韓国メディアに昨日、韓国では庶民のカードローン残高が急増している、とする話題が出ていました。カードローンは韓国でいう「第2金融圏」からのローンなのだそうですが、それと同時に低信用力の債務者だと、金利負担が年利18%を大きく超えているのだそうです。低金利社会の日本からすれば、なかなかに信じられない数値ですが、問題は、それだけではありません。
目次
収入・支出のバランスが大事
企業でも個人でも収入以上の支出は続かない
自分自身でもときどき設定を忘れそうになるのですが、じつは著者自身は「公認会計士」であり、ごくまれに第三者から資金繰りや生活設計などマネーに関する相談に応じることがあります。
ただし、いわゆる「士業(しぎょう)」と呼ばれる業を営んでいる場合、その人の得意分野というものがあります。著者自身も基本的に個人ではなく企業(それも特定の業種)に特化してしまっているため、個人のマネー相談に応じるのは骨が折れる作業でもあります。
したがって、所得税・相続税・贈与税・中小企業税制などを含めた税制にもさほど詳しいわけではなく、複雑な案件(たとえば「相続税を安く済ませる方法」、「子供や孫への資産移転」など)については正直、お手上げ状態ではあります。
ただ、法人であろうが個人であろうが、ひとつの共通点があるとしたら、「収入以上の支出は続かない」という真理でしょう。
当ウェブサイトでは普段、「自国通貨建てであれば、中央政府は理論上、無制限に国債を発行することができる」、「国家債務の適正規模はインフレ率や国内の資金循環との関係で決まる」と議論しています(『【速報】円安の恩恵受け日本の外貨準備高は過去最大に』等参照)。
外貨準備高の円換算額が史上最多となりました。もうすぐ180兆円の大台に届くかもしれません。日銀が本日公表した資金循環統計によれば、相変わらず日本には家計金融資産が大量に有り余っており、有効活用されていないことがわかります。これに加え、政府が保有している外貨準備、NHKが溜め込んだ無駄な剰余金、電波利用権など、有効活用すべき資産はいくらでもあるのです。資金循環統計の概要(バランス)日本銀行は本日、2022年6月末時点における「資金循環統計」を公表しました。当ウェブサイトではこの資金循環統計について「定... 【速報】円安の恩恵受け日本の外貨準備高は過去最大に - 新宿会計士の政治経済評論 |
しかし、この主張は国家(とくに中央政府)だからこそ成り立つ命題であり、個人や企業がこれを真似すると大変なことになります。
たとえば、ある企業に勤める、年収500万円の人がいたとしましょう。給料の2ヵ月分のボーナスが年2回支給されているのだとしたら、この人の月収(額面)は30万円を少し上回るくらいです。しかし、現実にはここから所得税や社会保険料などが控除されるため、毎月の手取りは23万円前後、といったところでしょうか。
(※ただし、現実には扶養親族の数、配偶者控除・配偶者特別控除の適用の可否などに応じ、手取りは異なりますが、こうした細かい点についてはとりあえず脇に置きます。)
結婚式の辛い思い出
ということは、この人は毎月23万円前後で生活をしなければなりません。この23万円で、家賃または住宅ローンを支払い、食事をし、衣類を買ったり、散髪に行ったりしなければなりませんし、とくに若いころだと、友人の結婚式に招かれるなどの「臨時支出」もバカになりません。
脱線ついでにどうでも良い個人的体験談をひとつ述べておくならば、著者自身、今からもう30年近く前、地方都市で公認会計士の受験勉強をしていたころに、大学時代の知り合いから結婚式に招待され、しかも司会まで依頼されたということがありました。
正直なことを申し上げるならば、受験勉強中かつアルバイトの身で、相場のご祝儀(3万円)に加え、往復の新幹線代と宿泊費などの出費(すべて自腹)は、大変に辛かった記憶があります。
もっとも、当時は著者自身もまだまだ若く、「遠方の友人を結婚式に招くときには交通費と宿泊費を負担するのが一般的だ」、「友人に司会を依頼するときには2~3万円の謝礼を支払うことが多い」などの社会常識を持ち合わせておらず、すべてを自腹で負担することに違和感を持っていなかったのはここだけの話です。
それはともかくとして、年収500万円なら年収500万円なりの、年収800万円なら年収800万円なりの生活というものがあるというのもまた事実です。
