X
    Categories: 外交

クアッドの存在は米国からの対韓譲歩圧力を緩和する?

「日米韓3ヵ国連携のために、日本がまた韓国に譲歩しなければならないのだとしたら」…?正直、あまり考えたくもないシナリオですが、「バイデン-岸田-尹錫悦」ラインが実現してしまった場合には、岸田政権が米国の「外圧」を受けつつ、韓国に妙な譲歩をさせられてしまうリスクもあります。こうしたリスクを軽減する方法はあるのでしょうか。

文在寅氏の強烈な発言

佐渡金山の世界遺産登録推進は「遺憾」=文在寅大統領』では、韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)大統領が日韓など複数社の合同書面インタビューで、次のように答えた、とする話題を取り上げました。

  • (日韓間懸案に関し)外交的に解決するため粘り強く努力してきたが、接点を見いだせておらず残念だ
  • 問題解決のためには、被害者が受け入れられる解決策でなければならず、歴史の前で誠意ある姿勢と心が最も重要だ
  • (佐渡金山の世界遺産登録推進は)歴史問題の解決と未来志向的な関係の発展を模索すべき時に憂慮すべきことだ
  • 日本の首相とのコミュニケーション(の窓)は常に開かれている

…。

これまた強烈な発言ですね。そして、大変恐縮ですが、文在寅氏にそれを言う資格があるとも思えません。

金融評論家が運営する独立系ウェブ評論サイト
新宿会計士の政治経済評論 - 新宿会計士の政治経済評論

自称元徴用工判決問題、火器管制レーダー照射事件、慰安婦合意破りなどを含め、そもそも現在の日韓諸懸案の多くは文在寅政権下で発生したものですし、しかも自称元徴用工判決に関しては、日本政府による外交協議、国際仲裁手続を無視したのは韓国の側でしょう。

もっと言えば、「問題解決のために誠心誠意努力しなければならない」のは日本の側ではなく韓国の側ですし、さらに最近の佐渡金山の世界遺産登録推進を巡っても、韓国が日本に対し、ありもしない「違法な強制徴用」というウソを述べていること自体が大変に由々しき話でもあります。

日韓首脳会談は?

文在寅氏は日韓首脳会談を望んでいた

ただ、個人的に、文在寅氏が言いたいことは、最後の「日本の首相とのコミュニケーションの窓は常に開かれている」、という部分ではないかとも考えています。

すなわち、日韓双方で首脳会談などを開き、「協議する」、ということ自体に、韓国が意味を見出している、という可能性です(あるいは、「どんな懸案でも首脳会談さえ開けば打開できる」、などと文在寅氏が勘違いしている可能性もありますが…)。

こうしたなか、当ウェブサイトでこれまで何度となく指摘したのが、「ゼロ対100理論」という考え方です。これは、自分たちの側に100%の過失がある場合であっても、さまざまなンチキ論法などを使い、過失割合を「50対50」、あわよくば「ゼロ対100」に持って行こうとする屁理屈のことです。

※ゼロ対100理論とは?

自分たちの側に100%の過失がある場合でも、インチキ外交の数々を駆使し、過失割合を「50対50」、あるいは「ゼロ対100」だと言い募るなど、まるで相手側にも落ち度があるかのように持っていく屁理屈のこと。

(【出所】著者作成)

たとえば、そもそもの2018年に違法判決を韓国の司法府が出したこと自体、過失は全面的に韓国側にありますが、これに対し「たしかに韓国も国際法に反しているかもしれないが(=韓国の過失割合50%)、日本も過去を真摯に反省していないじゃないか(=日本の過失割合50%)」、と言い募るようなものでしょう。

あるいは、もっと酷いケースでは、「そもそも日韓併合条約自体が違法なものであり(=日本の過失割合100%)、韓国の判決は日本が人道に反する犯罪を行ったことに対する措置に過ぎない(=韓国の過失割合ゼロ%)」、といった程度の低い屁理屈も見られるようです。

(※余談ですが、「そんなに自分たちの判決に自信があるのなら、国際司法裁判所(ICJ)にでも訴えてみたらよいのではないか」、という嫌味のひとつでも言いたい気持ちになりますが、そのわりに韓国政府は国際法に従った問題解決プロセスには極めて非協力的であるというのも興味深いところだと思わざるを得ません。)

諸懸案を放置するほど日韓関係が離れる

さて、その一方で、この自称元徴用工判決問題を含めた日韓諸懸案をこのまま放置しておくことは、韓国にとっては決して良い結果をもたらしません。今後、政府間、民間を問わず、日韓関係が全般的に停滞する原因になりかねないからです。

