日韓首脳会談は正式、略式ともに見送りとなる一方、「日豪NZ+韓」4ヵ国会談も立ち消えに――。なんとも興味深い展開となってきました。韓国メディアはスペインで開かれるNATO首脳会合で、4年9ヵ月ぶりに日米韓首脳会合が開かれるものの、日韓首脳会談などは開かれない見通しだと報じました。これについては日韓関係どころか、尹錫悦政権下の韓国が米国の同盟国として適格なのかどうかが試される展開となりそうに思えてなりません。
韓国との多国間会合自体は望ましい
今朝の『韓国との二国間会談ではなく「多国間会談」のメリット』でも報告したとおり、当ウェブサイトとしては、日韓首脳会談については現時点において開催される環境が整っていないと考えています。
日韓は多国間で会談可能性も二国間会談は「予定なし」岸田首相は土曜日、訪欧を前に会見に応じ、日韓首脳会談が「現時点では予定されていない」と断言しました。直前のタイミングで予定されていないということは、実際にこれが行われない可能背が非常に高い、ということです。その一方、報道等によれば、岸田首相は日米韓、日豪NZ+韓などの多国間の会合をこなす予定だともされているようですが、韓国と二国間で話し合うのではなく、多国間で協議するというのは、大変に良い話でもあります。重要:鈴置氏の新刊書の宣伝(※鈴置氏に無... 韓国との二国間会談ではなく「多国間会談」のメリット - 新宿会計士の政治経済評論 |
というのも、山積する日韓諸懸案をめぐって、韓国が有効な解決策をほとんど示そうとしていないという事情もさることながら、日本領である島根県竹島近海の日本の排他的経済水域(EEZ)内で日本側に無許可で海洋調査を2回も実施するなど、日本を舐めた行動をとっているからです。
よく韓国メディアでは、尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権が発足したことを契機に「韓日で関係『改善』機運が高まっている」だの、「韓日関係はこれから『改善』に向かう」だのといった主張が出てくるのですが、現在の韓国の態度は、関係「改善」を狙っている者にふさわしいものではありません。
ただ、その一方、日本が韓国を多国間会談に引き込むのは決して悪い手ではありません。
日韓2ヵ国の会談だと韓国側と「言った」「言わない」の争いに陥りかねませんが、ここに第三国が参加していると、こうした「言った言わない」論争をそもそも回避することができますし、また、無関係の第三国との間で韓国が日本に理不尽な譲歩を迫るというのも難しいでしょう。
踏み絵としての「4ヵ国会合」
これに加えて岸田首相(?)が先日、韓国に対し、NATO首脳会合の機会にあわせ、「日本、豪州、ニュージーランド」の3ヵ国に韓国を加えた4ヵ国の首脳会合を提案したと報じられています(『「岸田首相が日豪NZ韓4ヵ国会合提案」の意義とは?』等参照)。
韓国で尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権が発足したことを受け、韓国では(なかば一方的に)「韓日関係改善」の機運が高まっているフシがあります。ただ、ここに日本が意外な「踏み絵」を韓国に突き付けたのかもしれません。読売新聞は昨日、「日豪NZ+韓国」の4ヵ国の会合の開催を韓国などに提案した、と報じたのです。これについては「報道内容が事実ならば」という前提がつきますが、なかなかに賢いやり方といえるかもしれません。宣伝:鈴置氏の最新刊を読みましょう!ここ数日、当ウェブサイトでは優れた韓国観察者である鈴置高... 「岸田首相が日豪NZ韓4ヵ国会合提案」の意義とは? - 新宿会計士の政治経済評論 |
とくにこの「日豪NZ+韓」の4ヵ国会談については、「自由・民主主義諸国連合」がNATO域外においても結束を示す好機になるだけでなく、対ロシア、対中国のいずれにおいても強い牽制として働くという意義があります。
あるいは、もしも韓国がこの4ヵ国会合に参加したならば、日米などの西側陣営は韓国を「対中牽制連合」に引き込む効果がありますし、韓国がこの会合を拒絶したら拒絶したで、韓国が「対中牽制連合」に加わる意欲がないことを、改めて全世界に示すことができるという効果もあります。
つまり、韓国が参加しようがしまいが、それは韓国にとっての「踏み絵」となるという意味では、じつに賢明な提案です(※余談ですが、提案者は本当に岸田首相なのでしょうか?)。
聯合ニュース「韓日首脳会談は行われない」
