立憲民主党が「次の内閣」でアピールしているのは「政権担当能力」なのか、それとも「悪夢は一度で十分」なのか――。そんなことを考えてしまうのは、ひとえに立憲民主党が民主党政権を巡って、これまでに総括らしい総括をやったことがないからでもあります。人間、誰しも初のことは失敗するものであり、失敗から学ぶことで人は成長するのですが、その「失敗から学ぶこと」すら拒絶する者たちが成長するはずなどないのです。
目次
民主党政権はメディアクーデターで発足した
民主党政権とはいったい何だったのか――。
民主党が政権を奪取するきっかけとなった2009年8月30日の衆議院議員総選挙については、当ウェブサイトではこれまでもくどいほどその問題点を取り上げてきました。というのも、この選挙自体、新聞、テレビを中心とするオールドメディアが主導した、事実上のメディア・クーデターだったからです。
たとえば、投票日の約3週間前の2009年8月12日には、21世紀臨調が主催した麻生太郎総理大臣と鳩山由紀夫・民主党代表の党首討論会(※現在は視聴不可)が開催されたのですが、これに関する話題については、メディアはほぼ完全に黙殺しました。
この党首討論会については現在は視聴できませんが、具体的な内容については『先祖返りする立憲民主党、今度の標語は「変えよう。」』あたりでも説明したとおり、どう贔屓目に見ても、麻生総理の完勝に終わったと考えて良いでしょう。
まずは代表から「変えよう。」いまから12年前の2009年8月、麻生太郎総理大臣との党首討論会の最後に、鳩山由紀夫・民主党代表はヒトコト、「チェンジ!」と叫びました。そして、最大野党・立憲民主党は昨日、あらたなキャッチコピーを発表しました。それはなんと、「変えよう。」、です。麻生総理と鳩山代表の党首討論ちょうど12年前のいまごろでしたでしょうか。麻生太郎総理大臣が衆議院を解散し、日本は選挙に突入。21世紀臨調は2009年8月12日、自民党の総裁でもある麻生総理と、当時の野党・民主党の鳩山由紀夫代表の2名を招い... 先祖返りする立憲民主党、今度の標語は「変えよう。」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
また、「新聞、テレビが政権交代を主導した」というのは、決して誇張でも印象でもありません。社団法人日本経済研究センターが2009年9月10日付で発表した『経済政策と投票行動に関する調査』でも、新聞・テレビを情報源として重視する人ほど、比例で民主党に投票していたことが判明しているからです(図表)。
図表 情報源と比例区投票先の関係
(【出所】(社)日本経済研究のレポートのP7を参考に著者作成)
この点については、何度繰り返しても、強調のし過ぎではありません。
つまり、2009年の総選挙とは、メディアが印象操作だけで自民党政権を貶め、もって民主党の圧勝をもたらしたという意味で、日本の民主主義史上の最大の汚点であり、日本の新聞・テレビは、この日をもってジャーナリズムを名乗る資格を喪失したと断じても良いでしょう。
総括をしていない民主党とその後継政党
ただ、それ以上に恐ろしいのは、2009年9月に始まり、3年3ヵ月続いた民主党政権を巡って、政権交代のきっかけを作ったオールドメディア側も、政権を担った民主党自身も、総括らしい総括をいっさい行っていないことでしょう。
当ウェブサイトでは断片的に触れてきましたが、民主党政権下では日米関係を筆頭に、日中、日韓など、さまざまな外交関係がメチャクチャになりましたし、東日本大震災の発生直後には福島第一原発事故も発生し、日本全国でおもだった原発が稼働を停止しました。
個人的には、東日本大震災直後の2011年3月、東京の夜空を見上げて、「政権交代からたった1年半で、どうしてこんなことになってしまったのか」と物悲しくなった記憶があります(なお、著者自身は2009年の選挙で民主党には投票せず、自民党に投票したクチです)。
こうした民主党政権の総括を行ったのは、自民党です。
参議院自民党が2012年8月に公表した『民主党政権の検証―迷走の3年を総括―』と題した46ページのPDFファイルによれば、「民主党政権の根源的問題」、「国民への裏切り」、「不祥事の続出」という3章に分けて、民主党政権の3年3ヵ月の失敗が詳しく触れられています。
もちろん、この文書自体、民主党の「ライバル政党」である自民党が作ったものですので、ともすれば「民主党憎し」のあまり、感情的で客観性・公正性を欠いたものである、といった批判が出てくる可能性はあります。
原因究明を拒絶する者たちに成長はない
ただ、本稿で問題視したいのは、その部分ではありません。民主党やその後継政党である民進党、立憲民主党などが、この自民党のペーパーに匹敵するような検証資料を作成し、公表したという事実がない、という点にあります。
