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    Categories: 金融

韓国副首相、会見で「通貨スワップ」の話題を打ち切る

韓国の経済副首相が現地時間12日、米ワシントンで開催された記者懇談会で米韓「通貨」スワップの可能性について尋ねられたところ、「サプライズ発表(通貨スワップ締結)はないはず。通貨スワップに関してはもうこれ以上話すことはない」などと述べて話を打ち切ったのだそうです。やはり、米国からは断られたのでしょうか?こうしたなか、韓国にとってはどんな選択肢が残されているのかについても気になるところです。

韓国が直面するジレンマ

韓国銀行が昨日、政策金利を0.5%ポイント引き上げたとする話題は、昨日の『【韓国のジレンマ】韓国銀行利上げも米韓金利差覆せず』で詳しく取り上げました。

このところの急速なウォン安にも関わらず、韓国銀行の利上げ幅は0.5%ポイントに留まりました。やはり国内の債務膨張問題もあり、韓国銀行としては抜本的な利上げに踏み切ることが難しかったのかもしれません。そして、今回の利上げにも関わらず、米韓金利差は開いたままの状態にあります。果たして今後、韓国は「危機のときに、出し惜しみをせず迅速に外貨を融通してくれる友人」を見つけることができるのでしょうか。国際収支のトリレンマには誰も逆らえない当ウェブサイトでは最近、「国際収支のトリレンマ」と呼ばれる経済学の命題...
【韓国のジレンマ】韓国銀行利上げも米韓金利差覆せず - 新宿会計士の政治経済評論

わかりやすくいえば、ことの本質は、現在の韓国が通貨危機と金融危機のジレンマに直面している、ということでしょう。通貨危機とは韓国が国全体として外貨を借りることが難しい状況に陥ることであり、金融危機とは貸倒が続出し、金融機関が資本不足に直面する状況に陥ることです。

政策金利を引き上げれば、自国通貨である韓国ウォンの為替相場を守ることはできるかもしれませんが、その分、多重債務者の破産・返済不能などが相次ぐ可能性があり、この場合は国内の金融システムが大混乱に陥るかもしれない、ということです。

一方で、政策金利を引き上げるのを猶予すれば、多重債務者を助けることはできるかもしれませんが、その分、通貨安は加速し、韓国の企業や銀行にとっては外貨資金の再調達ができなくなるというリスクに直面することになりかねません。

韓国副首相は通貨スワップの話題を打ち切る

だからこそ、韓国国内では「通貨スワップが必要だ」とする議論が広まっているようなのですが、これに関して興味深い報道がありました。韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載された、こんな記事です。

韓国経済副首相「韓米通貨スワップ締結の可能性はないはず…ビッグステップ同意」

―――2022.10.13 10:57付 中央日報日本語版より

韓国の秋慶鎬(しゅう・けいこう)経済副首相は現地時間12日、米ワシントンで開催された記者懇談会で、「米国との通貨スワップの可能性」を尋ねられ、これに次のように答えたのだそうです。

サプライズ発表(通貨スワップ締結)はないはず。通貨スワップに関してはもうこれ以上話すことはない」。

このあたり、当ウェブサイトではずいぶん以前から、米国にとって(通貨スワップではなく)為替スワップを締結するかどうかを管轄しているのは米国政府ではなく中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)だ、という点を指摘してきたつもりです。

やっぱり断られたのか?

