自称元慰安婦のひとりが昨日、「次期大統領が問題解決を約束した」と発言したそうです。「解決」もなにも、日韓両国政府間では2015年12月の慰安婦合意で最終的かつ不可逆的に「解決」している話ですし、なにより自称元慰安婦問題自体、むしろその本質は、「ありもしない罪をでっち上げ、日本国と日本人の名誉と尊厳を傷つけている問題」でしょう。
慰安婦問題の構成要素
自称元慰安婦問題は、自称元徴用工問題と並ぶ「日韓諸懸案」のはしらのひとつです。
といっても、この問題は少々構造が複雑です。というのも、そもそも自称元慰安婦問題が「事実なのかどうか」という論点と、「日韓両国政府間で解決がついているのかどうか」という論点の、2つに分けて論じなければならないからです。
このうち前者については、日本政府(とくに外務省や宮澤喜一、河野洋平ら)にも、極めて大きな責任があります。
そもそも論ですが、韓国側が主張している「慰安婦問題」の構成要素を丁寧に読み解くと、だいたい次のような構成要素に分解することができます。
慰安婦問題の構成要素
- ①戦時中(=1941年12月9日~1945年8月15日の期間)
- ②日本軍が正式な決定に基づき
- ③朝鮮半島で少女20万人を強制的に拉致し
- ④本人の意に反して戦場に連行して性的奴隷として使役した
(【出所】著者作成)
実際は韓国による日本への誣告(ぶこく)
事実だとしたら、とんでもない人権侵害であり、日本軍による犯罪のようなものだと指弾されても文句はいえないかもしれません。
ただ、これが「事実でない」としたら、どうなるか――。
この①~④の構成要素のうち、どこかにウソが紛れていた場合は、この自称元慰安婦問題は、逆に「韓国による日本に対するいわれもない誣告(ぶこく)」に転化するのです。とくに、韓国の市民団体などが、全世界で慰安婦像を設置し、虚偽の歴史を広めていること自体、一種の「民族ヘイト」のようなものでしょう。
そして、この①~④については、それらが事実であることを裏付ける「物証」がただの1つもありません。そこにあるのは自称元慰安婦らの「証言」と、それから政治的な決着として日本政府が発した『談話』だけです。
いや、むしろ「証言」を丹念に追っていくと、自称元慰安婦のうちのひとりは、1993年ごろには「赤い靴とワンピースを見てついていった」と証言していたのに、2000年ごろには「日本の軍人に連れていかれた」と証言を変えているのだそうです(『「反日種族主義」著者、慰安婦強制連行説の崩壊を予想』等参照)。
李宇衍氏の予想は若干楽観的だが、それでも現状は日本にとり悪いものではないこのところ韓国メディアを眺めていると、慰安婦問題を巡るハーバード大学の「ラムザイヤー論考」が取り上げられない日は、ほとんどありません。ただ、彼らが騒げば騒ぐほど、じつは日本にとって悪い話ではありません。というのも、「慰安婦=利権」説に基づけば、利権の恩恵を受けている者(=韓国)自身が騒げば騒ぐほど、利権はむしろ崩壊に向かう可能性もあるからです。2021/03/07 08:00追記記事リード文の書式設定に誤りがありましたので訂正しています... 「反日種族主義」著者、慰安婦強制連行説の崩壊を予想 - 新宿会計士の政治経済評論 |
また、宮澤喜一内閣で官房長官を務めていた河野洋平が1993年に発した『河野談話』に盛り込まれていた「当時の軍の関与の下で」という表現が、上記③を除く自称元慰安婦問題の構成要素の間接的な証拠として取り扱われています。
しかし、この談話自体も歴史的事実に基づいて出てきたものではなく、たんなる政治的な判断(というよりも宮澤喜一や河野洋平の安易な妥協)の結果出てきたものであり、その意味では、自称元慰安婦問題がここまで世界中に広まってしまったことの責任の一端は、間違いなく日本政府にもあるのです。
国家間では間違いなく「解決済み」
もっとも、自称元慰安婦問題を巡っては、もうひとつ、「日韓両国政府間では最終的かつ不可逆的に解決済みである」という側面があることを見逃してはなりません。
安倍晋三総理の時代、岸田文雄外相(※当時)が韓国を訪れ、尹炳世(いん・へいせい)韓国外交部長官(※当時)との間で、いわゆる「日韓慰安婦合意」を取り交わしてきました。
【参考】いわゆる「日韓慰安婦合意」(2015年12月28日)のポイント
- ①慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感し、安倍晋三総理大臣は日本国を代表して心からおわびと反省の気持ちを表明する。
- ②韓国政府は元慰安婦の支援を目的とした財団を設立し、日本政府はその財団に対し、政府予算から10億円を一括で拠出する。
- ③韓国政府は在韓国日本大使館前に慰安婦像が設置されている問題を巡って、適切に解決されるように努力する。
