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    Categories: 外交

「領土譲歩」に反対するウクライナ国民が8割に達する

「悲惨な戦争を終わらせるために、ウクライナがロシアに領土を割譲すべきである」――。こんな主張が一部の自称識者から出て来ることもあるのですが、少なくともウクライナ国内の世論は、そうは考えていないようです。ロシアによる残虐行為が続くなか、ウクライナ国民の80%以上が領土での譲歩に否定的だとする調査が出てきたからです。

広島市の決定に反発する駐日ロシア大使

ロシアによるウクライナに対する違法でいわれのない戦争が続いています。

こうしたなかで、広島市は今年8月6日に予定している平和祈念式典で、ロシアとベラルーシの代表を招待しないと明らかにしたそうですが、これに関連し、ロシアのミハイル・ガルージン駐日大使が強く反発しているようです。

広島平和式典招待されず反発 「日本はナチと組んだ」―ロシア大使

―――2022年05月25日23時56分付 時事通信より

時事通信によると、ガルージン氏は25日、SNS「テレグラム」に投稿した声明のなかで、今回の広島市の決定を巡り「自称反核運動の指導者」による「恥ずべき措置」としたうえで、次のような趣旨のことを述べたのだそうです。

  • ロシアがウクライナでの核兵器使用をもくろんでいるというばかげた作り話が被爆地・広島で拡散されている
  • (特殊軍事作戦は)非ナチ化を進めるものであり、まさにこのナチズムと同盟を組んだことが、1945年に日本という国全体を襲った破局の原因のひとつ

なんとも面妖な指摘と言わざるを得ません。

ロシアが主張する「ナチス化」が何を意味するかは不明ですが、一般に「戦闘地域などで残虐な行動を行っている」、「違法な略奪などに加担している」などを「ナチス化」と呼ぶのであれば、それは侵略されているウクライナの側ではなく、侵略しているロシアの側の行動そのものだからです。

ただ、今回の平和祈念式典自体は地方自治体が主催するものです。政府側から「ロシアを招くな」という要請がなされたのかどうかは定かではありませんが、「ロシア排除」を決定したのも、日本政府ではなく、第一義的には広島市であると考えて良いでしょう。

そして、こうした地方自治体レベルの決定に対し、駐日大使自身がここまで舌鋒鋭く反応しているという事実は、現在のロシアが日本を含めた諸国の圧力を感じている、という証拠でしょう。

ロシア軍による残虐行為は続く?

その一方で、ウクライナ戦争を巡っては、気になる話題がいくつも出てきています。本稿ではそのうちのひとつとして、「マリウポリの残虐行為」について触れておきたいと思います。

米メディアCNNの報道によると、ウクライナ南東部にあるマリウポリでは「3ヵ月で少なくとも22,000人が犠牲になり、さらに実際の犠牲者数はこれよりも多いかもしれない」、と、同市の市長の顧問がCNNに明らかにした、などとされています。

Mariupol death toll at 22,000, says mayor’s adviser

―――2022/05/25付 CNNより

このあたり、正確な犠牲者数がよくわからないというのは、べつにマリウポリに限った話ではありません。

というよりも、例のブチャ事件でも明らかになったとおり、ロシア軍は80年前の「カチンの森」事件のような残虐な行動を繰り返しているようであり、その行動の異常さは、自由と平和を愛する私たち一般諸国民に対しても、大変な衝撃を与えたものでもあります。

ロシアは「ブチャの惨劇」について、しらを切りとおすつもりなのかもしれません。『タス通信「ブチャの事件はウクライナ側の虚偽の宣伝」』ではメドベージェフ前大統領のSNS投稿を紹介しましたが、これに加えてクレムリンの報道官も、「ブチャ事件」については「西側がロシアの説明を聞かない点に問題がある」などと述べているのだそうです。ただ、「カチンの森事件」当時と異なり、現代はインターネットが存在します。真相をいつまでも隠蔽できるというものでもないでしょう。ウクライナ戦争はすでに40日が経過2月24日に始まった...
「ブチャ事件」で明らかに変わった「国際社会の潮目」 - 新宿会計士の政治経済評論

