現代ビジネスというウェブサイトに先日、「帰国者の隔離が凄まじい」とする、政府の隔離政策を批判する記事が掲載されたようですが、これが逆の意味で参考になります。というのも、日本政府の隔離措置自体がきわめて人道的であり、また、配慮が行き届いているということが、記事からはきちんと読み取れてしまうからです。
海外から帰国したAさん一家
海外に在住している著者自身の知り合いのAさんから先日、「日本に一時帰国した」と連絡がありました。
この知り合いによると、現在、日本人が外国から帰国する際には、さまざまな制限があるのだそうです。
たとえば、2段階の検査(現地で出国前の72時間以内に検査を受けたうえで、新型コロナウイルス検査証明を提出するのに加え、入国時にウィルス検査を受けること)に加え、スマホにアプリをインストールしなければならないなどの制限があります。
また、入国したら入国したで、出発国によっては、検疫所が指定する場所(国が借り上げている空港近くのホテルなど)で、最長10日間の待機が必要なのだとか。
(※ただし、どの国から入国したら何日の待機期間が必要か、といった条件については、日々変動するようですし、政府のウェブサイトも非常にわかり辛いようですが、現実に外国から帰国される方は厚労省『ワクチン接種証明書の「写し」の提出について』などのページをご参照ください。)
なんだか、ずいぶんと大変そうです。
なんでもAさんのケースでは、奥様のお父さまが体調を崩されたとかで、やむを得ず緊急帰国を決めたのだそうです。また、お子さんたちが通っている現地の学校でも、全面ウェブ授業に切り替わったため、日本の奥様の実家に居ながらにして、授業を受けることができるのだとか。
便利な時代になったものですね。
Aさん「日本では逮捕されない。天国だ」
ただ、やはり「待機期間中」は、家族4人でホテルの一室に閉じ込められたのだそうであり、「大変でしたね」と尋ねたところ、Aさんはこう言いました。
「たしかに大変でした。ですが、日本の場合は政府が狭いながらもちゃんとしたホテルを借り上げてくれていて、ホテルではちゃんと弁当や飲料などが提供されるし、お湯が出なくなることもないので、かなり快適に過ごせましたよ」。
いったいどういうことでしょうか。
Aさんが居住する国でも、やはり外国から入国した人は、政府が指定するホテルで強制待機扱いとなるとなるのだそうですが、これに加え、ホテルの自室から一歩でも出たら逮捕(!)され、さらに劣悪な場所に収容されるのだそうです。
また、政府が指定するホテルがわりと劣悪で、すぐにお湯が出なくなってしまうそうであり、「お湯が出ないぞ!」とフロントに文句を言おうにも、フロントはまったく対応してくれず(そもそも電話に出てくれないそうです)、仕方なしにフロントに直接出かけたらホテル側に通報されて逮捕される、というわけです。
酷い話ですね。
いずれにせよ、Aさんは「私が居住している国と比べたら、日本は天国みたいだ」などとおっしゃっていたのですが、たしかに日本では「待機者」が「逮捕」されることはありません。このあたりは、Aさんがいう「日本は天国」というのも、あくまでも相対的な比較によるものなのでしょう。
もっとも、Aさん自身は「ぜいたくをいえば、待機場所に指定されるホテルの部屋については、自費でアップグレードする仕組みが欲しい」、「食事については弁当ばかりだと飽きるのでウーバーイーツなどを認めてほしい」などの要望もないではなかったのだそうです。
ただ、基本的には政府が借り上げているホテルにも部屋は限られているでしょうから、このあたりはあくまでも「ぜいたくな要望」ということなのかもしれません。
現代ビジネスの記事では「帰国者の隔離が凄まじすぎる」
こうしたなか、『現代ビジネス』というウェブ評論サイトに先日、こんな記事が掲載されていました。
帰国者の隔離 東横インで行われる「朝食の配膳」「弁当の中身」「監視」が凄まじすぎる
―――2022.02.12付 現代ビジネスより
「東横イン」という実名を出したうえで、そのホテルでの「『朝食の配膳』、『弁当の中身』、『監視」などが凄まじすぎる」、と記載するなど、記事タイトルからして、なかなか強烈です。まるで東横インというホテルが著者の方に酷い扱いをしたかのような書きぶりですが、問題にならないのでしょうか?
