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    Categories: 外交

アルメニア首相がロシアのプーチン大統領を公然と批判

これは果たして何かの「フラグ」なのでしょうか。ロシアのドミトリー・ペスコフ報道官は「ウクライナでの特別軍事作戦の成功に疑いの余地はない」などと強弁したそうですが、その一方、旧ソ連加盟国6ヵ国で構成される「集団安全保障条約機構」(CSTO)の総会では、ロシアの対応に不満を抱くアルメニアの首相がウラジミル・プーチン大統領を公然と批判したのだとか。

ロシアのメディア『タス通信』(英語版)によると、ロシア・クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は水曜日、「ロシアによるウクライナでの特別軍事作戦の成功に疑いの余地はない」と述べたのだそうです。

‘No doubt about it,’ special military operation will end in success, says Kremlin

“We can agree with this with the reservation that the future and the success of the special operation are not in doubt,” Kremlin Spokesman Dmitry Peskov<<…続きを読む>>
―――2022/11/24 07:04付 タス通信英語版より

ペスコフ報道官の発言は、「集団安全保障条約機構」(CSTO)の総会が開かれたアルメニアの首都・エレバンでなされたものだそうです。

本日と言えば、くしくもロシアによるウクライナ侵攻の開始から、本日でちょうど9ヵ月が経過した計算です。ロシアが仕掛けた違法なウクライナ戦争を巡って、ロシア政府がいまだに「特別な軍事作戦」だと言い張っている点はご愛敬として、このような発言自体がなにか悪い冗談にしか見えないのは気のせいでしょうか。

それはともかくとして、記事に出てくる「CSTO」とは、 “Collective Security Treaty Organization” の略語で、旧ソ連構成諸国が集団安全保障を目的に結成したものです。外務省の『中央アジア・コーカサス等の地域機構・枠組』によると、現在の加盟国は6ヵ国です。

CSTO加盟国

ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン

中央アジア・コーカサス等の地域機構・枠組

(【出所】外務省HP)

ただ、これに関連し、同じくタス通信にもうひとつ、少し気になる記事も出ています。

Armenia to remain CSTO member despite all difficulties — Kremlin

Kremlin Spokesman Dmitry Peskov also recalled that the CSTO played a crucial role in resolving the Kazakhstan crisis this January<<…続きを読む>>

―――2022/11/24 06:29付 タス通信英語版より

タス通信によるとペスコフ氏はアルメニアが「すべてにおいて合意することはできない」としつつも、CSTOメンバーとしては「間違いなく残存するだろう」と述べた、というのです。

どうしてこんな話が出ているのか――。

ロシアのメディアの報道は断片的で、なんだかよくわからないのですが、これについてはロイターの次の記事を読むと、なんとなく事情が見えてきます。

Hosting Putin, Armenian leader complains of lack of help from Russian-led alliance

―――2022/11/24 04:44 AM GMT+9付 ロイターより

ロイターによると、アルメニアは現在、ロシアとCSTOの「無策」に対して強い不満を抱いているというのです。

アルメニアのニコル・パシヤン首相はCSTOサミットの冒頭で、「アゼルバイジャンによる侵略」に対してロシアが主導するCSTOが自国を助けに来てくれなかったとして、CSTOの効果に疑問を呈するとともにプーチン大統領を批判した、ということです。

ちなみにこのパシヤン首相が批判している理由は、今年9月にアゼルバイジャンとの間で再び軍事衝突が発生した際、ロシアやCSTOが支援してくれなかったなどの理由によるものです。

これについてロイターは「ロシアが9ヵ月に及ぶウクライナ戦争で苦戦を強いられている」なか、「旧ソ連の一部」で「長らく勢力圏とみなされてきたこれらの地域」での影響力をロシアが失うかもしれない、などと解説しています。

ちなみにアゼルバイジャンとアルメニアは2020年にも44日間の戦闘で6000人以上の犠牲者が出るなど、対立は長期化していますが、その原因が「ナゴルノ・カラバフ」にあります。

以前の『アゼルバイジャンとアルメニア、「本物の」歴史対立』でも取り上げましたが、ナゴルノ・カラバフはアゼルバイジャンの領域内にありながらもアルメニア系住民が多く、1990年代に両国が旧ソ連から独立する前後から、これらの地域での緊張が高まっていました。

本物の歴史問題に根差した民族対立とは、本当に深刻です。わが国の近所には、「日帝支配と戦った」と騙る国がいくつかありますが、本当に深刻であれば、相手に謝罪や賠償を求めるのではなく、ストレートに戦闘が発生するものなのかもしれません。何の話かといえば、ユーラシア大陸中央部のアゼルバイジャン、アルメニアの両国の対立です。2020/10/02 13:30追記文中、アゼルバイジャンについて、「東を黒海に面し」とあった誤植部分を、「東をカスピ海に面し」に訂正しております。ナゴルノカラバフ紛争再燃アゼルバイジャンとアルメニ...
アゼルバイジャンとアルメニア、「本物の」歴史対立 - 新宿会計士の政治経済評論

