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「弔問外交」でわかる安倍総理と外国要人との深い親交

日本は本当に、惜しい人物を亡くしました。先週金曜日に暗殺された安倍晋三総理の通夜が11日、東京の菩提寺で執り行われ、天皇・皇后両陛下の侍従、麻生太郎総理、菅義偉総理、岸田文雄首相らに加え、来日中のジャネット・イエレン米財務長官、アントニー・ブリンケン米国務長官らも参列したそうです。また、インドのナレンドラ・モディ首相が自身のウェブサイトに “My Friend, Abe San” という文を寄稿したほか、台湾からは断交後、最高位となる副総統が弔問に訪れたそうです。

侍従、首相、外国要人らが通夜に参列

先週金曜日に奈良で暗殺された安倍晋三総理の通夜が、11日夜6時から東京の菩提寺で営まれたそうです。

報道によれば、天皇・皇后両陛下が侍従を遣わされ、祭粢(さいし)料や供物、花をお贈りされたほか、麻生太郎総理、菅義偉総理、岸田文雄首相らが続々と焼香に訪れ、ラーム・エマニュエル駐日米大使に加え、来日中のジャネット・イエレン米財務長官、アントニー・ブリンケン米国務長官らも参列したとのことです。

両陛下、安倍元首相の通夜に花

―――2022/7/11 21:10付 共同通信より

両陛下、安倍元首相の通夜に花「心を痛め」と宮内庁

―――2022.07.11付 デイリースポーツより

安倍氏の通夜、岸田首相・麻生副総裁ら焼香 12日に葬儀/安倍元首相銃撃

―――2022年7月11日 21:16付 日本経済新聞電子版より

安倍氏通夜、しめやかに 岸田首相、米財務長官ら参列

―――2022/7/11 18:51付 Yahoo!ニュースより【※時事通信配信】

そのエマニュエル駐日大使は安倍総理を失った日本国民が日曜日の参院選で投票行動を取ったことをめぐり、「受け入れがたい暴力に直面した日本が民主主義の模範を示した」として、「祝意を表する」とのメッセージをよせています。

民主主義国であることを誇りに感じているであろう米国人が、その同じ民主主義という言葉を使い、日本国民を絶賛したことは、それだけ米国が日本を信頼しているという証拠である、といった言い方もできるかもしれません。

台湾からは副総統が来日

こうしたなか、台湾メディア『中央通訊』(日本語版=フォーカス台湾)は、台湾の頼清德(らい・せいとく)副総統が11日、弔問のために訪日したと伝えています。

安倍氏死去/頼副総統、安倍元首相の弔問で訪日=断交後最高位/台湾

―――2022/07/11 16:52付 中央通訊日本語版より

中央通訊によると今回の頼清德氏の訪日は「1972年に中華民国(台湾)と日本が断交して以来、最高位」としており、これを明らかにした与党・民進党の郭国文(かく・こくぶん)立法委員(国会議員)によれば、今回の訪日は蔡英文(さい・えいぶん)総統の命を受けたものである、などとしているのだそうです。

ちなみに安倍総理といえば、やはり日台友好を進めた功労者でもあります。

外交青書、「中露朝韓」に対する厳格姿勢を維持・強化』などでも紹介したとおり、現在の日本は外交方針として、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を掲げ、自由、民主主義、法の支配、人権といった基本的価値を大切にすると公言しています。

そんな日本にとっての台湾の位置づけは、「自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人」(令和4年版外交青書P43)です。

もちろん、日台断交以降、日本政府は台湾のことを公式には「国」として認めていませんが、それと同時に、政府レベルでは断交していたとしても、民間レベルではお互いに活発な貿易・投資活動が行われていますし、近年だと台湾パイナップルやコロナワクチンなどで、日台がお互いを間近に感じられる関係になりつつあります。

ちなみに同じく中央通訊によると、蔡英文氏は日本の窓口機関に弔問に訪れ、安倍総理を「台湾の永遠の良き友人」に位置付けたそうです。

安倍氏死去/蔡総統が日本の窓口機関弔問 安倍元首相悼む「台湾の永遠の良き友人」

―――2022/07/11 13:04付 中央通訊日本語版より

安倍総理の遺志を継ぐという意味では、日台関係が温かく、より強い絆で結ばれていくことが、その確実な手段といえるのかもしれません。

モディ首相が写真で綴る安倍総理との思い出

その一方、インドのナレンドラ・モディ首相は7月9日付で、自身のウェブサイトに日本語で安倍総理に対する追悼文を投稿しています。

My Friend, Abe San (Japanese)

傑出した日本の指導者、比較なしのグローバル政治家、そしてインド日本友好関係の偉大なチャンピオンである安倍晋三氏がもう我々の中にはいなくなってしまいました。日本そして世界が偉いビジョナリーを失い、私は親愛なる友人を失いました。

はじめて安倍氏にお会いしたのは2007年に、私がグジュラート州首相として日本を訪問した時でした。最初の出会いから我々の友情が公職の印又公的な外交儀礼の束縛を超えとものとなりました。<<続きを読む>>
―――2022/07/09 08:55 IST付 Narendra Modiより

モディ氏の個人サイトには安倍総理との思い出が詰まっているであろうさまざまな写真が掲載されています(※クリックで拡大)。

これらについてモディ氏はこう述べます。

日本の総理をやっていない2007年から2012年の間、そして最近は2020年以来、我々の個人的な絆はいつも通り強いまま続きました。安倍総理との話し合いの中では全てが知的刺激のある物でした。いつも新鮮なアイデアに満ち、ガバナンス、経済、文化、外交政策その他様々な課題に関して貴重な見解をお持ちでした」。

