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    Categories: 外交

「発言」は勇ましくも行動が伴わない中国=ペロシ訪台

ナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問した場合、「中国人民解放軍は決して座して傍観することはなく主権と領土を守り抜くために断固とした対応と強力な対抗策を取る」と宣言していたのが中国外交部の趙立堅(ちょう・りつけん)報道官です。ペロシ氏は昨晩、台湾に無事降り立ちました。この米国の「蛮行」に対し、中国が取った「断固たる措置」は、「動画の公表」と「的を絞った軍事演習」なのだそうです。

ナンシー・ペロシ米下院議長が2日の深夜、台湾に到着しました。

これについては『ペロシ氏?フィリピン東海上を北上中=航空追跡サイト』などでも取り上げたとおり、ツイッターなどではペロシ氏が搭乗している可能性が高いとされる米空軍機が南シナ海上空を避けつつ、フィリピン東海上を北上する様子がリアルタイムでチェックされるなど、別の意味で盛り上がっていたようです。

このあたり、インターネットを使うと、既存の新聞・テレビといったオールドメディアよりも、ときとしてはるかに早く情報を得ることができる、という典型例だったのではないかと思う次第です。

それはともかく、『ペロシ訪台に中国報道官が猛反発』では、こんな話題を取り上げました。

中国外交部の趙立堅(ちょう・りつけん)報道官は1日の会見で、ペロシ氏の訪台については『中国に対する重大内政干渉』であり『非常に深刻な結果を招く』としたうえで、『中国人民解放軍は決して座して傍観することはない』、『主権と領土を守り抜くために断固とした対応と強力な対抗策を取る』と述べた」。

なんとも勇ましい発言です。

では、実際に中国人民解放軍は、ペロシ氏の訪台を阻止するために、「傍観せず」、「断固とした対応と強力な対抗策」を講じたのでしょうか。

まずは、動画の公表です。

中国、「台湾制圧作戦」の動画公表 必ず対抗措置

―――2022/8/2 14:28付 産経ニュースより【※共同通信配信】

共同通信によると、中国人民解放軍の東部戦区は1日、台湾制圧作戦に関する動画を公表したそうです。調べてみると、何やら勇ましいものを発見することができましたが、おそらく次の動画がそれなのでしょう。

たかだか2分少々の動画ですので、もしもしお暇なら視聴してみてください(※ただし、「時間を無駄にしたじゃないか」、といった苦情には対応しませんので、悪しからずご了承ください)。

また、中国当局のもうひとつの対応が、「的を絞った軍事演習う」だそうです。

中国、台湾周辺で「的を絞った軍事演習」 ペロシ氏訪台に反発

―――2022年8月3日2:49付 ロイターより

ロイターによると、中国国防部は2日夜、ペロシ氏の訪台を踏まえて「厳戒態勢」を敷き、「的を絞った軍事演習を開始する」と述べたそうです。

いずれも台湾を心理的に圧迫する狙いがあるものだと考えてよさそうです。

ただ、ここで気になるのは、中国共産党のメディア『環球時報』のコメンテーターである胡錫進(こ・しゃくしん)氏がツイッターに投稿した、「ペロシ氏が搭乗した航空機が台湾に向かうなら撃墜すべきだ」などとする投稿です。

In a banned tweet, a top state-media commentator reportedly said China could ‘forcibly dispel Pelosi’s plane’ and shoot it down if it flies to Taiwan

―――2022/07/30 22:06付 BUSINESS INSIDERより

該当するツイート自体はすでに削除されているそうですが、ペロシ氏の搭乗した航空機の針路を物理的に妨害する、あるいは空港を攻撃する、といった行動は、結局は見られませんでした。

このあたりが結局、中国としての限界なのかもしれません。

※いや、もちろん、「メンツをつぶされた習近平(しゅう・きんぺい)国家主席」あたりが、これから何らかの対抗策を講じるという可能性もあるのかもしれませんが…。

なお、中国専門家の福島香織氏のツイートによると、ペロシ氏自身は3日の午前中に蔡英文(さい・えいぶん)総統との会談をこなし、立法会(国会)を訪れ、人権活動家らに会ったうえで、午後には台湾を発つ見込みだそうです。

大変にあわただしい動きではあります。

ただ、今回の訪台により、故・安倍晋三総理の国葬に台湾の関係者としても出席するハードルが下がったことは間違いありませんし、また、中国が述べる「断固たる対応」とやらの実情についても、だいたい把握することができたという点においては、大変に有意義だったことは間違いないでしょう。

