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外相訪韓中に韓国企業が日本のEEZで無許可調査疑い

関係改善の機運に勝手に冷や水をかけるのが韓国のスタイル

日韓関係「改善」に向けた機運が韓国の側で一方的に高まっているフシがありますが、それと同時に、こうした機運に勝手に水をぶっかけるのも韓国の側であるようです。韓国が不法占拠中の日本領・島根県竹島の約100㎞南方の日本の排他的経済水域(EEZ)内で、韓国国営企業が無許可で海洋調査を実施した疑いが生じたのです。報じたのは産経ですが、自民党外交部会長の佐藤正久氏も「確認できていないでは済まされない」と激怒しているようです。

関係改善機運がおもに韓国側で高まる

韓国で尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権が発足したのを機に、日韓関係「改善」の機運が(おもに韓国側で)一方的に高まっているフシがあります。

いわく、「5年ぶりの保守政権である」。

いわく、「日韓関係の悪化は日韓双方のためにならない」。

実際、日本の側でも、岸田文雄首相や林芳正外相などの政権幹部らが相次いで「日韓関係をこのままにしておくわけにはいかない」、などと発言しています(たとえば4月26日付の岸田首相の会見5月9日付の林外相の臨時記者会見など)。

また、日本にとって韓国は、産業面ではたしかに非常に密接な関係がありますし、安倍晋三、菅義偉両総理の時代から、日本政府は北朝鮮問題などに対処するうえで、「日韓・日米韓連携が大変重要だ」とする見解を堅持してきています。

このように考えるならば、昨今の停滞する日韓関係において、何らかの「一括妥協(グランドバーゲン)」がなされるのではないか、といった点を期待する人が出て来ても不思議ではありません。

保守政権下で日韓関係は良好だったのか

日韓諸懸案はほとんどと言って良いほど解決していないにも関わらず、韓国側で政権が交代しただけで日韓関係改善論が出て来るというのもおかしな話ではあります。

そして、その前提としてさらに注意しなければならないのは、そもそも論として「保守政権下で日韓関係が良好であり続けた」という事実があるのかどうか、でしょう。

李明博(り・めいはく)、朴槿恵(ぼく・きんけい)の両元大統領に関しても、日本の側では、政権発足前には「日韓関係が好転する」などとする期待が大きかったのも間違いありません。というのも、いずれも「保守政権」を標榜していたからです。

それに、たとえば李明博元大統領は就任前、「日本にこれ以上の謝罪を求めない」などと発言しています。

韓国次期大統領、日本に「謝罪求めない」

―――2008年1月17日 21:39付 AFPBBニュースより

AFPによると、李明博「次期大統領」(※当時)は就任直前の2008年1月17日に外国報道陣を前に会見した際、対日関係については「成熟した関係を求める」としたうえで、日本による過去の植民地支配への「謝罪は求めない」とする考えを示しました。

しかし、現実に李明博政権時代には、日韓通貨スワップ協定の規模を、総額130億ドルから700億ドルへと一気に5倍以上に増額する措置(いわゆる「野田佳彦スワップ」)が実現するやいなや、突如として慰安婦問題を蒸し返します。

さらには退任直前の2012年8月には、韓国が不法占拠中の日本領である島根県竹島に不法上陸し、天皇陛下(現在の上皇陛下)を侮辱し、野田首相(当時)からの親書を郵送で返送するという外交的な無礼を重ねました。

結果として、『外交に関する世論調査』からも明らかであるとおり、李明博政権時代末期、日本国民の対韓感情は極度に悪化しました。2012年10月の調査で、韓国に対して親近感を抱く人、日韓関係が良好だと思う人の割合が極端に減少したのです。

図表1 韓国に対する親近感の推移

(【出所】『外交に関する世論調査(令和3年9月調査)』より著者作成)

図表2 韓国との関係が良好かどうかに関する認識の推移

(【出所】『外交に関する世論調査(令和3年9月調査)』より著者作成)

この調査結果を見て、「保守政権である李明博政権時代に日韓関係が好転した」などと言えるものでしょうか。

朴槿恵政権時代はグダグダで終わる

次の朴槿恵政権に関しては、政権発足前から対日外交が厳しいものになるとの予想もあったものの、「悪化した日本との関係を改善したいと考えているはずだ」、「父親から日本的なるものを多分に聞いてきたであろうことから、日本と日本人への肯定的なイメージは少なからずあるだろう」、などとする見解も出ていました。

