本稿は、ちょっとしたメモ書きです。クリミア半島とロシア本土を結ぶ橋が炎上する画像が、ロイターのほかにロシアのタス通信にも掲載されていました。タス通信の方の記事で確認すると、鉄道橋で少なくとも４箇所において火柱が上がっている様子が確認できます。英国防衛省もツイートをアップデートしていましたので、これについても確認しておきましょう。
本稿は、ちょっとしたメモ書きです。
『「プーチン誕生日祝い」？クリミアで大橋が爆発し炎上』でも取り上げたクリミア大橋爆発の件について、その後もいくつかの続報が出ているようです。
英国防衛省の『インテリジェンス・アップデート』にも橋の爆発が取り上げられています。
翻訳エンジンなどを参考に、英国防衛省の見解を列挙しておくと、こんな具合です。
- 2022年10月８日未明、ロシア占領下のクリミアとロシアのクラスノダール地方を結ぶ道路と鉄道の要衝であるケルチ海峡橋が爆発により損傷した。
- 車道４車線のうち２車線が、長さ約250mにわたって数カ所崩落している。他の２つの車道経由の車両通行が一部再開されたことはほぼ確実であるが、通行能力は著しく低下する。
- 被害の程度は不明だが、その能力に深刻な障害が生じた場合、ウクライナ南部ですでに緊張状態にあるロシアの戦力維持能力に大きな影響を与える可能性が高い。
- この鉄橋は2020年6月に貨物用に開通したばかりだが、この路線は侵攻時に南部戦線への重軍事車両の移動に重要な役割を担ってきた。
- この事件が発生したのは、ウラジミル・プーチン大統領が70歳の誕生日を迎えた数時間後だ。彼は自らスポンサーとなって橋を建造した。その建設業者は彼の幼なじみのアルカディ・ロテンベルグであった。
- ここ数ヵ月、プーチンの元ボディーガードで現在はロシア国家警備隊司令官のヴィクトル・ゾラトフが、橋の安全通行に責任を負っている。
その一方で、ロシアのタス通信が日本時間の今朝掲載した記事には、今回の事件についての遠景写真が掲載されています。これによれば橋の上に停まっている鉄道車両のうち少なくとも４両において火災が発生している様子がはっきりと確認できます。
Crimea restoring traffic to mainland
―――2022/10/09 07:52付 タス通信より
タス通信は「クリミア半島とロシア本土を結ぶ交通は土曜日の早朝に中断したが、その日の夜には回復が始まった」、「車道は片側通行規制が敷かれている」、「列車は完全に開通したがダイヤが乱れている」、などとしています。
その一方でロイターの記事に掲載された写真によれば、道路橋の片側車線が完全に海中に崩落している様子が確認できます。
Divers to check damage to blast-hit Crimea bridge key to Russia’s war
―――2022/10/09 14:19 GMT+9付 ロイターより
いちおう、ロイターの記事でも「現地時間午前６時７分に生じた爆発から10時間後には限られた交通が再開された」とは記載されているのですが、その一方でこんな記述もあります。
- ウクライナの郵便当局は当日、特別な切手を印刷することを決めた
- ウクライナ大統領顧問は論評で「間違いなく、ロシアで大規模な否定的なプロセスが始まっている」と述べ、爆発の原因がロシア国内の政争と関連していると示唆した
- ロシアによって任命されたヘルソン州の当局者は、爆発は「軍需物資の輸送には大きな影響を与えない」としつつも、クリミアへの兵站には問題をもたらすと述べた
ウクライナが記念切手を発行するというのも興味深い話ですが、いちおう、現時点ではウクライナ側は橋の爆破への関与は認めていないようです。
ちなみにロイターが報じたところによると、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領のビデオ演説内容では、（爆発について言及せず）クリミアの天気は曇りだったとだけ述べたうえで、こう述べたそうです。
「しかし、どんなに曇っていても、ウクライナ人は知っている…私たちの未来は晴れている。これは、私たちの領土全体、特にクリミアで、占領者のいない未来だ」。
今回の橋の爆発が事件なのか事故なのか、あるいは誰が仕掛けたものなのかという疑問点はさておき、ウラジミル・プーチン大統領が満を持して建設したはずの橋が炎上して無残に崩落している様子は、さまざまな意味で現在のロシアが置かれている立場を象徴しているように思えてならないのは、ここだけの話です。
ウラジミル・プーチンに贈られる誕生日プレゼントがロシア敗北の号砲だったのだとすれば、これはこれでなかなかに興味深い現象だと思う次第です。
View Comments (16)
