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やっぱり出た!「徴用工問題解決に向け日本も努力を」

自称元徴用工問題の資産現金化決定を韓国大法院が見送ったことを受け、予想どおり、韓国メディアからは、「日本も韓国との対話に応じなければならない」とする主張が出てきました。そもそも2019年に日本政府の外交協議や国際仲裁手続を無視したのは韓国の側なのですが…。ただ、こうした主張もちゃんと読んでいけば、むしろ日本の側の指針も見えてくる、というものです。

2022/08/22 15:00追記

本文中に誤植があり、内容を修正しております。なお、当ウェブサイトの仕様上、一時的に読者コメントが反映されない現象が生じていますが、順次手作業にて修正しておりますので、コメント反映まで今しばらくお待ちください。

結局大法院の決定は出ず…

自称元徴用工問題、すなわち「戦時中、日本に強制徴用された」と自称する者たちが日本企業を訴えている問題を巡って、先週金曜日にはひとつの「区切り」があるのではないか、とする観測がありました。

それは、自称元徴用工側が差し押さえている三菱重工の在韓資産(知的財産権)を巡り、その売却命令が出るのではないか、といったものです。

韓国の国内法の規定では、事件を受理して4ヵ月以内に審理を継続するかどうかを決定しなければならないとされ、三菱重工側が資産売却命令に対して提出していた再抗告についても、その期日が8月19日だったのです。

しかし、結論的にいえば、19日時点で大法院(※最高裁に相当)の確定判決は出ませんでした。土曜日の『資産売却判決は結局は出ず:「瀬戸際戦術」を待つ末路』などでも議論しましたが、結局のところ、韓国という国は「越えてはならない一線」というものを踏み越えるだけの勇気を持つ国ではないのかもしれません。

自称元徴用工判決問題を巡る日本企業の資産売却騒動については、結局、昨日の段階では結論は出なかったようです。大変に残念ではあります。ただ、この機会に指摘しておきたいのは、韓国は北朝鮮と並んで瀬戸際戦術を好むくにである、という点です。そして、その瀬戸際戦術は「無敵」ではありません。「相手の●●」に極端に弱いからです(「●●」に入る言葉は、すぐ後に続きます)。瀬戸際戦術と韓国瀬戸際戦術の特徴:無視されればお終い「瀬戸際戦術を使う者は、滅多なことではレッドラインを踏み越えない」――。正直、わかっていたとし...
資産売却判決は結局は出ず:韓国瀬戸際戦術を待つ未来 - 新宿会計士の政治経済評論

あるいは、「資産売却」を「ICBM発射」に置き換えれば、南も北も行動パターンがまったく同じではないかと思わざるを得ません。

「今月中に決定」?本当に!?

こうしたなか、韓国メディアの報道を眺めていると、いちおう、「遅くとも8月中に結論が出るだろう」、といった観測もあるようです。韓国メディア『中央日報』(日本語版)に今朝掲載されたこんな記事が、その典型例でしょう。

強制徴用賠償訴訟の韓国最高裁判事が来月4日退任…「三菱の現金化」今月内にも決定か

―――2022.08.22 07:11付 中央日報日本語版より

中央日報によると、三菱重工の韓国国内の特許権と商標権の売却に関する再抗告事件を巡り、このうち特許権の方の売却事件の主審の任期が2週間後の9月4日に満了するため、これを受けて「今月末には裁判所の決定が出る可能性があるという観測」が出ているのだそうです。

ただ、これも韓国のことですから、「結論を先送りしたままで退任」、という可能性だってあるでしょう。

この点、中央日報の記事によると、韓国の法曹界では大法院が「最終現金化に対する判断を覆す可能性は非常に低い」と見ているのだそうですが、逆に言えば、2018年10月、11月の自称元徴用工判決を覆すこともできず、さりとて資産現金化のトリガーも引けず、右往左往するだけの状況が続くのではないでしょうか。

やっぱり出た!「日本も協力を」

こうなってくると、絶対に出てくるのが、「日本も問題解決に協力しなければならない」とする見解でしょう。

探してみると、韓国の「左派メディア」とされる『ハンギョレ新聞』、「保守系メディア」とされる『朝鮮日報』(※いずれも日本語版)に、それぞれ、こんな社説が掲載されていました。

