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    Categories: 外交

「煽り運転への対処」にみる処理水海洋放出のポイント

煽り運転には第三者の目を入れるのが鉄則。これと同様に、理不尽なことを主張してくる相手国に対しても、第三者、すなわち第三国であったり、国際機関であったりの目を入れるのが鉄則なのでしょう。日本政府が22日に承認した処理水の海洋放出に関連し、韓国の尹錫悦(いん・しゃくえつ)大統領が「周辺国の同意を得なければならない」、などと述べたのだそうですが、これについてどう考えるべきでしょうか。

煽り運転への正しい対処法

煽り運転の被害に遭ったときにはどうするか。

これについてはJAFのウェブサイトに、非常に興味深い内容が記載されています。

[Q] 危険な「あおり運転」を受けたら、どうすればよいのでしょうか?

[A]駐車場などの安全と思われる人目の多い場所へ避難してください。ドアをロックし、ためらわずに携帯電話などから110番へ通報しましょう。<<…続きを読む>>
―――JAFウェブサイトより

JAFによると、「あおり運転(妨害運転)」を受けた場合の対処法としては、次のようなものがあるのだそうです。

  • まず駐車場などの安全と思われる場所へ避難する
  • 近くの警察署や交番に助けを求めてもよい
  • 高速道路ではサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)などの休憩施設へ避難する
  • 駐車場ではできるだけ人目の多い場所に停車する
  • 相手が追ってくることもあるので、ドアをロックしてためらわずに携帯電話などから110番へ通報する

…。

また、「同乗者がいれば、走行中でも携帯電話などから通報を頼む」、「脅しや挑発を受けても相手をせず、不用意に車外へ出てはならない」、「警察官が到着するまで車内に待機し、身の安全を確保する」、などとも指摘されています。

そのうえで、もしもドライブレコーダーなどの動画撮影機能があれば、「相手が現場から逃げても、記録した映像がその後の捜査に役立つこともある」、などとされています。

いずれにせよ、理不尽な煽り運転などの被害を受けた場合には、速やかに第三者を巻き込むことが大切だ、ということです。最初から第三者を巻き込んでおくことで、相手の理不尽な行動を社会全体の法律に従って裁くことができるからです。

必ず「第三者」を介在させる=国際社会でも全く同じ

どうしていきなり煽り運転の話を述べたのかといえば、「第三者の目を介在させる」のは、自分自身にまったく落ち度がない場合に問題を解決するための鉄則だからです。そして、これは別に私たち一般人の社会生活だけでなく、じつは、国際関係においても成り立ちます。

理不尽なことを仕掛けてくる国があれば、必ず国際社会のルールに従って対処をする」。

これが、基本的な対応としては正しいものなのでしょう。

この点、もちろん国際社会には「警察官」などいませんので、ロシアによる違法な侵略の被害に遭っているウクライナのように、外国の不法行為を防ぐことができないケースもあります。

ただ、やはり国際法や国際ルールをちゃんと守っている国には、ちゃんと守っているなりの恩恵が生じなければなりませんし、また、日本自身が「国際法を重視する」と宣言している以上、日本としてはなにか理不尽なトラブルがあった場合、国際社会のルールに従って対処するというのが鉄則なのです。

またしても処理水を汚染水と呼び変えて日本に難癖

こうしたなかで、興味深い事例がまたひとつ、でてきたようです。

尹錫悦大統領、福島原発汚染水の放出認可に「周辺国の同意を得なければ」

―――2022.07.26 11:14付 中央日報日本語版より

韓国メディア『中央日報』(日本語版)の記事によれば、尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領は26日のぶら下がり会見で、「日本の福島原子力発電所の汚染水海洋放出計画の認可」に対して「周辺関連国に透明に説明し、同意を得なければならない」と述べたのだそうです。

これは、日本の原子力規制委員会が22日、福島原発のALPS処理水の放流計画を正式認可したことにともなう質疑だそうです。

そもそも論として、日本が海洋放出を計画しているのは「汚染水」ではありません。ALPS処理水です。ALPS処理水にはトリチウムが含まれていますが、トリチウムの除去は技術的に困難であり、安全な水準にまで希釈して海洋に放出するというのが国際社会におけるスタンダードでもあります。

なにより韓国自身も月城原発から2019年時点で液体で31兆ベクレル、気体で110兆ベクレルものトリチウムが放出されているという事実を忘れてはなりません(図表)。

図表 世界の主要な原発におけるトリチウムの年間処分量

(【出所】経済産業省)

