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期待大きければ失望も大きい:韓国の協議団は裏目に?

大きな期待を込め、政策を「協議」するために日本にやってきたはずなのに「権限がない」とは、これいかに…。韓国メディアの報道を眺めていると、昨日、成田空港に到着した韓国の「政策協議代表団」の団長である鄭鎮碩・国会副議長は、自称元徴用工や自称元慰安婦などの日韓諸懸案を巡り、「代表団が権限を持って臨むことではない」と述べたのだそうです。

結局、岸田首相には会うのですか?会わないのですか?

韓国から尹錫悦(いん・しゃくえつ)次期大統領が派遣した「政策協議代表団」が、予定どおり昨日、日本に入国しました。予定では28日まで滞在するそうです。

もっとも、この代表団が岸田文雄首相と面会するかどうかに関しては、よくわかりません。

いちおう『韓国紙、「岸田首相と政策協議団の面会が決定」と報道』でも触れたとおり、著者自身が確認したところ、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に土曜日、この協議団が岸田首相と面会することが決まったと報じています。

本日以降、韓国から次期政権関係者の代表団が来日します。これについて岸田文雄首相が面会するのか、しないのかを巡り、さまざまな報道が入り乱れていますが、韓国メディア『中央日報』(日本語版)は昨日、「外交筋」の情報として、岸田首相が代表団と面会することが決定事項であるかのように報じました。これについて、どう考えるべきなのでしょうか。政策協議団と首相は会う?会わない?「岸田首相が政策協議団と面会」=産経昨日の『岸田首相が韓国の政策協議団との「面会を検討」=産経』では、韓国の尹錫悦(いん・しゃくえつ)...
韓国紙、「岸田首相と政策協議団の面会が決定」と報道 - 新宿会計士の政治経済評論

該当するリンクは、これです。

訪日の尹政府協議団、岸田首相に会う…菅氏とは27日に確定

―――2022.04.23 09:30付 中央日報日本語版より

もっとも、昨日も簡単に議論したとおり、この中央日報の記事をもって「代表団が岸田首相と面会することが確定した」と判断するには、少し材料が足りません。ほかのメディア(たとえば日本のメディアなど)で裏付けが取れていないからです。

また、一部メディアが先走り、結果的に誤報だったという事例は、いままで枚挙にいとまがありません。

「文在寅(ぶん・ざいいん)大統領が東京五輪開会式に合わせて訪日し、菅義偉総理と東京・元赤坂にある迎賓館で日韓諸懸案について協議する」という、読売新聞による昨年7月の盛大な誤報(『文在寅氏訪日失敗:なぜ読売新聞は「間違えた」のか?』等参照)は、その典型例でしょう。

昨日の『読売「日韓首脳会談で徴用工など協議へ」をどう見るか』でも取り上げたとおり、読売新聞は昨日早朝に「日韓首脳会談を元赤坂の迎賓館で実施する」、「日本政府は駐韓大使館の相馬公使を更迭する構え」などと報じました。しかし、『日韓メディアが「文在寅韓国大統領が訪日断念」と速報』ですでに結論が出ていますが、この読売報道の内容自体、結果的に「大外れ」でした。一連の騒動に加え、文在寅氏が今後、どう動くかについても、興味は尽きないところです。文在寅氏の訪日スルスル詐欺ここ数週間、当ウェブサイトで「訪日ス...
文在寅氏訪日失敗:なぜ読売新聞は「間違えた」のか? - 新宿会計士の政治経済評論

もっとも、読売新聞の大誤報の場合は、その内容があまりにも突拍子過ぎて、「にわかには信じられない」というレベルのしろものでしたが、一見すると「あり得るストーリー」で巧妙に観測報道などを打ち出す事例もありますので、このあたりは注意が必要です。

こうした文脈から考えるならば、「岸田首相と協議団が面会すると決まった」という中央日報の報道についても、現段階では誤報ないし虚報の線を疑っておくのが無難ではないかと思う次第です。

政策「協議」代表団なのに「権限を持っていない」

こうしたなか、代表団の面々は昨日午後、成田空港に到着し、入国したそうですが、これに関する韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)の報道に、なかなか強烈なものがありました。

尹氏の親書に「新たな韓日関係への意思」 韓国代表団が日本入り

―――2022.04.24 16:09付 聯合ニュース日本語版より

聯合ニュースは「両国が激しく対立する慰安婦や強制徴用などの問題に関する協議も行われる見通し」だとしつつ、これについて「国民の力」に所属する鄭鎮碩(てい・ちんせき)国会副議長は、「代表団が権限を持って臨むことではない」と話した、というのです。

「権限がない」のに政策「協議」団とは、珍妙です。彼らは日本くんだりまで、いったい何をしに来たというのでしょうか?

