これは解決策を「小出し」にする戦法なのでしょうか。昨日もふれた、「韓国が自称元徴用工問題で解決に向けた官民共同体を設置する」とする話題をめぐり、韓国メディアから「続報」が出てきています。ただ、韓国側では「日本より先に韓国が動くことは避けなければならない」、「強制徴用被害者の意見が尊重されなければならない」、「問題解決には日本の誠意ある態度が必要」、などとする意見も見えてきます。これについて、どう考えるのが良いのでしょうか。
自称元徴用工問題の「官民協議体」
自称元徴用工問題をめぐり、韓国側で「官民での協議体」の設置計画が進んでいる、などとする時事通信の報道記事に関しては、昨日の『「韓国、徴用工解決に向け官民協議体設置」=時事通信』でも「速報」的に取り上げたとおりです。
時事通信は本日、「韓国政府と専門家らによる協議体が近く発足する」ことが「20日にわかった」と報じました。韓国メディアにもあまり報じられている形跡はありません。ただ、結論からいえば、この記事だけをもって「日韓関係が『改善』方向に動き出した」、などとみるのは少し先走りのし過ぎでしょう。これは「速報」なのでしょうか。時事通信が本日、こんな記事を配信しました。官民の協議体を設置へ 元徴用工問題解決に向け―韓国―――2022年06月20日11時01分付 時事通信より自称元徴用工問題をめぐって、時事通信は「関係者」が明ら... 「韓国、徴用工解決に向け官民協議体設置」=時事通信 - 新宿会計士の政治経済評論 |
これに関しては1日が経過するなかで、複数の韓国メディアも同じような話題を相次いで報じ始めました。
韓国政府、強制動員賠償解決に向け官民協力機関発足準備…被害者団体は含まれず
―――2022-06-21 07:03付 ハンギョレ新聞日本語版より
強制動員問題の解決策模索へ 官民合同協議体の設置検討=韓国
―――2022.06.21 10:03付 聯合ニュース日本語版より
韓国政府、「日本強制動員賠償」民官合同機構の構成を検討
―――2022.06.21 11:32付 中央日報日本語版より
韓国メディアの報道内容
では、具体的にこれらのメディアはいったい何を述べているのでしょうか。
このうち『聯合ニュース』(日本語版)の記事では、「複数の外交消息筋」が「21日に明らかにした」内容として、「日本による植民地時代の強制動員被害者への賠償問題」をめぐり、「政府関係者や専門家による官民合同の協議体を近く設置し、解決策を模索する」方針だと報じています。
そのうえで、政府内だけでなく民間の「専門家」を加える理由について、聯合ニュースは「強制動員問題を解決するためには国民と被害者が受け入れられる解決策を導き出すことが重要」であるため、などと指摘。
あわせて「韓日関係に大きな影響を与える日本企業の韓国内資産の現金化が迫っている状況も背景にあるとみられる」、などと評していますが、その反面、「問題解決のためには日本側の誠意のある態度も必要という指摘もある」、などと指摘。
「韓国内では日本は動いていないのに韓国だけが問題解決を急ぐように見える状況は避ける必要があるとの声もある」、などと述べています。
次に『中央日報』(日本語版)の記事は、「複数の韓国メディア」の報道として、「韓国政府が日帝強占期の強制動員被害者賠償問題の解決に向けて官民合同機構を構成することを検討している」ことがわかった、などとしつつ、「日本戦犯企業の国内資産現金化が迫っている状況が機構構成検討の背景になったとみられる」、などとしています。
一方で、「左派」として知られる『ハンギョレ新聞』(日本語版)は、この「機構」をめぐり、記事の冒頭で「日本側の相応措置のない一方的な譲歩へと流れてはならないとの指摘が出ている」としたうえで、「強制動員被害者」の団体については、「機関に直接参加させることはないとみられる」、と報じています。
そのうえでハンギョレ新聞は、政府がこのような動きに乗り出した理由は、「日本側が韓日関係改善の前提としてこの問題を掲げているため」だと指摘。三菱重工など「日本の戦犯企業の韓国国内資産の現金化に向けた売却命令についての最高裁判決が差し迫っている」ことも「政府が解決を急ぐ理由のひとつ」、としています。
日韓関係「改善」に向けた動き?いえいえ!