韓国・新大統領は「親日」か「反日」か

―――2012/12/21 6:03付 東洋経済ONLINEより

しかし、現実には朴槿恵大統領(当時)は安倍晋三総理の日韓首脳会談の呼びかけに頑なに応じず、「日米韓3ヵ国会合」形式での初めての会談が実現したのも、朴槿恵政権発足後1年以上経過した2014年3月のことでした。

また、朴槿恵政権時代には韓国による日本の世界遺産登録妨害事件(2015年7月)なども発生していますし、歴史問題に関して2015年12月に慰安婦合意が取り交わされるなどしたものの、翌・2016年12月には釜山の日本領事館前に慰安婦像が設置される事件が発生しています。

このような簡単な事実確認をするだけでも、「保守政権下で日韓関係が良好だった」という認識自体が、極めて怪しいものであることがわかりそうなものです。

ちなみに尹錫悦氏が「保守政治家」なのかと問われれば、そこも微妙でしょう。

尹錫悦氏が保守政党「国民の力」の公認を得て大統領に当選したことは事実ですが、それと同時に尹錫悦氏自身はこれまで一貫して検事としてキャリアを積んでおり、政治家(閣僚、国会議員など)の経験がありません。

だいいち、尹錫悦氏が頭角をあらわすきっかけのひとつが、文在寅(ぶん・ざいいん)前大統領に重用されたことにあります(たとえば、尹錫悦氏は2019年7月に検事総長に抜擢されていますが、文在寅政権と衝突し、2021年3月に辞任しています)。

竹島南方EEZで無許可調査の疑い

もっとも、正直、日韓関係を巡っては、日本の側から積極的に動く必要もないのかもしれません。というのも、放っておけば、韓国側で高まる日韓関係「改善」機運に対し、韓国側が勝手に水をぶっかけるというフシがあるからです。

これに関連し、産経ニュースに一昨日、少し気になる記事が出ていました。

<独自>韓国、竹島南方EEZ内で無許可調査か

―――2022/5/16 18:19付 産経ニュースより

産経ニュースの「独自」と銘打った記事によれば、韓国国営企業が5月上旬、竹島南方の日本の排他的経済水域(EEZ)内で、無許可の海洋調査を実施した疑いがあることが、「政府関係者への取材の結果」、16日に判明したというのです。

しかも、産経ニュースはこう続けます。

調査は尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が就任したタイミングで実施され、林芳正外相は訪韓中だった。日本政府は事案自体を公表しておらず、抗議の有無も明らかになっていない」。

これが事実ならば、岸田首相や林外相、あるいは外務省にとっては「大失態」でしょう。なぜなら、韓国がそのような挑発行動をとっているにも関わらず、日本の外相がノコノコと首相の親書を携えて訪韓し、韓国新大統領と握手を交わしてきたからです。

しかも、驚くべきことに、外務省側は外交ルートを通じて「関心を表明」したにとどまり、抗議もしていないのだとか。この場合の正しい対応は、林外相が大統領就任式の最中に、さっさと席を蹴って帰って来ることでしょう(※あくまでも「事実ならば」、ですが)。

もちろん、本件が仮に事実であったとしても、尹錫悦氏に責任があると見るのか、それとも文在寅前大統領の「置き土産」と見るのかについては微妙ではあります。ただ、国と国との関係に関していえば、日本からわざわざ外相が派遣されているのに、日本に対する挑発行動に手を染めるのは言語道断です。

佐藤正久氏「首相の顔におもいっきり泥」

これに関連し、産経ニュースの昨日の記事によれば、参議院議員で自民党の外交部会長を務める佐藤正久氏は17日午前の党会合で、「岸田首相の顔におもいっきり泥塗られたといっても過言ではない事案だ」と批判したのだそうです。

