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なんでも「関係改善」と強引に結びつける韓国メディア

「羽田-金浦便の復活で韓日関係は改善する」。「NATOでの韓日略式首脳会談で韓日関係は改善する」。こんな話題が相次いで韓国メディアに掲載されているようです。なんだか必死です。やはり、1ドル=1300ウォンを超えるウォン安水準に突入するなか、韓国が日本からの緊急での金融支援を必要としているという事情もあるのかもしれません。もっとも、その「韓日関係改善要求」に日本が応じる必要があるかどうかといえば、そこはまた別問題ですが…。

日韓間でかくも異なる事実認識

少し前から当ウェブサイトでは、韓国が考える「韓日関係の改善」と、日本が考える「日韓諸懸案の解決」が、まったく似て非なるものではないか、という仮説を、おぼろげながら提示してきました。

たとえば、以前の『単なる説明会を「韓日協議」と歪曲発表する韓国外交部』では、今月2日に行われた福島第一原発のALPS処理水海洋放出に関する説明会をめぐり、韓国側が「汚染水関連韓日協議」と発表した、などの話題を取り上げました。

「韓日関係改善」vs「健全な姿に戻す」――日韓局長級協議での双方の当局発表を見比べてみると…?韓国外交部は昨日、「福島汚染水で韓日協議を行った」と発表しました。福島第一原発のALPS処理水を巡って、日本が協議する相手は、第一義的には国際原子力機関(IAEA)だったはず。なぜ日本政府が韓国との協議に応じたのか――。くれぐれも、早とちりしないでください。日本政府の側のウェブサイトをちゃんとチェックすれば、韓国の発表がウソだとすぐにわかるからです。その前提として、最近、日本政府が日韓関係「改善」という表...
単なる説明会を「韓日協議」と歪曲発表する韓国外交部 - 新宿会計士の政治経済評論

このときにも考察したのですが、そもそも韓国側の発表を眺めていると、基本的な事実認識すら日本側と一致させることができていない、という点に気づくことが多々あります。たとえば「汚染水をめぐる協議」という表現ひとつとってもそうです。

日本政府が海洋放出を決定したものは、客観的に見れば「汚染水を多核種除去装置(ALPS)で処理したもの」であって、「汚染水そのもの」ではありませんし、国際原子力機関(IAEA)とのあいだで、海洋放出に向けた国際的な基準への適合性などのすり合わせ作業が大詰めを迎えています。

こうしたなかで、日本政府が実施したのは、韓国に対する単なる「説明会」であって、「日韓協議」ではありません。ALPS処理水の海洋放出自体、IAEAとは協議すべきですが、韓国や中国、ロシアといった個別国と協議すべき筋合いのものではないからです。

韓日関係改善=二重の不法行為を受け入れるということ

ちなみに日韓で事実認識が異なるという事例は、「汚染水」だけではありません。「輸出規制」、「強制徴用被害者」、「低空威嚇飛行問題」など、ほかにいくらでもあります。もちろん、これについては日本が特殊なのでも、日韓関係が特殊なのでもありません。「韓国が特殊」なのです。

このように考えていくと、韓国が主張する「韓日関係の『改善』」とは、「日本が韓国の『二重の不法行為』を問題視せず、日本が韓国に対し、国際法の原理原則を捻じ曲げて一方的に譲歩するような関係」のことをさしているのではないか、といった疑問が頭をもたげてくるのです。

【参考】日韓諸懸案巡る韓国の「二重の不法行為」とは?
  • ①韓国側が主張する「被害」の多くは、(おそらくは)韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである
  • ②韓国側が日本に対して要求している「謝罪」「賠償」などには多くの場合、法的根拠がなく、何らかの国際法違反・条約違反・約束違反を伴っている

(【出所】著者作成。『【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』等参照)

こうした仮定を置くと、韓国政府や韓国メディアの言動も、すっきりと理解できるかもしれません。

要するに、「韓国の特殊性に、日本がまじめにお付き合いする」という関係のことを、韓国側は「韓日関係の『改善』」だと思っている、という仮説です。

正直、話になりません。当たり前の話ですが、この世界は国際法が支配しています。本来、国際的な条約や国際合意などを守ることは、まともな主権国家であれば当たり前の話であるはず。「約束を破る」「ウソをつく」といった行動が当たり前のようになされる国のほうが、国際社会においては「特殊」なのです。

