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千羽鶴問題で「あのテレビ局」が「無意味批判に疑問」

「ウクライナ大使館への千羽鶴問題」を巡るSNS上の議論に、「あの放送局」が再び火をつけたようです。ウクライナ大使館への千羽鶴寄贈を呼びかけた人物は、結局、SNS上で寄せられた指摘により、寄贈を断念したそうですが、これを巡ってテレビ朝日が『「無意味」批判の声には疑問』、などと報じたのです。

千羽鶴問題

意外と当ウェブサイトで過去に何度となく取り上げてきた話題のひとつが、「折り鶴問題」、「千羽鶴問題」です。

ことに、先月の『千羽鶴を贈ることは本当に相手のためになるのですか?』では、ウクライナ大使館に折り鶴を送付しようとしていた団体に関する話題を取り上げました。

またしても「千羽鶴」が暴走し始めたようです。今度のターゲットは、ロシアの軍事侵攻に苦しむウクライナ大使館だそうです。これについて考える前に、そもそも千羽鶴とはいったい何なのか、そして広島市がその対応にどう苦慮しているのか、さらには「支援を受ける側」が望むであろう「善意の発露」とはいったい何なのか、少し立ち止まって考えてみませんか?暴走する千羽鶴日本には「千羽鶴」という文化があるようです。折鶴といえば、色鮮やかな折り紙で鶴を表現する、日本人なら知らない人はいない文化です。そして、千羽鶴とは、そ...
千羽鶴を贈ることは本当に相手のためになるのですか? - 新宿会計士の政治経済評論

千羽鶴の贈呈という習慣の起源が「原爆の子」にあるらしい、という点に加え、全国各地から贈られる莫大な千羽鶴の処理を巡って広島市としても大変に苦慮している(広島市・2019年10月21日付『折り鶴に託された思いを昇華させるための方策について(最終とりまとめ)』等参照)、などの話も取り上げています。

読者コメント欄でも、「千羽鶴など自己満足ではないか」、「相手に迷惑が掛かっているのではないか」、といった趣旨に、多くの方から賛同していただいたようです。

ちょっとくどいようですが、とても大事なことなので改めて強調させていただきますと、震災だ、水害だといった自然災害のたびに千羽鶴を折って送ろうとするのは、本当に自重すべきです。なぜなら、受け取る側からすれば迷惑以外の何者でもないからです。

もちろん世の中には「千羽鶴をもらうと嬉しくてならない」、「後生大事に飾っておきたい」、などと思う人もいるかもしれませんが、そのような人が世の中の多数を占めることはありません。

たとえば、自然災害などの被災地では、多くの場合、緊急で学校の体育館などが避難所に使用されるケースが多いのですが、千羽鶴など送られても飾る場所もなければ役に立つわけでもありませんし、膨大な支援物資に紛れると、物資の仕分けに支障を来します(経験者談)。

もちろん、千羽鶴だの、寄せ書きだのといった品目以外にも、「絶対に送ってはならない物」はあります。使用済みの下着、古着、文房具のたぐい、生鮮食品、手作りの料理・菓子などは、送り付けられても使えませんし、避難所や地元自治体を混乱させるだけです。

「ウクライナ大使館に折り鶴を」→断念

さて、ウクライナ大使館への千羽鶴を巡って、発端となった記事のひとつが、これです。

ウクライナに平和を 有志が岐阜市で反戦訴え、ネットで賛同広げる【リンク切れ】

―――2022年3月6日 08:39付 岐阜新聞Webより

この記事によると、岐阜市内の有志が「千羽鶴を完成させて在日ウクライナ大使館に送る予定」、というものです(※なお、記事公開からまだ2ヵ月も経過していないにも関わらず、すでにリンク切れとなっているようです)。

ただ、後日調べてみると、ツイッターなどのSNS上では、この動きに対する非難で一色だったようです。

そして、結果的にこの「折り鶴のウクライナ大使館への寄贈」を企画したご本人は、自身のFacebookに「折り鶴を送るのは迷惑になるとのご指摘をたくさんいただきました」などと書きこみ、寄贈自体を「断念」した、と報じられています。