自民・佐藤氏「首相の顔におもいっきり泥」、韓国の竹島海洋調査

―――2022/5/17 11:28付 産経ニュースより

ちなみにこの産経ニュースの記事にはさらに続きがあります。

佐藤氏自身は昨日、自身が執筆する個人ブログで、今回のEEZ海洋調査を巡って「確認できていないでは済まされない」とし、外務省の対応を舌鋒鋭く批判しています。

我が国EEZにおける韓国の海洋調査「確認できていない」では済ませられない

―――2022-05-17 17:01:24付 アメーバブログ・佐藤正久オフィシャルブログより

これによると、「外務省からの説明では、実際に調査が行われたかどうかは現場で断定できず、政府ルートで韓国政府に確認したものの、『確認できていない』という回答であったため、本件の公表を見送っていたということであった」、などとしています。

佐藤氏はまた、「韓国が新政権に向けての移行の時期であるからといって、日本が静かにしないといけないというのはおかしな話であり、我が国として、毅然とした対応が求められる」と述べていますが、この点についてもまったくの正論でしょう。

日韓関係は放置が最善か

もっとも、佐藤氏自身も自民党議員かつ外交部会長であるならば、本件については自民党として岸田首相に何らかの申入れを行うべきではないかという気がしますが、この点については脇に置きましょう。

ちなみに韓国政府側は、本件報道にある竹島周辺での活動を「正当なもの」とする声明を出したようですが、こうした韓国政府側の発言も、間違いなく、日本の側で韓国に対し擁護的な意見を減らすことに寄与するでしょう。

独島周辺での活動は「正当なもの」 日本の報道を一蹴=韓国外交部

―――2022.05.17 21:06付 聯合ニュース日本語版より

いずれにせよ、日韓関係「改善」に向けた機運が高まろうとしているときに、それをわざわざ叩き潰す動きが韓国の側から出てくるのは興味深いと言わざるを得ません。

とりあえず、本稿では、日韓関係「改善」のボールを握っているのは韓国の側であること、尹錫悦氏のいう日韓関係「一括妥結」「グランドバーゲン」のたぐいはあり得ないこと、そして日韓関係についてはこれ以上日本側から動く必要はなく、放置する以外に方法はない、という点については改めて指摘しておきたいと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (11)

  • 外務省には怒りを禁じえません。一方でこの件は、韓国側の失点の方が大きいように思います。日本から譲歩を引き出すことを難しくする状況を自ら作り出したのです。

    日本の報道を受けて、韓国政府は「自国の領海の調査して何が悪い」と言ってくるでしょうから、日本もこれまでの「約束を守れ」方針を継続することとなる。

    私達が一番心配していたのは、親米政権ができたという根拠のない雰囲気から、日本が韓国に譲歩することでした。そういう意味では、いい風のようも思います。

  • 新宿会計士殿、毎日興味深い論稿を掲載頂き有難う御座います。私は読むだけで大変なのに、これら記事を毎日作成掲載する新宿会計士殿の労力に驚き、敬意を表します。

    さて新宿会計士殿の下記の指摘ですが、全く仰る通りです。

    > 日韓関係「改善」に向けた機運が高まろうとしているときに、それをわざわざ
    > 叩き潰す動きが韓国の側から出てくるのは興味深いと言わざるを得ません。

    私共日本人は信義を重んじ約束を守ります。しかし朝鮮半島の方々は、私共日本人とは違う思考法で動く異人種と捉えるべきです。ですから同じ価値を共有は出来ません。ならば新宿会計士殿の分析を元に、国家としての損得を鑑み、無理して付き合う必要は無いとの結論を出さざるを得ませんね。

    ちなみに在韓ビジネスライターの羽田 真代さんが、日韓関係「改善」に向けた機運をわざわざ叩き潰す輩に関し纏めた記事を一昨日の2022.5.16(月)に発表しています。大学教授から始まり、どのような団体があり、如何なる収入を得ているかが説明されています。
    ご参考迄にご紹介致します。

    韓国・尹錫悦大統領の足を引っ張る「日韓関係が改善されると困る人々」
    新政権は日韓関係の改善に前向きも「反日」でメシを食う輩をどうするか
    https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70125

