韓国政府・外交部の当局者が、大法院の資産売却命令とは無関係に「解決」を模索し、自称元徴用工との対話を続ける、という方針を示したそうです。正直、「解決」の定義が異なっているため、ボタンを掛け違えたまま議論しても、解決策は出てきません。個人的な主観も交えて申し上げるなら、自称元徴用工問題はこのまま資産売却命令がズルズルと先送りされる、というのが、最も実現可能性が高いシナリオではないかと思う次第です。
資産売却命令もなにも…そもそも売却不可能な資産ばかり
8月19日以降、韓国メディアではしばしば、自称元徴用工判決を巡る資産売却命令が8月中に確定する(かもしれない)、などとする話題が取り上げられています。
ただ、これについては昨日の『徴用工「資産売却命令」は本当に今週中に確定するのか』あたりでも指摘したとおり、当ウェブサイト的には、本当に資産現金化命令が確定するのかどうか、あるいは現金化命令が確定したとして、本当に現金化に踏み切れるのかどうかについては、「極めて疑わしい」、と考えています。
自称元徴用工問題と日韓関係「強制終了」「強制徴用問題を巡る日本企業の資産売却命令が、早ければ今週中に確定してしまう!」、「大変だ!」、とでも言いたいのでしょうか。自称元徴用工問題を巡る資産売却命令に関する韓国メディアの記事が、なかなかに尻切れトンボです。ただ、韓国側に資産売却命令の決定ができるかどうかという論点もさることながら、そもそもこの問題自体、解決する必要があるものなのかどうかについても、考えておく必要はあるかもしれません。「自称」元徴用工問題:自称元徴用工の5類型当ウェブサイトでいう... 徴用工「資産売却命令」は本当に今週中に確定するのか - 新宿会計士の政治経済評論 |
なぜなら、もし原告側が本当に裁判を通じて損害賠償を実現しようと思っているのならば、常識的には金銭債権(とくに売掛債権などの商事債権)を差し押さえるのが鉄則であり、商標権だの、特許権だの、非上場株式だのといった使い物にならない資産を差し押さえたとしても、ほとんど意味はないからです。
たとえば『再)民事執行手続で確認する知的財産権換金の非現実性』あたりでも検討したとおり、知的財産権の売却自体は法的には不可能ではありませんが、その売却価値の算定手続の煩雑さもさることながら、実際に競売手続を開始したとして、その資産を買う人が出現するという保証はありません。
(本コンテンツは再掲記事です。)著者自身、とある理由で民事執行法について調べてきたのですが、やはり知的財産権の強制執行というものは、かなり時間もコストもかかるため、現実的ではない、というのが暫定的な結論です。本稿では著者自身の実体験も踏まえつつ、民事執行法の規定などをもとに、不動産、金銭債権、動産、その他資産(とくに知的財産権)についての強制執行(売却命令)について概観しておきたいと思います。【お知らせ】本稿は今朝の『民事執行手続で確認する知的財産権換金の「非現実性」』とほぼ同じ内容のコンテ... 再)民事執行手続で確認する知的財産権換金の非現実性 - 新宿会計士の政治経済評論 |
あるいは『非上場株式の売却、「法治国家では」とても難しい』などでも説明しましたが、非上場株式の場合はそもそも売却価値の算定が難しいうえに、強制的な競売が実現したとしても、「譲渡制限条項」がある場合には、株主としての権利の移転については事実上、不可能です。
数日前より、読者雑談記事などで議論されていたのが、「非上場会社の株式を差し押さえたとして、どうやってそれを売却することができるのか」、というものです。これについては以前、『非上場株式の売却を「時限爆弾」と呼ぶ韓国メディア』で、某隣国で日本企業の在韓資産が差し押さえられているという問題を巡って、「日本企業の資産が換金される可能性は低い」と述べましたが、「法に定められた手続をまったく守らない国」において、日本と同じ議論が成り立つのか、という点については、あらためて議論しておく価値がありそうです。... 非上場株式の売却、「法治国家では」とても難しい - 新宿会計士の政治経済評論 |
すなわち、会社法制や知財法制などの観点からは、自称元徴用工側の資産売却は非常に難しいのですが、これに加えて自称元徴用工側の代理人の弁護士らに、これらの会社法制や知財法制などの専門的知見があるようにも見受けられません。
目的は謝罪利権の確立:ならば…
以上より、自称元徴用工側の目的が、「資産の現金化」にはないことは明らかです。
おそらく彼らの目的は「資産の現金化」ではなく、「日本企業の謝罪」にあります。あるいは、自称元慰安婦問題と同様の「謝罪利権」の確立、とでもいえば正確でしょうか。
「謝罪して済むなら、謝ってしまえば良いではないか」。