現代ビジネスによると、この記事を執筆した人物は昨年12月に韓国から帰国した際、6日間の隔離を経験したのだそうですが、端的にいえば、「当たり前でしょう?」と言いたくなるような記述が次々と出て来ます。
「弁当の受け取りとゴミ出し以外、ドアを開けてはならない弁当の受け取りとゴミ出し以外、ドアを開けてはならない」。
→接触を避ける必要があるのですから、それも当たり前の話でしょう。
「煩わしいのはアナウンスだけではない。毎朝9時までに、体温や健康状態をスマホアプリのチャットで申告する必要がある。寝坊して申告しそびれると、フロントから電話で叩き起こされる」。
→寝坊して申告しそびれる方がおかしいのではないでしょうか。
「これ以外に『MySOS』というアプリによる健康状態申告も、帰国後14日間義務づけられている。1日3〜4回、朝から晩まで何度も位置情報を知らせなければならない」。
→これも「待機期間」の趣旨に照らし、当然としか言いようがないような気がします。
「さらに『MySOS』がBOT機能で電話を鳴らしてきて、部屋の背景とともに30秒間顔面を録画させられる。チャットアプリの申告だけで十分なはずなのに、複数のアプリでしつこく監視されるのが不愉快だ」。
→チャットアプリの申告だけでは不十分だからこそ、「部屋の背景とともに」30秒間録画する、という扱いではないかと思うのですが…。
「家族や友人知人からの差し入れや、ネット通販の取り寄せは認められている。ただし寿司や刺し身などナマ物や酒類が入っていないか、係員が中身を開封して検閲する(これまた不愉快極まりない)」。
→禁止品目が入っていないかをチェックするのは当然のことです。これに「不愉快極まりない」などとイチャモンを付けるという発想自体、なかなかに斬新です。
さらに驚いたのは、こんな記述です。
「隔離期間中、入居者はホテルの部屋から一歩も外に出ることが許されない。ためしにドアを開けて廊下をのぞこうとすると、センサーが感知してピーピー警告音が鳴る。廊下には監視カメラがついており、フロントでは何台もの大型モニターとにらめっこする警備員がいた。この状況下で、いったいどうすればホテルから脱出できるというのだろう。『SOS』を叫びたくなる」。
→そもそもまともな人であれば、待機期間中に待機場所であるホテルから「脱出する」という発想自体が浮かびません。正直、「センサーが感知してピーピー警告音が鳴る」のも、当然のことでしょう。
しかも、この6日間の隔離期間にかかる宿泊費、食事代などに関しては、いずれも入国者の負担はないそうであり、「税金でここまでしてもらっておきながら文句ばっかり」というのも、なかなか強烈です。
あれ?お弁当、おいしそうじゃないですか?
さらに驚くのは、同じ著者の方が執筆した、「海外から帰国した日本人が『東横イン』で『食べさせられる』弁当」が「衝撃的だ」とする記事です。
いま海外から帰国した日本人が「東横イン」で食べさせられる弁当 衝撃の中身をすべて見せよう
―――2022.02.12付 現代ビジネスより
ご興味があれば実際に読んでいただきたいのですが、若干野菜が不足しているような気はするものの、大変に美味しそうです。著者の方は普段から非常に良いものを召し上がっていらっしゃるのか、この食事がご不満なのだそうですが、世間一般の常識からすれば、決して悪いものではないとは思う次第です。
これらの記事はあくまでも記事執筆者の主観に基づく表現(「腹が立った」「衝撃の中身」「おそろしい場所へ来てしまった」など)で満ちており、政府の防疫措置の問題点などを建設的にレポートする、というものでもありません。
あるいは、この記事自体、わざと「炎上」させてページビュー(PV)を稼ぐという、新手の商法に基づくものなのでしょうか?なかなかに謎です。
いずれにせよ、逆説的な話かもしれませんが、両記事を読んでむしろ感じたのは、日本政府の隔離措置は非常に人道的であり、かつ、配慮が行き届いている、という点でしょう。
記事執筆者の意図するところとは真逆に、この記事を読んだの多くは、むしろ「日本政府の隔離措置はキッチリとしている」と安心し、「この措置を続けてほしい」などと感じるのではないかと思う次第です。
View Comments (21)
ジャーナリストにも松竹梅がおるのでしょうねぇ。韓国には何をしに出掛けてたのでしょうね?