いちおう、聯合ニュースによると、鄭鎮碩氏は「新しい韓日関係の土台づくりに向けた任務を持って日本を訪問した」、「主要関係者との政策協議を通じ、韓日関係を改善するとともに、両国の共通利益のための協力関係づくりに向けた対話をする予定」、などと述べたそうです。

「主要関係者と関係改善のための政策協議・対話」をする予定なのだけれども「権限がない」。

本当に、わけがわかりません。

親書を手渡すつもりであることはわかった:重要なのはその「中身」だ

ただ、議論をここで終えるのも味気ないので、もう少し聯合ニュースの記事を読んでみましょう。

聯合ニュースによれば、鄭鎮碩氏は尹錫悦氏の親書について、「新しい韓日関係に対する尹錫悦次期大統領の意思・期待、日本の前向きな反応に対する期待など、こうした意味が込められた親書」と述べたのだそうですが、そのわりに親書の中身についての具体的な言及はみあたりません。

親書を手渡すつもりであることはわかりました。しかし、重要なのは、「中身」です。

想像するに、尹錫悦氏の「親書」には、「韓日関係を巡って未来志向でお互いに協議しなければならない」、といった趣旨のことのみが書かれ、日韓諸懸案を巡る韓国なりの具体的な「解決策」は明記されていないのかもしれません。

このあたり、少し厳しいことを申し上げるならば、どうも韓国側は、「親書を携えて韓国が先に代表団を日本に派遣した」ことを、「自分たちが先に日本に歩み寄った」という点で、「道徳的優位」に立っていると勘違いしているのかもしれません。

これだけある!「日韓諸懸案」

くどいようですが、日韓諸懸案を列挙していくと、竹島不法占拠問題、自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題といった「3つの大きな柱」が存在していますが、それだけではありません。

たとえば、これら3つの問題以外に関し、李明博政権から文在寅政権に至るまでの間に発生した韓国による対日不法行為のおもなものだけを列挙しても、正直、キリがありません。

李明博政権・朴槿恵政権時代の韓国による日本に対する不法行為の例
  1. ソウルの日本大使館前に慰安婦像が設置される(2011年12月)
  2. 李明博大統領(当時)による竹島不法上陸・天皇陛下侮辱(2012年8月)
  3. 李明博大統領(当時)が野田佳彦首相(当時)の親書を郵便で返送(2012年8月)
  4. 対馬仏像窃盗問題(2012年10月~)
  5. 朴槿恵大統領(当時)への名誉棄損容疑での産経記者起訴(2014年8月~)
  6. 安倍晋三総理による米上下両院合同議会演説の実現を妨害(2015年4月頃)
  7. 日本の世界遺産登録を全力で妨害(2015年5月~7月)
  8. 釜山の日本総領事館前に慰安婦像が設置される(2016年12月)
文在寅政権下で発生したさまざまな対日不法行為
  1. 「慰安婦合意」に関する外交機密文書一方的に公表(2017年12月)
  2. いわゆる旭日旗騒動(2018年9~10月)
  3. 当時の韓国国会議長が天皇陛下を侮辱(2019年2月)
  4. 日本政府のアグレマンなしに次期駐日大使人事を一方的に発表(2020年11月)
  5. 火器管制レーダー照射事件(2018年12月)と「日本が低空威嚇飛行」などのウソを全世界に喧伝
  6. 日本が要求した輸出管理に関する政策対話に2016年6月以来3年間応じなかったこと
  7. 日本政府の輸出管理適正化措置に対するWTO提訴(2020年6月)
  8. 日韓GSOMIA破棄通告(2020年8月)とその撤回(2020年11月)

当たり前の話ですが、竹島不法占拠問題、自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題の3つの懸案をきれいに片付けたとしても、それで韓国からの日本に対する不法行為がゼロになるわけではないのです。

このあたり、尹錫悦氏が狙っているのは「韓日関係の包括的解決」だそうですが、邪推するに、おそらくそれは「韓日が相互に歩み寄る」というかたちでの、古き悪しき日韓関係に戻すことではないでしょうか。

もちろん、外務省のコリア・スクール出身の一部の役人や、自民党の国会議員などのなかには、日本が韓国に譲歩するかたちでの「関係改善」を画策していることは間違いありません。なぜなら、多くの場合、彼らがそれにより、何らかの利益(省益、あるいは酷い場合には個人的な利益)を得るからです。

言い換えれば、「日本国」の国益を韓国に売り渡すことで、私利私欲を追求している、ということでもあります(※このあたりは、増税原理主義で無茶な消費税の引き上げにより日本経済をぶっ壊してまで増税利権を追求する財務省とも相通じるものがあります)。

岸田首相との面会の前に林外相との面会か?

