途上国金融における中国の存在感高まる=世界銀行調査

世銀が6日公表したデータベースによれば、中国の中・低位所得国に対する貸付が増えています。2021年時点で4594億ドルで、このうち “Low & middle income” のカテゴリーが1800億ドル、 “Lower middle income” のカテゴリーが1239億ドルだったそうです。また、スリランカに対しても単独国として最大の債権国です。

世界銀行が6日、『国際債務レポート2022』と称した、興味深いレポートを公表しています。

International Debt Report 2022

The International Debt Report (IDR), formerly International Debt Statistics (IDS), is a longstanding annual publication of the World Bank featuring external debt statistics and analysis for the 121 low- and middle-income countries that report to the World Bank Debt Reporting System (DRS).<<…続きを読む>>

―――2022/12/06付 世界銀行HPより

このレポートは低・中所得国121ヵ国を対象にした対外債務をまとめたもので、レポート自体はPDFファイルでダウンロード可能であるほか、ありがたいことに、元データへのアクセスも可能です(ただし、データ自体は大変に重く、ダウンロードをしようとするとブラウザがクラッシュしてしまうこともあるため、取扱注意です)。

これについて、さっそく内容を確認してみたのですが、これは当ウェブサイトで以前から注目している国際決済銀行(BIS)の『国際与信統計』(CBS)とは異なり、著者自身が以前から知りたいと思っていた、「債権者としての中国」という情報が含まれています。

たとえば、中国は2021年において、低所得国・中所得国などに対し、少なくとも4594億ドルを貸し付けていることが判明するほか、個別国がどの国からいくらのカネを借りているかも判明します。

いま話題のスリランカの場合は、2021年において、全世界から565.92億ドルの資金を借りているのですが、その内訳は次の通りです(図表1)。

図表1 スリランカの債権者一覧(2021年)
債権者金額構成割合
世界566億ドル100.00%
その他債権者173億ドル30.52%
債券保有者132億ドル23.33%
中国72億ドル12.75%
アジア開発銀行56億ドル9.81%
世銀(IDA)32億ドル5.69%
日本31億ドル5.52%
IMF26億ドル4.58%
インド10億ドル1.77%

(【出所】世銀データベースより著者作成)

これで見ると、対外債務については、単一国としては中国が72億ドルで最大ですが、「その他債権者」、「債券保有者」など、おそらくは民間債権者からの債務の方が多く、スリランカの債務再編は難航が予想されそうです。

同じ基準でさまざまな国について眺めてみると、これもまた興味深いところです。たとえばトルコの場合だと、世界から4355億ドルを借りているという計算ですが、やはり「その他債権者」や「債券保有者」の割合が非常に大きいことがわかります(図表2)。

図表2 トルコの債権者一覧(2021年)
債権者金額構成割合
世界4355億ドル100.00%
その他債権者2509億ドル57.61%
債券保有者1285億ドル29.52%
世銀(IBRD)112億ドル2.57%
IMF77億ドル1.78%
EIB68億ドル1.56%
英国43億ドル0.99%
UAE38億ドル0.88%
日本33億ドル0.75%

(【出所】世銀データベースより著者作成)

ちなみに債権国として見たときに、中国の存在感が高まっていることは間違いありません。

たとえば中国は “Low & middle income” のカテゴリーだと1800億ドル、 “Lower middle income” のカテゴリーだと1239億ドルを貸し付けていて、いずれも単一国としてはトップです。

世銀のデータは年1回しか公表されないようですが、中国の債権国としての地位は徐々に上昇していることもどうやらまちがいなさそうです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 朝日新聞縮小団 より:

    独裁を維持するためにはあまり人民に力を持たせたくないが経済力は維持したい。
    なので国内ではゼロコロナなどで人民の経済成長を抑制し、代わりに途上国を債務の罠にはめ込むことで金を稼ぐ。
    こうやって支配下のものを生かさず殺さずじわじわと版図を広げて行き、国連での地位を高めていき最終的に世界を牛耳る。
    習近平によって中国は自滅するという論がありますが、逆に彼こそこの悪魔的な中華帝国の野望を実現させる力を持った人間であり、それを粛々と実行中なのではと心配しています。

  2. カズ より:

    >中国は2021年において、低所得国・中所得国などに対し、少なくとも4594億ドルを貸し付けていることが判明

    そして、他国と4514億ドル相当の通貨スワップを締結済ですよね。

    仮に【人民元の対外信用枠=米ドルへの換金能力(香港ドルに準ずる)】だとするのならば、残された対外与信枠は=保有米国債9700-(4594+4514)+α 

    →592億ドル+α ってことなのかな?