民主党やその後継政党、あるいは2009年の犯罪的報道を担ったオールドメディアたちが、「みずから虚心坦懐に民主党政権を検証する」、「政権交代の原因となった問題報道を検証する」、という態度を取っていない以上、民主党政権を総括するための資料は、民主党やオールドメディア以外に求めざるを得ないのです。
よって、少なくとも現状においては、この参院自民党の2012年8月の資料こそが、民主党政権を最も客観的かつ公正に総括したもののひとつであると断じざるを得ません。
2012年12月の衆院選で自民党が地滑り的な勝利を得て政権を奪回し、故・安倍晋三総理らが馬車馬のごとく働いたにも関わらず、いまだに電力供給不安などの社会的課題を解決し切れていないのも、結局はたった3年3ヵ月の民主党政権が遺した負の遺産があまりにも大きすぎたからでしょう。
さて、「悪夢の民主党政権」という表現を使い始めたのは安倍総理です。立憲民主党や一部のオールドメディアは、この「悪夢の民主党政権」という表現には強く反発しているようですが、正直、当ウェブサイト的にはむしろ逆に、「悪夢の民主党政権」という表現ですら、「生ぬるい」と考えています。
ただ、この「悪夢の民主党政権」という表現を敢えて使うなら、「悪夢は一度で十分」、という言い方ができるでしょう。
人間、誰しも初めてのときには失敗するものですし、百歩譲って民主党もそれまでまともに政権を担っていた経験者がほとんどいなかったがために、さまざまな失敗をしたこと自体は仕方がない、という側面があると言えなくはありません。
しかし、人間にとって重要なことは「成長」です。
失敗を糧に、その失敗の原因を追究し、原因を究明することで、同じような失敗を繰り返さないようにするものであり、こうした失敗の積み重ねの上に成功があります
原因を究明しようとしないという時点で、民主党やその後継政党、さらには日本の新聞・テレビを中心とするオールドメディア業界は、自らの成長を放棄しているようなものであり、この時点で彼らに対し信頼を置くことはできないのです。
防衛大臣がいないネクスト内閣
こうしたなか、ここ数日で最も驚くべき話題のひとつは、おそらくはこれです。
【両院議員総会】泉「次の内閣」発足 「誰もが活躍できる、わが国を目指していく」と泉代表
―――2022/09/13付 立憲民主党HPより
立憲民主党によると、昨日の両院議員総会で、泉健太代表自身が「ネクスト総理」に就任する「次の内閣」の設置を了承したのだそうです。
「泉代表(ネクスト総理大臣)は、前執行役員の役員の半数を女性にしたことで党務でのジェンダー平等を進めることができたと語り、『次は政策における各分野のジェンダー平等を進めてまいりたい』と述べ、『誰もが活躍できる、わが国を目指していく。そのために、みんなで一丸となって頑張りたい』とあいさつしました」。
なんだかよくわかりませんが、「前執行役員」とは「全執行役員」の誤植でしょうか?
それはともかく、昨日の総会で承認されたのは、「次の内閣」の閣僚人事と党役員の追加選任だそうです。立憲民主党ウェブサイトをもとに、その内容を眺めておくと、次のとおりです(敬称略)。
党役員の追加選任
- 最高顧問:菅直人・衆院議員
- 最高顧問:野田佳彦・衆院議員
- 政治改革推進本部長:渡辺周・衆院議員
- 新型コロナウイルス対策本部長:小川淳也・衆院議員
立憲民主党 泉「次の内閣」名簿(2022年9月13日)
- ネクスト総理大臣 泉健太
- ネクスト内閣官房長官 長妻昭
- ネクスト内閣府担当大臣(災害対策・消費者・科学技術・デジタル・行政監視) 杉尾秀哉
- ネクスト総務大臣(地方創生・倫理選挙) 野田国義
- ネクスト法務大臣 牧山ひろえ
- ネクスト外務・安全保障大臣(拉致問題・ODA) 玄葉光一郎
- ネクスト財務金融大臣(予算・決算) 階猛
- ネクスト文部科学大臣 菊田真紀子
- ネクスト厚生労働大臣 早稲田ゆき
- ネクスト農林水産大臣 金子恵美
- ネクスト経済産業大臣 田嶋要
- ネクスト国土交通・復興大臣(沖縄北方・復興) 小宮山泰子
- ネクスト環境大臣(原子力問題) 近藤昭一
- ※かっこ内は所管委員会
…。
いかがでしょうか。
察しの良い方はお気づきかと思いますが、「ネクスト防衛大臣」がいません。
もしかすると「外務・安全保障大臣」が防衛大臣を兼ねているのかもしれませんが、残念ながら現在の日本においては、外相と防衛相を兼務するのは難しいでしょう(安倍政権下で稲田朋美氏の防衛大臣辞任後に岸田文雄・現首相が一時的に外相と防衛相を兼務した事例はありますが…)。
また、デジタル大臣や復興大臣は兼務ですし、経済再生担当大臣、経済安全保障担当大臣にいたっては兼務ですら存在していません。経済は「泉健太ネクスト内閣」においてはまったく重視されていない、というメッセージでしょうか。
たとえば「コロナ5類指定」はどうするのでしょうか?