さて、先ほどの聯合ニュースの記事に、少しだけ話を戻しましょう。

聯合ニュースによると、「代表団は岸田文雄首相に尹氏の親書を伝達するとみられる」としつつ、「岸田氏との面会は決まっておらず、『返事を待っている状態だ』という」、と報じました。

つまり、日曜日の聯合ニュースの記事自体が、土曜日の中央日報の記事の内容を否定した格好ですが、それだけではありません。

いくつかのメディアの報道(たとえば時事通信の日曜日の『韓国次期政権の代表団来日 岸田首相との面会模索』など)から判断すれば、この代表団は25日(つまり本日)の午前中、額賀福志郎・日韓議連会長らとの朝食会を開催し、その後、外務省に林芳正外相を訪ねる、としています。

林外相と日韓議連の関係とといえば、林氏が参議院議員を辞職して衆院に鞍替え出馬を行ったことの影響で、日韓議連幹事長だった河村建夫氏が昨年の衆院選で事実上の引退に追い込まれた、という経緯もあります。

正直、「ゴリゴリの親韓派」だった河村氏が引退したことで、日韓議連の「親韓度」も相当にスカスカになったのではないかと思いますが、それと同時に協議団にとっての本日の「本番」は、林外相との面談だ、ということなのかもしれません。

要するに、林外相が協議団と直接面会し、岸田首相に会わせるだけの価値があるかどうかを判断する、ということです。俗な言葉で言い換えれば、「面接」のようなもの、と考えてはどうでしょうか。

期待が大きいほど失望も大きくなる

むろん、外交上のやり取りの内容について、外務省のウェブサイトなどに詳細に公表されるとは思えませんが、それと同時に本日以降、林外相との面談内容について、ある程度は見えて来るとは思います。

当ウェブサイトでこれまで予想してきたのは、「日本が望むかたちでの『解決策』については韓国側から提示されない」というものですが、もしもこの予想が当たっていたとしたら、いったい何が起こるのでしょうか。

改めて指摘しておくならば、人間、だれしも「期待」を持たされ、そうした「期待」が裏切られたときには、極めて大きく落胆するものです。ケースによっては相手に対し、怒りを覚えることもあるでしょう(※著者自身もビジネスマンの端くれですので、こうした感覚に直面することは頻繁にあります)。

尹錫悦氏が先月10日の大統領選を制して以来、韓国メディア、あるいはごく一部の日本のメディアなどからは、「5年ぶりの保守政権だ」、「文在寅政権下で『悪化』した韓日(日韓)関係が改善される」、といった煽り報道がやたらと出てきています。

「そもそも尹錫悦氏自身が保守政治家なのか」という点に強い疑念と違和感を抱くという点は脇に置くにしても、「韓国で保守政権だと日韓関係がうまく行く」というのは、発想としてはやや短絡的過ぎます。朴槿恵(ぼく・きんけい)、李明博(り・めいはく)両政権時代にも、日韓関係がギクシャクしたことがあったからです。

いずれにせよ、著者自身、今回の政策協議団に対しても、「期待詐欺」のようなものを感じてしまいます。

実際のところ、日本が韓国に求めているのは、「ウソをつくな」、「約束を守れ」、の2点に尽きるのであり、このあたりは安倍晋三、菅義偉の両総理が敷いた路線から、岸田首相も逸脱することは困難です。

一方で、漏れ伝わる韓国側からの発想を眺めていると、韓国側は、明らかに「日本の譲歩」を望んでいます。

ウソ・約束破りの被害国である日本が、加害国である韓国に対し、これ以上何を譲歩しろというのかはよくわかりませんが、もしも「満を持して」訪日した政策協議団から「譲歩しろ」という要求が出てきたならば、そのことは日本全体が尹錫悦・次期政権に対し失望することにつながります。