「収入以上におカネを使ったら貯金ができない」というのは、べつに複雑な会計理論を持ち出すまでもなく、誰でもわかることですし、貯金もないのに収入以上の生活を続けていれば、いずれ生活が破綻するのは目に見えているのです。
身の丈に合った暮らしが大事、そして将来への投資も大事
したがって、ちゃんと生活をしていくためには、まずは自分の収入がいくらなのかをできるだけ正確に把握し、とくに若くてまだ収入が少ないうちは、収入の範囲内で生活するというクセをしっかりと付けるとともに、余ったおカネと時間を積極的に「未来への投資」に回すようにすべきでしょう。
ここでいう「未来への投資」には、さまざまなものが含まれます。何かの資格を取るための教材費でも良いでしょうし、金融の勉強もかねて株式投資などをしてみるというのも良いでしょう。あるいは自分が尊敬する友人や仲間、先輩や後輩などと飲みに行く、というのも、形を変えた「未来への投資」かもしれません(※飲み過ぎ注意!)。
もっとも、ここでも考え方の違いが出てきます。著者自身は、「若いころこそどんどん投資すべきだ」という考え方の持ち主であり、若くて吸収力のあるときの方が、勉強したことの成果が身につくものだとの考え方には賛成するのですが、だからといって「借金をしてでも投資すべき」、という考え方には、全面的には同意しません。
もちろん、投資も結局はリスク・リターンの関係ですので、自分自身が「この投資にはリスクが低くリターンが高い」と合理的な確証を持って判断できるのだとしたら、借金をして投資をすれば良いと思います(あくまでも自己責任ですが)。
しかし、そのあたりの合理的な確証も得られないのに、見込みだけで巨額の借金を負って投資してしまい、投資に失敗すると、借金だけが残る、といった事態も生じるかもしれません。このあたりの判断のバランスは、なかなかに難しいところです。
いずれにせよ重要なことは、スキルアップや年収増のために自分自身でリスクを取って投資する、という態度だと思うのですが、このあたりについてあまり深く突っ込むと、本稿で予定している本題から大きく外れてしまうおそれもあるため、この辺にしておきます。
(もしごニーズがあるようでしたら別稿にて詳しく議論しても良いと思いますので、続きをご希望の方はコメント欄でお知らせください)。
借金してリスク資産に投資する国
国民がこぞって「借金をして投資をする」という国もある
さて、以上の議論はあくまでも日本人を相手に著者自身が思うところを述べるというものですが、日本国外だとこうした常識が通用しないこともあるようです。
その具体的な事例が、「国民がこぞって借金をしてまでリスク資産に投資する」という態度をとっている国です。以前の『韓国社会で問題化「多重債務者」割合が人口の1割弱に』でも取り上げたとおり、韓国では多重債務が社会問題化しつつあるのだそうです。
利上げをすれば金融危機、利上げを見送れば通貨危機。韓国はそのどちらかを選ばねばならないようです。こうしたなか、韓国で利上げをすれば、破綻する家計が急増しかねない、といった証拠が、またひとつ出てきたようです。韓国メディア『中央日報』(日本語版)の報道によれば、3社以上の金融会社からカネを借りている「多重債務者」が韓国社会全体で446万人に達するとの試算があるのだとか。家計破綻急増?ここ最近、隣国のメディアの報道を眺めていると、家計債務の破綻に関する話題が急増しているように思えてなりません。最近、当... 韓国社会で問題化「多重債務者」割合が人口の1割弱に - 新宿会計士の政治経済評論 |
しかも、その投資する対象が「自分自身のスキル」などであるならばまだわかるのですが、報じられている記事に加え、韓国銀行が公表する統計データなどを読む限り、韓国の家計は借りたカネで株式、不動産、暗号資産といったリスク資産に積極的に投資しているようなのです(厳密にいえば「投機」でしょうか?)。
このあたりは、両国の「国民性の違い」、つまり「日本人は借金が嫌いだけれども韓国人は借金が好き」、といった説明を見かけることもあるのですが、著者自身は「国民性の違い」だけで韓国の個人の投資行動を説明することができるとは考えていません。
国民の投資行動には、経済全体がバブルに浮かれ、その後のバブル崩壊を経験したという国を挙げた経験、その国における金融規制・法規制の在り方、税制なども密接な影響を与えるため(※著者私見)、「韓国が借金好きで日本が借金嫌い」、という単純なものでもないとは思います。
