IPEF参加なら中国は「韓国狙い撃ち」制裁を発動か
米国が主導する「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)に、韓国が参加することを正式に決定したと、複数の韓国メディアが報じました。サプライチェーンで日本に深く依存する韓国がIPEFに参加しないという選択肢はあり得ないのですが、それと同時に、韓国のIPEF参加を巡っては、中国が強く牽制してきたこともまた事実でしょう。果たして「THAAD制裁」は繰り返されるのでしょうか。
韓国がIPEF参加
ジョー・バイデン政権が掲げる「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)を巡って、複数の韓国メディアは本日、「韓国が加盟することを決定した」と報じました。確認した限り、「左派メディア」とされる『ハンギョレ新聞』(日本語版)、「保守メディア」とされる『朝鮮日報』(日本語版)が、これについて扱っています。
まず、ハンギョレ新聞の記事では、大統領室高官が18日、同紙に対し、IPEF加盟と関連し「加盟の意志を明らかにした」と述べた、と報じています。
尹大統領、韓米首脳会談で「インド太平洋経済枠組み」加盟を確定の見通し
―――2022-05-18 10:06付 ハンギョレ新聞日本語版より
ハンギョレはまた、「別の大統領室関係者」も韓国のIPEF加盟方針について「かなり進んでおり、最後の瞬間に来ている」としたうえで、次のように述べた、とも伝えています。
「これまで環太平洋パートナーシップ協定(TPP)や環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)に加盟していないことについて、『今回は機を逃さないようにしよう』というムードがある。新しい規範ができ、デジタル経済や気候変動など市場開放イシューと関係のない規範を作って協力する枠組みに関する国際議論の場から疎外されてはならないという考えが、尹大統領と参謀陣にはある」。
IPEF発足首脳会議に「遠隔参加」も
一方、朝鮮日報の記事では、韓国の尹錫悦(いん・しゃくえつ)大統領が21日の米韓首脳会談で「発足メンバーとして韓国政府も参加する」と表明するほか、24日のIPEF発足に向けた初の首脳会議に「遠隔で出席する」ことが17日までにわかった、と報じました。
韓国、米国主導の経済同盟「IPEF」参加を決定
―――2022/05/18 10:07付 朝鮮日報日本語版より
朝鮮日報はその狙いについて、「韓国のある外交筋」が次のように述べたと伝えています。
「世界的サプライチェーンやデジタル貿易などの分野で韓国企業が有利な位置を占めるためIPEFに創立メンバーとして加入することを正式に決めた。韓米首脳会談で両首脳が韓国のIPEF加入を正式に発表するだろう」。
ちなみに朝鮮日報によると、「IPEFは米国が世界的サプライチェーン、インフラ、デジタル経済、再生可能エネルギーなどの分野で中国への依存度を下げるためアジア太平洋地域の同盟国や友好国と協力して立ち上げる反中経済連帯の性格を持つ」と指摘。
日本、インド、豪州、ニュージーランド、シンガポール、フィリピンなどが参加するほか、この「外交筋」は「ASEAN加盟国のなかでマレーシアも参加の方向に傾いており、タイ、インドネシア、ベトナムは今も検討中だ」、などと述べたとしています。
この点、韓国がIPEFに参加を表明する(あるいは参加を表明せざるを得ない)ことに関しては、ある程度は予測できたことです。韓国の産業が高度に西側諸国(とくに日本)に依存している以上、これに参加しなければ、サプライチェーンで韓国が除外されるリスクがあるからです。
ついでにいえば、もしかすると韓国はIPEF参加とバーターで米韓通貨スワップ協定の締結を米国に要求するつもりなのかもしれません(それに米国が応じるかどうかは別として)。(※なお、この点については少し気になる動きもあるので、別稿で再び触れる可能性があります。)
中国はどう出るか
こうしたなか、まったく予想どおり、中国が反応してきました。
韓国のIPEF参加に中国外相「反対する」/韓国がIPEF参加を表明した日に中国が改めて不快感示す
―――2022/05/18 10:38付 朝鮮日報日本語版より
同じく朝鮮日報によると、今回の韓国政府の決定に対し、中国が「反中路線への参加」とみなし、「尹錫悦政権に対し執拗に問題提起を行ってくるのでは」、との見方もある、などとしています。
具体的には、中国の王毅(おう・き)外相が16日、韓国の朴振(ぼく・しん)外交部長官と遠隔会談した際に、韓国のIPEF参加に「反対する」と明言したことについても、尹錫悦氏が同日午前の国会演説でIPEF参加方針を示したことへの「不快感と解釈されている」と指摘。
