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韓国大統領候補「徴用工解決策は日本側が見出すべき」

今月実施される韓国大統領選の有力候補である李在明(り・ざいめい)氏のインタビューが、共同通信に昨日掲載されました。李在明氏は「韓日諸懸案の包括的解決を」、「徴用工問題は日本が解決策を出すべき」、「慰安婦問題を含めた歴史問題で日本は謝罪を」などと述べたのだそうです。

今月は韓国大統領選…だれが当選しても前途多難な日韓関係

早いもので、今日から3月です。

そして、3月といえば、来週、韓国で大統領選が行われます。

現在のところ、有力候補は「左派政党」とされる与党「ともに民主党」の公認を受けている李在明(り・ざいめい)氏と、「保守政党」とされる野党「国民の力」の公認を受けている尹錫悦(いん・しゃくえつ)氏の2名でしょう。

しかし、韓国メディアの報道等によれば、現時点でも両者の支持率は接戦が続いているようであり、両名のうちいずれが当選するのか、あるいは両名以外の人物が当選するのかを巡っては、選挙直前になってもまだ情勢が読めません。

ただし、『日韓諸懸案「密室化」を許さなくなった日本の国民世論』などを含め、これまでに当ウェブサイトではかなり詳しく議論してきたとおり、「左派政治家だったら反日」、「保守政治家だったら親日」、といったシンプルなものではないことだけは間違いありません。

竹島問題がツイッターで大々的に注目を集める時代に!韓国・文在寅政権が末期を迎えるなか、日韓諸懸案を巡って、重要な変化が出て来ました。日本の国民世論というファクターです。これまでの日韓外交では、「韓国が主張し、日本が折れる」というパターンが多かったのですが、社会がインターネット化したことにともない、日本の国民世論が、「日本が折れたら済む」といった安易な考え方を許さなくなり始めているのです。その最近の実例が、竹島問題や佐渡金山世界遺産推薦でしょう。竹島問題を振り返る竹島問題を巡る不見識竹島問題と...
日韓諸懸案「密室化」を許さなくなった日本の国民世論 - 新宿会計士の政治経済評論

「保守派なら親日」、というわけではない

日韓関係といえば、2017年5月に発足した文在寅(ぶん・ざいいん)政権の行動があまりにも印象深かったためか、「反日の文在寅政権下で日韓関係が悪化した」、などと考える人も多いのですが、そもそも論として、文在寅政権以前からすでに日韓関係が冷え込んでいた事実を思い出しておく必要があります。

文在寅氏の前任者である朴槿恵(ぼく・きんけい)前大統領は、朴正煕(ぼく・せいき)の娘という事情もあり、韓国国内では「強硬な保守派」とみなされていたようですが、その朴槿恵政権の時代を通じ、韓国の親中路線が強力に進められました。

これに加え、日本に対しては「▼安倍晋三総理との首脳会談の拒絶、▼2015年の安倍総理の米上下両院合同演説に対する韓国国会の非難決議、▼明治期の産業革命関連施設の世界遺産登録妨害」――、などの行動がとられました。

さらに、朴槿恵前大統領のさらに前任者で、同じく韓国国内では「保守派」と見られていた李明博(り・めいはく)元大統領に至っては、政権末期の2012年8月に島根県竹島に不法上陸し、天皇陛下を侮辱し、野田佳彦首相(当時)の親書を郵送で返送するという無礼を働きました。

野田佳彦政権が2011年10月には日韓通貨スワップの規模を700億ドル相当にまで拡大してあげるなど、韓国を全力で支援したにも関わらず、です。

このように考えていくと、たしかに文在寅政権下で日本に対するさまざまな不法行為が発生したことは間違いないにせよ、「文在寅政権以前」の日韓関係が良好だったのかと言われれば、これに関しては極めて疑問でもあるのです。

李在明氏、「包括的解決」「解決策は日本が考えよ」

その一方で、共同通信に昨日、こんな記事が掲載されていました。

早期に日韓首脳会談の用意李候補、歴史問題で厳しい姿勢

―――2022/2/28 10:17付 共同通信より

リンク先の記事は大変に短いものですが、李在明氏が共同通信の単独書面インタビューに応じた、とするもので、李在明氏の回答内容は次のようなものです。

  • 当選すればすぐ日韓首脳会談を推進し懸案の包括的解決に向けた対話に乗り出す用意がある
  • (自称)元徴用工問題で解決方法は日本政府が見出すべきで、韓国政府に要求するのは正しくない
  • (自称)元慰安婦問題も含めた歴史問題で日本は謝罪すべきだ