いずれにせよ、複数のメディアが報じたということは、実際に韓国側でこの自称元徴用工問題をめぐり、何らかの協議体を発足させる動きがあることは、おそらく事実なのでしょう。
しかし、これらの報道を「日韓関係『改善』に向けた動き」、と短絡的に理解すべきではありません。
正直、自称元徴用工判決問題自体、日韓請求権協定という日韓間の最も重要な法的基盤を覆しかねないものであり、日本にとっては当然、絶対に容認できないものではあります。その意味で、韓国側で問題を「解決」するための動きが出てくること自体は必要です。
しかし、これを「評価する」ことができるかといえば、そんなことはありません。そもそも、国際的な条約、国際法、国家間の合意などについては「守ことが当たり前」なのであって、それを「守ったから褒められるべき」、という話ではないからです。
ましてや、「大法院」という韓国の国家機関が2018年10月と11月、違法な判決を下したという事実を消すことはできません。韓国にできることがあれば、この違法判決を(何らかの方法により)将来に向かって無効化する措置ですが、それをやって初めて、この自称元徴用工問題で「最低限の要件」が充足されます。
しかも、先ほどの韓国メディアの記事にもある、「日本がこの問題でまったく動かないのに、韓国が先に動くという状況は避けなければならない」、「問題解決には日本の誠意ある態度も必要」、といった記述を読んでいると、本当にウンザリします。
解決策を「小出し」にする戦法か?
そもそも自称元徴用工問題自体、「①韓国側がウソや捏造、歪曲、誇張などを行っていること」、「②韓国が法的にまったく根拠がない要求を行っている」、という2つの特徴を満たしており(いわゆる「二重の不法行為」)、本件では日本が一方的な被害者であり、韓国が一方的な加害者です。
世間では少し勘違いしている人が多いようですが、日韓諸懸案とは韓国の日本に対する「二重の不法行為」の問題です。解決する全責任は、韓国側にあります。そして、日本が議論しなければならないことは、「どうやって韓国に譲歩して折り合いをつけるか」、ではありません。「約束を守らない韓国を、どうやって罰するか」、です。本稿では「総論」として、これまでに当ウェブサイトで触れてきた「韓国の対日不法行為」の数々を、大ざっぱに振り返っておきます。韓国の対日不法行為、尹錫悦政権発足後に「風化」していないか?2022年5月1... 【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任 - 新宿会計士の政治経済評論 |
したがって、まともな法治国家であるならば、そもそも違法判決を下した時点で「自分の国の司法判断がおかしい」という点に気づかねばなりませんし、この期に及んで「(自称)被害者中心主義」、「加害者である日本の誠意ある態度が必要」などと述べている時点で、話になりません。
この点、韓国側としてはこの「協議機関」云々の話題をもって、「韓国側は韓日関係の改善に着手した」、などと言い張るつもりなのかもしれませんが、本件をめぐってはまだ観測報道という段階であり、具体的な「解決案」はおろか、協議機関の具体的な人選も見えていません。
しかも、自称元徴用工問題だけでなく、日韓間にはほかにも韓国による慰安婦合意破り、主権免除違反判決、竹島不法占拠、火器管制レーダー照射事件、旭日旗騒動など、日本に対し謝罪しなければならない不法行為は山積しています。
韓国側が日韓諸懸案の「解決」を小出しにしてくるというのは、日本側が十分に警戒しなければならない点のひとつであることは間違いないでしょう(※余談ですが、「解決を小出しにする」というのは、北朝鮮が好む戦法でもあります)。
その意味で、本件については基本的に「様子見」が正解ではないかと思う次第です。
View Comments (21)
いわゆる被害者団体と称する団体がメンバーになっていない限り
ただのヤッテイル感を出す為の会議ですね。
どうせ会議で出て来るのはムーン・悲惨案しかないのは
解っている事だし。
理念でも理屈でもなく、日本人はうるさく騒ぎ立てると根負けして譲歩すると、なめられているのでしょう。
話を聴く振りでもしてなにもしないのがよいでしょう。解決にはあと996年くらい必要です。
ビジョンフォーラムと同じようなメンバーが集まって同日開催、或いは同時開催して、カビの生えた議論を無駄に回数を重ねて、日本は〜しなければならない。というだけに終わる気がします。
これって”ケントウシ”?
