韓国の通貨・ウォンが瞬間的に13年ぶりの安値水準に近づいたようです。今回のウォン安、FRBの金融引締という動きと整合するものと考えられますが、韓国経済がコロナ禍後の家計債務と資産バブルの膨張という問題を抱えるなかで、万が一、韓国で家計債務調整がバブル破裂に間に合わなければ、韓国で通貨危機と債務危機が同時に発生するという事態も生じかねません。我々としてはその影響を「注視」すべきなのかもしれません。
減少基調に入った韓国の外貨準備
『韓国の外貨準備高が前月比94億ドル減少=為替介入で』でも取り上げたとおり、どうも最近、韓国の外貨準備が減少傾向に入った可能性が濃厚です。外貨準備の前月比94億ドルという減少幅は、コロナ禍が本格化した2020年3月以来の水準でもあります。
韓国の外貨準備が前月比94.3億ドル減少しました。これはコロナ禍直後の2020年3月以来の大きな減少でもあります。とりわけ注目しておきたいのは、有価証券と現金預金の合計残高が前月比88.63億ドルも減少したという事実です。とくに韓国銀行は為替介入を行っているという事実を隠し立てもしなくなりました。同国の外貨準備の減少がまだ続くのかどうかには注目する価値がありそうです。韓国の外貨準備が94.3億ドルの減少韓国銀行が本日、2022年6月末時点の外貨準備高を公表しています。2022年6月末の外国為替保有額―――2022.07.05付 韓... 韓国の外貨準備高が前月比94億ドル減少=為替介入で - 新宿会計士の政治経済評論 |
その理由はやはり、自国通貨・ウォンの減価を防ぐための為替介入(つまり自国通貨買い・外国通貨売り介入)を韓国の通貨当局が活発化させているからでしょう。実際、韓国銀行自身も「外国為替市場の変動性緩和措置」を講じた、と認めています。
ウォン安は進む
ただ、こうした度重なる為替介入にも関わらず、同国の通貨・ウォンの減価はジリジリと進んでいるようです。
この点、韓国の外為市場は基本的に「オフショア取引」、つまり韓国の国外での現物取引が認められておらず、韓国の取引時間(午前9時から午後3時半)までの間に関しては、韓国の通貨当局によって一定の水準に収斂するように操作が行われているというのは、市場の公然の秘密でもあります。
しかし、WSJなどのマーケット欄によれば、日本時間の7月5日夜には一時1ドル=1315.92ウォンにまで売られましたが、かりにこれが日中取引での最安値水準だったとしたら、2009年7月13日に記録した1ドル=1315.00ウォン以来の最安値水準です。
こうしたなか、本日は韓国取引時間においても、一時、1ドル=1310ウォンの水準に達したようです。
韓国メディア『中央日報』(日本語版)の報道によると、「景気低迷への懸念からドル高が進み」、「対ドルのウォン相場が1ドル=1310ウォンを突破した」と記載されています。
ウォン相場、13年ぶりの安値水準…取引時間中に1ドル=1310ウォン突破
―――2022.07.06 11:35付 中央日報日本語版より
中央日報によると1ドル=1310ウォンを突破したのは韓国時間午前9時2分のことで、その時点で1310.60ウォンを記録したのだそうです。
(※ただし、この記事が配信されたのは午前11時35分のことですが、午後1時過ぎの時点でWSJなどのマーケット欄を眺めると、少しだけ買い戻されたのか、1ドル=1306ウォン前後で取引されています。)
本質的には韓国のバブルの問題
この点、中央日報はこのウォン安の理由について、「景気低迷の懸念からドル高傾向が現れたため」、「ロシアがユーロ圏への天然ガス供給を減らす中でノルウェーの海上油田とガス田でストが発生し景気低迷の見通しが拡大した」、などと説明していますが、これだと5日夜間のウォンの独歩安について説明できていません。
これに加えて『不動産市場から「韓国資産バブル」を解説する鈴置論考』を含め、以前からしばしば指摘しているとおり、韓国には現在、「コロナ禍直後の家計負債膨張」と「資産バブルの発生」という事態の後始末に直面しているという要因もあります。
鈴置高史氏の最新論考によると、米FRBなどの金融緩和政策が韓国における不動産などの価格を押し上げる「資産バブル」を形成した、という説明があります。これについてはそのとおりでしょう。ただ、問題はその「調整のスピード」であり、バブルの崩壊が生じるかどうか、という点にかかっています。そして韓国の場合、バブル崩壊は資本逃避とセットで発生するかもしれません。FRBテーパリングと韓国デレバレッジ韓国の資産バブル「FRB主犯」説昨今は世界経済の一体化が進行しており、ある国における金融政策がほかの国にも大き... 不動産市場から「韓国資産バブル」を解説する鈴置論考 - 新宿会計士の政治経済評論 |
