「宏池会候補者リスト」についてのリクエストがありましたので、少々「やっつけ仕事」的ではありますが、本稿では選挙区も含め、自民党候補者について調べられる限りのリストを改めて作成してみました。ただし、やはり新人を中心に所属派閥が調べきれないというケースもあります。本稿は決して網羅的なものではありませんので、投票にあたってはくれぐれも自己責任にてご判断ください。
先日の『岸田首相にお灸据えたいなら自民でなく宏池会へどうぞ』では、「自民党を支持しているけれども岸田政権については支持できない」という人などを想定し、参院比例代表で出馬している候補者について、可能な限り、所属派閥を調査して提示しました。
岸田首相が打ち出した「月額数十円のポイント還元」をめぐっては、考えるほどにバカげた政策だと言わざるを得ません。ただ、自民党支持者の方のうち、岸田首相に不満があるという人も、下手に参院選で「自民党にお灸を据える」などと考えない方が良いでしょう。そのようなことをするのであれば、自民党の総議席数が変わらないようにしつつ、岸田派候補をピンポイントで狙って落選させる方が現実的です。月額数十円のポイント還元「この電力危機にあって、政府の最大の役割は、まずは電力の安定供給の確保にこそある」――。昨日の『政府... 岸田首相にお灸据えたいなら自民でなく宏池会へどうぞ - 新宿会計士の政治経済評論 |
参院比例代表の場合は「非拘束名簿式」を採用していますので、私たち有権者は比例代表では政党名を書いても個人名を書いても良く、そして、政党内では個人が獲得した票数に応じて当選順位が決定されるからです(※「特定枠」を除きます)。
したがって、万が一、「自民党のことは支持しているけれども、特定の派閥(たとえば宏池会や二階派など)については支持できない」という方がいらっしゃるのならば、少なくとも比例代表では、その派閥に所属する候補ではなく、ほかの候補者の個人名に投票すれば良い、という理屈です。
これが、「お灸を据えるなら自民党に対してではなく宏池会に対して」、という趣旨です。
ただし、先日提示した名簿は、基本的には比例代表に限定したものでした。
その理由は、選挙区の場合だと、そもそも自民党から出馬している人数が少なく、たとえば広島県(宮沢洋一氏)、香川県(磯崎仁彦氏)などのように、その選挙区で自民党候補者が1人しかいない、というケースもあるからです。
したがって、このようなケースだと、「自民党候補者を勝たせたいけれども宏池会候補を選挙区で落選させたい」と思っても、それは残念ながら実現させることはできません。なぜなら自民党候補はその宏池会候補しか存在しないからです。
ただ、今朝の『鈴置論考「韓国が岸田チャンスを使わないはずがない」』では「立候補者の所属派閥一覧が欲しいですか?」と尋ねたところ、複数の方から「ほしい」というご意見がありました。
よって、自民党の候補者一覧のウェブサイト、および著者自身が現時点で調べた限りの情報をもとに、現時点で把握している「候補者の派閥情報」についてお伝えしたいと思います。
まずは、安倍派(清和政策研究会)です。候補者数も14名と最も多いです。
図表1 安倍派(清和政策研究会)
候補者氏名 | 選挙区 | 当選回数 |
---|---|---|
長谷川 岳(はせがわ がく) | 北海道 | 2回 |
上野 通子(うえの みちこ) | 栃木県 | 2回 |
野上 浩太郎(のがみ こうたろう) | 富山県 | 3回 |
岡田 直樹(おかだ なおき) | 石川県 | 3回 |
山崎 正昭(やまざき まさあき) | 福井県 | 5回 |
松川 るい(まつかわ るい) | 大阪府 | 1回 |
佐藤 啓(さとう けい) | 奈良県 | 1回 |
末松 信介(すえまつ しんすけ) | 兵庫県 | 3回 |
江島 潔(えじま きよし) | 山口県 | 2回 |
山本 順三(やまもと じゅんぞう) | 愛媛県 | 3回 |
井上 義之(いのうえ よしゆき) | 比例代表 | 1回 |
岩城 光英(いわき みつひで) | 比例代表 | 3回 |
山谷 惠里子(やまたに えりこ) | 比例代表 | 3回(衆1回) |
山田 宏(やまだ ひろし) | 比例代表 | 1回(衆2回) |
(【出所】候補者氏名は参議院ウェブサイト等、選挙区・当選回数は自民党ウェブサイト)
次に、茂木派(平成研究会)です。候補者は10名です。
図表2 茂木派(平成研究会)
候補者氏名 | 選挙区 | 当選回数 |
---|---|---|
石井 浩郎(いしい ひろお) | 秋田県 | 2回 |
関口 昌一(せきぐち まさかず) | 埼玉県 | 4回 |
浅尾 慶一郎(あさお けいいちろう) | 神奈川県 | 2回(衆3回) |
渡辺 猛之(わたなべ たけゆき) | 岐阜県 | 2回 |
小野田 紀美(おのだ きみ) | 岡山県 | 1回 |