ただ、韓国メディアからは、通貨スワップ待望論は根強く出てきており、たとえば9月の米ニューヨークでの国連総会で米韓首脳会談が開かれ、その場で通貨スワップについて議論される、といった報道もありました(『韓国高官「韓米首脳会談で通貨スワップが議論される」』等参照)。

韓国メディアの報道によると、韓国政府高官が米国との間で「韓米通貨スワップが議論される」と明らかにしたそうです。それが為替スワップを意味しているのだとしたら、バイデン大統領にとっては管轄外のことを相談されても困ってしまうのではないかという気もします。ただ、足元で韓国のドル資金市場はジワリと逼迫しつつあるようです。「韓国が米国と通貨スワップを議論」=ロイターロイターによると、韓国『聯合ニュース』は「政府高官の発言」として、来週の国連総会に合わせて米国を訪問する尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領...
韓国高官「韓米首脳会談で通貨スワップが議論される」 - 新宿会計士の政治経済評論

想像するに、韓国の当局者は今年5月の米韓首脳会談の前後から(場合によってはそれより以前から)、通貨(為替?)スワップの締結を米国に対して繰り返し要望していたものの、やはり断られたのではないでしょうか。

この点、2020年に米国が韓国を含めた9ヵ国の中央銀行・通貨当局と締結した為替スワップは、米国にとってはあくまでも「ドル資金の流動性供給」という意味合いがありました。昨今、米FRBが資金を市場から回収しようとしているなかで、同じ意味合いでの為替スワップを米国が再開する可能性が低いのは、当然です。

利上げ?金利据え置き?友人を見つける?

そうなると、結局は韓国にできることは、限られてきます。

真っ先に考えられるのは、完全な変動相場制を受け入れることです。

さいわい、現在のウォン安局面は「ウォンの独歩安」ではなく、本質は「ドル高」ですので、ある程度のウォン安を容認すると当局が宣言し、為替介入もやめてしまう、という選択肢です。

ただし、この場合はいままで当局ががんじがらめに為替相場をコントロールしてきたという状況に照らすと、突然為替を「自由化」(?)すれば、為替市場が投機筋の攻撃により大混乱に陥りかねません。それも、韓国当局の統制の及ばない海外NDF市場からウォンが崩れ始めると、収拾がつかなくなる可能性もあります。

こう考えていくと、やはり考えられるのは、通貨安を防ぐための金利を思い切り引き上げることであり、それで倒れる債務者などに対しては、一種の「徳政令」(?)のようなものを乱発し、税金で債務者を救う、という選択肢です。

この場合は財政赤字のツケを未来に回すことになるのだと思いますし、また、借り手にとっては税金で救済されるという安易な成功体験が植え付けられ、家計の借金がさらに膨らむという可能性もないわけではないと思います。

ただ、現実的に考えられるのは、やはり「今よりももっと踏み込んだ利上げ」プラス「税金による債務者の救済」ではないかと思います(それを韓国政府・韓国銀行がやるかどうかは別として)。

さらにウルトラCがひとつあるとすれば、やはり「韓国が危機のときに、出し惜しみをせず迅速に外貨を融通してくれる友人」を今すぐ見つけることかもしれません。そのような国と500億ドルか、場合によっては1000億ドル規模の通貨スワップを締結するのです。

そのような友人を韓国が見つけることができるかどうかについては、もちろん、私たち日本人が関知する話ではありません。韓国が好きにすればよい話ではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (10)

  • 毎度、ばかばかしいお話しを。
    韓国メディア:「米韓通貨スワップの話題を打ち切ったのは、通貨スワップの交渉が合意まじかである、と解釈できます」
    まあ、電撃的に米韓通貨スワップが発表される可能性も、ゼロではないわな。

  •  韓国は、先進国からはもはや主要国だと頼みにされ、後進国からは羨望の眼差しで慕われ、世界中でモテモテだと聞き及んでおります。ウルトラCどころか朝飯前でしょう。

     ところで、もう既に本当にC難度を超えた技がD難度、E難度、とどまるところをしらずI、Jまでいっちゃってるのですね。良かった、Cちょっとなら余裕だよファイティン!

