朴振(ぼく・しん)韓国外交部長官が先日、カンボジアでの日韓外相会談で、林芳正外相に対して「韓国が関係改善のために望ましい解決策を探す過程で、日本が輸出統制撤回を通じて誠意ある姿勢を見せる必要がある」、などと述べたらしい、とする情報が出てきました。これが事実だとすれば、なんともどうしようもない話です。
朴振氏、林外相に「輸出管理解除」を要求か
久しぶりに、脱力してしまう記事を発見しました。時事通信が土曜日に報じたこんな記事です。
輸出管理解除求める 韓国外相、林氏との会談で―報道
―――2022年08月06日17時36分付 時事通信より
記事本文が146文字という非常に短い記事ですが、韓国メディアが6日、朴振(ぼく・しん)韓国外交部長官(※外相に相当)がカンボジアでの日韓首脳会談の場で、日本が2019年に強化した対韓輸出管理の解除を求めた、というものです。
時事通信は「輸出管理の強化」と正しい用語を使っていますが、想像するに、時事通信が(情報源を明示せずに)言及した「韓国メディア」の元記事では、「輸出『規制』」という誤った用語を相変わらず使用しているのではないでしょうか。
なぜなら、輸出管理の「解除」とは、あり得ない話だからです。
日本の場合、輸出管理は相手国を大きくグループAからDまでの4段階に分け、それぞれのグループに応じ、品目ごとにきめ細かく輸出許可の要領が定められています。最も優遇されているのはグループA、つまり昔の「ホワイト国」ですが、これも「優遇されている」というだけの話であり、管理対象から外れることはありません。
おそらくは「輸出規制」ないし「輸出統制」と発言
その一方、「輸出『管理』の解除」というおかしな表現も、朴振氏が「輸出『規制』の解除」と発言したのだとすれば、意味が通じます。
この点、「日本政府が強制徴用問題への報復として韓国への輸出規制を発動した」という虚偽のストーリーは、韓国ではまるで事実であるかのごとく、何度も何度も繰り返されてきたものであり、朴振氏が実際に「輸出規制の解除」を求めた、という可能性は、非常に高いのではないでしょうか。
ちなみに時事通信によると、この朴振氏の発言の情報源は韓国外交部高官なのだそうですが、この人物は次のようにも述べたのだそうです。
「韓国が関係改善のために望ましい解決策を探す過程で、日本が輸出統制撤回を通じて誠意ある姿勢を見せる必要がある点を強調した」。
ここではなぜか、「輸出『統制』」という、またしても意味不明の用語が出てきます。
「強制徴用」が誤りだと指摘されれば「強制動員」と表現を微妙に変えるなどの手口は韓国の常套手段ですが、「輸出規制」についても同様に、「輸出統制」だ、「輸出制限」だ、といった具合に、微妙に表現を変えているのかもしれません。
等式ではなく不等式が正解
さて、先週の『GSOMIA正常化以前に韓国がやらねばならないこと』などでも議論したとおり、どうも韓国国内では、次の(A)式や(B)式などが成り立っているフシがあるのです。
- (A)式:①日本の戦時中の不法行為=②2018年の強制徴用判決
- (B)式:③2019年の不当な輸出規制=④2019年のGSOMIA破棄
等式(A)、(B)の左辺は日本の不当な行為、右辺はそれに対する韓国側の正当な反応、というわけです。もちろん、事実関係でいえば、(A)、(B)の左辺はいずれも誤っているため、これを正しく書き換えると、(C)、(D)のような不等式になります。
- (C)①日韓請求権協定で解決済みの請求権<②国際法に違反する自称元徴用工判決
- (D)③日本政府による当然の措置としての輸出管理適正化<④韓国による一方的なGSOMIA破棄通告
つまり、韓国の行為は最初から100%、韓国の側のみに責任があるものばかりであり、これを解決するのに「誠意」もなにもありません。純粋に、韓国のみが不法行為をやめるより方法がないからです。
また、林芳正外相はあくまでも「外務大臣」であり、輸出管理適正化措置を管轄しているのは経産省ですので、管轄外のことを依頼されても、林外相がこれに応じることはできません。
その意味で、朴振氏の発言が事実だとして、本気でこれを発言しているならば単純に勉強不足、わかっていてこれを発言しているならば大変に悪質と言わざるを得ないのでしょう。
View Comments (28)
うーん?時事通信、もしくは「韓国メディア」とやらのでっち上げ……は
無さそうかな。いかにも韓国側が言い出しそうな事ですし、
でっち上げて何か得がある訳でもなさそうですし。
日本側がどう返答したか書いてないあたり、時事通信が本当は報道したくないけど、
一応したと言う事実の為だけに報道した印象を受けますねえ。
韓国は無条件に輸出してくれる国探したら?