青木 一彦(あおき かずひこ) | 鳥取県・島根県 | 2回 |
福岡 資麿(ふくおか たかまろ) | 佐賀県 | 2回(衆1回) |
松村 祥史(まつむら よしふみ) | 熊本県 | 3回 |
野村 哲郎(のむら てつろう) | 鹿児島県 | 3回 |
宇都 隆史(うと たかし) | 比例代表 | 2回 |
(【出所】候補者氏名は参議院ウェブサイト等、選挙区・当選回数は自民党ウェブサイト)
続いて麻生派(志公会)です。次の7名です。
図表3 麻生派(志公会)
候補者氏名 | 選挙区 | 当選回数 |
---|---|---|
船橋 利実(ふなはし としみつ) | 北海道 | 新人(衆2回) |
猪口 邦子(いのぐち くにこ) | 千葉県 | 2回(衆1回) |
藤川 政人(ふじかわ まさひと) | 愛知県 | 2回 |
中西 祐介(なかにし ゆうすけ) | 徳島県・高知県 | 2回 |
大家 敏志(おおいえ さとし) | 福岡県 | 2回 |
今井 絵理子(いまい えりこ) | 比例代表 | 1回 |
藤末 健三(ふじすえ けんぞう) | 比例代表 | 3回 |
(【出所】候補者氏名は参議院ウェブサイト等、選挙区・当選回数は自民党ウェブサイト)
そのうえで、岸田派、つまり宏池会は次の6名だそうです。
図表4 岸田派(宏池会)
候補者氏名 | 選挙区 | 当選回数 |
---|---|---|
小鑓 隆史(こやり たかし) | 滋賀県 | 1回 |
宮沢 洋一(みやざわ よういち) | 広島県 | 2回(衆3回) |
磯崎 仁彦(いそざき よしひこ) | 香川県 | 2回 |
足立 敏之(あだち としゆき) | 比例代表 | 1回 |
藤木 眞也(ふじき しんや) | 比例代表 | 1回 |
水落 敏栄(みずおち としえい) | 比例代表 | 3回 |
(【出所】候補者氏名は参議院ウェブサイト等、選挙区・当選回数は自民党ウェブサイト)
ついでに二階派(志帥会)についても確認しておきましょう。
図表5 二階派(志帥会)
候補者氏名 | 選挙区 | 当選回数 |
---|---|---|
中曽根 弘文(なかそね ひろふみ) | 群馬県 | 6回 |
鶴保 庸介(つるほ ようすけ) | 和歌山県 | 4回 |
尾立 源幸(おだち もとゆき) | 比例代表 | 2回 |
木村 義雄(きむら よしお) | 比例代表 | 1回(衆7回) |
進藤 金日子(しんどう かねひこ) | 比例代表 | 1回 |
自見 英子(じみ はなこ) | 比例代表 | 1回 |
(【出所】候補者氏名は参議院ウェブサイト等、選挙区・当選回数は自民党ウェブサイト)
最後に、比例代表候補のうちの現・元職議員の当選回数と派閥についても再掲しておきます(図表6、ただし図表1~5との重複あり)。
図表6 比例代表候補のうち現・元職議員と前回得票数、所属派閥
候補者氏名 | 前回得票数 | 備考 |
---|---|---|
青山 繁晴(あおやま しげはる) | 481,890 | 無派閥 |
片山 さつき(かたやま さつき) | 393,382 | 無派閥 |
山谷 惠里子(やまたに えりこ) | 249,844 | 安倍派 |
山田 宏(やまだ ひろし) | 149,834 | 安倍派 |
岩城 光英(いわき みつひで) | (落選) | 安倍派 |
井上 義行(いのうえ よしゆき) | (落選) | 安倍派 |
足立 敏之(あだち としゆき) | 293,799 | 岸田派 |
藤木 眞也(ふじき しんや) | 236,119 | 岸田派 |
水落 敏栄(みずおち としえい) | 114,485 | 岸田派 |
今井 絵理子(いまい えりこ) | 319,360 | 麻生派 |
藤末 健三(ふじすえ けんぞう) | 143,188 | 麻生派 |
宇都 隆史(うと たかし) | 137,994 | 茂木派 |
自見 英子(じみ はなこ) | 210,562 | 二階派 |
進藤 金日子(しんどう かねひこ) | 182,467 | 二階派 |
尾立 源幸(おだち もとゆき) | (落選) | 二階派 |
木村 義雄(きむら よしお) | (落選) | 二階派 |
(【出所】自民党『参議院2022 比例代表候補一覧』、総務省『平成28年7月10日執行 参議院議員通常選挙 速報結果』などを参考に著者作成。所属派閥は著者による調査)
なお、ここに列挙した以外にも候補者はたくさんいますし、また、上記区分が誤っている可能性、漏れがある可能性が絶対にないと保証することはできません。くれぐれも、投票に当たってはご自身で調査のうえ、ご自身の判断と責任において行っていただきますよう、お願い申し上げます。
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これは助かる!