- ④上記②の措置が実施されるとの前提で、日韓両国政府は、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されたことを確認し、あわせて本問題について、国連等国際社会において互いに非難・批判することを控える。
(【出所】外務省HP『日韓外相会談』より著者作成)
具体的には、安倍晋三総理が日本国を代表して元慰安婦らに対し、「心からお詫びと反省の気持ち」を表明し、あわせて韓国政府が設立する財団に日本政府が政府予算から10億円を一括拠出するという措置を実行することで、日韓両国政府はこの問題が最終的かつ不可逆的に解決されたことを確認したのです。
あわせて韓国側は、ソウルの日本大使館前の公道上に慰安婦像が設置されている問題(※もちろん、国際法違反です)を「適切に解決されるよう努力する」義務を負ったのですが、これについては現在に至るまで解決されていないというのも、ひとつの重要なポイントでしょう。
慰安婦合意を反故にした韓国
そして、朴槿恵(ぼく・きんけい)前大統領が2017年3月に弾劾で罷免され、同年5月に文在寅(ぶん・ざいいん)政権が発足するやいなや、韓国側はこの合意をさっそく反故にし始めます。
具体的には、同年12月には「慰安婦合意検証タスクフォース(TF)」が日本政府の了解なく、慰安婦合意形成に係る外交文書を勝手に公表。さらには、「和解・癒やし財団」についても、日本政府の了解なく、一方的に解散してしまいました。
つまり、現在の状況は慰安婦合意という国家間の約束を、韓国が破り、踏みにじっている、ということです。
また、文在寅政権下で日韓・日米韓協力が停滞してしまいましたが、これに関して米国が日本に対し、「韓国に譲歩しろ」という圧力をかけづらいのも、結局は米国自身が当事者となった慰安婦合意を韓国が破った、という事実があるからです。
日本にとっての、慰安婦合意の3つの効果
- 米国に対し、日韓関係に口出ししないように要求することができるようになった
- 慰安婦問題が韓国の国内問題に変化した
- 韓国との約束はあっけなく破られるという前例を国際社会や日本国民に見せつけた
(【出所】著者作成)
日本政府は現時点において、「合意の着実な履行が必要だ」とする姿勢を崩していませんが、韓国がこの合意を再び履行するためには、いったん解散してしまった財団をもう一度設立登記したうえで、日本大使館前の慰安婦像を強制撤去するくらいの措置が必要でしょう。
はたして、尹錫悦(いん・しゃくえつ)次期大統領に、これができるのでしょうか。
自称元慰安婦「次期大統領が問題解決を約束」
こうしたなか、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)に今朝、こんな記事が出ていました。
韓国慰安婦被害者「次期大統領が問題解決を約束」
―――2022.03.18 08:25付 聯合ニュース日本語版より
聯合ニュースによると、自称元慰安婦の1人が17日、ソウル市内で会見し、尹錫悦氏と昨年9月に面会した際「私が慰安婦問題を必ず解決してほしいと呼びかけたら『はい』と約束した。日本の謝罪を必ず引き出すとした」と述べた、というのです。
「解決」もなにも、いわゆる慰安婦問題に関しては日韓両政府間では「最終的かつ不可逆的に」解決済みですし、日本はむしろ、「ウソの問題を世界中で喧伝し、日本国と日本人の名誉と尊厳を傷つけてきたこと」に対する落とし前を付けてもらう側でもあります。
聯合ニュースはこの自称元慰安婦の会見が「慰安婦問題の国際司法裁判所(ICJ)への付託を目指す市民団体・日本軍慰安婦問題ICJ付託推進委員会の主催で行われた」としていますが、むしろこの機会に、慰安婦問題を巡っては客観的事実関係を国際社会で徹底的に明らかにすべきではないでしょうか。
慰安婦問題が30年という年月をかけて国際社会に「事実」として定着した以上、それを覆すにも、下手をすると同じくらい、あるいはそれ以上の時間がかかるかもしれません。少なくとも岸田文雄首相が任期満了その他の理由で辞任するくらいまでの時間に決着を見るということはないでしょう。
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こりゃ、うっかり返事をしようものなら、約束した!了解をとった!、、になりかねない。日本政府は国際法を守れ!約束を守れ!貸したカネ返せ!を頑なに主張していればよいのだ。韓国は経済崩壊も近い。コロナ感染も酷い。少子化もとまらない。日本のカネが欲しい。援助がほしい。スワップやりたい。だからうっかり返事などしようものなら、約束したじゃないか!なんて言い出しかねない。なので触らぬ神に祟りなし!無視、スルーをするに限る!