[社説]「現金化」先送りされた強制動員訴訟、韓日政府は外交的解決策を急ぐべき

―――2022-08-22 06:51付 ハンギョレ新聞日本語版より

【8月22日付社説】時間を稼いだ徴用賠償問題、前政権と現政権が共同で解決せよ

―――2022/08/22 07:52付 朝鮮日報日本語版より

(※なお、朝鮮日報に関しては、記事が公表されてから数日が経過すると読めなくなってしまうようですので、内容をご確認になりたいのなら、早めにお願いします。)

このうち朝鮮日報の方の社説では、今回の大法院の判断について、「韓日関係が破綻する前に韓国政府が解決策を模索できる時間的猶予を与えた」ものだとする見解を提示したうえ、「徴用賠償問題は直接的には4年前の大法院判決から始まったため、今回も責任ある判断と言えるだろう」と評しています。

そのうえで自称元徴用工問題を巡っても、いちおうは韓国の側にも過失があると言及しつつも、いつもの「韓日どっちもどっち」論に強引に持っていこうとしています。

「『57年前の協定(※1965年の日韓請求権協定のこと)の一行で全て終わった』とする日本の主張は受け入れられない」、「国民の請求権まで解決したと約束した韓国政府もその責任から逃れられない」などとしたうえで、次のように主張するのです。

日本も態度を見直すべきだ。隣国との歴史問題には絶え間ない努力と忍耐が必要だ。民間企業が解決しようとする努力まで日本政府がやめさせる理由はない」。

韓日関係は両国だけの問題ではない。両国が過去にこだわり対立を続ければ、米国を中心とする自由主義陣営による北東アジアの安全保障体制が完成しない。何が日本の国益になるかを考慮してほしいものだ」。

あたかも現在の自称元徴用工問題の責任が日本にもあるかのごとく言い募る記述には、いつもながら、素直に驚きます。ただ、朝鮮日報のこの記述はまだマシなほうであり、ハンギョレ新聞の社説の主張は、さらに強烈です。

韓日政府は解決策を導き出すために積極的な対話に乗り出さなければならない」。

手のひらも合わせてこそ音が鳴るように、日本政府も韓国政府の対話要請に積極的に臨まなければならない。1965年の韓日請求権協定ですべて解決済みという態度では一歩も進めない。加害国の日本政府がかえって韓国側に解決策を持ってこいという態度を示すのは、盗人猛々しいと言わざるを得ない」。

この場合、盗人猛々しいのは1965年の日韓請求権協定を否定する韓国の態度でしょう。

韓国の特殊性

いずれにせよ、どちらの社説も、明らかにおかしいといえます。

そもそも自称元徴用工問題自体が韓国側によるウソ、捏造のたぐいの問題であることに加え、1965年の日韓請求権協定によって日韓間の請求権の問題は完全かつ最終的に解決しているわけであり、したがって2018年10月と11月の大法院判決自体、韓国が一方的にやらかした問題だからです。

しかも、日本政府はこの問題の解決のために、2019年には日韓請求権協定に基づく外交的協議、国際仲裁手続などを韓国側に申し入れてきたのです。こうした日本側の誠意を踏みにじり、問題解決努力に応じなかったのは、韓国政府の側でしょう。日本の側にはただの1点も過失はありません。

もっとも、このあたり、歴史問題がいつまで経っても解消しない点について、特殊なのは「日韓関係」ではなく「韓国」だと指摘した、優れた韓国観察者・鈴置高史氏の指摘を思い出してしまいます。鈴置氏が6月に出版した『韓国民主政治の自壊』では、こんな指摘があります。

韓国を相手にしなくなったのは日本だけではない。米国も北朝鮮も、そして中国からもまともに扱われなくなった。自らの力を過信した傲慢な外交で、孤立の一途をたどったのだ。日韓関係が悪化したのも『日韓関係の特殊性』からではない。『韓国の特殊性』が原因なのだ」(同P165)。

この記述、何回読んでも参考になると言わざるを得ません。

闘いはまだまだ続く

なにより、著者自身の予測に基づけば、韓国は今後も自称元徴用工問題を巡って、「日本は交渉に応じよ」とばかりに「瀬戸際外交」を繰り返すでしょうし、おそらくこのままだと5年経っても10年経っても日本企業の資産現金化は実現しません。