安倍派から選ぶか。。。
新宿会計士殿、貴重なリストの作成ご提示、誠に有難う御座います。
ちなみに私は昨日所要があり外出した折に、早速、期日前投票に出向きました。私が投票した候補者を改めて新宿会計士殿作成リストで確認しました。幸いにも岸田派でも二階派でもありませんでした。やれやれです。
取り急ぎ、参院選・自民党「宏池会所属候補者のリスト」作成のお礼と、ご教授頂いた方針を参考に投票した旨のご報告を致します。
資料リストありがとうございます。
ただ地元の選挙区で出る自民党候補が
新人で派閥が分からないのですが、
その新人を後継者に指名した議員が、
宏池会所属なんですよねぇ。
単純に考えたら、そこにスライドするんじゃないかと思って、その人に投票していいかで迷ってます。
リスト作成ありがとうございます。
北海道なので2名(安倍派、麻生派)でした。
二人とも似たような政治姿勢ですが、現職は自民党内で反原発議員の集まりで世話役をやっているようなので、新人に投票しようと思います。
岸田派、二階派以外の議員でもその議員の政治姿勢を見極めて決定する必要があると痛感しました。
神奈川選挙区。
浅尾慶一郎氏は、二階派っぽいのですが。元みんなの党。
今、議員じゃないので情報があまりなく。
浅尾氏が自民入党
https://static.tokyo-np.co.jp/tokyo-np/archives/senkyo/shuin2017/shuin_article/zen/CK2017100102000117.html
経済畑で外交安保はあまり色が無いです。歴史認識では過去は韓国が喜びそうな活動をしているようですね。
神奈川選挙区には三原じゅん子氏も出ています。無派閥なのでリストに無いと思います。
無派閥ながら、「参院平成研究会」には参加しているそうです。
リストありがとうございました。ただ、茨城選挙区の情報ありませんでしたので、仕方なく、断腸の思いで「東大+朝日」の候補者への政策質問回答まとめを見ました。
維新とN党が自衛隊明示改憲「賛成」、自民は「どちらかといえば賛成」でした。これにより個人的投票先決定です(宗男ちゃんと宗男ちゃんを放置する党首には腹立ちますが今回は仕方なし)。
>たとえば広島県(宮沢洋一氏)、香川県(磯崎仁彦氏)などのように、その選挙区で自民党候補者が1人しかいない、というケースもあるからです。
岸田のお膝元広島ではコレなんですよ。前回の比例候補の記事で言おうと思いましたが、そんなことは百もご承知だろうと言いませんでした。
今回の二枠のうち一つは宮沢で不動でしょう。残り一つもあまりに碌でもないのばかりですしw
県会議員等では宏池会に入れまいとすると河井案里のような輩が出てくるし。
鳩山由紀夫が、また、たわけた売国発言をしているようですが、・・・
https://news.yahoo.co.jp/articles/ed514fe059e9d0db28c850db23d0f4ee889dcdf6
もう外患誘致で処分すべきだと思います。
このままじゃ、日本との関係が、本当にダメになる。
過度な反日姿勢、根拠のない道徳的優越感など、この際捨てなければ、
なんて考える人間が出てこないようにするのが、彼の言動の真の目的。
まあ、それぐらいしか、この人の「韓国愛」の理由は説明できないですね。
某国の諜報員とでも考えれば,良いのかな?