ウクライナ大使館に「千羽鶴」を 平和願い折るも寄贈断念、発起人の胸中は

―――2022年03月20日11時00分付 J-CASTニュースより

J-CASTニュースによると、この人物は「記事が出たあと、いろいろな方から反応をいただきました」、「東日本大震災のときも日本にいなかったので、(被災地で)そういう問題が起こっていたことは知りませんでした」などと述べたそうです。

ただ、その一方で、この人物は寄せられた反応から「折り鶴なんて意味がない」というニュアンスも感じ取ったそうであり、これに対して次のように述べたのだそうです。

例えば、ご家族の中でウクライナの問題を考えながら鶴を折ることは、『自分がウクライナにいたらどうする?』『お父さんが戦いに行くとなったらどうする?』と想像を巡らせるきっかけになると思います。折り鶴を受け取る外国の方からすれば、『日本の人たちがこんなものを折ってくれたんだ!』と励みになる。日本の文化が持っている大切なことが、必要以上に蔑まれているなと感じます」。

いろいろと誤解があるように思えてなりません。

そもそも先日も議論したとおり、千羽鶴を折って被災地などに送り付けるという慣習は、「日本の古来の文化」ではなく、「原爆の子」が作り出した、比較的浅い文化であるという可能性が濃厚です。

もちろん、家族で鶴を折りながらウクライナ問題について考えることは有益かもしれませんし、家族でウクライナ国旗色の折り鶴をたくさん折り、それを折った人の自宅に飾り、写真を撮ってSNSにアップロードするなどして、「私たちはウクライナとともにあります」、などとメッセージを寄せる、といった行動はアリだと思います。

ただ、「鶴を折ることでウクライナの人々の気持ちに思いを巡らせる」のは、あくまでも「鶴を折っている人たち」の「内面」の話であり、それは自分たちで消化すべき話であって、出来上がった鶴の現物を相手に送り付けて良い、という話にはなりません。

またしても「テレ朝」が!

こうしたなか、この「千羽鶴問題」を、「あのテレビ局が」取り上げました。

ウクライナへの“千羽鶴”に賛否 寄贈断念も…「無意味」批判の声には疑問

―――2022/04/19 14:33付 Yahoo!ニュースより【テレ朝NEWS配信】

『テレ朝NEWS』はこの「千羽鶴寄贈断念」問題を巡って、千羽鶴に対する批判的な意見をいくつか紹介しつつ、こんなことを述べます。

一方、インターネット上では、『ここまで強く攻撃して、否定してくることに、不快感を覚えます。少なくとも、祈りに力があると思って、折っている人たちのほうが、この行為を攻撃してくる人たちよりは、平和に近い生き方のように思います』といった声もありました」。

…。

はて?こうした意見をわざわざ取り上げる理由は、いったいどこにあるのでしょうか?

もちろん、インターネット空間にはさまざまな人がいますので、探せばそのような考え方の人もいるでしょうが、少なくともツイッターなどの検索機能で調べてみると、むしろ千羽鶴に対する批判的な意見が圧倒的に多いのが実情です。

また、ここで引用したのがテレビ朝日のウェブサイトではなく、『Yahoo!ニュース』である、という点には、ひとつの意味があります。『Yahoo!ニュース』の読者コメント欄を見ていただければわかりますが、高評価コメントは圧倒的多数が千羽鶴に批判的です。

もちろん、千羽鶴批判に対し、擁護する意見もありますが、基本的には少数派でしょう。

テレビ朝日といえば、昨日の『報道で狂犬病防疫体制を緩める農水省「本末転倒」ぶり』でも話題で取り上げたばかりですが、正直、この手の「テレビ局としての(かなり偏った)意見」を読者、視聴者らに押し付けようとする報道には、個人的には大変な違和感を覚えます。。