意外とキッシーと合うかも
まあ、見せる政治も大事だと思いますけどねえ
時既に遅し。
文前大統領が偉大すぎて日本では韓国人の本音を理解してしまいました。
先進国になった事ですしお手並み拝見と行きましょう。
此方を見ないでやってくださいね
鈴置高史氏の新著「韓国民主政治の自壊」の19頁~23頁にも記されていますが、1948年の建国以来、「戦勝国」の地位を得ることは、大韓民国の悲願です。
➀大韓民国憲法前文には「悠久の歴史と伝統に輝く我が大韓国民は3·1運動により建立された大韓民国臨時政府の法統(中略)を継承し」と、大日本帝国による朝鮮併合は違法・無効で、併合期の正統政権は大韓民国臨時政府であり、これを継承した大韓民国は「戦勝国」であることが明記されている。
➁1951年9月に開催された「サンフランシスコ講和会議」に、当時の李承晩大統領は大韓民国が「戦勝国」として参加することを要求し、米英に拒否された。
➂1965年の日韓国交正常化に至る交渉過程で、韓国政府は大日本帝国による朝鮮併合の違法・無効論を主張して戦後賠償を要求したが、日本政府は合法・有効論を主張して譲らず、最終的に「日韓基本条約」では「もはや無効であることが確認される」という玉虫色の表現で妥協が図られた。
➃韓国政府は、2001年に3回にわたり日米韓英独の国際法学者を招き「韓国併合再検討国際会議」を開催して、大日本帝国による朝鮮併合の違法・無効論を認めさせようとしたが、当時の国際法の権威が「無効論」を否定し、韓国政府の企みは失敗に終わった。
⑤2018年10月および11月に、韓国大法院は、大日本帝国による朝鮮併合の違法・無効を前提に「違法は植民地支配に基づく戦犯企業の強制連行・強制労働という不法行為に対する慰謝料請求を認めた「自称元徴用工判決」を下した。(大韓民国憲法前文の規定からすれば当然の判決)
➀~⑤のように、韓国政府は建国以来、国際社会に対して、大韓民国が「戦勝国」であることを認めさせようと涙ぐましい努力を重ねてきました。
したがって「自称元徴用工判決問題」に関する「官民合同協議体」を設置した場合でも、「大日本帝国による朝鮮併合の違法・無効論」=「大韓民国は戦勝国」を譲ることは絶対に無いと考えます。
サンフランシスコ講和会議に韓国を参加させろって言ったときに日本にも話を振ったんだけど、日本が在日を戦勝国民として扱わないんならいいけどって答えた記録が残ってます。あのとき在日を切り捨ててりゃ戦勝国として絡めたのかもしれないけど、その後その話は有耶無耶に。
できたら出典を教えて下さい。
通りすがり 様へ
一般財団法人平和政策研究所の政策レポート「歴史認識でもめる日韓関係、対立の原点は何か」(https://ippjapan.org/archives/5)には、日本の反対理由は、
①韓国が日本の交戦国ではなかったこと。
②韓国が賠償の対象(戦勝国)となったら在日韓国朝鮮人が連合国民としての地位を占めることになり、日本としては耐えられない
というものであったと記載されています。
ありがとうございました!
> 「官民合同協議体」を設置した場合でも、「大日本帝国による朝鮮併合の違法・無効論」=「大韓民国は戦勝国」を譲ることは絶対に無いと考えます。
同感です。
自称徴用工判決は、歴史の書き換えによる建国神話の完成を目指した、彼らのアイデンティティの根幹に関わる「力による現状変更」の試みなので、火蓋を切ってしまった以上、韓国としても引くことは出来ないでしょう。
韓国による不法行為が東日本大震災と原発事故以後増えていましたが、この判決は正面からの宣戦布告のようなものでしょう。
日韓関係は落ち着くところに落ち着くしかないでしょうね。
様子見ではなく、「日韓請求権協定第3条第1~4項に基づき紛争を解決しましょう」と積極的に主張していきましょうよ。
それは論外です.
第3条の各項に基づく解決手順は既に日本政府が韓国政府に対して順に提案し,各項に定められている期限内に韓国側から同意が得られなかったので,既にそれらの解決手順は法的に無効になってしまっています.(第2項や第3項には必要な手順を踏むのに許される期間として「三十日」と区切られていることに注意)
従って,日本が主張すべきことは,「第3条の各項に基づく紛争解決は既に順に提案したが韓国側から拒否されたので日韓請求権協定に定める解決は不可能となった.従って紛争の解決は日本政府および企業を巻き込まない形で韓国内部の問題として韓国自身のみで処理されたい」ですよ.