ふっと思ってしまったのですが、この大板橋五郎氏なる人物、おかずにキムチが一度もついてなかった事に憤慨慷慨しちゃったのかもしれません。
それとドアの注意書きにハングル表記がなかったことにも。(笑)
憤慨慷慨 ×
憤慨 ○
失礼しました。
現代ビジネスのこの記事の執筆者は「大板橋 五郎」というそうですが、プロフィール無しです。
https://gendai.ismedia.jp/list/author/goroohitabashi
現代ビジネスには、何人かこういう執筆者がいます。だいたいクソ記事です。
名字も珍しいのが多いんですよね。なんなんでしょうねぇ。(棒)
「現代ビジネス編集部」って書けばいいのにと思います。
自分らの書いている記事がメチャクチャだという自覚があるのでしょう。悪質ですよ。
昨年の12月にも似た様な記事をだしていますね。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/90479
この時は、IPHONE6にアプリがインストールできずに、貸し出しの携帯に15,000円も払わされた、旧型のOSにも対応すべきだろう、とか主張して、それはアップル側がサポートをやめているからだよ、馬鹿なのこいつ?とか言われていましたね。
ってことは、その後、また韓国に行ってきて、帰国後の対応の文句を記事にしているってことになります。
暇なんでしょうね、現代ビジネスさん。かかった税金くらい負担しましょうね。
たびたび炎上記事を書いている「麹町文子」なる人物も、ペンネームではないかと疑われています。
https://gendai.ismedia.jp/list/author/ayakokojimachi
https://niconews55.com/koujimachicayako/
麹町が架空の人物との評判が広がったんで、新しい架空の人物を仕立てたんでしょうか?
しかし、麹町の次は板橋とは手抜きしすぎですね。記事もオヤジの愚痴レベルですが。
コンビニ弁当と異なり、毎日同じ弁当じゃないんでしょ?
私からすれば、贅沢すぎです。
ただ、チョットおしい事にビジネスホテルですから、
電子レンジが無いんですよね~。
あればお弁当を温めて食べれるのですが、食中毒?及び
置く場所・掃除問題等から設置されていなんです。
ホテル経営者の皆様にお願いします。
電子レンジの設置を(温める機能が付いただけでいいです)!!
こういう記事はヒュンダイビジネスだろ と思ったら
やっぱりヒュンダイビジネスだった
こういう記事に需要があるから 商売として成立しているのでしょう
むしろ こんな記事を誰も相手にしなくなる時代が来るといいですね
元記事最初に読んだとき唖然としたのが館内放送がやかましいことについての文句。
午前中はゆっくり休みたいし午後も昼寝してる時だってあるのに睡眠障害になる!健康になるためにホテルに隔離されているのか不健康になるために部屋にこもっているのかワケがわからなくなる
って事みたいなんですが、読んでる方がワケが分からなかったです。
一日どれだけ寝れば気がすむんだとか、入国者の隔離は健康になるためにするもんじゃないとか、よくこの記事公開したなとある意味感心しました。
>廊下には監視カメラがついており、フロントでは何台もの大型モニターとにらめっこする警備員がいた。この状況下で、いったいどうすればホテルから脱出できるというのだろう。『SOS』を叫びたくなる」。
この文面だと、脱出したいのに出来ないことに文句を言っているとしか思えない。
コロナ広めたいのに、脱出させないとはどういうことだ!