韓国資産バブルFRB主犯説
ただ、事実として見るならば、韓国の債務水準が非常に高いことは間違いありません。その際の参考となるのが、2020年後半以降の韓国の資産バブルを主導したのが米FRBを含めた先進国の金融緩和だった、とする当ウェブサイトなりの仮説です。
【参考】韓国資産バブルFRB主犯説
- ①FRB等、主要国中央銀行による金融緩和
- ②為替市場で韓国ウォンを含めた新興市場諸国に投機資金が流入(=通貨高)
- ③韓国の通貨当局が「ウォン高になり過ぎれば輸出業者が困る」と判断
- ④韓国のウォン売り・ドル買い介入(→外貨準備の増加)
- ⑤市中のウォン流通量が増大(→マネタリーベースの増加)
- ⑥金融機関の家計向けローンが増大(→家計債務の増大)
- ⑦カネを借りた家計がリスク資産(株式、不動産、暗号資産など)に投資
- ⑧韓国ウォンが一時、ビットコイン取引通貨の第3位に浮上
(【出所】著者作成)
ここに示しているものは、あくまでも当ウェブサイトなりの仮説のひとつに過ぎず、これが絶対的に正しいと保証できるものではありませんが、ただ、現実の統計データの動きについては、かなりの程度、この仮説に沿った動きをしています(例外は⑤くらいなものでしょうか)。
そして、米FRBが金融緩和(低金利政策+量的緩和政策)の真逆の動き、すなわち利上げとバランスシート圧縮に踏み切るなかで、韓国ウォンが米ドルに対して急落しています。
また、韓国銀行が毎月公表している外貨準備統計を見ても、外貨準備高は2022年8月時点で4364憶ドルで、ピークだった2021年10月時点の4692億ドルと比べて300億ドル以上減少しています。わずか1年弱で300億ドルの減少というのも、なかなかに急激な落ち込みです。
さらには金融機関の家計向けローンについても大きく増えています。
韓国の資金循環統計データに基づけば、家計のローン残高は2022年3月末時点で2149兆ウォンであり、前年同期比で159兆ウォン増大しました。増加率でいえば7.8%ですが、この「前年同期比増加率」は、2021年3月から9月にかけて10%を超過していたのです。
その結果のひとつ、ビットコインの市場で韓国ウォンが一時的に世界で3番目に取引される通貨に浮上する、といった珍現象だったのではないかと思います。世界的に見れば明らかなマイナー通貨である韓国ウォンが、暗号資産取引の世界では非常に大きな存在感を放っているというのですから驚きです。
いずれにせよ、米FRBはすでに金融引締めモードに入ってしまいました。
市場では年内のFRBの利上げペースが緩やかになる、といった(謎の)期待感も生じているようですが、こればかりは実際のFOMCを迎えてみないことにはよくわからないでしょう。
庶民のカードローン残高が急増
さて、韓国銀行が毎月発表している外貨準備統計についても、そろそろ2022年9月分のデータが発表されても良いころですし、資金循環統計の最新データ(2022年6月末時点)については本日正午過ぎに公表されるのだそうです。
これらのデータについては何か興味深い動きがあれば、また当ウェブサイトでも取り上げたいと思います。
ただ、それよりも気になる動きがあるとすれば、FRBが金融引締めモードに入ったにも関わらず、韓国では家計向けのローンが伸び続けている、という点でしょう。先ほども紹介したとおり、2022年3月の前年同期比の伸び率は7.8%とやや鈍化していますが、依然として伸び続けていることは間違いありません。
こうしたなかで、韓国メディア『中央日報』(日本語版)には昨日、こんな記事が掲載されていました。
庶民の「融資窓口」カードローンが半年間に1兆4000億ウォン増加=韓国
―――2022.10.05 15:59付 中央日報日本語版より
中央日報によると、韓国の「正義党」に所属する張恵英(ちょう・けいえい)議員室は、2022年6月末基準で韓国の信販大手4社のカードローン残高は半年間で1兆4645億ウォン増加し、25兆3756億ウォンに達したのだそうです。
しかも、その増え方自体も加速しており、この半年間の増加額は昨年1年間の増加額(1兆918億ウォン)を大きく超過するペースなのだとか。
ちなみにこの「カードローン」、中央日報は「庶民の融資窓口」と呼んでいますが、その趣旨について、記事では次のように記載されています。