こんなことを述べる人も居るかもしれませんが、これは大きな間違いです。
自称元慰安婦問題では、下手に韓国に謝罪してしまったがために、「戦時中、日本軍が朝鮮半島で少女20万人を拉致し、戦場に強制連行して性的奴隷として酷使した」とされるウソが、世界中でばら撒かれてしまいました。この轍を踏んではなりません。
したがって、日本政府や日本企業にとって、最低限必要なことは、「謝罪には絶対に応じないこと」です。
(※個人的には、「謝罪に応じない」どころか、そろそろ韓国に対し、「ウソをついて日本の名誉と尊厳を傷つけたこと」に対する請求書を突き付けなければならない局面である、とすら考えてはいるのですが、その詳細については、当ウェブサイトでも少しずつ議論していきたいと考えています。)
「解決」の定義が異なっている
さて、こうしたなか、自称元徴用工問題に関連し、やはり「解決」の定義が日韓でまったく異なっていると痛感せざるを得ない話題がありました。これに関連し、韓国メディアに昨日掲載された記事を2本ほど紹介しておきたいと思います。
ひとつめは、これです。
韓国外相 徴用被害者と近く面会へ=「意見を傾聴」
―――2022.08.30 14:30付 聯合ニュース日本語版より
韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)によると、韓国政府外交部当局者が30日、朴振(ぼく・しん)外交部長官(※外相に相当)が、近日中に「日本による植民地時代の徴用被害者」(※原文ママ)と面会すると明らかにしたのだそうです。
この外交部当局者は聯合ニュースの取材に対し、「被害者の意見に耳を傾けるために可能な限り努力を続ける」、「(被害者に)直接会って意見を傾聴し、意見が十分に受け入れられるように努力する」、などとも述べたのだとか。
この時点で、ボタンの掛け違いがあります。「解決」の定義が異なっているからです。
そもそも日本側が要求しているのは「国際法違反状態の解消」であって、自称元徴用工の救済ではありません。
というよりも、自称元徴用工に対し、「被害に遭った」という彼らの主張を認めて救済するのか、それとも「自称元徴用工問題というウソをつかって日本との外交関係を破壊したこと」に対して罰を与えるのかについては、正直、私たち日本人が決めることではありません。
韓国側が好きにすればよい話です。
首脳会談で合意できるレベルでもない
こうしたなか、この聯合ニュースの記事では、「韓日関係の最大の難題となっている徴用被害者への賠償問題は、重要な分岐点を迎えている」などとして、次のように述べています。
「政府は先月から3回にわたって官民協議会を開催し、解決策を探るため各界の意見を聞いたが、被害者側は3回目の会合に出席せず進展がみられない状況だ」。
まるで「日韓両国の問題」であるかの書き方ですが、これは間違っています。3回にわたる官民協議会がまったく実を結ばなかったことは間違いないとは思いますが、そのような協議会を開くと決めたのも韓国政府であり、協議会がうまくいこうがいくまいが、正直、日本にとっては関係のない話だからです。
ただ、もっと理解できないのは、次の記述でしょう。
「韓国大法院(最高裁)は近く、徴用訴訟の原告が差し押さえた日本企業の韓国内資産の売却(現金化)命令を出す可能性があり、政府は解決策の提示を急ぐと予想される」。
「一部では韓日政府が解決策に合意した後、来月に国連総会が開催される際に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と岸田文雄首相が首脳会談を行って問題の決着を図る可能性も持ち上がっており、そのためには時間が差し迫っている」。
この2つの文章、意味がつながっていません。
そもそも韓国大法院が売却命令を出したとしても、それは純粋な韓国の国内法手続の話ですし、資産売却命令の前の段階で、すでに2018年10月と11月に韓国の裁判所が自称元徴用工判決を出した時点で、韓国が国際法違反を行った無法国家だという事実は確定してしまっているのです。
また、韓国における違法状態を巡っては、日韓が首脳会談を行ったくらいでは解消することなどできません。そもそも2018年の大法院判決自体を無効化するためには、韓国国内で特別立法を行うなど、何らかの努力が必要だからです。
国会で「2018年10月と11月の判決については無効とする」とする特別立法を行うのか、それとも軍事クーデターを起こして国会議員や最高裁判事を拘束し、裁判所を強制的に止めるのかは知りませんが、これらをどう処理するかについても、結局は韓国が自由にすればよい話です。
判決と無関係に解決策模索へ?