中央日報は韓国政府が「日本に懸念を示し、責任ある対応を促している」というのですが、もし「責任ある対応」と称するのならば、他国のトリチウム放出に言及する前に、自分の国の原発が莫大なトリチウムを放出しているという事実にこそ目を向けるのが筋でしょう。

国際社会という「第三者」を証人にするのが日本外交の鉄則

いずれにせよ、日本の海洋放出計画をめぐっては、すでに国際原子力機関(IAEA)の事実上の「お墨付き」が得られています(『処理水放出をIAEAが絶賛:隣国の難癖は無視が鉄則』等参照)。

国際原子力機関(IAEA)は福島処理水海洋放出が「国際基準に合致している」との暫定的に結論付けました。もちろん、IAEAによるタスクフォースの検討作業はまだ続いているのですが、現時点においては大きな問題点は見つかっておらず、それどころか東電や経産省が関係者の理解を得るために「多大な努力を払っている」とまで記載されています。隣国の難癖を相手にしてはならないという絶好の事例が、またひとつ、積み上がった格好です。処理水放出巡りIAEAが「国際基準に合致」国際原子力機関(IAEA)は現地時間の4月29...
処理水放出をIAEAが絶賛:隣国の難癖は無視が鉄則 - 新宿会計士の政治経済評論

日本は基本的に、この問題を巡ってはIAEAとの国際的なスタンダードに従ったオープンな対話を続けており、改めて韓国との「密室協議」に応じる必要はありません。そして、この問題への対処は、日本が従来の「密室ベース」の日韓関係から正式に脱却しつつある証拠でもあるのです。

そして、この問題を巡っても国際社会のルールや常識に照らし、適切に対処すれば良いだけの話であり、こうした国際常識から逸脱した難癖をつけてくる相手国など、いちいちマジメに対処する必要などないのです。

そのことを改めて確認するという意味でも、今回の処理水の放出の件は大変に良い事例といえるかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (9)

  • >「日本の福島原子力発電所の汚染水海洋放出計画の認可」に対して「周辺関連国に透明に説明し、同意を得なければならない」と述べたのだそうです。

    同意する、万が一汚染水を海洋放出しなければいけない事態になれば。真っ先に貴国に説明し同意を得てから行う。
    と返事しておけば良いのではないですか。
    もちろん処理水に関しては別に説明する必要はありませんがね。

  • > 周辺関連国に透明に説明し、同意を得なければならない
    既視感あると思ったら、煽り方が日本の野党と同じでワロタ。
    立憲民主党と同じこと言ってる。
    どんなに説明しても、同意なんかするはずがないのにね。

  • IAEAを介在したオープンな説明をしつつ、国会で岸田さんが半笑いで言えばよい。

    『では、韓国も処理水の海洋放出の許可を日本に得ねばね。』と。

  • わからんなあ?海流のことを考えたら処理水がどうやって朝鮮半島の方へ流れていくのか、わからん。日本政府は韓国に質問したらどうなん(そりゃかなりの時間を経過すれば巡り巡って朝鮮半島に届くかわからんが)?、もう一つ、むしろ韓国放出の処理水が日本の方に流れているのではないのか、と質問して欲しいなあ。

  • 日韓関係改善を謳いながら、日本の神経を逆なでする行為ばかりする尹政権。
    今度は福島第1原発の処理水で科学的根拠も権利もないのに「周辺関連国に透明に説明し、同意を得なければならない」ですか。本音は日本に頭を下げさせたいだけだろ。

    こんな調子では100万年経とうが日韓関係改善などあり得ない。誰がリーダーになろうが非韓三原則は普遍的真理であることが着々と証明されている。

    • 実は最近連中は"関係改善"の到達点を「国交断絶」に設定しているのではないかと…なんてな

      • 引っ掛かったオタク様

        大統領就任からわずか2ヶ月で支持率30%台に急落。支持率回復のため国交断絶の自爆花火に走るか。日本を巻き込まなければ何しようと韓国の勝手だけど、きっとその前に盛大な告げ口外交に走るんだろうな。

        ホント はた迷惑な国。ひょっこりひょうたん島みたいに何処かに行ってくれないかな。

  • >尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領は26日のぶら下がり会見で、「日本の福島原子力発電所の汚染水海洋放出計画の認可」に対して「周辺関連国に透明に説明し、同意を得なければならない」と述べたのだそうです。

    この人、元検事と言うから、もう少しまともかと思っていたが、やはり韓国の法曹関係者は出来の悪いヤクザ程度の頭しかないらしい。

    何を根拠に言っているのか、言ってみ?

    日本の関係者は、IAEAの場でも明確に反論し、お笑い韓国人の頭のおかしさにスポットライトを当てるべき。