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韓国EEZ無許可調査に「竹島スワップ」活用しては?

韓国の国営企業が日本のEEZ内で無許可の海洋調査を行った疑いがもたれている件について、続報が出てきました。外務省が自民党の外交部会でこれについて報告したのだそうです。これに対し佐藤正久外交部会長が「韓国の説明に対して『はい、わかりました』と追加確認をしないのは問題だ。あまりにも人が良すぎる」と述べるなど、外務省を強く批判したようですが…。

例のEEZ無許可調査疑惑をめぐる続報

韓国の国営企業が日本の排他的経済水域(EEZ)内で日本の許可を得ずに海洋調査を行った疑いがもたれている、とする話題については、『外相訪韓中に韓国企業が日本のEEZで無許可調査疑い』でも取り上げたところです。

関係改善の機運に勝手に冷や水をかけるのが韓国のスタイル日韓関係「改善」に向けた機運が韓国の側で一方的に高まっているフシがありますが、それと同時に、こうした機運に勝手に水をぶっかけるのも韓国の側であるようです。韓国が不法占拠中の日本領・島根県竹島の約100㎞南方の日本の排他的経済水域(EEZ)内で、韓国国営企業が無許可で海洋調査を実施した疑いが生じたのです。報じたのは産経ですが、自民党外交部会長の佐藤正久氏も「確認できていないでは済まされない」と激怒しているようです。関係改善機運がおもに韓国側で高...
外相訪韓中に韓国企業が日本のEEZで無許可調査疑い - 新宿会計士の政治経済評論

その「続報」が出てきました。

産経ニュースの報道によると、19日の午前に行われた自民党・外交部会などの会合で、外務省からは「韓国側から日韓中間線の韓国側で海洋調査をするための準備行為を行っていた」との説明があった、と報告がなされたそうです。

竹島EEZ調査船 韓国側「海洋調査の準備行為」 自民部会

―――2022/5/19 11:21付 産経ニュースより

産経はまた、佐藤正久外交部会長がこの外務省の説明に対し、「韓国の説明に対して『はい、わかりました』と追加確認をしないのは問題だ。あまりにも人が良すぎる」と述べたほか、出席議員も「なぜ日本側で準備行為をしなければいけないのか」と事実関係の解明を求める声が相次いだ、などと報じています。

佐藤さん、あなたは自民党国会議員ですよ!

このあたり、外交部会でこうした韓国の不法行為(の疑い)について、話題に出て来ること自体は、大変に良い傾向です。相手国が不法行為を仕掛けてきているにも関わらず、日本がそれにノーリアクション、では困りものだからです。

ただ、個人的にこうした報道を眺めていてモヤモヤするのは、こうした外交部会の場自体、政権与党である自民党が、「官僚に責任を押し付ける」ことに汲々としていないか、という疑念を抱く点にあります。

もちろん、外務省という組織は、日韓関係や日中関係、日露関係、日朝関係など、周辺国との関係で意味のない譲歩を繰り返してきたという問題点があることは否定できませんが、だからといって、外務省をつるし上げて留飲を下げるのは如何なものかと思います。

それよりも大きな問題は、韓国の日本に対する不法行為をやめさせるための、もっと大きな議論が不足していることです。とくに佐藤氏らを含めた国会議員らの本職のひとつは、「法律を作ること」にあります。

昨年の『「自民党が韓国に金融制裁検討」:外為法改正の実現を』でも報告しましたが、自民党の外交部会は竹島問題などを巡り、「韓国に苦痛を与える方策を検討する」、といった話題がありました。

竹島問題を巡って、自民党内では「韓国に苦痛を与える対策」として、金融、投資、貿易など広範囲な制裁を検討し、来夏ごろまでに具体策を取りまとめるのだそうです。ただ、ことばだけ威勢が良くても困ります。現実の外為法などには、経済制裁に関する規定が十分にあるとはいえないからです。国会議員ならば、威勢の良いことばだけでなく、「具体的な法律改正」にまで言及していただきたいと思います。もし国会議員の方がいらっしゃれば、ぜひ、本稿を読んでいただきたく存じます。竹島問題を国際化するのは良いが…韓国警察庁長による竹...
「自民党が韓国に金融制裁検討」:外為法改正の実現を - 新宿会計士の政治経済評論

「韓国に苦痛を与える」。

大変に威勢が良い発言ですし、日本の国益を守るためには、ときとして相手国との関係悪化を辞さない覚悟が必要であることも間違いありません。

ただ、それと同時に、国会議員の方々に必要なのは、やはり「具体的な法制の検討」ではないかと思いますし、外務省を外交部会でつるし上げて満足するのでは困りものです。佐藤さん、あなたは自民党の国会議員なのですよ!

