日本への影響はほぼ皆無だった韓国のノージャパン運動
「強制徴用判決問題の報復として日本が2019年7月に講じた輸出規制」――。こんな表現が、韓国メディアには普通に踊っています。ただ、その輸出「規制」に対抗する韓国の「ノージャパン運動」が、日本の産業全体に打撃を与えたのかといえば、少なくとも貿易統計上はまったくそのような事実は浮かび上がってきません。韓国がノージャパンにいそしんでいた分野のうち、「食料品及び動物」や「飲料及びたばこ」は、日本の対韓輸出額としては、合計しても1%に満たないからです。
目次
対韓輸出規制とノージャパン
韓国メディアの報道を眺めていると、よく出てくる言説のひとつに、「強制徴用問題への報復として、日本政府は2019年7月、韓国に対する輸出規制を発動した」、とするものがあります。
これについては、韓国が「輸出規制」と称するもの自体、日本の法制上は根拠条文が異なっていることに加え、経済報復としてみるならばタイミングがおかしいこと、金額的にも数量的にも、日韓貿易においてあまり大きな影響を与えていないことなどを考察すると、明確な誤りだと断言できます。
というよりも、『もう3年:輸出管理適正化措置の原因は韓国側が作った』あたりでも説明したとおり、この対韓輸出管理適正化措置は韓国の不正貿易疑惑に端を発したものであり、そもそも自称元徴用工問題とは無関係であるとともに、世間で思われているよりも遥かに根が深いものです。
ただ、それ以上に驚くのは、韓国側で始まった「ノージャパン・キャンペーン」でしょう。
韓国では2019年7月の「輸出『規制』発動」(※ここでは敢えて誤った用語を使います)以降、日本製品などの不買運動に加え、日本旅行をしないなどの大規模なキャンペーンが、おそらくは自発的に開始されました。
不買運動自体が完全に誤った認識に基づいて始まったという点もさることながら、その誤った認識を正すような報道が、現時点においても韓国側でほとんど見られないことは、認知の歪みが貿易にまで影響を及ぼしたという意味では、非常に特殊な事例と断じて良いでしょう。
普通貿易統計で確認する
こうしたなか、先日、2022年6月末までの貿易統計のデータが出そろっていますので、ここらで韓国の「ノージャパン運動」が影響を及ぼした分野を特定しておく作業を行っておいても良いかもしれません。
貿易統計のうち『普通貿易統計』に関しては、日本の輸出入品目を、大きく次の10のジャンルに分類しています。
普通貿易統計の10分野
- 0.食料品及び動物
- 1.飲料及びたばこ
- 2.原材料
- 3.鉱物性燃料
- 4.動植物性油脂
- 5.化学製品
- 6.原料別製品
- 7.機械類及び輸送用機器
- 8.雑製品
- 9.特殊取扱品
(【出所】『普通貿易統計』)
もちろん、現実の輸出入についてはさらに細かく枝分かれしているのですが(たとえば「7.機械類及び輸送用機器」については3つの中分類と、それぞれの中分類の下に小分類、細目などが設けられています)、ただ、この非常に大きな枠組みであっても、日韓貿易関係をある程度正しく把握することはできます。
食料品、飲料で大きな打撃が…
さっそくですが、ノージャパン運動により最も大きな影響を受けたと考えられる分野を選んでみましょう。その分野の典型例が、「食料品及び動物」と「飲料及びたばこ」です(図表1、図表2。なお、本稿に示すグラフの出所はいずれも『普通貿易統計』より著者が作成したもの)。
図表1 日本の韓国への輸出(0.食料品及び動物)
図表2 日本の韓国への輸出(1.飲料及びたばこ)
いかがでしょうか。
「食料品・動物」、「飲料・たばこ」のジャンルについては、日本政府の「対韓輸出『規制』」発動後に、ガタンと落ち込んでいることがわかります。とくに「飲料・たばこ」のジャンル(ビールなどでしょうか?)については、壊滅的と言っても良いほどに落ち込んでいることがわかります。
素部装などの分野では化学製品を除き影響はほぼ皆無
ただ、その一方で、日本の韓国に対する輸出品目のうち、いわゆる「素材・部品・装備」――、すなわち「モノを作るためのモノ」の貿易については、化学製品を除けば、日本の「対韓輸出『規制』」発動の前後で大きく変わったという事実は確認できません(図表3)
図表3 日本の韓国への輸出(2.原材料)
図表4 日本の韓国への輸出(3.鉱物性燃料)
図表5 日本の韓国への輸出(5.化学製品)
図表6 日本の韓国への輸出(6.原料別製品)
図表7 日本の韓国への輸出(7.機械類及び輸送用)
図表8 日本の韓国への輸出(8.雑製品)
図表9 日本の韓国への輸出(9.特殊取扱品)
(※なお、「4.動植物性油脂」については金額が少なすぎるためグラフの作成を省略。)
食料・飲料は全体の1%未満
これらのうち「5.化学製品」については、たしかに日本の「対韓輸出『規制』」開始後に減少が始まっているのが確認できるのですが、一時的な現象であり、約1年後には前年同月比で増加に転じていることが確認できます。
また、「6.原料別製品」、「7.機械類及び輸送用」、「8.雑製品」については、むしろ2019年7月の「対韓輸出『規制』」発動とは無関係に、それよりも以前から減少に転じていたことが確認できますが、これは韓国の貿易構造と密接な関係があります。
じつは、韓国の貿易構造は、「日本から素部装を購入し、国内で製品を組み立てたうえで、米欧中などの最終消費地に向けて輸出する」という、非常にシンプルなものであり、2018年末ごろから韓国の輸出高が全般的に落ち込んでいたため、日本からの輸入も落ち込んでいたにすぎないのです。
ちなみに「ノージャパン」が明確な影響を及ぼした「0.食料品及び動物」と「1.飲料及びたばこ」の分野に関しては、合算しても日本の韓国に対する輸出高全体のほぼ1%にも満たない金額です。