もちろん、中国の軍事的野心を過小評価してはなりませんし、中国がこのまま軍拡を続け、将来的に米中の軍事バランスが崩れるような事態が生じる可能性には十分な警戒が必要であることは言うまでもない点です。

ただ、少なくとも今回の「ペロシ訪台」から出てくる結論としては、「発言が勇ましくても行動が伴うとは限らない」、ということではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (25)

  • ペロシ氏は3日の午後に出発ですか。忙しいのでしょうが、残念。

    ”中国が今後数日間にわたり台湾周辺で軍事演習を行う”そうなので、
    「せっかくだから一週間くらい台湾観光をたのしみまーすv」なんて
    言い出したら中国がその分軍事演習を延期するかも、と思ったのに。

    • 中央通訊報道によれば、地道な嫌がらせはエスカレートしているそうです。

      https://www.cna.com.tw/news/aipl/202208030040.aspx
      不滿裴洛西(ペロシ)訪台 中國宣布暫停對台出口天然砂

      中国は建設資材として海砂を乱獲しまくって海を荒らしていますが、砂材の台湾輸出を止める措置をしたそうです。

      国際情勢の変化は新たなビジネスチャンスが生まれたとしか不肖はにわには感じられない。強い国に逆らうなとしたり顔で記事を書き散らす新聞記者たちには未来は築けないのです。

    • 台湾のパイナップルケーキは(昔に台湾旅行した知人から)おいしいと聞いています。
      (パイナップルのように)スーパーに並ぶようになったら買おうと思います。

    • いまこそ買い付け部隊を台湾へ送り込め。
      パンダハガー経済新聞は決してそうはプッシュしないじゃないですか(にやにや)

  • 最近、別のニュースで中国は中越戦争以来、実戦経験がないうえに、若い人が兵役を嫌うので人民軍が弱化している、という記事を読みました。日本は1945年8月15日以来(正確には少し違うのでしょうが、例えば北方領土とか)全く実戦を経験しないという世界でもまれな平和の国です。我々の学生時代は、米帝や日帝が侵略戦争をしている、などと言う人もいて平和な国にしなければいけないと思いましたが、70歳を超えて振り返ると日本は戦争を仕掛けることはもちろん、仕掛けられたこともなかった平和な国です。ところが上掲動画のような軍事力でその平和な日本を威嚇する国が近くにあります。この動画を見て、米国などの戦争映画がかなり真に迫ったものであるとあらためて感心するとともに、中国のボンクラ指揮官が間違って台湾にミサイルなど撃ち込まないか、心配になりました。ちょっとした行き違いで戦争にならないよう米中双方には自制を求めるとともに、日本には何をしても大丈夫だなどと勘違いされないよう、しっかりした防衛体制の構築が必要だと思いました。

    • >日本は1945年8月15日以来(正確には少し違うのでしょうが、例えば北方領土とか)全く実戦を経験しない
       事実と違います。
       日本は朝鮮戦争に際し、海上保安庁特別掃海隊を朝鮮近海に派遣し、国連軍の海上交通路保護に当たらせています。北朝鮮軍の機雷に触接して、沈没した艇もあり、戦死者も出しました。

  • 言葉に責任が伴わないというのは、対外的に見れば、中国という国がまともな同盟国をもたないことの帰結なんでしょうが、それにも増して、国際関係のかなりの部分が、微妙なレトリックと暗黙の了解の上に成り立っているということを理解できない、外交的未熟さから来ているのは間違いないと思います。

    米下院議長の搭乗している航空機を撃墜するなど、すなわち宣戦布告に他ならないという常識すら弁えず、軍の高官がそれをツイッターに投稿しただけでも物笑いのタネになるところを、すぐにそれを削除という二重の恥さらし。まあ、この国の大国意識の底に浅さと、それ故にこその危険性を、余すところなく国外に曝け出したというところでしょう。

    しかし、その「恥さらし」を、国内的にはどう消化するんでしょうね。当面は微博に投稿されてくる内容に、五毛党総動員で目を光らせ、「ペロシ」の語が含まれる投稿は瞬殺で、事態の沈静化を図るんでしょうが。

  • 米軍さん空中給油機多数や空母打撃艦隊とか持ってきて大わらわ。

    この際どうせ日本の参議院と同じでアメリカ下院なんて暇なんだから、下院議員詰所を宮古島と北海道と対馬辺りに常設してくれまいか。

    ん?
    下院議員の警護代は日米安保の枠外のアメリカ国内事案だから自前でやってね。
    北海道も沖縄も対馬も釣り出来るし楽しいぞ。
    保養施設でもいいや。
    かまうの大変だから。

    議員活動? テレワークの時代でしょ?