1990年代以降、ナゴルノ・カラバフはアルメニアの実効支配化に置かれてきましたが、2020年の戦争以降、アルメニアはこれらの地域の多くで実効支配を喪失するなどし、アルメニア側にはロシアに対して強い不満が渦巻いていたのだそうです。

ただ、ウクライナを相手に事実上の総力戦を余儀なくされつつある現在のロシアにとって、アルメニアの要求にこたえる余力は乏しいのが実情でしょう。

結局のところ、ロシアは少しずつ、国際社会において力を削がれていくという展開が続く可能性が濃厚ではないでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (9)

    • 欧州の韓国はオランダだと思います。

      植民地を失って貧乏になった恨みを日本に抱いて、謝罪と賠償を求める動きがまだまだ続いてると記憶してます。

  • コーカサス地方は火薬庫になりそうな趨勢ながら、別れた女房に押しかけDVをかけるロシアは逆上精神を発揮して、中央アジア地域に今紛争の種を仕込んでいるとの見方があります。

  • 「集団安全保障条約機構」(CSTO)にて、

    安保連携の定義って集団自営なんだから、アルメニアの不満は理解できなくもないのだけど、ロシア(侵略行為)に加担したベラルーシの行為は異常ですね。

  • コーカサス地方もカスピ海も十分におっかなくなりつつあるようです(イラン静かにしてろよ)
    アルメニアと聞けば米原万里女史の荒れ模様シリーズを想起します。
     「いやあ。私はアルメニアのコニャックが大好物でしてねぇ」
    顛末は誰が読んでも笑えます。

  • あの辺りは複雑すぎてよくわからない。
    少なくとも「隣国だから仲良く」なんて絶対にないね。

  • 記憶している限りでは、ロシアは特別軍事作戦の目的について公にしていません。従って、どのような状況になったら「成功」と呼べるのか、ロシアにしか確かなことは言えません。そして成功条件が分からない以上、どうなったら失敗と言えるのか、これもけして明確とは言えません。
    一応、侵攻開始前のラインにまでロシア軍が押し戻されたら、「失敗」である可能性が高いと思いますが、もしも特別軍事作戦の目的が「とにかくウクライナに大きな損害を与えること」だった場合、自軍の損耗を省みなければ、すでに作戦目的は達成されていると言えるのかもしれません。

    「何をバカなことを」と言われそうですが、1979年の中越戦争の事例を見てみてください。外野から見ると、中国が勝てなかった、あるいは敗けたと言えそうなのですが、中国国内では「勝利の上で終息した」ということになっています。実際、鄧小平氏は中越戦争後に軍権を完全に掌握し、軍の近代化に邁進するお墨付きを得ました。確かに、鄧小平氏は政治的に「勝利」したのです。あくまでも噂レベルに近い話ですが、鄧小平氏は水膨れし近代戦に堪えない部隊をわざわざ送り込み、「処理」することを目的としていたなんて説もありました。鄧小平氏はおよそ単純な思考の持ち主ではなかったので、彼ならばそれくらいのことをやりかねないということでもあるかもしれませんが。

    中越戦争の事例を持ち出したのは、非民主主義国家の軍事行動は必ずしも単純な動機によるとは限らない(かもしれない)という恰好の事例だからです。現時点では、プーチン氏にいくつもの誤算があった可能性が高いと思いますが、彼もまたそんなに単純な思考の持ち主であるようには見えません。特別軍事作戦がどのように終息するのかさっぱり見えてきませんが、勝った負けたという単純な話には留まらないのではないかと思います。

    • 確かにそうなのですが、現在はSNS等個人のインターネット発信が多く細かいところが隠し切れません。(半面、騙される人々も多数いますが・・)
      この辺がプーチンさんの誤算なんでしょうね(時代が進んでしまった)。 

      アルメニアのおっちゃんは、ナゴルノ・カラバフでロシア製「対ドローン兵器」がポンコツでアゼルバイジャン軍(トルコ製ドローン大活躍)にコテンパンにやられ、「金じゃない!謝罪と補償を!」現在やっているのでしょうね(笑)

      米国YNにアルメニア人街てのがあるのです。 K人街とかもNYやLAで有名ですが、日本人街は今でもあるのかね? リトルキョーキョーは今では日本人以外に置き換わっていると報道されていました(まっ、こんな所行きたくないでが)。

      • アメリカでリトルxxxのように、ある人種が集まって住むというのは、助け合わなければ生きていけない段階。
        日系人はバラバラでも生きていける段階に進歩していて、もうリトルトウキョーには日本人以外が住んでいるようです。