少なくとも2016年以降の半期ごとに見てみると、最も多かった2018年下期で1.01%に達しましたが、平均して0.8%程度に過ぎません。すなわち、韓国の「ノージャパン運動」が日本の産業に与えた影響はほぼ皆無に等しい、などと評価しても、あながち間違いではないでしょう。
日本は何も変わっていないのに…
もっとも、こうしたなかで、個人的には理解に苦しむ記事が2つほどあったことも事実です。どちらも韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載されたものですが、ひとつめはこれです。
【コラム】日本のことを考えるな
―――2022.08.03 09:17付 中央日報日本語版より
これは「日本のビールの輸入高が増えている」、などとする記事ですが、いわば、韓国で日本産のビールの輸入が増えているのは「反日政治の流通期限は終わろうとしている」証拠であり、「成熟した関係で韓日関係のシーズン2を準備していくべき」、などとする主張につながります。
正直、意味がわかりません。
日本の措置を、自分で勝手に「輸出『規制』」だと勘違いし、自分で勝手にノージャパンをはじめ、自分で勝手に「成熟した韓日関係」などと言い出すというのは、行動としては終始一貫性がありません。
とくに、記事の末尾では安倍総理が亡くなったことに関連し、こんな文章があります。
「安倍晋三元首相の前に『故』という字が付くことになった今、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の国益外交は重要な試験台に立っている。光復節の祝辞、期待する」。
正直、安倍総理がご存命であろうがなかろうが、韓国が日本に対して一方的な不法行為を仕掛けているという事実は変わりませんし、「安倍総理が日韓関係を悪化させた張本人だ」、といった主張は、おそらく圧倒的多くの日本国民にとっては受け入れがたいものではないかと思います。
その一方で、もうひとつの記事が、これです。
韓国、ドル高で海外個人輸入減る…円安で日本からの個人輸入は増える
―――2022.08.04 09:17付 中央日報日本語版より
ウォンに対してドル高となる一方で、円安が進行していることを受け、日本からの個人輸入が増えている、などとする記事ですが、これもやはり、ご自身の国が始めたノージャパン運動をどう考えているのか、その見解が知りたいところでもあります。
いずれにせよ、「韓国のノージャパン運動自体が日本の産業全体に打撃を与えた」という主張自体が事実に反するだけでなく、日本は何も変わっていないのに初志貫徹をしないという姿勢は、一般の日本人にとって、理解しづらいものであることだけは間違いないでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
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南国でノージャパン運動を政府肝煎でやっているのに
日本ではマスコミは「南国スバラシイ」「南国の契機はスゴイ」
「指標で似れば南国はスバラシイのに、気が付かないオカシナ日本」等と
南国賛美のニュースしか取り上げません。
どうせなら、日本もノー南国と言って、輸入・輸出を一次取止めるというのは
いかがでしょうか?
先ず最初に南国で日本の芸能が禁止されているのだから
日本でも南国の芸能を禁止しませんか?
やられた相手に対してはきっちりやり返すという相互主義はやるべきだと思いますね.
それも,「やられたらやり返す」というロジックをきちんと法制化した上で.
やられっ放しで「遺憾だ」というだけの日本は人が好過ぎる(言い換えれば,単なる馬鹿だ)としか言いようがありません.
南朝鮮の芸能の問題よりも桁違いに重要な問題があります.それは日本人や日本政府による土地の所有を認めていない共産チャイナに対して日本の土地の所有を認めていることです.
この問題に関しては,そのような国の政府や法人・個人によって所有されている日本の土地に関しては,一定の猶予期間(その期間に売却処分することを認める)を与えた上で,期間満了後は没収する(日本の国有地となる)ような法律を制定する必要があります.
仰る通り、各種の規制は相互主義を原則にしないといけません。
スポーツでは、同じルールで試合を行うのが常識です。
競馬のハンデ戦は、レースを面白くするのが目的でしょうけど。
今の日本に、中国を優遇する理由は全くありません。
むしろ、人権侵害を理由に中国にハンデを負わせるのが正しい政策です。
日本人は「心理的瑕疵」を負った
韓国は慰謝料払え ww
ノージャパン運動、日本人の持つ韓国人のイメージを、かなり悪化させる効果はありましたね。韓国人は気にしないんでしょうけど。イメージの回復には相当なコストと時間がかかるでしょう。回復する必要があるのか、回復できるのかは別の問題ですが。
韓国て、利益は少ないけど無茶な要求が多い客みたいですね。
鶏肋、鶏肋 を勝手に解釈して切られた官僚がいたような。
ノージャパン運動とは、所詮は文政権に踊らされた韓国民の「自らを慰める」行為だって事で。
ノージャパン運動とやらで、目に見える「被害」を一番大きく蒙ったのは、おそらくビール業界でしょう。一時期、韓国の店頭から日本産ビールがすっかり姿を消したそうですから。
でも、(ちょっとうろ覚えの話なんですが)アサヒビールの場合、同社の海外事業の中で韓国向けは1%にも満たないそうです。それでは数字が多少増減しようが、よしんばゼロになろうが、同社の業績に与える影響はごくごく微々たるものと言えます。韓国人たちは「店頭から日本産ビールを追放した!」と言って快哉を上げてましたが、同社業績への影響はほぼゼロに近く、結局のところ実害を蒙ったのは、販売代理店の韓国人社員たちだけでした。
まあ、ノージャパン運動とやらで業績にダメージを蒙った企業が皆無とも思いませんが、大方はこんなもんだったのではないかと思います。