つまり、今回の政策協議団自体、派遣する目的は「韓日関係の『改善』」なのだそうですが、それが見事に「裏目」に出る可能性があります。下手をすると、協議団が結果的に、今後5年の日韓関係を潰してしまうことにもなりかねないでしょう。

いずれにせよ、本件を巡って本日以降、興味深い論点が出て来るようであれば、また話題として取り上げたいと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (19)

  • 韓国政府は昔、島根県・竹島(韓国名・独島)の領有権問題を巡り、野田佳彦首相が李明博大統領あてに送った親書を日本政府に返送したことがありますから、今回、同じことをやってみればいいのに。韓国は、自分たちのやったことは棚に上げて、外交的欠礼だと大騒ぎするんでしょうね。ところで、韓国代表団が滞在するなら、ニワトリを盗まれないようにしないと。

    • すいません、(韓国名・独島)という不愉快な名称を削除し忘れました・・・・

  • >岸田首相との面会の前に林外相との面会か?

    その前に、3日間の待機って今はしなくてもよくなってたのでしょうか?

  • >つまり、今回の政策協議団自体、派遣する目的は「韓日関係の『改善』」なのだそうですが、それが見事に「裏目」に出る可能性があります。下手をすると、協議団が結果的に、今後5年の日韓関係を潰してしまうことにもなりかねないでしょう。

    政策協議団が韓国的価値観のゴリ押しを行い、今後の日韓関係のさらなる正常化を成し遂げる事を祈念します〜(。-人-。)

  • 日本の税金を使って、日韓議連で一杯呑るために来てますよね。局長級でも全く話が進んでいないわけですから、その上が出てきてどうのこうのにはなりませんやね。

  • >権限を持っていない
    たしかに、まだ大統領に就任したわけでもない者に遣わされた協議団に何の権限があるはずはありません。親書だけは丁重に受け取り、出直していただくのがよろしいかと存じます。

    (いと、やんことなき〇族)
    「やんことなき我らの、やんことなき事情を察し、やんことなく応えよ」との要求が、やんことない
    (「高貴な我らの、のっぴきならない事情を察し、打ち捨てずに応えよ」との要求が、止めどない)

  • 水面下でこそこそするような事がないようにして欲しいね。
    この協議団、ネットにバラされると面倒だから内密にとかお願いしてそうだし。

  • 韓国が受け入れ可能な「最低限の条件」を持参していないのに誰が代表の使節でも「交渉事が成立しません」。
    代表がバイデンだろうがプーチンだろうがトランプだろうがムリです。

    韓国が絶対に譲れ無い受け入れ可能な最低限の条件は
    「日本が主権、国民の財産権、基本的人権を永久に放棄」して
    「日本人全てを人間でない奴隷未満の絶対服従のモノとして韓国に譲渡する。」

    これ以外の条件未達の条件を持参するから

    日韓が遵守出来ない約束事を締結するのですよ。

    以上です。駄文失礼しました。

  • まあ多分なんの話をするつもりもないのでしょう。
    彼らの興味は誰と会えたかだけ。首相との面会さえ叶えば最高の成果。それを後々まで誇っていくのでしょう。
    あくまで韓国国内で箔をつけるのが今回の訪問団の目的です。我々は日本の首相とも望めばいつでも協議が出来る。それだけで十分なんです。

    今回の訪問で日本で議論を呼ぶような会話は一切ないでしょう。

    • そもそも近くに居るはずの駐日大使ですら、首相とも外相とも話出来ていないんです。外相や首相と話が出来た実績だけが欲しいんですよ。

      派遣した新大統領にしても派遣された訪問団個々人にしても。

      「いざとなれば日本と話が出来る」は彼らにとって大きな力になります。新与党の次の議員選挙にも有利になるでしょう。

  • >このあたり、少し厳しいことを申し上げるならば、どうも韓国側は、「親書を携えて韓国が先に代表団を日本に派遣した」ことを、「自分たちが先に日本に歩み寄った」という点で、「道徳的優位」に立っていると勘違いしているのかもしれません。

    これですよねー。
    そして日本からすると、会ったとしてもこれ、会わなくてもこれ。
    面倒この上ないです。

  • まだ、大統領は文氏なので、今回の「政策協議団」には、
    韓国政府の肩書は無く、権限が無いのは分かっていた事です。
    正直に、それを言っただけ、まともかな。

    挨拶回りしかできないのが、現状なのですね。

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