というのも、日本企業の資産現金化を最も嫌がっているのは、おそらくは自称元徴用工の側だからです。

「資産現金化が実現すれば、日本政府が『対抗措置』を韓国に対し繰り出してくる」。

「韓日関係も破綻するかもしれず、そのときには韓国社会からは自分たちが『韓日関係破綻のきっかけをつくった』と批判されるかもしれない」。

彼らの目的について、こうした仮定を置くならば、自称元徴用工側の最大の目的も「日本の謝罪」にあるのではないか、という仮説が出てきます。資産現金化訴訟も、日本に頭を下げさせ、基金を設立することなどが目的であり、本気で現金化しようと思っているわけではないのでしょう。

だからこそ、日本の側はむしろ「資産売却ができるものならやってみろ」とする姿勢を維持するとともに、こうした無法を平気で働く韓国という国の日本経済に占める重要性を低下させること(いわゆる「日韓テーパリング」)に向け努力しなければなりません。

その意味では、「本当の闘い」はまだまだ続くのです。

新宿会計士:

View Comments (14)

  • どうでもいいような資産を差し押さえて、換金「するする」と言ってフェイントをかけながら日本の出方を見ている。日本が妥協すれば、それを突破口にまた何かをしてくる。
    日本が原則を曲げないので、じれてきているのだ。
    売掛債権の差し押さえをやると重工は回収ができなくなるので売らなくなる。
    重工以外から買えないもの、過去に買った機械の保守部品等、韓国側企業にビジネス上の不都合がでる可能性がある。国内からの批判、そして日本企業なしでは製造ができないという現実を見せられるのが何よりもいやなのだろう。

  • >隣国との歴史問題には絶え間ない努力と忍耐が必要だ。

     あ、じゃいいです。

  • ガキだねぇ。マトモに付き合うのも、憚れるレベルだ。戦後散々日本にタカり続け、支援という名の元に受け続けた技術供与のお陰で発展したのに、感謝処かおかわりの要求か。
    で、、自分たちで問題を大きくしておいて、解決に協力しろってか?あり得ないバカっぷりで空いた口が塞がらない処か脱力感たっぷりだ。それにしても岸田文雄総理はばかですか?アホですか?レーザー照射の件をあれだけ、韓国紙が報道したのに、抗議と責任者(文在寅だな)の処罰と謝罪を求めないとは。髭の隊長とかいう佐藤くんはなぜ騒がない?不思議なバカしかいないのか?世も末だな!

  • 手のひらも合わせてこそ音が鳴る >

    じゃぁ日本としては、手のひらを出さなければ済むだけの話ですよね。

    さようなら~!

  • 韓国が絶え間なくもたれかかってくるのを、うっちゃり、蹴飛ばし、投げ飛ばし続ける努力は必要かもしれません。

  • 独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (なにしろ、私は朝日新聞ではないので)
    本日の朝日新聞に、ソウル支局の朝日新聞記者が署名付きで「韓国には日韓関係改善の意欲があるが、日本には、それが見られない」という記事を書いてました。しかし鈴置説によれば「韓国は米からの圧力で、日韓関係改善のポーズをしているだけだ」ということです。もちろん、どちらが正しいかは分かりませんが、個人的には、米中の存在も考慮にいれている鈴置説の方が優れていると感じました。(今後、鈴置説の方が正しかったと証明された場合、名前まで出してしまった朝日新聞の記者は、その取材能力が疑問視されないのでしょうか)
    どうやら、天下の朝日新聞の記者にとって、(元)日経新聞記者は眼中にないのではないでしょうか。
    (朝日新聞の記事でない)駄文にて失礼しました。

  • >何が日本の国益になるかを考慮してほしいものだ
    韓国を頭数に入れない安全保障体制の構築が必要ですね♪
    ꉂ(*ノ∀`)ʱªʱªʱª

  • >彼らの目的について、こうした仮定を置くならば、自称元徴用工側の最大の目的も「日本の謝罪」にあるのではないか、という仮説が出てきます。資産現金化訴訟も、日本に頭を下げさせ、基金を設立することなどが目的であり、本気で現金化しようと思っているわけではないのでしょう。

    ヤクザに因縁付けられてこちらに非がなくても
    当事者の舎弟が
    アニキの顔立てて~や、頭下げてくれたらええねん。
    で頭を下げる。
    その後、お金の請求が、、、え!こっちに非はありません。
    なに言うてんねん、あの時頭下げたやないか、あんたが悪いと認めたから謝罪したんやろ。

  • 彼らの言い分は、「食い逃げを控える褒美に、ご馳走してくれ!」ってこと。(理解不能)

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