「カードローンはすぐにお金が必要だが『第一金融圏』から融資を受けられない中・低信用者が主に利用する」。
「第一金融圏」とは聞きなれない表現ですが、文脈から判断して、どうやらこれは銀行などの金融機関を意味しているようであり、「第二金融圏」とは保険会社や証券会社に加え、日本などでいうノンバンク(信販会社など)から構成されているのだそうです。
そして、記事の冒頭に掲載されている事例も、私たち日本人にとっては、「思わず驚いてしまう」という人が多いと思います。
「2年前に年3%台序盤だった住宅資金融資の金利が最近5.6%に上昇し、生活費が足りなくなった会社員A氏(30)はカードローンを調べたが、悩みが深まった。100万ウォン(約⑩万円)未満の少額融資であるうえ、年10%を超える金利がつくからだ」。
カードローン金利は年内15%に!
…。
このA氏の生活、いかがなものかとは思います。冒頭の小話でも指摘したとおり、そもそも「生活費が足りなくなってカードローンを利用する」という時点で、それは「身の丈に合った生活」とはいえないのではないか、という気がしてならないからです。
中央日報によると、このA氏は「金利が高いが生活費が足りないのでカードローンを利用するしかなかった」としたうえで、「稼いだお金はほとんどが返済で消えるため借金が増えて心配だ」と語ったのだそうですが、さすがに他人事ながら心配になってしまう記述でもあります。
ちなみに韓国金融協会のデータでは、「専業カード会社7社」のカードローンの平均金利は8月末時点で13.22%と、前月の12.87%と比べて0.35%ポイント上昇したほか、「信用点数600点以下の低信用者」は韓国における法定最高金利(年20%)に近い最大年18.44%の金利負担に達するのだとか。
中央日報の記事の怖いところは、それだけではありません。
記事によると、与信金融業界では、カードローン金利が年内にも15%に達するとの予測があるのだそうです。これに先立ち、カード会社のおもな資金調達手段である「与信専門金融債」の金利が年5%をすでに超えているのだそうです(ちなみにこの「与信専門金融債」を中央日報は「金融債」と略しています)。
韓国では信販会社は金融債で資金を調達し、それを一般の人々向けに貸し出しているため、負債側で金融債の金利が上昇すれば、資産側でカードローンの金利を引き上げざるを得なくなります。
さらには、中央日報によれば「リボルビング・サービス」の利用者も増えているのだそうです。
記事では前出の張恵英議員室を引用し、「専業カード4社」のクレジットカードのリボ払い残高は2022年6月末時点で4兆8769億ウォンであり、これも半年間の増加幅は3093億ウォンと、すでに昨年1年間の増加額(5017億ウォン)を超過しているのだそうです。
しかもリボ払いの平均手数料率は最高18.35%と、カードローンの金利よりもさらに高めです。
典型的な多重債務者の論点と重なって見えますが、これが中央日報のいうところの「庶民が嵌るカード地獄」、というわけでしょう。
どれも低金利状態の日本からすれば、にわかには信じがたい金利水準です。
当局の手腕が試されている
資産バブルや家計債務の調整は不可避
こうした状況を踏まえるならば、韓国における資産バブルや家計債務の調整は不可避であり、遅かれ早かれ、何らかの処理が必要となってくるでしょう。
この調整速度、早すぎても遅すぎても厄介です。
もちろん、調整が早すぎれば、日本の「バブル崩壊」と似たような、あるいはそれを遥かに上回る衝撃が、韓国経済全体に広がります。
これを避けるためには、たとえば韓国銀行が低金利状態を維持して時間を稼ぎ、韓国経済全体に余力があるうちに、韓国政府が政策的に債務整理を行う手伝いをする、といった方法が考えられます(その際、韓国の金融当局が日本の金融当局にアドバイスを求めてくるかもしれません)。
しかし、米国が利上げモードに入っているときに韓国が低金利状態を維持すれば、通貨暴落が生じる可能性があります。
この点、日本の場合はそもそも通貨・日本円自体が世界中で信認を受けていたという事情もあり、「海外投資家が日本から資金を引き揚げ、それにより日本国内で外貨資金不足が生じ、企業が倒産する」、といった事態は発生しませんでした。
もともと日本企業は生産活動において、外国の金融機関などから外貨で巨額の資金を借り入れる、といった行動を取っている事例が少ないため、バブル崩壊は日本国内の危機に留まったのです。