したがって、韓国が「ウソをつかない」、「約束を守る」という行動をとらない限りにおいては、日本としては韓国が述べる「韓日関係の『改善』」に応じる必要もありませんし、むしろ応じてはなりません。

韓国メディアの報道を読むときも、こうした前提を置いておくことが必要ではないでしょうか。

「航空便再開で関係改善」、「略式会談開催で関係改善」

なぜそのようなことを述べるのかといえば、日韓の定期航空便に関する話題や、今月末にスペインで開かれるNATO首脳会合に向けた日韓首脳会談に関する話題が、韓国メディアから相次いで出てきているからです。それも、多くの場合は「韓日関係『改善』」とセットで議論されているのです。

たとえば、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)が昨日報じた、次の2つの記事がその典型例です。

金浦―羽田線再開で韓日の人的交流復活へ 関係改善なるか

―――2022.06.22 16:59付 聯合ニュース日本語版より

NATO会議出席の韓日首脳 略式会談開催か

―――2022.06.22 20:25付 聯合ニュース日本語版より

このうち「羽田-金浦直行便再開」に関する話題については、記事のタイトルでもわかるとおり、「両国の首都を結ぶ人的交流の重要インフラの復活が韓日関係の改善につながるかが注目される」、と述べるものです。

「羽田-金浦直行便再開」に関しては、すでに昨日の段階で日韓複数のメディアが報じているのですが、これは「金浦-羽田線を29日から週8往復運航することで日本側と合意した」と韓国政府が22日に発表した、とするものです。

この点、昨日時点で日本政府側からそのような発表が出ていない、という点も気になりますが、もしこの「羽田-金浦線復活」が事実だったとしても、コロナ禍で中断された韓国国民向けの観光ビザ免除制度が復活するかどうかは別の問題です。

それに、人的交流が「復活」したとして、それが韓国の求める「韓日関係の『改善』」につながる、というものでもないでしょう。あくまでも人的往来の制限をもたらした要因は、「コロナ禍」という、日韓諸懸案とはまったく別次元のものだからです。

また、「NATOで日韓首脳会談」という話題については、『日韓首脳会談開催「見送り」方針を韓国メディアが裏付』でも触れたとおり、すでに先週の段階でその可能性は消えています。

韓国側から「答え」が出てきました。やはり、現時点では今月末の日韓首脳会談については見送りの方向、という可能性が濃厚です。韓国側が諸懸案の解決策を示さず、それどころか竹島近海で無許可の海洋調査を実施するなど、日韓首脳会談を開く環境が整っていないとみられるからです。ただ、政権が代わったにも関わらず首脳会談が開かれないのだとしたら、文在寅政権が日韓関係を不可逆的に変えてしまったということなのかもしれません。日本側が首脳会談見送り=産経報道今朝の『政府、日韓首脳会談見送り=産経』では、こんな話題を取...
日韓首脳会談開催「見送り」方針を韓国メディアが裏付 - 新宿会計士の政治経済評論

それに、『「首脳会談さえやれば信頼関係醸成」という考えは甘い』などでも指摘しましたが、韓国側には「韓日首脳会談さえやれば、首脳間で信頼関係が醸成され、韓日関係の改善に結びつく」とする考え方が見受けられるのですが、こうした考えは正直、現実を見ていないとしか言いようがないでしょう。

「首脳会談で韓日の信頼関係を醸成しよう」。そんな発言が、韓国政府から聞こえてきました。今月下旬にスペイン・マドリードで開かれるNATOサミットに日韓首脳がゲスト国として参加する可能性が高まり、その際に日韓首脳会談が開かれることへの期待感が韓国政府側から出てきた格好ですが、そもそも首脳会談をすれば「わかりました、あなたのことを信頼しましょう」、となるほど現在の日韓関係は甘いものではないのです。おじいさんの不法行為日韓関係がギクシャクしていること、その原因を韓国側が作ったことについては、『【総論...
「首脳会談さえやれば信頼関係醸成」という考えは甘い - 新宿会計士の政治経済評論

(※もっとも、「岸田リスク」「林リスク」なるものが存在する可能性については、あえて否定しませんが…。)

たった5分で何ができるのでしょうか?