これは、「コロナ禍が深刻化した2020年3月以降、米FRBなどの旺盛な金融緩和で全世界の市場にマネーが注入された結果、韓国で発生したのがウォン高と外貨準備の膨張、マネタリーベースと韓国の家計負債の急拡大、そして資産バブルだった」、とする仮説であり、メカニズムにすれば次の①~⑧です。
【参考】韓国資産バブルFRB主犯説
- ①FRB等、主要国中央銀行による金融緩和
- ②為替市場で韓国ウォンを含めたEM(※)通貨高
- ③韓国の通貨当局が「ウォン高になり過ぎれば輸出業者が困る」と判断
- ④韓国のウォン売り・ドル買い介入(→外貨準備の増加)
- ⑤市中のウォン流通量が増大(→マネタリーベースの増加)
- ⑥金融機関の家計向けローンが増大(→家計債務の増大)
- ⑦カネを借りた家計がリスク資産(株式、不動産、暗号資産など)に投資
- ⑧韓国ウォンがビットコイン取引通貨の第3位に浮上
(【出所】著者作成。なお、「EM」とは “Emerging Markets” 、つまり「新興市場諸国」のこと)
通貨危機と債務危機は生じるのか?影響を注視すべき
このうちの①の部分に関しては、昨年末以来、FRBがインフレ抑制と金融引締に舵を切ったこともあり、②以降が猛烈に逆回転し始めていますが、韓国の家計信用の膨張はなかなか縮小に転じていません。
このため、もしも韓国で家計債務の調整が遅れ、バブル破裂に間に合わなければ、一気に外資が流出し、本格的な通貨危機・債務危機に発展する可能性も否定できません(※厳密には「通貨危機がバブル破裂の引き金になる」という可能性もありますが…)。
こうした観点から、隣国の通貨危機の可能性については我々としても「注視する(※)」ことが必要かもしれません(※なお、「注視する」の正確な意味合いについては『岸田首相、サハリン2「権益没収」を巡り「注視する」』あたりをご参照ください)。
事態が生じてから「注視する」と言い出す岸田首相「検討」の次は「注視」だそうですが、事態が生じてから「注視」されても困ります。先日から取り上げている、例の「サハリン2の権益没収」に関連し、岸田首相が金曜日に「大統領令に基づき、契約内容(として)、どのようなものを求められるのか注視しなければならない」などとしたうえで、「事業者ともしっかり意思疎通を図って対応を考えていく」と述べたのそうです。サハリン2の権益没収は当然に予見できた話ですが、まさかコンティンジェンシー・プランすら策定していないのでし... 岸田首相、サハリン2「権益没収」を巡り「注視する」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
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韓国人のビザなし観光は絶対にしてはダメ
中国人だけでなく韓国人留学生のアルバイトにも課税する。
韓国国籍の犯罪者は強制送還する。
帰化は認めない。
現在嫌韓が進む中でしかできない政策。
日本の良い所の一番は治安が良い所。
給料が上がらないとか物価高だとか、いろいろあってもまだ我慢できるのは犯罪率が低いから。
将来の子どもたちに何を残せるか、今が正念場。
KOSPIも本日大きく下げていますね。一瞬ではありましたが,再び300ウォンを割り込んだようです。個人的には、これもウォン安を受けての動きではないかと睨んでおります。
中には保有株を損切り処分して,その資金でドルを買う韓国人投資家なんてのがいたりするのかもしれません。よく知らんけど。
300ウォン ×
2300ウォン ○
失礼しました。
ところで、修整してる最中に2296ウォンまで下げているようです.(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=O4b30rbw4u0
孔明が連環の計でも仕掛けたのか?w
それにしてもよく火災が発生する国だw
すんません。自分で調べる手間を放棄してお尋ねしますが、これほど円安が進むのにウォン安がみんなが期待するほど進んでいないのはなぜなのでしょうかw?
みてみたいダイナミックコリア!
教えてあげても良いけどその前に「寓話の部屋」の続編が読みたいニダ!
さっそく1話上げました。
あと数回で終了させる予定(最初の構想通り)。
ありがてぇ、ありがてぇ!
手持ちの現金、預金が底をつきて、評価損になっているであろう有価証券にまで介入に使うかどうか。
こちらに手を出したら、評価損の実現化もあるから外貨準備の減少ベースも早まるでしょう。
早晩介入はあきらめて、なすがままになるしかない。もし介入を諦めないなら、それは歪みでありヘッジファンドの大好物。一瞬で食い尽くされるでしょう。