いずれにせよ、「ネクスト大臣」に任命されたのであれば、まずはご自身の「専門」分野について、彼らがどこまでちゃんと勉強するかが見ものです。
こうしたなか、個人的に注目している話題があるとしたら、そのひとつがコロナの5類指定に関する見解ですが、ためしにネクスト厚労相に任命された早稲田ゆき氏のツイッター・アカウントを覗いてみたところ、少なくとも9月13日以降、「コロナ5類指定」に関する話題は、現時点ではまだ出ていませんでした。
あえて言うならば、こんなツイートが「就任の抱負」のようなものかもしれません。
これについては加藤勝信厚労大臣とぜひ「厚生労働行政」で討論を行っていただきたいと思う反面、正直、この就任直後のツイートを見る限り、あまり期待して良い者かどうかは疑問でもあります。
なお、この「次の内閣」を報じた時事通信の記事が、また強烈です。
立民、「次の内閣」発足 政権交代目指し、効果は不透明
―――2022年09月13日17時42分付 時事通信より
というのも、この記事には「次の内閣」の狙いについて、こんな記述があるからです。
「政策立案の体制を強化し、政権担当能力をアピールするのが狙いだ」。
正直、この「次の内閣」が大々的にアピールしているのは、立憲民主党の「政権担当能力」ではなく、「政権担当能力のなさ」ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
View Comments (22)
なんか、発表しない方がよかったのではないかと思います。(笑)
どうも泉代表のツイートによると、外交防衛は兼務のようです。
でも、文面から現れる雰囲気では、「忘れてた」か「防衛軽視」のように感じます。
彼らの防衛費増の批判のしかたは「軍事一辺倒ではダメ」なんですが、外交を軽視しようと言ってる議員は与野党問わず一人もいないと思います。
彼らが言ってるのは「外交一辺倒にしろ」なんですよ。それが現れてるんじゃないですかね。
今や各国が外交防衛2+2会合やってるのに、彼ら政権を取ったら一人で対応するんでしょうかね。
もしかすると、防衛大臣と国家公安委員長は連立を見越して共産党枠として見ているのではないでしょうか?
大陸の本部からそのような指示が飛んでいるのかもしれないですね。
元ジェネラリスト様
科学技術とデジタルも災害支援や消費者や行政監視(監視なんですかね本当に?三権ぶんぶくはいずこへ…)と兼務で内閣府担当だと…
よほど科学技術・IT化を舐めてるとしか思えません。
健太の反応も「そんなの知ってらい!」ってガキの反応だし…沖縄の自称革命少年ゆたぽんに影響されているんでしょうか?
当選人で現職国会議員の男女比が立憲民主党ですら半数でないのに、大臣は半分コするのって男性差別か女性特権なんですかね?
日本に鬱陶しいLGBTQを出来れば持ち込まないで貰いたい。
あの方法でなくても男女の(更に細分化されているみたいですが)平等は可能だと思うのですが。
人間として平等を目指せば良いのになぜか太古の過去にまで遡って「女性の権利の確立と謝罪て賠償」みたいになっていて違和感まみれ。
男性を侮辱する権利が女性には過去の分まであると言いたげです。
とりあえず、立憲民主党が発表した内閣案を私は拒否します。
翻ってみて…岸田さん…本当にこども庁とか間抜けなものやるの?
脱力感全快です。
なんか本当に韓国の女性家族部みたいだ…
ってことは利権の巣窟つくるのかな?