まさに、こうした安倍総理とモディ首相の個人的に強い友好と信頼関係は、日印両国が未来に向けて発展していくうえでの礎なのでしょう。

ロシアの思わせぶりな態度

ところで、もうひとつ気になる話題といえば、ロシアです。メディア『タス通信』(英語版)の記事によると、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は9日、ウラジミル・プーチン露大統領は安倍総理の葬儀には「参列しない」と述べた、とする話題もあります。

Putin not to attend Abe’s funeral — Kremlin

―――2022/07/09 19:00付 タス通信英語版より

もちろん、現在の状況で、プーチン大統領が日本を訪れるというのはあり得ない話です。国際法をどこの国よりも尊重する現在の日本を、国際法を堂々と破ってウクライナにいわれなき侵略戦争を仕掛けているロシアの大統領が訪問する資格などないからです。

ただし、ペスコフ氏は同時に、安倍総理の逝去に際し、クレムリンとしての深いお悔やみを申し上げる、といったコメントを発表しています。

そういえば、先日も紹介したとおり、安倍総理に対して、プーチン氏は中国の習近平(しゅう・きんぺい)国家主席よりも先に弔電を寄せています。

安倍氏の記憶「永遠に残る」 ロシア大統領が弔電

―――2022年07月08日20時23分付 時事通信より

中国主席、安倍氏死去で弔電 「関係改善に貢献」

―――2022年07月09日23時15分付 時事通信より

考えてみれば、ロシアにとっても日本の安倍総理は「手ごわい交渉相手」だったと思われ、その分、強いリーダーを失ったことについては、ある意味ではプーチン氏にも、何らかの「思うところ」はあるのかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (10)

  • 弔問と言えば、くだんの旧統一協会や国際勝共連合はどのような自己反省の籠ったお悔やみを言ったのでしょうか。分析したわけではないが、サラっと「我が教団と関係ある別団体」などと他所事にして教団に責任が及ぶ事を徹底回避する姿勢ばかり目立ったが。宗教団体ならば大恩ある安倍さんにどれだけ心のこもった言葉が出るかと期待したが。

  • 次期総統と広く知られている頼清德弔問来日はインパクトが強いようですね。どこかの国には。

  •  更新ありがとうございます。

     ヤフコメ経由ですが、ブラジル新聞(日本語版)で以下の記事を見つけました。

    《記者コラム》安倍元首相の死を巡る情報戦=外国語Wikiにみる日帝戦争犯罪記述の惨状
    https://www.brasilnippou.com/2022/220712-41colonia.html

     他国語のWikipediaでの記述が、左派や中韓からの見方に偏り過ぎている。
     記事を両論併記の形に修正したくとも、日本の歴史的立場を著す現地語の書籍が圧倒的に不足している、とのことです。

     以前より気にはなっていたものの、自分の語学力の低さもあり、放置し続けてきたものです。

     文中にある、【ネット上での情報戦対策を弔い合戦に】という言葉が、胸に刺さりました。

     自分一人では、やれることはかなり少ないでしょうが、時間を見て少しずつでも、できることをして行こうと思います。

     話は変わりますが、モリカケのときの様に広がっている旧統一教会について自分なりに調べています。
     今のところ、複数のメディアで【報道があった】ところまでは行けましたが、『癒着があった』ことを証明するに足る資料等は見つけられません。
     やはり悪魔の証明に近そうです。

     こちらも時間のあるときにでも、引き続き追って見ます。

  • 安倍総理が世界中から「これほど」尊敬されていたとは思いませんでした
    5年半暮らしていたマレーシア・ペナン州のリム・グァンエン(林冠英)首席大臣(日本の県知事相当)も翌日追悼メッセージをFBに投稿しています
    南洋華人は先の大戦中我が国の軍政下で散々な目に遭っているのですが…

    FBとツイッターで各国首脳が投稿している追悼メッセージを「ありがとうございます」の一言を添えて共有・RTするようにしています
    私人の立場でささやかながら「外交」に携わる貴重な機会だと思うからです
    国内&中韓からの誹謗中傷に憤るよりも精神衛生に良いと思います

  • 訂正です
    林冠英氏はペナン州の「元」首席大臣です(2008〜2018)
    大変失礼いたしました

  • 本当に宗教とは恐ろしい物ですねえ。
    以前読んだ雑誌(元国税局職員著)に貨幣経済草創期、天皇からの詔書が国内へ5通出された。
    その内3通が宗教団体だった。これから分るのは宗教組織は早くから経済的に強大だった
    今回のカルト宗教も「金金金」というのが多く記事に出ています。
    宗教が組織になるとヤクザ、企業と何も違わないことが分ります。洗脳されるから更に
    (組織は組織自体の存続、肥大の為に活動する)
    悪質な活動がここまで行くことは安部さんも分っていたとは思いますが警備があまりにも
    そしてここまで酷い・悪質な統一教会に関わってきたのも悔やまれます。

    • 宗教関係は非課税にするのはいいけど、収支報告書の提出を義務付けるべきですね。

      • 宗教法人法25条により、宗教法人は所轄庁(すなわち都道府県知事)に収支報告書その他の書面を提出することが義務付けられています
        ご参考まで