その一方で、同じく聯合ニュースにはこんな記事も出ていました。
日本企業の資産現金化 最高裁の最終決定と関係なく解決策模索へ=韓国
―――2022.08.30 18:50付 聯合ニュース日本語版より
こちらの記事は先ほどのものと比べて短いものです。日本企業の資産現金化命令が来月4日に確定する可能性があることを踏まえ、韓国政府外交部当局者が30日、記者団に対し「そのような期限を念頭に置いて(解決策作りを)推進しているわけではない」と述べたのだそうです。
そのうえで聯合ニュースは、こう伝えています。
「ただ、韓国政府は大法院による最終決定により、売却命令が確定しても現金化のためには資産価値の評価や公売などの手続きを経る必要があるため、その間にも被害者と日本の同意を得られる解決策を探る努力を続ける方針だ」。
意訳すれば、「売却命令が確定しても売却スルスル詐欺は続きます」、ということでしょう。くどいようですが、日本が求めているのは自称被害者の救済ではなく、国際法違反の解消だからです。
また、1本目の聯合ニュースの記事にもあった、「国連総会で両国首脳が対話する」という話題に関し、この当局者は次のようにも述べたのだとか。
「国連総会に両国の首脳が出席し、自然に顔を合わせる機会もあると思う。もし両首脳が会うことになれば韓日関係の改善に向けた対話があり得ると考える」。
残念ながら、この見通しは少し楽観的過ぎます。岸田文雄首相は自民党内の権力基盤が弱いうえ、日韓関係ごときにそこまで政治的リソースを割く余力はないからです。
もちろん、日韓首脳会談くらいなら実施するという可能性はあるでしょうが(とくに外務省の一部勢力あたりがそれを画策しているフシもありますが)、それと同時に現在の日韓関係自体、1回や2回、首脳会談を行ったくらいで何とかなるものではありません。
いずれにせよ、その「9月4日に大法院判事が退官する前に現金化が確定する」のだとしても、その9月4日が日曜日であるため、実質的には9月2日まで、あと2日しか猶予がありません。
個人的には何となく、このまま判決がなし崩し的に先送りにされる、というのが、最も可能性が高いシナリオではないかと思う次第です。
View Comments (17)
私も相変わらず「売却するする詐欺」が今後しばらくは続くだろうと見ています。
韓国内ではもう誰も処理したくない地雷になっているので、誰も触れないでしょう。
唯一韓国が国際法と条約を守れる形で解決できる可能性があるとしたら、
日本に無視され冷遇される事による悪影響に耐えられなくなり、
「結果を出せない”役立たず”はなかった事にしろ!」と韓国人が
自称徴用工とその関係者を社会的に抹殺してしまう……そんな展開でしょうかね?
まあ、それが出来てもレーダーの件とか竹島の件とか仏像の件とか、
韓国側が百回くらい土下座を繰り返す覚悟がないと無意味に近いでしょうけど。
旨記事本文にありますが、どのようにして、事後の立法で、それ以前に確定した判決を無効にできるのでしょうか。
論拠をご教示願います。
「韓国だから」の一言で済ませるのは流石にアレなので、
「韓国は事後法・遡及法の実績がある」が答えになると思います。
”事後法 韓国”でググってみると、面白いページがいくつか発見できるかと。
コチラをどうぞ
【朝鮮半島を読む】韓国はなぜ約束守れない 「遡及法」がまかり通る国
https://www.sankei.com/article/20190120-GY7AUNBUVZJZNIYK2XTKHINPSY/
韓国では事後法・遡及法が成立する理由
https://nihonsinwa.com/page/2535.html
ここのブログ主さんに聞くよりも、韓国政府に聞いたらどうですか?
(なんとなくです)
法の不遡及は、被告に有利な変更を禁ずるものではないのかと。
事後の法による罪状の追及は厳禁。無効化はその限りではない。
ではないのでしょうか?
