観光資源の掘り起こしと開発、1人当たり旅行支出の拡大、特定国に偏らないインバウンド需要の掘り起こし、そしてなにより外国人旅行客を「お客様」としておもてなしし、満足度を高めることなどを政策目標に据えるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
View Comments (13)
主たる来訪目的の違いなのでしょうが、韓国を訪れて日本人が落とすカネの方がさらに少ないんですってね。
日本人:ビジー・・です。
韓国人:ビジー・・レス。
・・。
宿泊関連業界に勤めている者です。
御指摘の通り観光のあり方についてはどのようにしていくかは将来的には見直しも必要になってくるのではないかと思います。
しかし、現状に関して私が働いている業界はコロナ禍の影響をモロに受けてしまいました。
同業者も倒産するところも出てきています。そんな中では韓国人だろうが中国人だろうが日本に来て宿泊してくれるだけでありがたいと思います。
目先は個人支出どうこうではなくまずは数が回復しないと今まで提供できていたサービスができなくなり満足度の低下につながるのではないかとも思います。
まとまりのない文章になってしまったかもしれませんが観光業界は非常に厳しい状況に置かれているということが多少でも伝わればと思い発信させてもらいました。
この3年間、本当に大変だったと思います。耐震問題とダブルパンチで、体力の無い所は廃業に追い込まれたと思います。
しかしコロナ前のインバウンドは歪な所があったと思う。金額では無く、人数という数字を求め過ぎて、収益性が低かったと思います。リセットされた今、人数では無く、収益性を念頭にインバウンドに取り組むべきかと思います。
言うは易しで実際は難しいでしょうけど、客単価アップ目指して頑張って下さい。
中国人観光客数が韓国人観光客数を追い抜くには,まだ1年くらいかかるかもしれませんね。中国コロナのBF7は感染拡大が早いので,3ヶ月くらいで下火になる気もしますが,中国政府の政策転換がいつかによるでしょう。中国の景気悪化の問題もあります。
仏像は金庫に入れておこう。
>観光庁が刊行している2019年版の『訪日外国人の消費動向』の4ページ目にある『国籍・地域別の訪日外国人1人当たり旅行支出と旅行消費額』という図表によれば、クルーズ客を除く一般客の1人あたり旅行支出額は158,531円でしたが、このうち韓国は76,138円で最低です。
韓国の擁護をするつもりはないけど、訪日客1人当たりの滞在日数も考慮すべきで、短期滞在の韓国人は支出額が少なくなりがちなのは当たり前です。
上記の支出額だと韓国はベトナムやフィリピンよりも少額ですが、滞在日数を考慮して1日当たりの支出額として計算し直せば、トップクラスとは言わないまでも平均的な支出額になります。
嫌韓サイトの一コメントなら滞在日数を無視した1人当たりの支出額の比較で韓国をディスるのも仕方ないでしょうが、公認会計士を名乗る方ならもう少しまともな比較が必要でしょう。
>滞在日数を考慮して1日当たりの支出額として計算し直せば、トップクラスとは言わないまでも平均的な支出額になります。
???
本文ちゃんと読んだ?論点は「観光客人数を政策目標に設定することの妥当性」なんだけどなあ。
>公認会計士を名乗る方ならもう少しまともな比較が必要でしょう
あなたが何者か知らないけど、あなたの立論がまともじゃない時点で、なんだかなぁ。
私が学生の頃、地球の歩き方、という本が良く読まれていて、世界を貧乏旅行するのが、学生の武勇伝みたいに扱われていました。
しかし韓国人の貧乏旅行はそれとはちょっと違う気がする。知恵も工夫も無く、現地の我々(日本人)に迷惑をかけるだけの、ただの貧乏旅行。見ていて憐れになってくる。昔、韓国人の武装スリ集団とかいた。女性は遠征売春している。韓国人は悪さしかしない。これはヘイトでは無く事実。逆に7日以下の滞在はビザ必要したら良いかも。
支出とか単価とか関係なく、反日教育を受けている人たちがたくさん来る違和感。
なぜ日本に来るのだろうか。近くなら、ベトナムでもシンガポールでもタイでも行けばいいのに。
反日教育で洗脳され 実践的に反日行為で実害を与えるため 及びTAXFREEで安く購入して帰国後転売するための 一石二鳥を狙っての来日と思う。
日本に来て、「ああ、世界で大人気の日本文化は全て韓国が種をまいたもの!なんて誇らしい。だから日本人は我々に感謝しろ!」って喜ぶためらしい、、、とどこかで見た。
韓国人観光客については「本当に観光ですか?」
というところは今後厳密にする必要があると思います。
最低限、観光ビザは7日間に限定すべきでしょう。
日本にカネを落とすどころか、観光ビザで日本円を稼ぎに来てもらっちゃ困るのです。
インチキして経済活動を行い、日本円を稼いでおきながら、
将来、強制ナントカつって言いかねない、というか、たぶん言う。
コロナを奇貨として、あらかじめ法的にフタしとくべきです。
日本と基本的な価値観を共有するアメリカ・ヨーロッパからの観光客を呼び込む政策が必要だと考えます。中国・韓国と比較してアメリカ・ヨーロッパは日本との距離が離れているので飛行機代が高くなります。そこで、政府が旅行会社各社に補助金を出して、日本向けのツアーを安価にするというのはどうでしょうか?