しかし国産化成功ってウイークリーで言った様な気もするがw
韓国が取引を望むなら、戦時労働者問題と慰安婦問題・レーダー照射問題などが片付けば、Aグループ復帰を認めても良い、と人参をぶら下げるのも手だと思います。
片付く筈がありませんが。
但し、現金化が発生すれば、協定破棄と看做してDグループ入り&フッ化水素輸出の即時停止、も宣言するべきです。
韓国から言い出したのなら、ちょうど良い機会では無いでしょうか。
輸出管理は独立した案件なので自称被害者関係案件とは関連性がありません
たとえエサとあれどバーターに提示するのはヨロシクナイと愚考いたします
ナンモカンモ一緒くたにテメーに都合よく落とし込もうとする先方お得意の交渉方式にノッカル必要はないかと
勿論関係は無いのですが、それは日本の立場です。
外交とは相手(第三国を含む)がどう思うか、が重要なので、そう思っているならそこを上手く使えば良いのです。
直接的に「其れとこれと交換」などと言う必要は無く、匂わせておくだけで良いと思います。
そういう腹芸が林クンに出来るかどうかは知りません。
現金化すればDグループ行き、くらいは腹芸でなくても言えるでしょうけど。
マジェマジェする民族です。そんな民族と隣り合わせです。仕方ありません。
Dグループ入りと言わず、日本から韓国への送金(当然逆も)を禁止するのが一番です。
外為法でやれるのか難しいところですが(安保理決議を根拠とした資産凍結は多数実績があるのですが…)金の流れを止めてしまうのが一番有効です。
問題があるとすれば日本国内で韓国と取引がある事業者に打撃があることですが、カントリーリスクへの対策はしているものとして考慮から外してよいとします。
金融制裁も含めて、メニューを公表すべきでしょうね。
実際は法的に難しくても、「法的に可能かどうか検討中」くらいは言っておいても良いでしょう。
それで企業の脱韓も進むと思います。
岸田さんらしく、検討だけでお願いします。
「誠意」を要求するのは輩だけです。
> 人参をぶら下げるのも手だと思います
韓国に人参は不要ですし、無駄ですし、害悪とすら思います。
韓国に必要なのは(こちらの要求を通すには)、棒と鞭以外にあり得ません。
厳しく躾けて、逆らうとどうなるかわからせる以外に、手は無いと思います。
取りあえず、韓国政府が相当に追い詰められているということだけは垣間見える話ですね。
実際、林外相に言ったところでどうにもならないし、どうすればホワイト国に戻れるのかの説明もとっくの前に終わっている。
その上で、なんでこんな無駄なことを韓国側がしているかというと、国内向けのアピールでしょう。「日本相手に、言うべき事はガツンと言っているんだ」みたいな。
国外にはもう通じない話ですし。
日本にとっては、全部知ったことではない話ですが。
cruさま
こういった韓国政府が追い詰められている状況こそ、制裁すれば効果抜群なんですけど。
そもそも、昨年末「対韓制裁の具体策検討 自民WTが初会合」
https://www.sankei.com/article/20211208-J424LKSKS5PSLPHZUOZN2FPTKU/
って話があり、そろそろ検討結果の報告があってもおかしくない時期なんですが、全く音沙汰なし。こういった生ぬるい外交部会の行動も韓国を甘やかしている要因だと思います。そのくせ、政府を批判できる某髭議員って大したものだと思います。
生ぬるいというか、外交部会とやらに現実的な影響力は何も無いんじゃ?
ジロウさん
あくまでも、これは個人的かつ感覚的なものによる主張に過ぎないことを先に断っておきますが。
韓国による資産差し押さえは、言わば銃口をこちらに向け引きがねに指を掛けた状態と言えます。
では、実際に引き金が引かれたとして、どれだけのダメージかと考えると、日韓の経済規模、依存度から考えて、後の先でも十分反撃可能です。
急いで強く出る必要もありません。
本気度を伝える意味で、同額規模かつ、現金化しやすい韓国資産を差し押さえる(法的根拠をどうするかは思い付きません)とかして、同じく引き金に指をかけるくらいはしてもいいと思いますが。
そして、制裁の内容ですが、過剰な制裁も不要です。
やられた分だけ、韓国資産を没収。売却。「返して欲しくば」と、その金はドルで韓国政府に要求する。
生ぬるいと批判する人達も多いでしょうし。実際に韓国政府が金を払うとも思いません。
ただ、やられた分だけをやり返していると、対外的に説明しやすいです。
また、韓国政府の地獄はこれからです。
これで、韓国国民の感情は収まるわけなく。更にエスカレートします。
わらわらと、イナゴの如く韓国政府にたかって、もっと差し押さえろ。売却しろとなる可能性高いと思います。
それに応じて、日本企業の資産を不当に売却するなら、より日本による韓国資産の没収も加速します。
更には、より強力な制裁もやりやすくなります。それこそ、信用状の停止とか。
結果、韓国は日本企業の資産を売れば売るほど、外貨を稼ぐ手段を失い、経済的に孤立し破綻する。
そんなシナリオになるように思います。
佐藤氏については、彼の愛国心の強さや誠実さは好感を抱き、また敬意を抱いています。
ただ、真っ直ぐすぎる印象を感じています。