…。

なかなかに、強烈な内容です。

そもそも日韓諸懸案の「包括的解決」と述べている時点で、論外です。竹島不法占拠問題にせよ、自称元徴用工判決問題にせよ、慰安婦合意破りにせよ、個別の問題があまりにも大きすぎますし、日本が韓国に譲歩することができる問題はひとつもありません。

韓国がこれらひとつひとつの問題を巡り、「国際法・約束・条約を守る方向」で丁寧に対処してくれなければ、日本にとってはどうしようもできないものばかりなのです。

さらに、自称元徴用工問題を巡っては、2019年の時点で、日本政府はすでに日韓請求権協定に基づく外交的協議や国際仲裁手続への付託を試み、韓国側がこれを拒絶したことで失敗に終わっている、という事実を忘れてはなりません(『「河野太郎、キレる!」新たな河野談話と日韓関係』等参照)。

先ほど「速報」として、河野太郎外務大臣の談話を紹介しましたが、その続きとして、談話、記者会見、河野氏と駐日韓国大使との面談についても紹介しておきます。とくに、河野氏と駐日韓国大使の面談については、産経ニュースが動画サイト『YouTube』にアップロードしているのですが、その内容を確認すると、河野氏がカメラの前であるにも関わらず、韓国側の「基金案」に対し、通訳を遮り、「ちょっと待っていただきたい」などと激高するなど、さまざまな面で異例ずくめです。河野大臣の発言河野大臣の談話河野太郎外相は先ほど、韓国の...
「河野太郎、キレる!」新たな河野談話と日韓関係 - 新宿会計士の政治経済評論

むしろ歴史問題を主張すること自体が不当では?

もっと言えば、普段から申し上げているとおり、自称元徴用工・慰安婦問題を筆頭とする歴史問題には、だいたい次の2つの特徴のいずれかまたは両方が内在しています。

日韓歴史問題の2つの特徴
  • 日韓間の請求権に関するあらゆる問題は、1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決済みであり、韓国が歴史問題を主張することは、この請求権協定に反する状態を創り出そうとするものである
  • 韓国側が主張する「被害」の多くは、(おそらくは)韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである

(【出所】著者作成)

すなわち、「包括的解決」と言い出すのならば、すでに1945年8月15日以前の日韓間のあらゆる請求権に関する問題は、1965年の日韓請求権協定で「包括的に」解決済みであり、したがって、そもそも日韓間に歴史問題など存在しないものです。

また、1965年の協定を再交渉しようと思うのであれば、日本が1945年8月15日以前に朝鮮半島に残してきた多大なインフラ投資の費用を韓国に請求しなければなりませんし、場合によっては1965年以降、日本が韓国に与えてきた莫大な支援についても、お返ししていただく必要があるでしょう。

余談ついでに申し上げるならば、本来ならば韓国が日本に対し歴史問題を主張すること自体、日本に対し不当な負担をかけているのと同じでしょうから、むしろそのコストについてもキッチリ請求すべきではないか、といった議論も成り立つように思えてなりません。

日韓首脳会談断絶の時代が到来か?

いずれにせよ、少なくとも竹島不法占拠問題、自称元徴用工判決問題、自称元慰安婦問題などを巡っては、日韓問題に関心を持つ日本国民の多くは、どれも「日韓間の問題」ではなく「韓国の問題」と認識しているのではないかと思います。

仮に李在明氏が当選したとしても、「包括的に解決すべき」であるとともに「日本が解決策を示すべきだ」、では、まともな首相の場合、おいそれと日韓首脳会談に応じることはできないでしょう。そんな人物と「会う」こと自体、政治的リスクが高すぎるからです。

その意味では、「李在明大統領」が実現した場合、下手をすると日韓間では首脳会談すらまともに開催されなくなる、という可能性もあるのかもしれない、と思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (17)