参院選後の「黄金の三年間」の岸田首相を激しく警戒しています。
防衛費GDP比2%化とか、憲法改正とか言ってますが、保守票欲しいだけじゃないのかと。
昨年の総裁選前には、岸田も、河野でさえも、そんな事を言っていたのです
財務省フレンズの岸田が、選挙後に牙をむく事を警戒しないといけないと思います
とは言え、立共は論外、選択肢は維新か国民、或いはミニ政党
維新には立憲票を喰って欲しいと思っているのですが、宗男を切れない情けなさ
どう考えても参院の一議席以上に、票を失ってると思うのですが・・・
国民も割と埋没していて、議席予想では微減だとか・・ここも情けない
自民というか、岸田が少し負けて、維新・国民が躍進、立共は壊滅
そんな事を夢想していたのですが、いやあ、世の中は思う様には行かないのですかねぇ・・
ブログ主様の御主張は,要するに「今度の参院選では自民党でなく岸田派(宏池会)にお灸をすえるべきだ」ということだと私は理解しました.(理解が間違っておりましたら真意を御教示下されば幸いです)
しかしながら,私はそれには賛同できません.その理由は簡単です.宏池会は小さい派閥なので立候補者数も少なく,恐らく,今回の参院選で宏池会所属の候補を全員落選させても,改選分において与党が過半数を切り岸田首相の責任問題となる可能性は小さいからです.
岸田首相の立場で考えると,この参院選さえ乗り切れば国を揺るがすような大問題がおこりそこで首相あるいは内閣全体として大失態を演じない限り,次の参院選か衆院の任期満了まで約3年間も政権の座を維持できることになります.
つまり,この参院選で少なくとも改選分での過半数割れという与党敗北を喫させない限り,少しぐらい議席を減らしたところで岸田首相の責任問題には発展せず,更に3年間も首相の座に留まることを許してしまいます.
文字通りロクなことをやらない岸田政権にとって3年間もあれば,日本は内政(経済や国体)でも外交でもどれほど滅茶苦茶になるか分かったものではありません.
(他の方が書いておられましたが,立憲のテイストと岸田氏のテイストとはとても近いという御指摘には思わず唸ってしまいました.言われてみれば確かにその通りだと思います)
立憲民主党に政権を委ねるのは十数年前の悪夢の再現であり論外であるのと同様に,その下位互換のリベラリスト岸田氏に政権を委ね続けるのは極めて危険なのです.
そのためにはこの参院選しかチャンスがなく,宏池会だけでなく無策極まりない岸田を降ろすという形での自浄能力の発現をしない自民党全体にも落選という形で血を流させて,その強い痛みによって自浄能力を強制的に呼び覚まし岸田降ろしを実行させる以外,我々国民にとって今の内政無策&外交的に危険極まりない岸田政権をターミネートさせる手段はないのです.
私は、日本の政治を改善するためには、保守系の有権者に選択に機会を作る事が喫緊の課題だと認識しています。
なのでまずは日本維新の会を野党第二党になれるかどうかが今回の参議院選挙の注目点だと思います。
日本維新の会は、政権を任せるにはまだまだ不十分ですが、今後国民が育てていかなければいけないと思います。
保守系の野党第二党が誕生すれば、政治を志す有能な人材が参加してくれるものと期待しています。
でないと、宏池会や二階派が政治に影響力を持つ時代が続いてしまうのではないかと危惧しています。
維新には全く期待していなかったのですが,この私の維新評価はウクライナ侵攻に関する橋下氏や鈴木議員ら維新関係者の発言とそれに対する維新内部からの自浄作用が全く起きずに二人を放置していることから基本的に正しかったと確信しました.
それに維新は経済政策に関しては自民党以上の新自由主義ですから,日本国民の大半は貧困になるだけだし,大きな自然災害や今のウクライナ戦争のような国際的な大混乱が生じたときにはお手上げになるしかありません.
新自由主義は平時にしか通用しない不完全なシステムを経済効率が最も良いから正しいと信じる一種のカルト宗教に過ぎません.かつては大規模停電などと無縁だった我が国の電力を,福一事故をここぞとばかり悪用して新自由主義的に改悪した結果が現在の体たらくぶりです.
システムの動きが安全で安定を保つためには冗長性=上手く動いている時は単なる無駄になる部分がシステムには不可欠だと言う至極当然のことを理解出来ず徹底した競争による最高の効率達成が価値の全てというカルト宗教を信じられる子供レベルの単純脳が新自由主義者です.