外為法の制裁、発動すれば効果は絶大だが…

さて、当ウェブサイトでは何度も繰り返してきましたが、日本の法制上、「外国に経済制裁を加える」ための根拠規定が非常に少なく、使い勝手がとても悪いという問題点があります。

たとえば、経済制裁に関する最も包括的な法律のひとつである外為法(正式には『外国為替及び外国貿易法』)では、大きく次の7つの経済制裁が設けられています(経済制裁手段はこれらには限られませんが、いちおう、代表例としてこれらを挙げておきます)。

外為法による主な経済制裁
  • ①第16条第1項措置…日本から外国への支払の制限
  • ②第21条第1項措置…日本と外国との資本取引の制限(資産凍結等)
  • ③第23条第4項措置…日本から外国への対外直接投資の制限
  • ④第24条第1項措置…いわゆる「特定資本取引」の制限
  • ⑤第25条第6項措置…役務取引(技術移転など)の制限
  • ⑥第48条第3項措置…輸出規制
  • ⑦第52条措置…輸入規制

(【出所】外為法より著者作成)

どれも、発動すれば効果は絶大です。

たとえば①や②は「カネの流れを止める」という措置であり、③、④、⑤は「技術を伴った投資」「モノ、カネの流れ」などを止めるという措置、⑥、⑦は「モノの流れを止める」という措置です。とくに日韓間は経済関係が非常に深いため、どれもうまく使えば、相手国の経済に大きな打撃を与えることが可能です。

外為法第10条第1項を改正しては?

しかし、日韓諸懸案(たとえば自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題など)を理由にして、日本がこれらの制裁措置を発動することは非常に難しいです。なぜなら、外為法上、これらの制裁を発動することができる条件は、次の3つのどれかに限られているからです。

外為法上の経済制裁を発動するための条件
  • 国連安保理で決議された内容に従う場合
  • 有志国連合に同調する場合
  • 外為法第10条第1項の閣議決定があった場合

(【出所】外為法の規定を参考に著者作成)

ちなみに「外為法第10条第1項」とは、「わが国の平和・安全の維持のためにとくに必要がある」ときに限定し、閣議でこれらの措置を発動することを認めているというものです。

外為法第10条第1項

我が国の平和及び安全の維持のため特に必要があるときは、閣議において、対応措置(この項の規定による閣議決定に基づき主務大臣により行われる第16条第1項、第21条第1項、第23条第4項、第24条第1項、第25条第6項、第48条第3項及び第52条の規定による措置をいう。)を講ずべきことを決定することができる。

たとえば今回のような、「韓国側による違法な海洋調査(の疑い)」は、この外為法第10条第1項の要件を満たしません。だからこそ、外為法第10条第1項に、次の「下線部」のような文言を追加する法改正を急いだほうが良いのではないかと思うのです。

外為法第10条第1項改正私案(※下線部)

我が国の平和及び安全の維持のため、国際法秩序の維持のため、我が国の利益を保護するため、その他これらに類する事情として政令で定める事実に基づき、特に必要があるときは、閣議において、対応措置(この項の規定による閣議決定に基づき主務大臣により行われる第十六条第一項、第二十一条第一項、第二十三条第四項、第二十四条第一項、第二十五条第六項、第四十八条第三項及び第五十二条の規定による措置をいう。)を講ずべきことを決定することができる。

(【出所】著者作成)

このような条文にすることで、たとえば、「韓国がわが国の固有の領土である島根県竹島を不法占拠し続けていること」を理由にした経済制裁を発動することが可能になるはずでしょう。