「実際の戦闘地域では残虐な行動をするけれど、地方自治体が主催する式典から排除されたら目を吊り上げて舌鋒鋭く相手をののしる」――。

そんなロシアは、物量こそ豊富ではあるにせよ、じつは精神的には大変に脆い国なのかもしれませんね。

ウクライナ国民の82%が「領土譲歩」に反対

ただ、残虐な戦闘が続くことについては、私たち日本人を含めた「平和を愛する諸国民」にとっては心が痛む話でもあります。日本国内でも一部の「識者」を中心に、「そろそろウクライナも領土をロシアに割譲し、停戦したらどうか」、といった主張が見られることはたしかでしょう。

こうしたなか、ロイターには昨日、興味深い調査結果が掲載されていました。

ウクライナの調査機関「キーウ国際社会学研究所」が実施した調査によれば、ウクライナ国民の82%が「戦闘が長期化して国家の独立性への脅威が高まることになったとしても、ロシアとの交渉で領土を譲渡すべきでない」と考えていることが判明したそうです。

ウクライナ領土譲歩、国民の82%が反対=国内世論調査

―――2022年5月25日8:55付 ロイターより

一方で、和平のための領土割譲を「容認できる」との回答は10%にとどまったとのことです。これに加え、ロシアが占領する地域の住民も77%が「領土割譲に反対」と答えた、としています(どうやって調査を実施したのかはわかりませんが)。

この調査結果を100%無批判に信じてよいかどうかは置いておくとして、少なくともこの結果だけで見るならば、「さっさと領土を割譲して停戦したらどうか」とする日本国内の一部の主張は、ウクライナ国民のマジョリティを占める意見ではないことは間違いありません。

多国間の枠組みの重要性

ちなみにウクライナ問題は、ロシアと海を隔てて国境を接している私たち日本人にとっても、他人事ではありません。

日本国内にも「外国が攻めてきたら、その外国の軍隊ととことん話し合い、酒を酌み交わして遊んで食い止めれば良いではないか」、といった寝言を本気で述べる人たちがいるようですが、その人たちが実際にウクライナに出掛け、ロシア軍と酒を酌み交わした、といった話は寡聞にして存じません。

ロシア、中国、北朝鮮、韓国といった無法国家に接している日本には、多元的な抑止力が必要です。

国防に対しきちんと必要な投資をすること、自衛戦争のための法的な枠組みを整えることはもちろんのこと、普段から外交などの次元で、世界中に友人を作り、日本を攻め辛い状況を作り上げていく必要があります。

このように考えていくと、安倍晋三総理が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)は、「自由、民主主義、法の支配、人権」といった基本的価値を共有する多国間での広がりを持つ可能性を秘めた構想であることは間違いありません。

こうしたなか、安倍総理自身が24日、「日印協会」の会長に就任し、インドのナレンドラ・モディ首相と東京で会談を行っています。

(※安倍総理のツイートに掲載された写真を眺めていると、正直、岸田文雄・現首相よりも首脳会談っぽく見えてしまうのは気のせいでしょうか。)

いずれにせよ、「近隣国重視」一辺倒だった日本の外交を、「FOIP」重視に転換するきっかけを作った安倍総理、それをたった384日間の在任期間を通じ、現実に日本の外交に実装した菅義偉総理の両名は、少なくとも日本の外交を100年単位で大きく変えたことは間違いないでしょう。

新宿会計士:

View Comments (21)

  • 自分の敵を便利にナチ呼ばわりしているロシアが、次の時代のナチになるのも時間の問題でしょう。戦後長いこと悪の枢軸は日独でしたが、ロシアのお陰でようやく卒業できそうです。