日本は1950年に制定された狂犬病予防法に基づき、狂犬病清浄国となりました。この防疫に穴が開きそうになっています。テレビ朝日が先週報じた、「ウクライナからの避難民が連れて来た愛犬の待期期間で巨額の費用が発生している」とされる問題を受け、産経ニュースは昨日、農水省が特例措置を講じる方針だと述べたのです。本末転倒とは、まさにこのことでしょう。ウクライナ避難民の日本への入国・滞在ロシアによる違法なウクライナ侵略で、ウクライナで大勢の方が犠牲となり、また、大勢の方が住まいを失うという事態が生じていること...
報道で狂犬病防疫体制を緩める農水省「本末転倒」ぶり - 新宿会計士の政治経済評論

実際、このテレ朝の記事でも、ウクライナ大使館に折り鶴を送ろうとして断念したこの人物が「『折り鶴を意味のない行為』と批判する声に疑問を感じ」ている、などと報じているのですが、おそらくテレビ朝日のスタンスは、「折り鶴は意味のない行為だと批判する意見」に対し批判的なのでしょう。

くどいようですが、SNSなどで批判が殺到している論点は、「相手が欲しがっていない物を送り付ける行為」に対して、であり、「折り鶴を折ること」に対して、ではありません。もしどうしても鶴を折りたいのであれば、自由に折れば良い話です(相手に送るかどうかは別として)。

読者コメントが鋭い!

その一方、この記事を読む大きな意味は、その読者コメントにあります。

この記事に対しては昨晩時点で7000件近くのコメントが付されており、高評価コメントのほとんどは、「ウクライナ大使館に折り鶴を送ろうとする人」に対して批判的なものでしたが、そのなかでもとくに秀逸だと感じたのが、こんな趣旨のコメントです。

記事のなかで『折り鶴を折ることによってウクライナの話をしながら思いを寄せる』、という発言があるが、これは結局、自分のためではないか。千羽鶴を否定するつもりはないが、そうやってウクライナに思いを寄せて作った折り鶴は、ぜひ手元に置いて毎日眺め、平和を祈ってほしい。それを捨てるタイミングについて悩むことになると思うが、それについてもぜひ作成者自身で考えてみてほしい」。

なかなかに強烈な指摘です。

「折り鶴は相手のための行為ではなく、結局は自分のための行為である」。

「折り鶴を送ることは、それを捨てるタイミングに関する悩みを相手に押し付けることでもある」。

まったくそのとおりでしょう。

ほかにも、「祈りが込められているだけに、下手に捨てることができない」、「折り鶴を折ってくれた人の心を無碍にしたくないという気持ちが被災者の優しい心に重荷を負わせることになる」、「文化も異なる外国の大使館に折り鶴というかたちで気持ちは届くのか」、といった指摘もありました。

著者自身が見たところ、少なくともこれらのコメントはすべて「折り鶴自体」を無碍に否定しておらず、むしろ折り鶴を折る人の気持ちに寄り添いつつも、それを「相手に送る」という行為が「相手にとっての負担になる」ということを、やさしく教え諭すようなものばかりです。これのいったいどこが「強い攻撃」なのでしょうか?

(※いや、むしろ、ズバズバと本質的なところを指摘されているからこそ、「強い攻撃」だと感じているのかもしれませんが…。)

贈るなら現金一択!

もうひとつ、くどいようですが、「贈るならば現金が一番」です。

著者自身も東日本大震災では日本赤十字社に寄付をしたクチですが、もしも本当に「困っているウクライナの人々を支援する」のであれば、次の口座に現金を振り込んだ方がはるかに有意義です。

  • 三菱UFJ銀行・広尾支店(047) 普通 0972597
  • 名義人:エンバシーオブウクライナ

あるいは、日本赤十字社も『ウクライナ人道危機救援金』を設けています。

  • ゆうちょ銀行…口座番号 00110-2-5606
  • 三井住友銀行…すずらん支店 普通 2787781
  • 三菱UFJ銀行…やまびこ支店 普通 2105784
  • みずほ銀行…クヌギ支店 普通  0623471
  • ※口座名義人はいずれも「日本赤十字社」