  • 嫌韓派の私にとって、今回の韓国大統領選挙ほど面白い見世物はありません。政策そこのけの中傷・暴露合戦、有力候補から次々出てくる失言、保守・革新による”党派の争い”など、韓国民の民主主義の成熟度をあらわにするものと、楽しんでおります。そのなかで、どちらが勝っても日韓関係は当面大きく変わらないと考え、1年以上前からイ・ジェミョン推しです。彼が勝てば、既に危機に瀕している米韓関係はさらに冷却化し、その結果中国は更に露骨に韓国を見下してくると予想しています。その彼が混戦を抜け出すために、従来以上の反日姿勢を明らかにした。いいことじゃないですか!それで日本政府の対応が変わるはずもなく何の悪影響もありません。この発言が韓国民に評価され、彼が勝ちぬくことを期待してやみません。頑張れイ・ジェミョン!あと8日だ。ここが正念場だ!!

  • 楽韓さんところでも取り上げてますが、

    https://rakukan.net/article/485790914.html

    いやほんと、李在明政権となった韓国を観てみたいですね。

    懸念は、韓国からの経済難民の流入ですが、元宗主国の中国様に面倒を見て貰って欲しいものです。

    香港の時はシンガポールへ退避する香港人が多かったそうですが、どれほどの韓国民シンガポールへ逃げ出しますかねぇ…。

    • シンガポールもさることながら、カナダにも多くの香港人が逃げました。もう20年近く前に見た話なので、最近の様子は不明ですが、バンクーバー空港の南側、リッチモンドのあたりはリトル香港と化してました。その頃、世界で一番広東料理が美味いのはバンクーバーだという説も流れていたくらいで、確かに林立する中華料理屋のレベルは香港と遜色ありませんでしたし、店員とのやり取りも全部広東語でOKでした。
      まあ、香港人はそこそこ英語ができる人が多かったのでそういう逃げ方もできたんでしょうが、さて、韓国人はどうでしょうねえ?

      ちなみに、シンガポールは英語 or 福建語の国です。

      • 龍 さん

        ありがとうございます。

        韓国も自称・英語強国なので、きっと大丈夫だと思います!

  • >仮に李在明氏が当選したとしても、「包括的に解決すべき」であるとともに「日本が解決策を示すべきだ」

    大統領選挙が近づいてますので「大ボラ」の一つでしょう。当選すれば、擦り寄って来る可能性もあります。

    >日韓間では首脳会談すらまともに開催されなくなる、という可能性もあるのかもしれない

    今と何も変わらないでしょう。

  • 欧州でことが起こっている中、ほっこりしますね。(笑)
    一つ覚えのセリフを使い回してるだけですな。

    • 元ジェネラリスト様

      もしかしたら…
      解決は日本でやっていいって丸投げですかね?

      「じゃ!とっくに解決済み!以後口にするな!」
      「韓国司法判断なんて無効!」

      って宣言するの期待されてますかね?
      もう、自己再建不可能なところまで来てる気もしますし。

  • 別記事で、文大統領がロシア制裁とウクライナ人道支援を指示したとか。韓国的にはロシアの敗北が近いと思ったのかな。さすがの蝙蝠国家。むしろ韓国が支持する方が負けるという「Kの法則」がまた証明されたようにも思えます。そこで李候補です。ウクライナをあんなに怒らせて、世界からバカにされて、あーあ、大統領になるところを見てみたい。

  • いつも通りの発言なので安心感がありますね。
    我々も間違っていた、などと発言されると何か裏があるのではと疑ってしまいます。
    あり得ませんけど。
    今の路線で頑張って頂きたいです。

  • 膠着状態は、"より困る方"が折れることで打開されるもの。
    彼は、日本の方が困ってると信じて疑わないんでしょうね。

  • 韓国は相変わらずだ、と言ってしまえばそれまでですが……韓国大統領を目指す様な人物が
    「条約に従い、日本との約束を守らなければならない、解決済みだと認めねばならない」
    なんて言える訳がないですからね。言ったらパク・クネと同じ末路に落ちるでしょう。
    だから”わざわざ国民からつるし上げられたくない”人物の発言としては妥当かと。

    今後も日韓関係は親韓派がこっそり足を洗いたくなる展開が続きそうですねえ。
    ロシアと中国の暴れっぷりによっては、それどころではなくなるかも知れませんが……

  • まだまだ生ぬるいなw
    当選を確実にするためには、もっと過激な反日しなきゃ(笑)
    李在明しっかりしろ!頑張れ!!

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