    おカネだけを見れば、有事を構えて米国債を凍結されちゃうと中国は・・。

    1. 伊江太 より:

      カズ様

      >おカネだけを見れば、有事を構えて米国債を凍結されちゃうと中国は・・。

      習近平指導部は、当然このリスクを勘案した上で、なお且つ、台湾武力侵攻を口にしていると見て間違いないでしょう。

      ドルを中心とする西側経済圏から切り離されたら、エネルギー、食糧の自給が出来ない中国が、独自の通貨圏を構築するのは無理とする見方が大勢のようですが、何しろアノ国のことですからねえ。中華至上主義的プロパガンダと国民総監視体制の強化で、国民の不満なんぞは押さえ込めると踏んでいるのかも知れません。

      ロシアを人民元経済圏に組み込んで、拡大版「竹のカーテン」構想くらいは考えているかも。

      1. より:

        ほぼ確実なのは、中国の為政者は自国民が100万人や200万人死んだところで、全く意に介さないであろうということです。実際、毛沢東は大躍進政策で1000万人単位の餓死者を出したと言われますが、完全に失脚したわけではなく、一時的にちょっと謹慎しただけです。さらに、中越戦争で数十万人死なせた鄧小平なんぞは傷一つ付きませんでした。

        およそ、西側的常識で中国を捉えようとすると、とんでもない錯覚を起こしそうなので、注意が必要ですね。

    2. はにわファクトリー より:

      エネルギーに関しては中露は以下のような関係を結んでいるそうです。
      NEC Business Leaders Square Wisdom
      2022年3月25日(侵攻後ひと月目の記事公開)
      『中国とロシアをつなぐ天然ガスパイプライン
       ウクライナ戦争で「漁夫の利」はあるのか』
      https://wisdom.nec.com/ja/series/tanaka/2022032501/index.html
      “ヨーロッパに送られていた天然ガスを中国が代わりに輸入し、「漁夫の利」を得るのではないかとの見方もある。現実のところはどうなのか。中国の天然ガス確保の構図はどのような状況になっているのか。今回はそのあたりの事情を考えてみたい。”

      エネルギー確保で買い負けている本邦にあっては目が離せない問題と思います。経産省のがんばりに期待します。

    3. カズ より:

      伊江太様 はにわファクトリー様

      >拡大版「竹のカーテン」構想

      例の、”赤クアッド経済圏構想”のことでしょうか?
      中・露・北・・と、どこかのことですね。きっと。

      よく考えれば、おカネが無くても、食料と資源さえあれば生きてけなくはないものなのかもですね。

      >経産省のがんばりに期待します。

      *対中ではないのですが、個人的には世耕大臣(当時)のある意味杓子定規(原則通り)な言動が、清々しかったです。

  3. 迷王星 より:

    スリランカは確か日本主導の債権者会議を行って欲しいと日本政府に要請していましたが,お人好しというか外国にイイ顔をしたいだけの岸田政権は日本よりも共産チャイナを選んで借金まみれになっただけの愚かな他国のために債権者会議の議長国=債権棒引き率最大国を引き受けるつもりなんですかねえ.

    本当に岸田さんには速やかに退いてもらわないと国民の一人として安心して眠れやしない.

  4. 宇宙戦士バルディオス より:

    >世銀のデータは年1回しか公表されないようですが、中国の債権国としての地位は徐々に上昇していることもどうやらまちがいなさそうです。

    『ナニワ金融道』や『ミナミの帝王』を読めば分かりますが、カネは貸すことは簡単ですが、切り取り(債権回収)は非常に難しい。中国が融資をするのは、回収が目的なのか、それとも債務国を借金でがんじがらめにして支配下に置く事なのかは分かりませんが、途上国に軍事援助をばら撒いて勢力圏に組み入れようとしたのは、旧ソ連がやった事です。結果は非常に虚しいものでした。
     中国が債務国世界一になるという事は、つまり世界中に不良債権の山を築いている事なのかも知れません。

    1. 宇宙戦士バルディオス より:

       訂正
      ✖ 中国が債務国世界一になるという事は
      〇 中国が債権国世界一になるという事は

  5. 世相マンボウ* より:

    う~ん
    これは由々しき事態ですなあ、

    かつて、
    アヘンを売って他国の権益を略奪した
    西欧帝国主義を いままさにそれを非難する
    中国が真似してやってるのです。(笑)
    今の現代においてそれを阻止することは
    世界の民主主義国家の正義であり努めです。

    こうした中国の
    時代遅れの帝国主義的な画策ですが
    無駄なインフラ整備で払えなかったら
    軍国主義一帯一路に拠点差し出せとの
    悪行をあと押しするための「AIIB」で
    日本に資金出させて焦げつかせ
    さらなる現代版アヘン売りつけ図る中国の画策を、
    日本のメディアがどぶサヨ占拠を利用して
    「バスに乗り遅れるな」(笑)とか言ってた
    田原の爺さんや 韓流政党民主党御大将の
    ならず者国家とは友愛結ぶ鳩ポッポさんたちは、
    その騙りでの言動の汚れた心根の悪しき影響を
    正しく糾弾される必要があると考えます。

  6. だいごろう より:

    ベニスの商人ならぬ北京の商人ですね。
    肉どころか骨までしゃぶられそう。

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