これに関連し、韓国メディア側からいくつか注目すべき報道が出ているのですが、注目したいのは次の記事です。
韓米日首脳会談 29日に開催=NATO首脳会議に合わせ
―――2022.06.26 16:45付 聯合ニュース日本語版より
韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)は昨日、「韓国大統領室関係者」が「26日に記者団に対し明らかにした」内容として、次のような趣旨のことを報じました(※「韓米日」を「日米韓」に、「首脳会談」を「首脳会合」に修正するなど、原文の表現については一部修正しています)。
- スペイン・マドリードで開催されるNATO首脳会合にあわせ、日米韓3ヵ国首脳会合が29日に開かれる
- 日米韓3ヵ国首脳会合の開催は2017年9月以来4年9ヵ月ぶり
- 一方で日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国による4カ国首脳会合が開催される可能性は低い
- 日韓首脳会談は正式、略式ともに行われないとみられる
…。
これはまた、ずいぶんと興味深い展開です。
尹錫悦政権としては、政権発足直後というタイミングでもあるため、米国に対する説明上も、とりあえずは首脳会合に参加するのではないかと個人的に見ていたのですが、この見方は外れ、韓国が「逃げた」格好となりました。
また、日韓首脳会談に関しては、韓国メディアからしつこく、「韓日の略式会談はあり得る」、といった報道が出ていたにも関わらず、聯合ニュースの昨日の記事ではこの部分すら否定されています。
「GSOMIA復元は韓日両国の決断」というふざけた記述
こうしたなか、韓国メディア『中央日報』(日本語版)はこの「日韓首脳会談見送り+4年9ヵ月ぶりの日米韓首脳会合」をめぐって、こんな記事を配信しています。
韓日米首脳、4年9カ月ぶりに会う…3大観戦ポイントは(1)
―――2022.06.27 09:49付 中央日報日本語版より
韓日米首脳、4年9カ月ぶりに会う…3大観戦ポイントは(2)
―――2022.06.27 09:51付 中央日報日本語版より
中央日報は今回の会合をめぐり、日米韓3ヵ国が「北朝鮮の核威嚇に応じた3ヵ国協力の基盤固め」、「対中牽制」、「韓日関係の改善に向けた間接的動力の確保」などがカギ、などと主張しているのですが、果たしてその見方は正しいのでしょうか。
正直、対北朝鮮、対中、対露のいずれにおいても韓国政府の腰が引けているなかで、今回の日米韓3ヵ国会合も、煮え切らない韓国の態度に業を煮やした日米両国が韓国の態度を見極める、という意義があるように思えてなりません。
こうしたなか、中央日報の記事の末尾には、この期に及んでこんな記述があります。
「ただし、韓日米会議を機に両首脳が初めて向かい合って座ることになるため、韓日関係の改善に向けて少なくとも『側面動力』は確保することができるという分析だ。バイデン政府は両国懸案への直接介入には距離を置いているが、3国協力強化のために『できることはする』という立場だ。2年以上終了猶予状態である韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の復元も米国の水面下での仲裁と韓日両国の決断で解決可能な事案の一つというの分析だ」。
そもそも論ですが、この手の「米国が日韓関係の改善に向けて動く」とする言説、とくに今年3月の韓国大統領選で尹錫悦氏が勝利を収めたあたりから、韓国メディアで頻繁に見かけるようになった論点ではあるのですが、現実に米国が日本に対し、関係改善に向けた圧力を加えているという兆候はありません。
また、「日韓秘密軍事情報保護協定」(日韓GSOMIA)をめぐっても、「終了猶予状態」というのは韓国政府の勝手な解釈に基づくものです。国際法的に見れば、「終了通告の効力中断」などという状態は存在しないからです(『あれから1年:いまだにGSOMIA破棄できない韓国』等参照)。
多くの方々が忘れているかもしれませんが、韓国政府が「日韓GSOMIA終了通告」の事実上の白紙撤回を余儀なくされてから、1年が経過しました。韓国側では、政府、メディアを挙げて、「日韓GSOMIAはいつでも終了させることが可能だ」と勘違いしているようですが、その実態はいったいどうなのでしょうか。GSOMIAショックから1年強制徴用→輸出規制→GSOMIAショック当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』への読者のアクセス数という点で、瞬間的に月間ページビュー(PV)が400万を超えたのが、2019年8月の... あれから1年:いまだにGSOMIA破棄できない韓国 - 新宿会計士の政治経済評論 |