王毅氏が提示した「中韓関係において強化すべき4大事項」のなかに、「デカップリングとサプライチェーン遮断というマイナス傾向に反対し、グローバル産業・サプライチェーンの安定と円滑さを維持しなければならない」とする趣旨の記述が含まれていたと説明しています。
そのうえで朝鮮日報は、王毅氏の「中国の巨大な市場は韓国の長期的な発展のために引き続き推進力を提供するだろう」という発言を、「韓国が米国の中国牽制路線に従った場合、中国の内需市場で不利益を被る」という「一種の脅迫」だと述べています。
中国には融和的な韓国
ただ、それよりも驚くのは、日本に対してはやたら高圧的であるくせに、中国に対してはやたらと融和的な韓国の姿勢です。その実例でしょうか、朝鮮日報が取り上げている慶煕大学の教授のこんな発言は、非常に興味深いものです。
「中国も韓国が最終的にIPEFに参加するしかないことを理解している。それでも公開の場で反発する理由は『自分たちへの配慮が足りない』と中国が感じているからだ。中国の誤解を最小限に抑える努力が必要だ」。
大変申し訳ないのですが、中国が反発しているのは「誤解している」からではありません。IPEFの脅威を正確に理解しているからです。
そのうえで、2017年の「THAAD制裁」のような経済制裁を、韓国に対して仕掛けて来る可能性は、かなり高いといえるでしょう。
このあたり、尹錫悦政権の幹部はこのIPEFを巡り、「複数の国が同時に加入するもので、中国も韓国だけを狙い撃ちして報復することはできないだろう」と予想したそうですが、非常に甘い認識と言わざるを得ません。
いずれにせよ、これらの「韓国がIPEFに参加する」とする報道が事実だったとしても、それは韓国政府が自らの責任において判断したことであり、かりに韓国が中国からの制裁を喰らったとしても、米国、まして日本が「助け船」を出すような筋合いの話ではありません。
もっとも、仮に直前になって韓国が怖気づいてIPEF参加を取りやめた場合には、米韓関係は尹錫悦政権発足直後でありながら、さっそく停滞することになりかねず、韓国にとっては進むのも戻るのも難しい、という展開が続きそうです。
いずれにせよ、本件についても当然のことながら、日本としては「静観」が正解でしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
毎度、バカバカしいお話しを。
韓国の尹大統領は、バイデン大統領からお土産をもらった後で、「自分は参加したかったが、韓国の裁判所が、IPEF参加が違憲との判決を出したので、IPEF参加はできなくなった」と言い出したんだって。(こうすれば、責任は裁判所に丸投げできますし)
おあとが、よろしいようで。
これは良い手ですね。AIでも思いつかないでしょう(笑)。
またアメリカが突然放り出さなければいいが。
あのときも民主党だった。
>中国が反発しているのは「誤解している」からではありません。IPEFの脅威を正確に理解しているからです。
韓国が入った方が、IPEFがグダグダになる可能性高いんだと思うのです♪
だから、中国は「脅威」は理解してても、韓国が参加する「意味」は誤解してると思うのです♪
日本にとっては、仲間内にかの国がいること自体が不利益。
かの国がこっちでもあっちでも、日本に対する行動は同じ。
>24日のIPEF発足に向けた初の首脳会議に「遠隔で出席する」ことが17日までにわかった、と報じました。
どうしても日本でクアッドメンバー揃い踏みの時に首を突っ込みたかった韓国が、IPEF加入を利用して遠隔での出席を要求しまくったんだろうね…
>IPEF加盟と関連し「加盟の意志を明らかにした」
一方的に決めただけで細部の合意には至ってなかったりするのでは?
自らの死活を問う局面で、”選択的加盟”とか”そのかわりスワップ”なんて条件を付けてる場合じゃないと思うんですけどね。
*「自らが利する選択」の決定権は対峙する相手側にあります。
>果たして「THAAD制裁」は繰り返されるのでしょうか。
*中国が、もっとも弱い環を叩かない理由はありません。
とにかく日本に対する嫌がらせや不法行為をしないでいることが出来ないんでしょうね。
日本政府は日本人や日本の国益や名誉を守ってください。
バイデン政権としては対中露体制の締め直しという性格があるんでしょう。
TPPを利用するのが手っ取り早いのですが、既に中国が参加の意思を仄めかしたりしてるので、使い辛くなったのかも知れません。
特にTPPでは法治を徹底しているので、形だけでも中韓が条件を満たせば加入させない訳には行かない、というのは嫌なんでしょう。拒否すればしたでグダグダになるし。
今度の仕組みは、一見条件は緩くてA.S.E.A.N.諸国を加入しやすくしている様に見えて、実は米の裁量権が強く働かせられるのではないかと思っています。
条件を満たしても、米がアカンと言えば加入できないのでしょう。
経済的結束もさる事ながら、敵味方をハッキリさせたいのではないでしょうか。知らんけど。