なお、ツイッター上では、「ウクライナ折り鶴」の話題に対し、「どうせ折るのなら、大量に折ってロシア大使館に送りつけてはどうか」、といった指摘も出ているようですが、これはこれでアリかもしれない、などと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (28)

  • ウクライナ色の千羽鶴を、ロシア大使館へ数千万数百万単位で送り付けて千羽鶴による飽和攻撃をしては如何でしょうか?大使館前に放置された鶴に火が付くことは絶対に避けなければいけませんが。

    • まさにランダムでスパム認定されています。本日のコメントは8割くらいが勝手にスパムになっているようです。

      • 贈りたい人がいて、受け取る側が快く受け取れるんなら、それはそれで良いんだろうとは思うのです♪

        保井氏から記者に持ちかけたのか、そういうことなく記者が何かで知ったのか、記事になった経緯はわかんないけど・・・
        こういうことって、当事者同士の気持ちが大事だと思うので、千羽鶴を作ってウクライナ大使館に受け入れの打診をして、OKを貰うのを待ってから、記事にすれば良いのになって思ったのです♪

        • ゆみ様、よぴ2628様

          上のコメントですが、操作ミスでよぴ2628様の返信にしちゃったのです♪

          おふたりの議論に割って入るつもりはなかったのです♪

          ごめんなさいなのです m(_ _)m

  • 「誰だ?ウクライナの公館の折り鶴を傷つけたのは?」又、サンゴのように自作自演で訴えそうで怖くなる朝日新聞社の左翼ぶり。

    こんな新聞を取る日本人が居ること自体に胸が痛みます・・。

  • 私はこの問題について
    複雑な思いを感じています。

    新宿会計士さまや多くの国民が感じる、
    受け取る側ではなく送りて側の思いからの
    千羽X複数もの送付はそれってどうなの?
    受け手が必要とするのは今それじゃないでしょ?
    との意見には、
    まったく異論はなく同意見です。
    また、寄贈を断念した方のコメントは
    控えめだけどたしかに『反撃的』なニュアンスも
    若干は感じられる気もします。

    大量の千羽鶴の寄贈は、
    それを好んで記事に取り上げてきた
    日本のマスコミが牽引したものと感じます。
    また、千羽鶴プロジェクトを
    主導してきた人たちもマスコミに
    取り上げてもらうことに気が行って、
    肝心の受け手側に配慮がなされていなかったことに
    気付かされるよい機会だとも感じてはいます。

    ただ、私が最初に複雑だと申しあげたのは、
    プロジェクト自体の良し悪しの点ではありません

    先日参列した葬儀の親族控室で、
    泣きぬれていた子どもたちが、
    年長の子に教えられて涙を拭って
    棺に入れる鶴を懸命に追っている姿を
    目にして私も温かい思いで涙しました。
    鶴を折った子どもたちと、
    そこで培われる子どもたちの気持ちの大切さは
    論をまたないものです。
    この問題の議論においては、
    そうしたことに配慮して言及することが
    ほしいなあと感じているのです。

    お調子者三文ライター古市氏には
    その配慮が見かけられない点が残念です。
    そうした配慮がない主張は、
    大量千羽鶴寄贈プロジェクトリーダーと同じ、
    配慮不足という大きな問題があるとも気になります。

  • ひとそれぞれの考えがあります。
    決して(折り鶴を)毛嫌いするのではありませんが、
    現金が1番に1票です。

    蛇足です。
    ひとそれぞれの考えがあります。
    例えばですが、(名前の一部分を伏字にします。)アッ○ーさんのご意見には賛成出来ませんが、ひとそれぞれの考えが有っても良いと、思っています。ココでは○ッキーさんの意見に反対の人々が多数とは思いますが……。以下省略。

  • 良心的テロ行為?>折り鶴送付
    折り鶴を折らせようとしている団体の背景を考えると…
    (おっと、誰かが来たようだ)

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