まあイ・ヨンスですからね。「民間業者の甘言に乗せられた」と言ったり、「軍人が夜半に押し入り刃を突き付けて連行された」と言ったり、息を吐くように嘘をつくことを何とも思わない人ですよ。そういえば、尹美香(ユン・ミヒャン)も「彼女は慰安婦ではない」と言ってましたっけ。放っておきましょう。でもなんで韓国では未だに影響力があるのか、不思議な気がします(所詮、韓国人の考えることは理解できない)。
あの人どう見ても90代には見えない。
ちょくちょく年齢を変えてるみたいだけど。
昨日と同じコメントになりますが、
『韓国には「構造的反日」が存在し、それが大統領や政府を拘束するから、悪化する事は有っても、関係改善する事は、無いでしょう』。
ICJへの付託は竹島問題にも門戸を開くことになるんですけどいいんでしょうか?
あゝ、「証言だけでは立証要件を満たさない」と門前払いされる前提なのか・・。
日本軍慰安婦と自称している人の多くは
朝鮮戦争時の慰安婦だっけ?
野戦郵便局や横浜正金銀行に口座を設立し、千円あれば大邱に家が建てられるという時代に、何千円という金を預けていた ← これが韓国人たちが主張している従軍慰安婦たちの正体でした。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/06140557/?all=1&msclkid=cbad0d67a67011ecb0e75349bd1a6378
「法には従うが人には従わない」と啖呵を切った尹次期大統領(予定)が、「最終的かつ不可逆に解決」という国家間合意を前に、どのような姿勢に出るのかが、唯一にして最大のポイントじゃないでしょうかね。彼がその信念に従うのであれば、問題は既に韓国国内の問題でしかないことを認めざるを得なくなりますし、結局「国民情緒法」には逆らえないのだとしたら、所詮はそれまでの人だったということです。
まあ、彼も韓国人ですからねえ。
仰る通りだと思います。「国民情緒法」なんてものはあってはならないと国民を説得するのが酷吏である彼の仕事です。
合意を反故にした韓国じゃなくて、反故にされた日本でしょ
普通の国ならされないね
日本みたいなまぬけが特別でしょ
検事時代の尹錫悦氏は、相手が保守派であろうが左派であろうが、「法」のみに従い、「法」に違反した人々は、容赦なくバッサバッサと斬り倒していれば良かったのです。常日頃「法」に従う習慣のない国民には、稀有な存在に映ったと思います。
そして、「『法』のみに従い、『法』に違反した人々は、容赦なくバッサバッサと斬り倒す」というのは、ある意味「単純労務作業」です。
しかし、政治家(大統領)になった場合には、同じ「単純労務作業」を続ける訳にはいきません。自称元日本軍性奴隷のお婆さん達を「『法』のみに従い、『法』に違反した人々は、容赦なくバッサバッサと斬り倒す」ということは、即ち、彼女らに対して「この問題は、国際法的には日韓請求権協定と日韓慰安婦合意により既に解決済みの問題で、日本政府にこれ以上要求できることは何も無い。」と宣告することになりますし、自称元徴用工の人々に対しても同じ対応をすることになります。
残念ながら、これでは政治家としては完全に失格であり、「ろうそくデモ」でたちまち辞任に追い込まれることになるでしょう。
では、長年、愚直に「単純労務作業」のみを繰り返してきた尹錫悦氏に、複雑で難解な政治家の仕事を見事にこなしていける能力が備わっているのでしょうか。私には、とてもそうは思えません。
法律的には「解決済み」の問題を「必ず(お婆さん達の希望する方向で)解決する」と約束した時点で、この問題が「解決しない」ことが確定しましたが、尹錫悦新大統領がどのように「解決する」のか、楽しみにしたいと思います。
問題解決って
「そんな問題は既に存在しない!」
も解決ですよね。