すごく嫌だ。
企業の話ですが政府の音頭でできた「女性管理職枠」のせいで、本人も部下も会社も、みんなが苦労する姿を多数見てきました。
こども家庭庁って、総裁選に野田聖子が出なかったらできなかったんじゃないかと思いますけど。
あの辺はとてもチャラい匂いを感じます。
クラウゼヴィッツの戦争論でいちばん有名な文に「戦争は外交の一手段である」があります。
あの党が外交方針を大きく変えることを構想しているのであれば、
外交・軍事をセットで一から作り直すことになりますので
トップは1人でも良いんじゃないでしょうか。
その代わり、有能な副官・部下を多数抱える必要がありますが。
どんな成果物が発表されるか、楽しみですね。
これだけは止めてもらいたいものです。
「食事を口に含んだまま、この資料を読むんだ・・・そう、これが本当の『噴飯物』だ。」
立憲の組織には部会すらありませんし、まあ多分、何も考えていないでしょうね。w
玄葉(げんば)に丸投げだと思います。
メディアクーデター、また始まってますからね。正直今すぐは無理でも財務相の傀儡の政権が続いたら1年2年後は分からないと危惧しております。
多分、防衛は中国人民解放軍にアウトソーシングするおつもりなので、敢えて、余計な大臣はいらないとのお考えではと推察します。それにしても、私の見識の無さなのか?玄葉光一郎さん以外は知らない人ばかりです。人物はどうあれ、確かに、悪夢は一度で十分だと思います。二度目は本当に中華人民共和国日本自治区になってしまいそうです。運良けれが沖縄以南が台湾省に編入されるだけで済むかもしれませんがと、本気で思っています。台湾有事は日本有事、これを理解できない人は政治家としての資質が根本的に欠落していると思います。
中学生の学芸会以下の幼稚なレベル。全くお話にならない。
内容にもいちいち突っ込む必要すらない。国民をバカにして楽しんでいるだけに等しい。
そういやこんなものを「速報」として報じたオールドメディアが存在するようでw
民主党政権の凶事はもうたくさん。
こんな連中は国会におけるバランサーの役目すら果たせない以上、即刻全員議員辞職すべき。
こんな連中のままごとのために国民の税金から歳費や政党助成金を渡している訳ではない。
やっと、世代交代か、と思ったのですが、よくみると、まだまだ、ですね。
もう、6年くらいはかかるのかな。
政党支持率数パーセントしかなくて、維新にも抜かれつてあるのに何やってんだこの人たち…(呆れ)
政治家ごっこ内閣ごっこにしか見えない
防衛のことなどまじめに考えていないことを、こんなにストレートに出してくるとは。
ここだけは正直でよろしいと言うべきなのか?!
塵も積もれば山となると言いますが、いいくら積もろうとも塵は塵。
ゴミも積もればゴミの山、悪臭を放つ迷惑きわまりない意外何物でも無い。
これはもはやゴミの山以下、ゴミの方がリサイクルできてまだマシ。こんな事してる暇があるならきちんと仕事しようよ。
恋ダウドさま
いや、このままオママゴト擬きをずっ~~~~~と続けてくれてて結構かと。
彼の政党が国会で仕事をするだけでどれ程国民の生活が脅かされたことか!
コロナ初期にモリカケサクラでどんちゃん騒ぎをしていた彼らの姿は生涯忘れられるものではありません。
ネクスト内閣の面々にはオママゴト擬きを国政の場に持ち込まず党の中でのみお遊戯に没頭されんことを願うばかりです。
コメント失礼します。
政権奪取してないのに内閣の妄想を垂れ流す意味が分からないです。去年だったか、枝野が選挙無しで政権寄こせとか抜かしてたのを思い出しました。
合同ヒアリング、参拝制限、脅迫、CLP青日本菅野完への私的な献金、共産党と協力、脱糞、性器露出等の担当大臣が居ないのは立憲共産党としてはまずいのでは?
誰を大臣に据えても、どうせ日本国の為には働かないネグレクトキャビネット。
人気取りしたいなら、
「天下一ブーメラン罵倒会」
とかやれば良いんじゃないですかね。ブーメラン王を日本国民の選挙(電脳アンケートが安くて楽かな)で決めさせたら盛り上がるかも知れません。誰が頂点に立つのか少しだけ気になります。
メディアクーデータよりも報道犯罪と呼ぶべきではないでしょうか?