    >正直、岸田文雄・現首相よりも首脳会談っぽく見えてしまうのは気のせいでしょうか。
    レールに乗るだけの人と、レールを引ける人の違いは大きいと思います。

    • インターネットだったら「敷く」じゃなく「引く」ですね。
      ミュージカル「マンマ・ミーア!」にもそういうセリフがあります。

      ドナ「インターネットを“敷く(on the line)”んですって」
      ロージー「”引く(on-line)”ね」

        • 大阪でも布団は敷くものです。
          但し「し」を「ひ」と発音しているだけです。
          他にも
          しつこい→ひつこい
          質屋→ひち屋
          と呼びます、ただの方言です。

  • 「外国が攻めてきたら、その外国の軍隊ととことん話し合い、酒を酌み交わして遊んで
    食い止めれば良いではないか」

    懐かしいですねえ、シールズとやらの面々。あれだけ持て囃して、なーんの結果も
    出せなくて、「目的は達成したから解散するんだ!」と捨て台詞を残して……
    いまや当時持ち上げていたマスコミも識者も知らんぷり、居ない者扱い。
    一応就職できた者も居れば、行方不明になった者も居る様で……

    非現実的な理想を掲げるだけならまだしも、それで実際に頑張っている現実主義者を
    叩いたり馬鹿にしたらロクな事にならない。ウクライナ関連で
    失言して評判を落とす人達を見る度に、そう痛感します。

    • >懐かしいですねえ、シールズとやらの面々。

      こないだ、ハンストやってて話題になってました。

      https://sn-jp.com/archives/80572

      ハンスト中に「雨が降ってきたので今日は帰ります」とツイートし、感動を巻き起こしていました。

    • > 外国が攻めてきたら、その外国の軍隊ととことん話し合い、酒を酌み交わして遊んで
      食い止めれば良いではないか

      福岡の恥、後藤宏基の発言ですね。3年前ですが近況はこれです。
      ↓ ↓ ↓
      https://www.kanaloco.jp/news/social/entry-155274.html

      (引用)
      実名で取材に応じるのも久々だ。「学生の頃は、社会運動への参加を理由に採用しない会社は『こちらからお断りだ』なんて思っていた」。だが、今は違う。政治について積極的に発信することで再び炎上し、会社や取引先に迷惑を掛けないかと不安になる。「学生の時は『大人が何もしないから僕ら学生が行動しなきゃいけない』なんて言っていたけど、今はこの生活を手放すことはできないよ」。

       「いちご白書をもう一度」そのまんま。
       昔の新左翼だったら「反動的」「走資派」「ブルジョワ化」とレッテルを貼られて「総括」の対象になったでしょうね。

      • 「自己批判せよ」

        そのように糾弾され、文字通りに集団で凹られるのですね、分かります。

  • この戦争の原因はアメリカとNATOだ、人命を救うために今すぐ休戦するべきだ、そのためにはウクライナは譲歩してロシアに領土を割譲させてもいい。

    こんなふざけた事を主張する人がマスコミだけでなく、このサイトの常連にもいる事は悲しいし情けない事です。

    そういう人はロシアが攻めてきたら北海道を、中共が攻めてきたら九州沖縄を割譲してでも日本人の一般市民の人命を守れとでも主張するのでしょうか?

    • ゼレンスキーを自称して攪乱を図る人騒がせな人物が現れたそうです ...

    • 資さんうどんを中共にくれてやるわけにはイカンし、試される大地を露助にやるつもりもない!
      イカシューマイもイカソーメンも日本のモンじゃい!!

      てな発信、誰かせんかな?

    • >ウクライナは譲歩してロシアに領土を割譲させてもいい。
       同じことを、アメリカの元国務長官が言っていますよ。
      『ゼレンスキー氏、キッシンジャー氏の和平交渉案を非難 「宥和政策」と指摘』
      https://www.cnn.co.jp/world/35188031.html
      >(CNN) ウクライナのゼレンスキー大統領は25日、キッシンジャー元米国務長官がロシアとの和平交渉では侵攻開始前のドンバスに存在した「接触線」に沿った国境策定を目指すべきだと示唆したことを厳しく批判した。

       麒麟も老いぬれば駑馬に劣るとはこのことで、キッシンジャーも惚けているとしか思えない。
       ウクライナに対して、ロシアの侵略に屈しろと言わんばかりの事を主張しているんだから、一昨日来やがれと言われて当然。考えてみれば、キッシンジャーの外交的成果と言えば中国の抱き込みがあったが、それ以外に何かあっただろうか?