日本時間16時くらいの状況ですが，鉄道橋はもともと複線だったようで，炎上した貨物列車はまだ撤去できていないようですが，反対側のレールは意外と損傷が少なく，運転試験の結果，一応通れることが確認されたようです。試験走行の動画がアップされていました。軽い車両で徐行運転しながらテストしつつ，だんだん正常化を目指すのでしょう。
この行動って、追加攻撃がないというお花畑理論な行動ですよね。
ぬか喜びの後に完全断線と。
NYTで匿名のウクライナ高官が事件に関与していると述べているようですが、NYT読めません。
過去にロシアの引いた線を次々に踏み越え続けているウクライナですが、線の踏み方にもいろいろ駆け引きがあって興味深いです。
記念切手はここで予約できるようです
https://postmark.ukrposhta.ua/index.php?route=product/product&product_id=897
プーチンの70歳の誕生日に、クリミアの橋の上でファイヤーショーを披露し、いち早く祝福したウクライナ軍に続き、ウクルポシュタもテロ国家のトップへの贈り物を発表したのである。郵便事業会社が切手「クリミア・ブリッジ・アンコール！」の発行を発表した。
「クリミア大橋の爆破」の切手は、全世界で販売してほしいものです。
寄付金付きの切手にすれば、ウクライナへ支援金として送ることもできます。
この情報を知った時に感じたこと。
誰がやったか分からないけれど、何故、こんな中途半端なことを？
と思いました。
どうせやるなら、道路も鉄道も両側をやらなければ、ある程度の損害を与えられないです。
これでは、ある程度の心理的な衝撃しか与えられないです。
両側をやれば、10日間とか、ある一定期間の物流を止められるので、その間に
戦況を変えることができることも考えられます。
逆に、復旧が早ければ、その復旧の早さが、士気を上げる口実に使われます。
つまり、逆作用になります。
以上から、推測すれば、これは、ウクライナではなく、ロシア国内の戦争反対派がやったことの方が可能性が高いように思います。
自分は逆ですね。中途半端にした理由は「相手に本気（核）を出させない」ためだと思います。
仮に完全に崩落させた場合、徹底的に原因を究明して意地でも報復するのではないでしょうか。現状のように中途半端でも機能するのであれば、とりあえず機能回復が最優先、原因究明は片手ながらになると考えます。（地雷と同じ考え方かも？）
ウクライナが明確に戦果を誇らないのも同じ理由かと。
なるほど、確かにそういう見方もできますね。
では、そもそも、橋を破壊した理由は何だと考えておられますか？
「クリミア大橋」は、プーチンの命令で建築されたと聞いています。
開通式には、プーチン自ら、トラックを運転し先頭を走ったようですし・・・プーチン自慢の橋なのでしょう。これを爆破することは、
プーチンの権威を失墜させることが目的ではないでしょうか？？
仮に今回のことが誰かの意図した工作の結果だとしてですが、その人が目論んだ通りの結果になったかどうかはわからないと思います。
今回の微妙な結果を得るために爆薬の量や場所や時間を調整するというのは、かなり高難度だと思います。
全部が吹き飛ぶことも想定内において計画したと考えるのが妥当じゃないでしょうか。
この橋、「クリミア大橋」って書いてるのが多いんですが、正式名称なんでしょうか？
日本語に訳すときのルールってあるんでしょうか？
>ウクライナの郵便当局は当日、特別な切手を印刷することを決めた
昔切手集めてたことあるけど、日本にも「真珠湾攻撃」の記念切手があった。
ロシア プーチン大統領 橋爆発をウクライナ側のテロ行為と非難
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221010/k10013853931000.html
さすがに事故と言い続けることは無理と覚悟したようです。自由度が一個減りました。
ロシアの愛国軍事ブロガーに突き上げられてるようです。
記事の最後に付け加えている、ウクライナ側の反応のチョイスがNHKっぽくなくて。
三星のウクライナ R&D が入った高層ビルが巡航ミサイル攻撃を浴びたそうですね。
精密攻撃兵器なんか残ってない（orそもそも無理）んじゃないか説ありますが、あながち、と思います。
高層ビルの名前は 101 ビルといい、キーフ旅客駅に近く、高層階にはドイツ領事館オフィスやフランス領事館オフィスもそこに入居しているそうです。駅に近いからでしょう。ビルの住所はこちらです。
вулиця Льва Толстого, 57, Київ, 01032
報道映像によると青いガラスが印象的なカーテンウォールの下層階が吹き飛ばされているようです。英語キャプションによれば直撃ではなく着弾したのは隣接ビルとあります。狙って当てるには 101 ビルのほうがでかくて高い分だけ簡単で、威圧効果も高そうなのですが。
ググる画像検索によれば 101 ビルのてっぺんには大きく「Samsung」とあります。ない画像もあります。