だいいち、「GSOMIAの復元」とやらにおいて必要なのも、結局は「韓日両国の決断」ではなく、「韓国の決断」でしょう。
そして、「日米韓3ヵ国連携」という側面においては、日韓GSOMIAを不安定な状態においている韓国の行動こそとがめられるべきであり、この点については日本として何もできることはありません。
また、今回の日韓首脳会談の見送り自体も、韓国メディアでは「日本が参院選前で首脳会談に応じづらい状況にある」、といった分析を見ることもありますが、これも基本的には関係ない話です。
選挙があろうがなかろうが、日本が国際法の原理原則をかなぐり捨ててまで韓国に譲歩するということ自体があり得ない話だからですし、国民世論も自民党・外交部会なども、それを許さないからです。
いずれにせよ、今回の日米韓3ヵ国会合自体も、「日韓関係改善」どうのこうの以前に、むしろ尹錫悦政権下の韓国が米国の同盟国として適格な国なのかどうかを見極めるうえで「最初の重要な試金石」となる、と考えた方が正確ではないかと思う次第です。
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もと歯医者さんのブログへ書き込んだ内容です。
” 招待された4ヶ国会談に韓国が参加しなかった場合、「韓国首脳は日本と関係を改善する準備はできている」が、誤報になりますかね。
日本は、会談に前向きな姿勢を見せることができました。
「韓国が、会談を避けた」になりますよね? ”
さすがに、米国の要請である日米韓の3ヶ国会談に、参加しますよね 韓国さん?。
所詮GSOMIAなどアメリカがり地域の首に付けた首輪のようなもの。
単に北朝鮮のミサイル暴挙の情報収集の話だけなら日米間で完結する話。
その首輪を自ら千切って捨てる、もしくは首輪に付いたリードを中共や北に渡す、という事であれば、り地域は日米から敵と見做されるだけの話。
革新の倒日派文政権と
保守の用日派尹政権は、
「GSOMIA破棄するニダ」と
「GSOMIA復元するニダ」
という手法の違いこそあれ、
どっちもGSOMIAネタにして
日本に嘘捏造のインネン
飲ませようという狙いは
おんなじなのが滑稽です。
バイデン政権発足以来の韓国に対する扱いを見ていると、安全保障分野での中露包囲網の構築には参加させないし、何らの積極的役割も期待しない。ただし、高度工業製品、戦略物資のサプライチェーンにはしっかり取り込む、あるいは逃がさんぞと、そういう方向性で行くとすでに決定しているかに思えます。
ついこの間、日韓両国を訪問して、首脳会談をこなしたばかりのバイデン氏が、改めて抽象的な友好協力関係の確認なんかのために、三カ国会談などやるわけはないでしょう。
NATO諸国の結束を高め、新しい対露、そしておそらく対中政策が話し合われる場。その進行に合わせておこなわれる会談ですから、そこで出てきた政策への、具体的な協力の意思を問いただすのが米、回答を迫られるのが韓。日本はどちらかと言えば立会人みたいなポジション、ということになるのでしょうが、いい加減な返答で誤魔化して、後は頬被りというこれまでみたいな対応をすれば、対米だけでなく、対日関係までダメになるぞという、圧力をかけるという役割も計算に入っているんでしょう。
一昔前の日米韓の関係を考えれば、パラダイムシフトが起きたと感じざるを得ませんが、その功労者と言えば、安倍元総理より先に、やっぱり文在寅元大統領を挙げるのが至当という気がしますね。
卓見、卓見、まったくおっしゃる通りだと思います。
キッシーは知らない人と二人きりで会談してはいけません。危ないよ。公共の場所で他の人がいれば安全です。韓国人はキムチを食べるしキリスト教徒なので、ニンニクや十字架で撃退できません。まずは防衛力を増強するため、しめ縄をして結界を張り、お神酒で体を清め、「韓国撃退」と書いたお札を張っておけば寄ってこないでしょう。それでも寄って来たら、「反撃能力」(旧称敵基地攻撃能力)が必要でしょう。反撃方法としては、旭日旗を見せれば体に火がついて燃えてしまうという話も伝わっています。だから旭日旗を嫌がるのでしょう。 小学生でも宿題をするまではテレビを見てはいけないのですから、ユンちゃんも宿題をするまでは日米首脳会談は無しです。
既に総スルー状態に近い"リスカブス"
次はパイナップルのピンを抜くか!?