しかし、韓国は違います。
少なくない韓国企業が外貨で資金を借りており、これらの資金の借り換えができなくなれば、多くの韓国企業がバタバタと倒れる、というリスクが顕在化します。2008年のリーマン・ブラザーズ経営破綻時の危機の際は、日本や米国がスワップで韓国を救済しましたが、少なくとも日本は、今回は似たような動きは取らないでしょう。
そうなると、やはり2020年3月に米国と締結したのと同額の600億ドル規模の為替スワップないし通貨スワップを外国と締結し、投機筋を牽制したうえで低金利政策を続け、金融機能の修復を図るというのが、韓国にとっては最もやりやすい戦略ではないかと思います。
当局に対する信認を獲得するチャンス
このあたり、昨日の『韓国紙「韓米スワップは米国にとってもメリットある」』などでも述べたとおり、韓国の良き隣人である我々日本人は、ここは隣人のよしみとして、韓国が危機のときに惜しみなく支援してくれるような友人を、韓国が無事、見つけられることをお祈りすることくらいのことはやってあげても良いとは思います。
現在の米国にとってはメリットがない米韓為替スワップ韓国メディアの最近の議論を眺めていると、「韓米通貨スワップ待望論」がやたらと目に付くようになりました。ただ、これらのスワップ待望論に、決定的に欠けているのが、「米国が韓国と為替スワップを結んだとして、それが現在の米国にいかなるメリットをもたらすか」、という視点です。これに関し、韓国の「左派メディア」とされる『ハンギョレ新聞』(英語版)に、興味深い記事が掲載されていました。検索エンジンでスワップが流行中トレンドワードでときどき浮上する「通貨スワ... 韓国紙「韓米スワップは米国にとってもメリットある」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
ただし、当ウェブサイトとして敢えて違うシナリオを提示するならば、今回、韓国に襲い掛かろうとしている金融・通貨複合危機を、韓国の金融当局(とくに中央銀行である韓国銀行、財務当局である企画財政部)が世界からの信認を獲得するチャンスとして生かす、というシナリオはありかもしれません。
つまり、日本や米国などからの支援を敢えて受けずに、自力で今回の問題の解決を図る、というやり方です。
日本は1990年代後半以降深刻化した金融危機(不良債権問題、「30社リスト」問題、新会計基準適用問題など)を、なんとか自力で乗り越えた国でもあります。日本円に対する信頼は、日本が外国の助けなしに、自力で金融危機を乗り切ってきたという事情もあると思います。
こうした観点からは、やはり韓国には「自力」にこだわった方が良い、と申し上げたいと思います。危機を自力で乗り越えることができたならば、それはその国の通貨当局・金融当局にとっても今後の政策運営の自信につながりますし、国内外からの信任を獲得することにもつながるからです。
こうした観点からも、尹錫悦(いん・しゃくえつ)大統領自身が通貨危機や金融危機を乗り切るために何らかのメッセージを韓国国民に対して出すのかどうか(あるいは出さないのかどうか)については注目する価値があると考えている次第です。
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ブログ主様、毎日膨大な量、かつ貴重な内容を読ませて頂き感謝に堪えません。
さて私は金融リテラシーを欠く者ですが、本日の内容は良く理解できました。人に対して見栄を張るより、当然ながら収入の範囲で生活するというのが多くの日本人の感覚であると思います。
翻って隣国においてはありがたい徳政令も多々発せられるお国柄のようですから、少々のことがあっても乗り超えられると思います。ですがもし万一の場合は、ご多幸をうわべだけでも惜しみなくお祈り申し上げることと致します。
韓国では個人事業主に対して政府の基金で借金の一部免除の政策を準備しているというニュースを読んだ。
これに対する駆け込みかもしれない。
今借りた分は一部チャラ、貸した側も政府が保証。
30年以上投資をしていますが,初期は結構下手で,いろいろな経験を積むにつれて損をしなくなってきたと思います。その意味で若い頃から投資を始めるのは良いことだと思います。定年退職してから退職金で始めるはは,あまりお勧めしません。ただ,信用取引は10~20年現物取引で経験を積んでから始めるほうが良い気がします。