こうしたなか、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に今朝、こんな記事が掲載されていました。

尹大統領、NATO会議で岸田首相と少なくとも3回会う

―――2022.06.23 07:08付 中央日報日本語版より

中央日報はNATO首脳会合のサイドラインで日豪NZ+韓の4ヵ国の首脳会合に加え、日米韓3ヵ国首脳会合の開催も検討されているなどの状況を踏まえ、岸田文雄首相と尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領が「少なくとも3回顔を会わせることになる」と指摘。

あわせてNATO首脳会合の「配偶者セッション」でも夫人同士が出席する可能性が高い、などとしています。

ただし、中央日報は「韓日だけの二国間会談は開かれない可能性が高い」としたうえで、「大統領室関係者」が次のように述べた、と説明しています。

互いに心を開いて関係を改善する準備はできている(が)日本が選挙を控えた敏感な時点に、突然外国の地で別の契機に会って韓日の議題に集中することができるのかという懸念が両国間にある」。

この手の「日本側は選挙前だから韓日首脳会談に応じる余裕がない」とする見解、韓国政府、韓国メディアなどからは頻繁に出てきます(※ちなみに日本が首脳会談に応じない理由は、「選挙前」だからではありません。諸懸案の解決策を持ってこない韓国と首脳会談をしても意味がないからです)。

そのうえでこの「大統領室関係者」は、「略式会談(プル・アサイド)」方式での歓談の「可能性が開かれている」などとして、次のように述べたのだとか。

2~3分、5分会っても意味ある対話が可能な場合がある」。

5分間だと、もしも日本側が安倍晋三総理や菅義偉総理だったとしたならば、簡単な挨拶をしたうえで、日本側から「韓国は約束守れ、ウソをつくな」と要求しておしまいでしょう(岸田首相にその応対ができるかどうかについては若干の留保は必要ですが…)。

なお、韓国には過去に「プル・アサイド」ですらなく、ASEAN+3首脳会談の控室で強引に「ゲリラ的な首脳会談」を仕掛け、無断で写真撮影までした、という事例があります。2019年11月4日の「ゲリラ会談」が、その事例です。

【参考】無断撮影された日韓「ゲリラ首脳会談」

(【出所】文在寅(ぶん・ざいいん)政権時代の韓国大統領府ウェブサイト)

いずれにせよ、「航空便で韓日関係改善」、「首脳会談で韓日関係改善」、といった話題が、最近、少し多すぎる気がします。

1ドル=1300ウォンを超過する通貨安という状況もあり、韓国側が日韓通貨スワップなどの日本からの緊急金融支援を必要としているという事情もあるのかもしれませんが、もしそれを必要とするならば、まずは韓国側が、「ウソをつかないこと」、「約束を守ること」から始めなければなりません。

もし韓国側がそれに応じない場合、極端な話、日本は日韓関係を「放置」しても仕方がないのです。

新宿会計士:

View Comments (16)

  • 日韓二国間の「関係改善」
    日本にとっての改善と韓国にとっての改善が別物になってしまっているのでしょう。

    韓国はギブアンドテイクに基づく現代的な外交をすることから始めねばならないのですが……
    韓国が「自国にとっての改善なら相手国にとっても改善となる」といわんばかりな姿勢しか見せない以上、関わるだけ各種リソースの無駄としか言えませんね。

    結論:韓国に関わった時点でデメリットが確定し、メリットはまず得られない

    • 匿名さま

      おっしゃるとおり、国としてはメリットは得られないと思いますが、自民党の売国議員の連中は何かしらのメリット(あるいは弱みを握られている)と思います。
      ところで、「自民、対韓国政策の検討で初会合 来夏めどに取りまとめ」というニュースが昨年12月に出ましたが、そろそろ中間報告の時期ですが何の情報もなし。政府も一応やっているよという単なるガス抜きじゃなかったかと思います。そうやって有権者を煙に巻きながら、なし崩し的に日本からも歩み寄る気がします。