迷王星様のご指摘の通りだと思います。
しかも日本政府が「日韓請求権協定第3条に基づいた紛争解決」を韓国政府に提案した時に韓国側がこの提案を受け入れていれば法的根拠に基づいた日韓の公式な協議の場として協議であれ交渉であれ堂々とできたはずだし日本政府としても協議や交渉に応じる余地があったのです。けれども韓国側は日本政府の提案を再三無視しました。(日韓請求権協定というルールを外れた場外乱闘を仕掛けて来たのです。=つまり日韓基本条約及び請求権協定違反)そして問題を散々拗らせまくった揚げ句「日本政府との外交交渉で解決する」として首脳会談を繰り返し要求している訳です。日本政府からすれば場外乱闘のルール無き二国間協議をしてもルールが無い所での交渉ではその結果の有効性を担保できないのだから意味がありません。(何しろルールがあってさえそれを破るという例には事欠かない相手でもあるわけです。)さらには現在の条約や二国間の合意が破られている状況で日韓請求権協定に基づかない韓国の協議要求に応じて席につくことは日本政府自身も日韓基本条約や請求権協定を否定することになってしまいます。だから韓国側が国際法違反状態を解消し日韓基本条約や請求権協定に戻らない限り日本政府としては外交交渉だからと簡単に応じることはできないのです。韓国側は「日本政府の姿勢が頑なだ」と言いますが、何のことはない韓国の振る舞いが日本政府が協議や交渉に応じられない状況を作り出しているだけです。
日本と韓国がお互いに理解できる日など永遠に来ない。
日韓の人間がどんなにとことん会話を重ねてもすべて無駄。
徴用工の問題もお互いの合意など絶対にできない。
100歩譲って何らかの合意ができたとしてもまた反故にされるだけ。
ここで日本がヘタに韓国の相手をすると状況がさらに悪化する。
「日本企業に実害が及ぶなら報復措置を取る」
韓国にこう通告して様子を眺めるのが正解。
ユンソンニョル政権としては、
①就任早々”政策協議団”なるものを派遣し「孤掌鳴りがたし」とは言っては見たものの、日本からの反応はなかった
②バイデンのクアッド訪日での米国からの対日圧力を期待したが、岸田→バイデンの「あなたも副大統領の時、日韓合意に賛成したが、その後に何が起こったのか知っているではないか」により、事実上シャットアウトされた
③最後の期待である拡大NATO会議での日韓首脳会談も目処が立ちそうにない
ことから、韓国から対案を提示せざるを得ない状況に追い込まれての、”官民協議体”の設立でしょう。
その意味では巧緻な外交を日本が仕掛け、成功したと言っても良い、と考えます(もっともまだ何も得てはいない)。
韓国民の考える”譲歩案”と日本が受け入れ可能な案とには、まだまだ大きな乖離がありますので、最終着地に至れるかは大きな疑問です。ただ韓国が自分たちから対案を提示するということは、自分たちに非があると認めたに等しく(日本人から見れば当たり前のことですが)、その意味では半歩前進でしょう(ハンギョレは、だから反対している)。
韓国内で意見がまとまらず、日本に提示するまで至らないという展開を、こころ密かに期待しているのですが、どうなりますか。有力視されている”韓国政府による代位弁済案”ですが、韓国内での論理構成・説明はご自由にどうぞですが、日本政府としてはそのような請求権は認められないし、韓国政府からの代位請求に応ずるつもりは全くない、ことを事前に明言しておくべき、と考えます。
韓国は「反日」より「用日派」の方が 日本国益にとって害であると認識しています
今回の騒動で 用日派の行動が制限されている事を考えると
出来れば永遠に解決しない方が 日本国益に適うと思います
自分達でコリエイトした嘘歴史を元に存在しない瑕疵をあげつらい謝罪と賠償を請求、ハイライズした要求を小刻みに切り下げるに見せて譲歩している様に装い"そもそも無瑕疵の相手"から金品や言質を引き出す…立派な詐欺師ムーヴと周知されつつあるならばよいのですが
解決策を模索などと言ってる時点で日韓関係改善に向けた動きでは無いのが明白。
解決策はこの自称元徴用工の家族とやらの詐欺行為を断罪することで確定してるので。
それを避けている限り改善ではなくなんとかして日本を譲歩させたいという動きに他ならない。