っていう本心が滲みでてるのかな
部屋から出れないのに、どうしてフロントの様子が分かるんだろう???
釣り記事でしょうね。…と信じたい。
あえて釣られてコメントしますが、空港職員、ホテル従業員や警備員、検疫官の至極当然の対応を「壮絶いじめ」やら「監視」やら「禁固刑」やら大げさに騒ぎ立て被害者ぶる姿は無様ですね。。。
韓国に出入りしているとそうなっちゃうのかなあ(暴論)。
>>韓国に出入りしているとそうなっちゃうのかなあ(暴論)。
さすがにこれはひどい思い付きコメントでした。。。
大変失礼しましたm(__)m撤回いたします。
IVD様。
至極当然の感想だと思います。
ワタシもアソコに出入すると、ソウナッチャイマス。
タナカ珈琲。 様
フォローありがとうございます。
ちょっと「深淵」を覗きすぎたかも知れません。。。
気を付けます。
当局がちゃんと仕事しているというのはとても喜ばしい話です。ただ、中には当局のやることなすこと全てにケチをつけ、文句を言わねば気が済まないという心の貧しい人が一定数はいるということも事実なんでしょうから、ガス抜きという意味でも、このような記事の需要もあるのでしょう。
それはそれとして、現在の水際対策方針で少々疑問なのは、留学生の入国を依然としてほぼ止めていることです。水際対策措置実施の意味は、海外からウィルスを持ち込むことを防ぐという点にあると思いますが、最低でも3か月以上の長期滞在を前提としている留学生の入国を止めている理由は何なんでしょう?
本文にあるような国費による手厚い隔離措置を留学希望者全員に実施するというのは、予算的にも、そしてなによりも物理的にも不可能であるというのはわかりますが、費用に関しては、一定程度本人負担とすることである程度カバーできるでしょう。物理的にも、一日当たりの入国者数の上限を管理可能な範囲とすればなんとかなるのではないかと思います。
留学生と言っても内情はいろいろなので、一律に開放するのはさすがにいかがなものかとは思いますが、例えば、大学院から始めて大学へと拡げ、最後に専門学校へという感じで、段階的に対象を拡大することをそろそろ考えても良いのではないでしょうか。
この記事を読んでふと思い浮かんだのが、今や懐かしいといった趣のある、あのダイヤモンドプリンセス号の一件。船内隔離を強いられた乗客が、何もかもないないづくし。持病の常備薬がキレると言っても対応してくれない。狭い船室で拘禁症状を呈する。状況を把握させてくれるアナウンスが一切ない、等など。まあ、途方もない非人道的状態に置かれているがごとき、報道に溢れていました。
しかし、後日下船した人の中に、自分たちがそういう目に遭っていたという報道内容に驚いて、船内の状況は、決してそんなものではなかった。同じく、あるいはより困難な立場に置かれながら乗客のために献身的なサービスに徹してくれた乗組員をはじめ、感染拡大防止のために入船した医療スタッフと自衛隊員の親切な対応、また少しでも状況を改善するため種々の調整に当たった横浜市役所、岸壁に集まり励まし続けた横浜市民など、感謝の言葉を贈るしかない。それは自分一人に留まらず、ほとんどの乗客の声だというメッセージを発した方がおられました。
どんなときにでも、例え客観的に評価すればそれが当然の措置ではあったとしても、少しでも気にくわなければ途方もない不当な扱いを受けたと大声で叫び、それをメディアに訴える人間が、まず真っ先に出てくる。それはまあ世のことわり、仕方がないとも言えるでしょう。しかし、それを受け取ったジャーナリズムの側が、そうしたものほど好んで取り上げているのではないか。真っ当な判断力を備えたひとの常識的な意見などは等閑視する傾向があるのではないか。何かそんな気がするはなしではありました。