何度も書きますが、「リストカット」患者の自傷行為の理由は他人の気を引くためではありません。
狂言自殺の場合はもっと、自分が傷付かず、周りを巻き込む手段を用います。
彼らに相応しいのはthroat Cutです。
破棄も復元もなにも…
韓国に日米が期待する程度にはGSOMIAはいまも普通に機能しておりますが?
GDOMIAに文化交流や財政支援は元々含まれておりません。
ムンがどこまで見越してやったか知らんが親米保守政権になった場合の毒まんじゅうのうちの一つがGSOMIA破棄問題。
名目上は日本の輸出優遇取り消しに対する報復なので日本がホワイト国に戻さないままGSOMA破棄撤回は韓国民の怒りを買い政権維持に支障をきたすし、破棄したら米韓の軍事同盟関係に大きな亀裂を生じさせる。
尹氏はこの手の八方塞がりだらけで可哀想といえば可哀想だが、そんな国の大統領に自ら立候補して就任したのだから自業自得。
今回の局面は特に、韓国のマスコミが韓国政府とピッタリと一体化して、対日関係やその他の外交案件に関して観測気球を上げたり、政府のお先棒を担いで国益云々を語ってみたり、時には日本に怒ってみせたりする態度が本当に特徴的に表れていますね。朝鮮中央通信のニュースやら労働党機関紙の論調を見ながら北朝鮮政権の意向を判じ物をパズル合わせして推測する北朝鮮相手の外交とどんどん近似してきているのを感じます。
ところでGSOMIAとは、日米韓の軍事情報の共有に関して、受けた相手国の情報を国外、とりわけ敵国に漏らさない、という協定です。で韓国政府はこのGSOMIAを「破棄する」とか「破棄を保留する」とか「今後GSOMIAを維持するには日本側の態度が云々」とか言うわけです。でもそれ【互いの情報を秘密を洩らさないよ】という決まりを守らない、決まりに縛られない、要するに共有する約束で受けていた日本からの情報、日本からの情報も考慮の上のアメリカからの情報の共有するべき秘密を守らない、更に言えば【中共や北朝鮮に流しちゃうよ】という宣言になります。これで情報共有が維持できるのか。「GSOMIA」というわかったようでわからない頭韻集めた短縮語で意味を韜晦していますが【韓国は中共にチクる国になります】と言うに等しい。更に言えば【ウチに何か情報流せばチクるからもう軍事情報共有はアメリカとも不要】という切り口上に等しい。これが日本の某女流作家が喝破した「手首切るブス」という比喩に悲しいほどに合致している。
あ、ところで本日不在者投票に行ってまいりました。成人以来一貫して誇りをもって投票してきた日共でしたがダメなものはダメですからきっぱり別の党と別の党の候補者にしました。
日韓GSOMIAでは以前と比べ韓国が得られる情報の質と速度が低下したってことだったかと。
日米GSOMIA→◌
米韓GSOMIA→◌
日韓GSOMIA→△(質は問わない)
日韓GSOMIA協定は、米国が”日米韓安保連携遂行上の情報パス”として欲したものなのですから、実務の場では形式的なものだけで充分なのかもですね。
GSOMIAとか徴用工のムンヒサン案とか、もう交渉材料になり得ないのが判明してるのに「いや当時とは両国のメンツも違うしまだ行ける!」とか思ってんスかね?
バカなのか、バカにしているのか・・・