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    Categories: 金融

ロシア緊急利下げの一方、マクドは新業態でオープンか

ロシア経済に良い知らせと悪い知らせがあるようです。ロシアの中央銀行は政策金利をさらに3%ポイント引き下げ、本日以降、11%に設定することに決めました。ただ、これを受けてでしょうか、ルーブルはやや下落しているようです。その一方、ロシアからの撤退を決めた「あの」世界的レストランチェーン店が、ロシア資本に店舗を売却し、早ければ6月12日にも新業態の店舗が営業を始めるとの話も聞こえてきました。

ロシアが緊急利下げ=14%から11%に

やはり、強引な高金利には、経済が耐えられなかったのでしょうか。

ロシア中央銀行は昨日の緊急政策決定会合で、政策金利をさらに3%ポイント(つまり300ベーシス・ポイント)引き下げ、金曜日以降は11%に設定すると発表しました。

Bank of Russia cuts key rate by 3 pp at extraordinary meeting to 11% per annum

―――2022/05/26 17:22付 タス通信英語版より

ロシアの政策金利は、2月24日のウクライナ侵略開始前時点では9.5%でしたが、戦争開始後の2月28日に20%に利上げされ、その後は4月8日に17%に、4月29日には14%にまで段階的に引き下げられてきました。

ロシアの政策金利の推移
  • 2022/02/28…9.5%→20%
  • 2022/04/08…20%→17%
  • 2022/04/29…17%→14%
  • 2022/05/27…14%→11%

(【出所】ロシア中央銀行ウェブサイト等)

通貨防衛に自信を示したのか?

さすがに9.5%から20%への利上げはかなりの無茶を伴いましたが、これに加えて輸出企業に外貨収入の8割を強制的にルーブルと両替させる措置などと相まって、ロシアは事実上のルーブル防衛に成功した格好だ、という言い方もできるでしょう。

国際決済銀行(BIS)のデータをもとに、ロシアの通貨・ルーブルの最近の動きを眺めておくと、ロシアの通貨・ルーブルは、じつに4年ぶりに1ドル=60ルーブルの大台を割り込むルーブル高となっていることがわかります(図表)。

図表 USDRUB(ロシアルーブル)

(【出所】 the Bank for International Settlements, US dollar exchange rates を参考に著者作成)

こうしたルーブル高に自信を深めたからでしょうか、『ルーブルがウクライナ侵攻前の水準よりも上昇するが…』でも取り上げたとおり、ロシアの通貨当局は外貨収入の強制両替措置についても、現時点では8割から5割に緩和したようです。

ロシアの通貨・ルーブルが、ウクライナ戦争開始前の水準と比べて30%以上も上昇しています。こうした状況に自信を深めたのか、ロシア当局は「輸出企業が獲得した外貨収入を強制的にルーブルと交換させる」とする措置の割合を、80%から50%にまで緩和する方針を示したそうです。ただし、米国がロシアの債券保有者に対し、元利払いを受け取ることを禁止する措置が、ニューヨーク時間の25日午前0時1分から適用されるそうです。不安定な動きを見せる通貨米国の利上げ基調のためでしょうか、それともロシアによるウクライナ侵攻の影響で...
ルーブルがウクライナ侵攻前の水準よりも上昇するが… - 新宿会計士の政治経済評論

ただし、この利下げの発表があったためでしょうか、ルーブルは若干売られているようです。WSJのマーケット欄によると、日本時間昨日午前0時時点で1ドル=64.75ルーブルと、前日と比べてドル高・ルーブル安が進んでいることが確認できます。

やはり、ロシアにとってはウクライナ戦争後に導入した(ときとしてかなり強引な)資本規制については、なかなか全面的に解除する、というわけにもいかないのでしょう。

マクド店舗が新ブランドで再オープン=タス通信

一方で、『ついにマクドがロシアから撤退へ』などでも触れた話題を巡っても、続報が出てきました。

McDonald’s sites to open under new brand on June 12 — company

―――2022/05/26  23:26付 タス通信英語版より

同じくタス通信によると、マクド社は同通信に対し、6月12日をめどにロシアのマクド店舗が新たなブランドで事業を再開することを目指しているとしつつ、正確な開店日は未定だ、などとしています。

また、「マクド筋の情報」によると、手始めに地下鉄プーシキンスカヤ駅付近のレストランが6月12日に開店する予定だとも述べている、などとしています。

このあたり、運営主体が誰になるのか、気になるところです。まさか、『マクドロゴが転倒し「イワンおじさん」に華麗に変身?』でも取り上げた、例の「ゴールデンアーチ」を横に90度転倒させた「ジャージャ・バーニャ」(イワンおじさん)あたりになるのでしょうか。

マクド・ナルドが90度転倒し、「イワンおじさん」に変身した、とする話題が出ているようです。一部のメディアによると、これはマクドの店舗を利用してロシア産食材によるフードを提供する店舗、との話ですが、これに関する真偽は不詳です。一部ではKFCをもじった「KGB」なる店舗の写真も報告されているようです。ウクライナ戦争がロシアにもたらしたもののひとつは、マクド社をはじめとする西側企業のロシアでの事業中止・終了でしょう。このあたり、当ウェブサイトでは『意外としぶとい?ルーブル「紙屑化」の可能性を考える』...
マクドロゴが転倒し「イワンおじさん」に華麗に変身? - 新宿会計士の政治経済評論

それとも『「ルーブル建ての輸出品目の拡大を」=ロシア下院議長』などでも取り上げた「ロシア式水ギョーザ屋さん」に変化するのでしょうか?

マクドを居抜きでギョーザ屋に?このところ、ロシアの外貨不足に関する話題が多く出てきています。ロシアがドル建てのユーロ債をルーブルで償還するという話題は昨日の『ロシアがドル債をルーブル償還ならCDSはどうなる?』でも触れたとおりですが、それだけではありません。ロシアからは「穀物、木材、石油、石炭、金属」などの産品をルーブル建てにしてはどうか、といった論点もあるようです。もっとも、日本政府がロシアに奢侈品輸出規制を導入するなどの動きもあり、ルーブルで買えるモノはますます少なくなっているのかもしれ...
「ルーブル建ての輸出品目の拡大を」=ロシア下院議長 - 新宿会計士の政治経済評論

いちおう、タス通信のによれば、同社は現在、ロシア通商産業省の仲介のもとで、ビジネスをロシア企業に売却する手続を行っているらしいのですが、いずれにせよマクドの味はロシアからは半永久的に失われてしまう可能性が濃厚、というわけでしょう。

そして、これをタス通信が大々的に報じたという事実は、マクドの撤退が少なからぬロシア人に衝撃を与えたという強い可能性を示唆するものではないかと思う次第です。

新宿会計士:

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