  • 独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (そう自分に言い聞かせないと、自分は間違えない存在と自惚れてしまうので)
    日本の識者を自称する憲法9条信者としては、「今回のウクライナ危機が続くことで、憲法9条の神聖不可侵が侵されることに耐えられないので、ウクライナは領土を割譲しても、(ロシアの言うところの)特別軍事作戦を終わらせるべきだ」ということでしょう。(人間は、目の前の危険を避けるために、その後のもっと危険なことを無視する生き物なのかもしれません)
    蛇足ですが、識者がどうかは、自分がこれまで言っていたことが都合が悪くなっても、「自分は、そんなことは言っていない」、または「自分は最初から内心では反対していた」、「それは全て過去のことだ」と言わないかどうかで決まるのではないでしょうか。
    駄文にて失礼しました。

    • すみません。追加です。
      (日本だけとは限りませんが)一言に識者と言っても、ピンからキリまであるので、識者と言うだけでは、言っていることが正しいとは限らないのではないでしょうか。

  • https://news.yahoo.co.jp/articles/ee52e38b84caf9256edb4523673618e1c0699884

    ウクライナ侵攻についてのロシア退役大将からの見解。

    >今回の特別軍事作戦では、初期の段階で戦略的な間違いがあったため、兵士はよく戦っているが、作戦は滞っている。ウクライナ領土のいくばくかは獲得できるかもしれないが、地政学的にはすでに敗北を喫した。

    >「ロシアはウクライナがあって初めて世界の大国であり、ウクライナを欠いたロシアはただのアジアの一国家にすぎない」のだ。

    >ハリコフを取ろうが、たとえ沿ドニエストル地方を奪って戦闘に勝利しようが、対立する他国との関係のなかで自国の最大の利害を探るという「地政学的な」戦争では敗北した。

    ロシア退役大将からのロシア批判。

    歴史の流れからの考察は大変に素晴らしく読みごたえがある。

    ロシアにもこのような人はいるのだろうが重用されないのだろう。

  • >日本国内にも「外国が攻めてきたら、その外国の軍隊ととことん話し合い、酒を酌み交わして遊んで食い止めれば良いではないか」、といった寝言を本気で述べる人たちがいるようですが、

    ウクライナでは、ロシア兵に輪姦された14歳の少女が妊娠したりしているとの事です。

    そう言ってた連中やそれに賛成していた連中には、自分だけでなく母や妻、娘などの女性を伴ってウクライナのロシア占領地域に行き、ロシア兵相手に酒を飲み交わして遊んで、ロシア兵の食欲と性欲を満足させ、停戦へ持ち込んで貰いたいものです。

    まぁ、所詮は口だけのクズ共なので、言行一致などあり得ないでしょうけどw

  • >ウクライナ国民の82%が「領土譲歩」に反対

    なんとも心強いのです♪

    停戦を勧める理由には、ロシア産の天然ガスとかが入ってこないってのもあると思うのです♪
    でも、停戦が成立しても、諸々の戦後処理が終わんないまま、すぐに制裁解除って訳にはいかないだろうと思うのです♪

    ロシア自身が日本の脅威でもあるし、ロシアへの対応は中国に見せるって意味もあると思うのです♪
    目先の資源とかも大切だけと、近くにある脅威を減らしてくことも大切だと思うのです♪

    だから、今は、ロシアが攻め得にならないようにして欲しいと思うのです♪

  • 逆に 紛争中のウクライナで
    18%が侵略者に領土を手放してでも平和!・・・ すごい割合だと思います

    仮に、日本だったら中国に侵略されても18%が 領土を渡してもよいと言うでしょうか?