サイレント制裁の活用も重要

もっとも、「広い意味での経済制裁」は、べつに上記のような手段に限られるものではありません。

たとえば、相手国に「経済制裁ですよ」と伝えないかたちで、実質的に相手国に経済制裁を発動したのと同じような効果を発生させるような行動(当ウェブサイトの用語でいう「サイレント型経済制裁」)を発動することは可能でしょう。

たとえば、日本政府が2019年7月に発表した、韓国に対する輸出管理の厳格化(適正化)措置は、その典型例です。

この措置自体、韓国側が「輸出規制だ!」と強く反発しているものですが、現実には経済制裁としての輸出規制ではありません。発動した根拠条文自体が異なるからです(輸出規制は第48条第3項、輸出管理は第48条第1項)。

また、対韓輸出管理適正化措置自体、「経済制裁」にしては非常に緩いものですし(フッ化水素などの韓国への輸出許可は出続けています)、もし本気でサイレント型経済制裁をするのならば、なにかに理由をつけて、半導体製造装置そのものの対韓輸出を止めてしまうはずでしょう。

「竹島スワップ」はいかが?

あるいは、「困っている相手国を、わざと助けない」という、当ウェブサイトの用語でいう「消極的経済制裁」も、もっと積極活用すべきです。その典型例が、通貨スワップでしょう。現在、韓国が国を挙げて熱望しているのが米韓通貨スワップ、次いで日韓通貨スワップですが、これを逆手に取る、というのも興味深いやり方です。

具体的には、日本政府がタイミングを選び、韓国を名指しせず、「通貨スワップは基本的価値を共有する友好国としか結ばない」、あるいは「わが国の領土を不法占拠している国と通貨スワップは結ばない」、などと宣言するだけで良いと思います。

名付けて「竹島スワップ」(?)です。

すると、目端が利く市場参加者であれば、これを「日本政府による日韓通貨スワップ拒否宣言」と受け止めるでしょうし、韓国の通貨の対米ドル相場(USDKRW)などがもう一段売り込まれ、焦った韓国の通貨当局がさらに為替介入で外貨を溶かす、といった展開も考えられます。

もし自民党議員の皆さんが外為法改正をする気がないのなら、いっそのこと、どなたかが鈴木俊一財相あたりに国会で通貨スワップについて質問をしていただきたいと思います(鈴木財相に、麻生太郎総理のような答弁ができるかどうかは存じ上げませんが…)。

いずれにせよ、「韓国に苦痛を与える方策」とやらを、早く見てみたい気がしてならないのですが…。

新宿会計士:

View Comments (10)

  • 会計士様
    「佐藤さん、あなたは自民党の国会議員なのですよ!」というコメント、全面的に同意します。彼のコメントはいつも他人事、ツイッターでも「・・・を外交部会で確認する」で、確認どまりで何もアクションなし。外交部会に実行力がないのは分かっていますが、であればテレビやツイッター、ブログで威勢のいいコメントするなと思います。所詮、人気取りのための行動なのでしょうが、与党議員である以上、言い放しはずるいと思います。本当、無責任な議員の多いこと。これも知名度や人気で議員が選ばれることが多いので、我々有権者にも責任はあるのですが。。。

  • "ヒゲの隊長"も「ガス抜き要員」と周知されつつある様に見受けられる今日コノ頃、民主主義のコストの膨大さに鬱屈してしまいそうにナリマスが、コウイウ空気感が広く蔓延してしまうと劇薬的にヤバイひとやら団体さんが伸してくる土壌に成るんでしょうかネ?

  • 続報ありがとうございます。
    結局、髭隊長が具体的に何をしたかわからないニュースでした。
    (また続報あれば・・・)

    さて、外為法第10条第1項を改正は賛成です。
    実際に閣議決定して適用するかどうかは置いといて、ここが改正されれば、不法行為を仕掛ければ痛い目に合うかもしれない、という意味では、抑止力の一つにはなりそうです。
    いちいち難癖付けてくる、五月蠅い行為が、これにより少しでもなくなれば、気持ちも穏やかになるというものです。

  • お昼休みに首相官邸に、今回のグタグタぶりと、そもそも国家の体を成して反日かつ敵対行為を継続しているROKに、なぜ正式に制裁を発動しないのか?と問い合わせてみました。

    「後日、回答します。」

    本当かな?