    • ウルトラGのコンクリートの地面に伸身での顔面着地をしてくれるかも知れません。
      期待してますよ。

  • 現況の立ち位置は、市場の潮流に弄ばれた末の吹き溜まり。
    舵取りを放棄しどっちつかずの折衷案→折衷案→”接中案”。
    ・・。

  • 経済苦境を脱却する奥の手は「出し惜しみをせず迅速に外貨を融通してくれる友人を今すぐ見つけること」という表現がこのところ毎日のように出てきますが、そろそろ打ち止めにしては? 過ぎれば嫌みに聞こえてしまいます。ウェブ主さんがそれほどお人が悪いとは思っておりませんので(笑)。

    それはともかく、仮に日米が韓国と通貨スワップを結んでやったとして、それがこの国の経済を救うだけの効果が果たしてあるんでしょうか。

    これからも国力は上がる一方なんてお花畑的感覚で、企業も家計も借金を膨らませに膨らませたところに、もう今後稼ぎは期待できませんよとばかりに、貿易赤字が定着しそうな昨今。最大貿易相手国の中国に技術水準で追いつかれてしまったというような、構造的要因に基づくものですから、再び黒字国に反転する見込みは俄にはありそうにも思えません。

    今や純債権国なんて強がってみたところで、国内の労働環境に嫌気がさして、ベトナムなどの東南アジア諸国に、企業が資金と共に逃げ出したのが実態とあれば、売っ払って回収するのも、期待するのはまず無理でしょう。

    なりばかりでかくなったこの国の年間GDPの額を遙かに超える負債の連帯保証人になってやるなんぞ、幾らお人好しだって二の足どころか、1㎝だって踏み出す気にはなれない。そんな当たり前の事実を、この国の人間は認識できないのでしょうかね。万が一、お布施代わりに、そこそこの額のスワップを付けてもらえることに成功したところで、それに手を付ければ、投機筋の絶好の餌食となってたちまち雲散霧消となるのが関の山。

    公定歩合の上げ下げで、経済状態をどうにかという段階は、もはや通り越していると思います。金利を据え置いたところで、これから本格化してくるであろう企業、家計の破産が相次げば、銀行の貸し渋り、貸し剥がしは当然起き、どのみち否応なしの調整過程入り、すなわちハードランディング。そのときのドルウォン相場なんて、まあなるようにしかならんでしょう。

    状況が全然違うんだから、日本の平成バブル崩壊の後始末がどうとかは参考にもならないでしょう。韓国の当局者が鋭意注目しなければいけないのは、アルゼンチン、ベネズエラ、スリランカあたりの、経済は詰んでしまっても、そのあと国としての存続は立派に保てている、その要諦かな。

  • サムライアベンジャー(「匿名」というHNを使っている方には返信しません) says:

     大変ですね、ウォン安を止める方法がこれと言ってないのに、つい最近も「(米韓)通貨スワップは必要ない」と政府筋だったか言い切っていましたよね。

     韓銀の大幅介入があったようですが、防衛線と思われる1430ウォンをさっと軽く破られているようですね。ほんのちょっと前まで「1192ウォン」台あたりの攻防戦で盛り上がってたのが遠い昔のよう。いつまでもつか・・・。

    • ここ最近のチャートを見る限り、韓銀は1450あたりを絶対死守ラインに設定しているように見受けられます。昨日発表されたアメリカの物価上昇率は依然として高く、次回のFOMCでも0.75%以上の利上げはほぼ確実な情勢ですので、当然ながらドル高の勢いはますます進むと予測されます。日々体力を消耗している(らしい)韓銀がどこまで耐えられるか、まあ、年内くらいは耐えられるんじゃないかとは思いますが、知らんけど。

      あくまでも印象ベースでしかありませんが、アメリカの金利引き上げは景気の腰を本格的にへし折るまで続きそうな感じです。そこまで行ってもなお物価上昇が止まらないという最悪のケースもありえますが、そうなると本当に世界的な大恐慌に繋がりかねません。
      いずれにしても、貿易に過度に依存する国にとっては、非常にキビシィー展開になりそうな気がします。

  • 韓国さん、お友達はどうしたんですか? もしかして、「どうしても、お前がスワップを結んでほしいと言うなら考えないでもない」とアメリカを始め世界中で言いまくったんですか?