  • 今回の訪台の目的、1、中国へのメッセージ 2、国際社会へのメッセージ 3、米国内へのメッセージ 4、同盟国へのメッセージ が含まれていると見るのが一般的でしょうか。岸田首相とは朝食会などの報道がありますね。尹大統領は…残念ながら夏休みで会えないそうです。

    • 夏休みと言う事にしておかないと、会えば宗主国に叱られるし、会わなければ米国から叱られるし・・・
      本当に会う気があれば、夏休みくらいどうでもなるでしょうよ。

      • > 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は1日から始まった5日間の夏期休暇中に地方訪問を計画していたが、ソウルに留まる模様だ。

        https://www.donga.com/jp/home/article/all/20220802/3548086/1

        夏休みである事に変わりはないが、地方行きを止めて、ソウルに居るらしい。
        ソウルに居るけど会わない、という方向になるのかな?

        > 「ペロシ下院議長の東アジア歴訪の日程が予定通り順調に終わることを願う。下院議長の訪韓を歓迎し、(4日の)韓米国会議長協議で多くの成果があることを願う」と答えた。

        https://jp.yna.co.kr/view/AJP20220803001600882?section=politics/index

        ということなので、尹錫悦が会うという話ではないみたいだが。

          • 「カウンターパートナー」だと、対等でない人迄含まれる様なので、「カウンターパート」とするべきらしい。

    • 金振杓国会議長、高齢でもう中国の地を踏むこともないということですかね。
      ペロシさんに対して、
      ・中台両者で解決すべき問題に周辺国が過度にかかわり緊張を高めるべきではない。
      ・韓国は東アジアの安定のために尽力しているが、過去の反省を忘れ、我が国の協力要請に誠意を見せない隣国の態度を懸念している。
      ・多国間の通貨安定のために米韓通貨スワップに応じる用意がある。
      ぐらいのことを言ってくれることを尹大統領とともに期待しますね。

  •  時間を無駄にしたじゃないか!
     ( ゚д゚)ハッ!

     新作FPSゲームのPVの方がよっぽど迫力も面白みもありますね。なんか「最近撮った動画ならべてくっつけたよー」くらいの出来。案外予算もない?

  • 習近平 怒りの対抗措置!
    中国国務院台湾事務弁公室のスポークスマンである Ma Xiaoguangは8月3日に、直ちに輸入規制を課すと述べた。台湾から本土へのグレープフルーツ、レモン、オレンジ等の かんきつ類、冷凍タチウオ、冷凍アジの輸入を停止することが決定された。

    (^Д^)台湾としては これは アヂッ!

    • 日本も懸念を表明したしいつも通りですね。https://news.yahoo.co.jp/articles/4e4ea47ec05949fc35d9600c60dbade37bfb9243

    • 行儀がいい?台湾を6方向から包囲し海上・上空を封鎖する兵糧攻めの予行演習が?
      4日間ではなく、例えば2週間にすれば、天然ガスの在庫が払底し台湾は深刻な電力危機に見舞われる。本気にになればいつでもできるのだと脅し上げるのが今回の実弾演習。常態化する可能性もあり台湾にとっては深刻な脅威になる。行儀がいい、ねぇ。

  • ご紹介の動画を拝見しましたが、あまりにも過剰で思い入れたっぷりの演出に、思わず噴き出そうになりました。

    また、あそこに出てる兵士の殆どは、いわゆる「一人っ子」政策ベビーの世代かと思われますが、いざというときに彼らの父親や母親たちはお国の為に死んでこいと!と送り出せるのかな~、等と愚にも付かないことも連想してしまいました。

    更に云えば、あの国の軍隊は過去に於いて「口先番長」みたいなところがあったことは、日清戦争や日中戦争を経験してきた日本人には、半ば周知の事実でもあります。また中国では最先端の戦闘機でも降雨時にはなぜか飛ばないらしいという「都市伝説」のような噂も耳にしたことがあります。

    まぁ弱い犬ほどよく吠える、とも云いますから、そんなに吠えたいのなら無駄吠えだけでもさせておけばいいだけです。

    ところで記事の中で最後に登場する趙立堅副報道局長ですが、写真を眺めて連想したのは連想したのは「企業舎弟」という言葉が能吏に浮かんでしまったのは、昨日と今日『ちむどんどん』に登場してきた権田というヤクザの影響があったのかもしれない、というのはNHKの天敵である新宿会計士様には内緒の話です。

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