    • さっそく正義連のバーサンが吠えましたw

      https://japanese.joins.com/JArticle/291177

      >韓日関係の改善よりも先に慰安婦問題が解決されなければならないと話した。

      >李さんは解決方法について、日本政府の犯罪事実の認定と首相の公式謝罪、法的賠償など7種類原則を挙げた。

      >また、日本がこれを受け入れなければ、国連拷問防止委員会で慰安婦問題を議論するべきだと主張した。

      これでは保守政権でも日韓関係の改善は不可能(そもそも不要)

      韓国はかかわるだけ無駄で相手にする必要もない。

  • 髭隊長のコメントって、なんだか他人事のような感じするんですよね。
    自民党の当事者として、行動で示して欲しいと思う。
    まぁ、情報を公開してくれるだけでもありがたいと思うべきか。

    • マスオ様
      200%同意します。髭(ヒマ)議員のTwitter見ると、「岸田や林に直接言えよ!」「お前も自民党議員だろう?」「偉そうにコメントするなら、外交部会が無能ですいませんでしたと謝れよ!」と言いたくなります。彼は偉そうにコメントはしますが、比例選出議員ですし、実はガス抜き要員で何も言えないのではないかと疑ってしまいます。いつも、何かあれば「・・・に確認する」とコメントしても、その後の結果や行動は音沙汰なし。単に人気取りでやっているんだろうなあと思っています。

    •  部会長という役職は、政府の政策決定に影響力のない若手(当選回数の浅い)の親分にして、政府の与党プロセスの第一段階を政府原案に変更なく取り付ける部会の司会業が本務で、党の外交安保政策に関する方針を対外的に語ることが出来るようなマンデートはないですから。
       自民党内で政府の政策決定や対処方針に影響力を持つのは、俗にインナーと呼ばれる大臣経験者の非公式会合のメンバーで、この分野でメディアにも露出するひとでは、小野寺五典 議員とか新藤義孝 議員など。

  • >「保守政権下で日韓関係が良好であり続けた」という事実があるのかどうか、

    この指摘について、尹政権では新たな意味が付与されるかも知れませんね。

    自らのクビが掛かっているヒダリマキの連中が何より怖れるのは、新政権が日米、とくに日本との関係改善を成し遂げて、経済環境が良好となり、政権の支持率が上向くこと。

    自分たちが政権を握っている間は、いくら何でもやれなかったことを、新政権の足を引っ張るためなら、次から次へと繰り出してきそう。今度の日本EEZ内の海洋資源調査なんてのは、国にとっては悪手でも、日本との関係悪化が狙いなら妙手とも言えるでしょうから。

    多分、新政権にこれを抑える力はなさそうに思えますしね(笑)。

  • このニュースをみて思ったことなのです♪

    不法入国者の引き渡しを要求しろとまで言いません♪
    入国時の隔離を緩和するとかの話をみたけど、それを反故にするとか、ちゃんと鞭を与えて欲しいと思ったのです♪

  • >いずれにせよ、日韓関係「改善」に向けた機運が高まろうとしているときに、それをわざわざ叩き潰す動きが韓国の側から出てくるのは興味深いと言わざるを得ません。

    日本政府側は特に高めようとはしていない様子なので、『日韓関係「改善」に向けた機運が高まろうとしているときに』ではなく『日韓関係「改善」に向けた機運が高めようとしているときに』ではないかと。

    で、そんな韓国が日本に対して挑発行為や嫌がらせを行うのは、彼らの価値観では『嫌がらせをやめて欲しければ膝を屈しろ』が上位者たる韓国の取る言動だから、当然なんじゃないですかね。

    『自己評価が高過ぎるリスカブス』には『丁寧な無視』で対処し、墓穴を掘って落ちるよう手を出すのが良いかと思います。

  • もうこの件は韓国の問題ではなく、日本政府の問題ではないでしょうか。
    先日の朴振との会談内容も然りですし、今回のEEZ調査も見逃してやった上に「その批判は当たらない」との林外相のコメント。

    完全に岸田ー林ラインは安倍外交を覆そうとしているとしか思えませんね。どうやったら彼等を追い落とせるのか… さりとて自民党が下野したら何が起こるか… う~ん、毎回同じような投稿ですが…

    宏池会だけ落選させられる方法って無いものですかね。

    • 結局10日近く経っても朴振との会談内容の英語版はリリースされず。
      懸案の解決を誰がやるのか、結局あいまいなまま。