  •  具体的には、日本政府がタイミングを選び、韓国を名指しせず、「通貨スワップは基本的価値を共有する友好国としか結ばない」、あるいは「わが国の領土を不法占拠している国と通貨スワップは結ばない」、などと宣言するだけで良いと思います。

    名付けて「竹島スワップ」(?)です。

    については「通貨スワップは基本的価値を共有する友好国としか結ばない」だけでよろしいのではないでしょうか。

     「わが国の領土を不法占拠している国と通貨スワップは結ばない」については、例えば南朝鮮との間について考えると彼らは日本領土を不法占拠しているとは思っておらず、竹島は南朝鮮領土であると考えているでしょうから、日本と南朝鮮との間で認識が一致しないから、日本の領土を不法占拠などしていないと認識しているでしょう。

     不法占拠と主張するならなぜ奪還しないのかと言い出すでしょう。その場合、奪還しようとすると争いになり、怖くて「おしっこチビッちゃうからできない」ということが本心でしょう。

     また、南朝鮮には強硬に対応できてもロシアが不法占拠している北方領土については完全に怖くて「おしっこチビッちゃう」からできないと言うのが本音でしょうから、空そのことをつつかれても「グー」としか言えないでしょう。

     従って不法占拠云々の項目は現在の日本の弱腰外交では意味がないと思いますが、「基本的価値を共有する」条項は意味があると思います。南朝鮮がスワップを結ぶことを申し入れるには数々の不法行為、条約無視、遡及法を有効とするもの知らずの思想、皇室に敬意のかけらも示さない、等々の基本的価値を踏みにじる行為を列挙してそれらをすべて解消しなければスワップは結ばないと頑張れば十分でしょう。

  • 消費税減税もいつのまにか…だったりしますし、反対派が多ければ、議論の俎上にすら乗せられないみたいですし。

    結局利権とか派閥の規制をしないとなんともならないんじゃないのかな。派閥は三十人までとか…世襲制をやめるとか…

    まあキッシーは長男を秘書にしてるらしいので自民改革とか何も期待できないけど。

  • あー。韓国の株価を下げるためだけの口先介入良いですね。韓国世論が反発すればするほど株価も為替も売りあびせられかねない。このアイデアのすごい点は「口先」だけ(実に平和的)な事と、嘘は言っていない事と、同じような口先で(悪質なウソでも吐けば別ですが)日本相手には韓国から損害を与えられない事です。ヘイト発言と取られる事も無く。与党支持率や内閣支持率も上がるかも知れません。

  • 外為法関連ではありませんが、コロナ禍の数少ない功労が 韓国からの入国ビザ免除を停止していることです。
    入国ビザを必須にし続けることにより、事前に竹島上陸歴、反日集会参加歴など調査することができ、犯罪者、不穏思想者を排除することができます。ビザ免除下では 1,2分のいきなりの入国審査で 不適合者の発見は難しいです。
    竹島の日に合わせて独島活動家が発見できず入国させてしまったことがありました。まともでない国に性善説で優遇を与えてはいけません。

  • 日本が島根県沖EEZでのガス田調査開始、第七鉱区の期限終了間近ということもあり、韓国内での嫌がらせ調査要求熱が高まったのでしょう。
    マスコミ、親韓議員、財界、野党総動員で 共に繁栄、韓国と共にの世論形成を 創ろうとするでしょう。日本にマイナスしかない漁業協定をしたり、野田スワップが単なる韓国国家の保証にとどまらず、為替操作に使われ 日本の産業衰退の一因であったこと。「物事争わず」、「お互いの利益」という 甘い性善説の日本が どれだけ傷を負ったことか。
    韓国が おもいっきり摺り寄り行動をしてきてます。
    騙される人が多そうで心配です。

  • >韓国側から「日韓中間線の韓国側の方で海洋調査をするための準備行為を行っていた」

    海外の偽慰安婦像設置について韓国側の回答:「民間団体によるもので政府は関与していないのでどうにもできない」と全く同じ手法の言い訳です。のらりくらりと言い訳をして時間を稼ぎ、既成事実化してしまうのが目的でしょう。同じ手に2度も3度も騙される、というより騙された振りをして面倒をさける役人・政治家には愛想が尽きます。