      • ジロウさま

        売国議員については羽虫のようなものなので殺虫剤や忌避剤の準備と心構えが必要ですね。
        自民党の政策として対韓国は取りまとめる以前に「丁重な無視」の段階で止まっているように感じます。
        一般に公開されている最新の政策は参院選の公約でしょうが、韓国に関する記述は一切ありませんでした。
        北朝鮮についてはちゃんとあるのに、です(と言っても、拉致被害者&核・ミサイルのいつものアレですがw)

        (自民党サイトより、参院選選挙公約のPDF)
        ttps://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/pamphlet/202206_manifest.pdf

  • 嘘をつかないこと。約束をまもること。、、ハードル高すぎて韓国人がアタマを抱えてしまうだろうに。だけどその前に奴らの好きな言葉を一つ。「謝罪と賠償をしろ!」だな。宿題が多すぎる上に謝罪と賠償だからハードル高い。これで韓国あっちいけホイホイなんだけど岸田リスク、林リスクが日本にとってはアタマが痛い。あの二人なんとかならんのか?と思ったら岸田派の連中を選挙で落とす、、、これ良い作戦だ!会計士さん、、、選挙にでてくれ!

  • まあ、韓国のマスコミも関係改善、関係改善ということは、日韓関係が悪いという事は認識しているようで。
    日本はこれが通常の関係と思ってますから、改善したいとは思っていない人が多いと思います。

  • 「米国(連合軍総司令部)側に助けられて、韓国は外交的にも経済的にも日本から一方的に特恵を受けていた。」〜『帰属財産研究 韓国に埋もれた「日本資産」の真実』著:李大根

    韓国は、今だに、この精神を継続しているようです。自己発展出来ない国。

  • 羽田-金浦路線に関しては、日本側の情報では6月中の再開は不可能で、7月以降に延期となっている。6月29日再開は、あくまでも韓国側の希望であり、いつものように国交省に譲歩させようとする常とう手段では?そして、6月29日の再開は不可能と国交省が発表すれば、また日本側が「関係改善」の足を引っ張っていると主張しようとする意図が見え見え。

  • そもそも論ですが、(韓国人に限らず)すべてを自分の都合よく解釈してしまうのが、人間の性ではないでしょうか。(問題は、それを自覚できかどうかです)
    蛇足ですが、日本の企業のトップも、過去の成功体験から、仲間の和を乱さないようにしか現実を解釈できないのではないでしょうか。

  • 今朝、日本式お茶を入れてみたら茶柱が立ったので関係改善くらいのニュアンス。

    • 今朝、家を出たら、黒猫が目の前を横切ったので関係改善は失敗くらいに返しておけば良いと思います。

  • Kフィルター(K脳)は自分に都合の良いことを、たとえ嘘でも事実と信じこみ他人が何と言おうと聞く耳を持たなくなる世界に類を見ない特殊なフィルターです。

    慰安婦合意まではひたすら告げ口に徹し邪な一念を実現できたが、調子こいて慰安婦合意の事実上の破棄、募集工判決でゲームチェンジしたことにKフィルター(K脳)ゆえ気付かず過去の成功体験から抜け出せない。企業と同じでゲームチェンジしたことに気付かなければ待っているのは破綻の未来。

    多くの韓国メディア主張「韓国から関係改善の手を差し伸べたのに、日本は関係改善の好機を逃してもいいのか」…ダメだこりゃ。

  • 「保育園落ちた日本死ね」というワードを見た時、いくらなんでも論理の飛躍が過ぎるだろうと驚きました。今度のケースもなかなかぶっ飛んだ思考方法なことでございますこと。

    果ては「低空飛行、関係改善」「ミサイル発射、関係改善」なんてのはいかがでしょう。

  • 「出稿!なんでも改善談」とは、どこかで聞いたこと無くもないような・・。

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