韓国でも,大損する人が大勢いる反面,成功する人もいるでしょう。投資は貧富の格差を拡大させる方向に作用します。
P.S. 最初のほうの会計士業の話ですが,税理士関係の話題も混じっているように感じます。所得税・相続税は税理士の仕事ですようね。ついでに言うと,税理士さんに相談しないと確定申告書が書けないような人は,あまり投資に向いていない気もします。今は登記でも,ネットで調べれば簡単に個人でできる時代ですから。
韓国の国富は85%が不動産、3年で1000兆ウォン増加
コメントの最初で間違って送信してしまいました、申し訳ありません。
>韓国の国富は85%が不動産、3年で1000兆ウォン増加
>ttps://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/07/22/2020072280081.html
個人レベルでも資産の殆どが不動産、バブル状態での購入ですから多額の借金をしており
返済に汲々としてる人が多い、しかも多くが変動金利を利用してますから大変だと思います。
金利上昇の衝撃は南朝鮮社会・経済全体に甚大な被害をもたらすのでしょう。
97年・08年と経済危機を日米からの支援で乗り切りましたから、
南朝鮮はセイフティネットがあると勘違いした国家運営をした可能性が高いです。
日米が激しい通貨安を防止してくれるなら、高金利で通貨防衛をする必要はありません。
土地不動産や家計負債バブルは言葉の意味の通りモラルハザードバブルになりました。
最近、不動産が下落に転じましたがゆん政権は規制緩和を進めるなど、
不動産バブルを軟着陸させる方針ではないようです、コントロールできないでしょうし・・・
国家的危機が来るか来ないかではなく、いつくるかの問題になってると思います。
生活費が足りなくて借金するというのは
古今東西、家計の破綻フラグであり続けた気がするのは私だけでしょうか?
ま、韓国人が自滅しようと遠方よりご健勝をお祈りするだけですが。
スキルアップへの投資の話は大学に通うための奨学金の話にもつながりそうですね。
基本的に身の丈に合わない投資はすべきではないのですが、大学はちょっと毛色が違うように感じています。
>基本的に身の丈に合わない投資はすべきではない
投資してる本人たちは投資の時点で「身の丈に合っている」と思ってるんだね。それがバブルのこわいところ。
マクロの金融を論じるのに韓国人をステレオタイプ化しても意味のある議論にならない。家計負債の多さは、何か背景があるのだろう。私が推測するのは不動産購入のための借金。住むために買う人、投資のために買う人がいるが、前者は不動産バブルがはじけても生き残るかもしれない。ただし借金返済に四苦八苦して長期に消費を押し下げる可能性がある。後者の一部は日本のバブル崩壊、アメリカのサブプライム、リーマンショックと同じ末路をたどるのではないか。
家計債務が大きいということは、その大きい借金を貸している人がいるということ。貸す人は考えなしに貸しているのか?そんなことはない、彼らなりに担保を取ったり、借主の返済能力を評価しているはずだ。問題は担保や返済能力はバブル崩壊で大きく棄損するのが通例だということ。
「借金好き」という国民性があるかどうかはわかりませんが、「博打好き」という国民性はあるような気がします。あくまでも個人的な印象の域をでませんが、中国人や韓国人は、日本人と較べてだいぶ博打好きの傾向が強いように感じます。かつてのマカオの熱気や賑わいを見ていると、そのように強く感じました。
中身も知らずに借金して相場を張るだなんて、どうみても博打そのものですが、中国でも以前理財商品なる高リスク金融商品が爆発的に広まりましたし、韓国では暗号資産、それもBTCなどのメジャーなものではなくて、名も知れぬいわゆる雑コインに盛んに「投資」が行われていたそうです。これらを見ていると、やはり中国人や韓国人は博打への選好度が高いのではないかと思います。単に博打を投資と言い換えているだけと言ってもよいのかもしれません。
ところで、
> 危機を自力で乗り越えることができたならば、それはその国の通貨当局・金融当局にとっても今後の政策運営の自信につながります
歴史上、未だかつて一度も自力で「危機」を乗り越えたことなどない民族へのエールとしては、なかなか酷薄無慚なものであるような......