外交的な搦め手を使ったり、見抜く能力は自分の中では、判断保留な感じです。
期待していますが、もう少し様子をみたい感じですね。
韓国の仕事してますポーズに付き合う外務大臣って暇なのかなと思ってしまう。ま、こちらも会話してますポーズも必要なところはあるでしょうけど、ちょっとは。
そもそもが、韓国に誠意が無いことが、事の発端だからなx。
その韓国に、「誠意を示せ」と言われても、「頑張ってね」と言うしかないのよね。
ま、半導体が戦略物資なら、日本はこのままの状態を維持するしかないのですが。
自分は韓国との会談に反対の立場でした。
しかし、今は別に会ってもええんちゃう?と思うようになりました。
会談のデメリットは、
嘘の発表をされる。
これは、その都度訂正すればよいこと。
会うことで日本がスキを見せてる。
逆に会って日本がテコでも動かない事で絶望を与えられる。
韓国の国内宣伝に利用される。
勝手にしたら。
そう考えると、こちらがキチンと対処すればいいだけの話。
また、韓国が輸出寄生解除を求めたなら、
うちは規制などしてないから解除も出来ません。
と答えたらいいです。
韓国は生存感覚だけは鋭く今必死なんは、米国の半導体グループから外れると半導体生産がおぼつかなくなる事を恐れています。
唯一外貨獲得の武器中華グループになれば、なくなるからで、ただ米国グループに入ると中国投資が水の泡。それも避けたい。
なんとか、中華グループに入りつつ資材は日本から輸入出来ればというのが基本戦略か。
おそらくその道は死の淵に繋がってるけど、迷わず進むんだろうな韓国は。
正解は中華を捨てる事ですが無理でしょうな。
sey g 様
>『韓国、米主導の半導体同盟「チップ4」予備会議参加…中国排除回避に向け米を説得へ』朝鮮日報 2022/08/08 09:25
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/08/08/2022080880007.html
「ルールメーカー」として当初から会議に参画し、「チップ4」を中国排除の組織にしない方向に持っていくんだそうですよ。
海上封鎖まがいの恫喝に遭ってる台湾が主要メンバーの会議で、いったい何を言うつもりなんですかね?
伊江太様
いわゆる お前の中ではな案件ですね。
韓国脳内では可能なんでしょ。
知らんけど。
ただ、その説得が中華グループへの片道切符だと気づいて無いのでしょうね。
輸出寄生解除は誤字なのかもしれませんが、面白くて笑ってしまいました。
イラン核施設内に潜り込ませているアメリカのスパイが梱包のままのフッ化水素を見つけた。
製造番号をたどると日本から韓国へ輸出されたものだった。おそらく韓国がイランに密輸出したものだろう。これを公表するとスパイの命があぶないし、今後の諜報活動もできなくなる。
アメリカが日本と相談した結果、輸出管理の発動とホワイト国からの除外を行うことにした。
このあたりが真相にちかいのでは。
安倍総理のイスラエル訪問の際、ネタニヤフ首相主催の晩餐会で靴の形の器にチョコレートを盛って警告、日本から輸出された戦略物資がイランに流れている、と。
間もなくアメリカはイラン制裁を再開。その後、韓国がアメリカのセカンダリーボイコットを回避するためイランと物々交換協定を締結。その直後に韓国艦艇による自衛隊哨戒機に対する火器管制レーダー照射事件が起きる。
モサドでしょうね、最初に横流しを突き止めたのは。
いつも興味深い記事を有難うございます.
以前から書かれている事柄でモヤモヤしていたのがあったのですが,漸くモヤモヤに対して私なりに何故モヤモヤ感じていたのかが少し整理出来ましたので,以下に書かせて頂きます.
>(D)③日本政府による当然の措置としての輸出管理適正化<④韓国による一方的なGSOMIA破棄通告
そもそも,ブログ主様が間違いであると主張なさっている等式(B)だけでなく,この不等式(D)も含めて,③と④とが大小の比較対象となり得るという考えそのものが間違いです.
③は戦略物資の横流し疑惑など文政権下での韓国によるフッ化水素(特に単価の安いもの)の輸入量の異常な急増に対してきちんとした説明を求めても応じなかったことによる信頼感の喪失,言い換えれば韓国が北朝鮮やイラン等での核開発つまり国際的に許されていない核拡散に韓国が荷担している疑惑に対する対応として韓国に対する戦略物資の輸出管理を「無条件で信頼出来る国」から「必ずしも信頼出来ない国」に対するものに変更しただけです.
それに対して④は日韓両国が両国の各々と軍事協定を結んでいるアメリカの強い求めに応じて結んだ軍事情報の共有に関する協定を韓国が破棄すると主張して韓国がアメリカに「怒鳴られ」て実質的に撤回しつつも共有する情報の質・量が低下したままになっている問題です.
つまり③は国際的なルールである核拡散防止に関する対処の問題であって,④は一応は日米韓だけのローカルな問題であり,互いに全く質的に異なっており,問題として量的に異なっているのではない,つまり不等式や等式で比較できる代物ではありません.
この③と④とを不等式であれ大小比較できると考えること自体,韓国側の思う壺だと考える次第です.