>国会で「2018年10月と11月の判決については無効とする」とする特別立法を行うのか、それとも軍事クーデターを起こして国会議員や最高裁判事を拘束し、裁判所を強制的に止めるのかは知りませんが、これらをどう処理するかについても、結局は韓国が自由にすればよい話です。
この記述、ブログ主さんが訴求立法しろと言っているんじゃなくて、「どうやるのかは知らないが、韓国がとにかく違法状態お何とかしろ」と言ってるんですよ。その具体的な方法論をブログ主にぶつけたところで意味がない。だから韓国政府に聞けってこと。
仮に大法院で被告の抗告を棄却する旨の決定がなされたとしても、その後、延々と様々な手続、例えば公示送達だの資産査定だの競売手続だのに時間をかけ、数年単位で引き延ばすと予想します。そうこうしているうちに大法院院長が交代、政権も交代?
無限ゲームの様相。ヤレヤレ。。。
この自称元徴用工問題に限らず、"全て日本が悪い"という教義のカルト宗教に韓国ははまり込んでるので、"謝罪と賠償"というお題目を永遠に唱え続けるしかないのです
ゴールポストを動かし続けるカルト団体の要求には屈してはいけません
現世での彼らの救済は不可能なので、ソーシャルディスタンスをとって生暖かく見守りましょう
日本が韓国側と「問題解決」の定義が違っているのではなく、「韓国側の認識がおかしい」、ということですね。
彼らの言う「問題解決」=「日本が韓国の要求を呑み、譲歩させる」ことですから。日本のメディアで「韓国が関係改善に向けて…」と報道されると、韓国は関係改善の意思があるんだと国民は誤解するでしょう。彼らの言う関係改善とは、「韓国側の要求が通り、韓国が得する」ことであり、韓国は一切、改善の努力をしません。
話を聞くのすら無駄だということでしょう。
韓国(や5歳児)と国際法の話をするのは無駄。韓国が理解できるのは制裁だけ。どんな恐ろしい制裁が可能なのかに話の焦点を絞る方が話が通じると思う。韓国と中国が分かり合えるのは中国は制裁の話をするから。日本は遣唐使を派遣して中国の優れた韓国対処術を学ぶべきよ。韓国の尊敬を受けたかったらまずは制裁、次に制裁。親切にしたり助けるのは馬鹿にされる元。真面目な話。ああ、書いてて嫌になってきた。
「自称元徴用工問題に関連し『解決』の定義が日韓でまったく異なっている」というのは全く同感で、尹錫悦政権が「司法の判断を尊重する」とか「被害者の意見が十分に受け入れられるように努力する」とか言っている時点で、日本政府が求める『解決策』が提示される可能性はゼロだと思います。
しかし、「自称元徴用工問題」や「自称元日本軍性奴隷問題」について、日本政府が求める解決策が韓国政府から示されないことは、今後、韓国政府が日本政府に対して「日韓通貨スワップ協定」や「日韓漁業協定」の締結などの協力を求めてきた場合に、それを拒絶することが出来る説得力ある理由になりますから、このまま問題が『解決』されずにズルズルと推移することは、日本にとって決して悪い話では無いと思います。
日本の要求はシンプルで「(過去も含めて)約束を守れ」の一点のはず。それが出来ない相手と如何なる合意をしようが解決になるわけがない。
「資産現金化命令が来月4日に確定する」と言って、日本の譲歩を促したが、日本がスルーしたので、取り下げた、ってことでしょう。
この手のオオカミ少年にいちいち反応するのも疲れるので、
1.現金化が実行されれば、日本は報復措置を取る
2.対案が出来て、韓国内の合意が得られたなら、その内容は聞いてあげる(日本側に出来ることはない)
というこれまでの「一貫した立場」で、よろしいのではないですか。
朝鮮半島波高し。
東北地方の日本海側には「密入国を見つけたら連絡を」の看板が有ります。
以前 管総理大臣が「監視TV網を海岸線に設置」と言っていたような気がします。
今現在はロシアが北海道は俺の物。と言ってるようですしリアルタイムの監視装置が必要だと思います。なんなら1万m上空に監視用ドローンを隙間無く配置運用もいいかも
こんなことを言い出したのも日本人は平和ぼけ時間が長すぎました。
役人も同様で急に安保予算を増額しても心は平和ぼけのままです。
目の前に安全保障案件は転がっているんだ。という意識付けのためです。
東日本大震災後三陸地方では津波到達地点に標識が設置されました。
しかし中南海地震エリアに津波の警戒看板は有りません。高い地点への避難路も有りません。
※私が見つけられないだけかもしれませんが目立つところには有りませんでした。
我々の総意が意識づけられないことには友好な対策と実行は難しいでしょう。
ところでドローンは映像監視に特化し一週間程度上空に留まり100万円程度で化?
映像分析は別ならば可能では無いでしょうか