自転車から雪だるまへの変遷・・。臨界点が近づく。
>韓国が危機のときに惜しみなく支援してくれるような友人を、韓国が無事、見つけられることをお祈りすることくらいのことはやってあげても良い
彼らは、
困ったときに助けてくれるのが本当の友達だと、
困ったときだけ近づいてくる迷惑なだけの隣人。
もはや喉元過ぎれば熱さを忘れまくる彼らのもとに、
”ツーと言えばカー” と応えてくれた友の影はない。
痛→禍、痛→禍と自問自答を繰り返すばかりだ・・。
韓国は他国が困った時に助けただろうか
と、問いかけてみたいところですね
友達というのは一方通行な関係ではないでしょうにw
そうなんですよね。
彼らは【受益>貢献】の枠内でしか外交関与をしない人たちです。
日韓関係を兄弟に例えた御仁もいらっしゃるようですが、「兄弟は他人のはじまり」としか申し上げられないですね。
北朝鮮のミサイル発射は或る意味で経済的に苦しい韓国を援護しています。 このところの一連の弾道ミサイル発射により、日米韓の協力体制やGSOMIAをより緊密にすべきだという機運が盛り上がっています。そのため、最悪に近い日韓の関係を改善するため「国益を考えて」諸問題を早急に解決せねばならない、と岸田首相も考えているようにも見受けられます。
関係を改善するのは一般論としては歓迎すべきことですが、急ぐあまりにその方法が韓国の言うところの「包括的な」政治的合意をしてしまう危うさが岸田首相にはあり、その延長で、緊密な協力体制の相手国が経済危機に陥っては困るということで、「丁寧な説明」しつつスワップも合意する可能性もあり得ます。
と言うことで、北朝鮮の韓国経済援護射撃陰謀説でした。
北朝鮮に対する日米韓の協力体制は大事ですが、よく考えれば弾道ミサイルは何も今に始まったことでなく、10年以上前から北朝鮮は日本を射程に収める核ミサイルを持っていて、「さあ、大変だ。何とかしなくては」と盛り上がる方が、何を今頃世迷言を言っているのかと呆れます。ロシアが戦争を起こし核の使用も辞さない構えから、戦争と核についての心理的ハードルを下げてしまい、危機意識が高まっている時に便乗する言説には注意が必要です。
韓国経済副首相「経済危機再現の可能性は極めて低い」
https://s.japanese.joins.com/JArticle/296100
って、おっしゃっているので大丈夫です!!
大丈夫そうなので、韓国のご多幸とご健勝を心からお祈りいたします。
あと、外貨準備高に、ファニーメイやフレディマックが含まれていないことも心からお祈りいたします。
日本のメディアは、
円高になっても大変!と書き、
円安になっても大変!と書き、
と悲観的な論調が多いのですが
韓国のメディアは楽観的な論調が元々多いのでしょうか。
東アジアのラテン(陽気という意味ではなく、将来に対して楽観的という意味で)と呼ぶ人もいる。