たとえば、すでに外交関係、防衛関係を含めた日韓両国政府間の協力は滞り始めています。

たとえば『外交青書:基本的価値の共有相手は韓国ではなく台湾だ』などでも報告したとおり、日本の外交は伝統的な「近隣国重視政策」から、昨年、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)に大きく舵を切りました。

FOIPを最優先にした日本外交が迎えた大きな転換点昨日の『日本政府、外交青書でFOIPから中韓を明らかに除外』で「速報」的に取り上げたとおり、今年の外交青書における最大のポイントは、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の優先順位が中韓よりも上位に来たことではないかと思います。まさに、日本外交にとっての転換点でしょう。外交青書から判明する「日本外交の転機」外務省が27日、『外交青書一覧』のページにおいて、『外交青書・令和3年版(※PDF版/大容量注意)』を公表したとする話題は、昨日の『日本政...
外交青書:基本的価値の共有相手は韓国ではなく台湾だ - 新宿会計士の政治経済評論

また、『ついに日韓ハイレベル防衛交流「ゼロ回」に=防衛白書』でも報告したとおり、近年、日韓の防衛当局者同士による「ハイレベル防衛交流」の回数が激減しています。

本稿は、速報です。ついに韓国との「ハイレベル交流実績」が「ゼロ回」になってしまいました。コロナ禍のために対話が停滞しているためなのか、それとも「それ以外の理由」があるのかはさておき、事実として、防衛省が本日公表した『令和3年版防衛白書』によれば、韓国は昨年4月からの1年間で「交流実績ゼロ」だったのです。「竹島」云々より、むしろこちらの方が重要なのかもしれませんね。ハイレベル交流実績以前の『ハイレベル防衛交流面でも大幅に後退していた日韓関係』で、過去数年分の防衛白書を確認したところ、韓国との「...
ついに日韓ハイレベル防衛交流「ゼロ回」に=防衛白書 - 新宿会計士の政治経済評論

さらには、民間企業同士の交流に関しては、現在のところ、目立ってブレーキがかかっているわけではありませんが、その一方で密かに、日本の産業にとっての韓国の「相対的な地位」が低下し始めています。

以前の『「日本の友人」である台湾が3番目の貿易相手国に浮上』で取り上げたとおり、日本にとっての貿易相手国として、2021年に韓国が「3番手」の地位を喪失し、「4番手」に沈んだことなどは、大変に象徴的な事象でしょう。

2021年の貿易統計で、輸出、輸入ともに台湾が韓国を上回った結果、台湾が日本にとっての3番目の貿易相手国に浮上しました。外務省は昨年の『外交青書』で、台湾を「基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人」と位置付けています。そんな大切な友人である台湾との関係が深まることは、日本にとっても重要な意味があります。貿易高で台湾が3番目に浮上ついに貿易高で台湾が「3番目の相手国」に浮上しました。財務省税関が先週金曜日に公表した『普通貿易統計』によれば、日本...
「日本の友人」である台湾が3番目の貿易相手国に浮上 - 新宿会計士の政治経済評論

韓国は、日本にとっての貿易相手国(輸出高+輸入高)に関しては、2001年以来、ずっと「第3位」の地位を維持してきたのですが、これが2021年に入って台湾と逆転してしまったのです(図表1)。

図表1-1 輸出高・台韓比較

図表1-2 輸入高・台韓比較

図表1-3 貿易高・台韓比較

(【出所】普通貿易統計より著者作成)

このあたり、地味ながらも非常に重要な変化といえるでしょう。

金融面では韓国はすでに「1%の国」

さらには、『日本の金融機関にとって韓国は「1%少々の国」だった』でも触れたのですが、日本の金融機関から見て、韓国に対する対外与信全体に対する構成割合は、低下の一途をたどっていることが確認できます(図表2)。

図表2 日本の金融機関の韓国に対する与信額と構成割合

(【出所】The Bank for International Settlements, Consolidated Banking Statistics より著者作成)

すなわち、日本の金融機関の対外与信全体が伸びているにも関わらず、韓国に対する与信額はまったく伸びていないため、日本の金融機関の韓国に対する与信額を対外与信全体で割ったシェアについては、結果的に下がり続けているのです。

「日本にとって韓国の重要性は1%少々だ」――。こう述べると、多くの人が反論するでしょう。「いや、韓国は日本にとって3番目ないし4番目の貿易相手国であり、切っても切れない関係にある」、と。しかし、「国際金融の面では」、日本にとって韓国が1%少々のシェアしかない国である、というのは、確たる統計的事実です。最終リスクベースで見て、日本の国際与信全体に占める韓国の割合は、1.05%なのです。外国に流れる日本のカネ土曜日の『日本から溢れ出た5兆ドルもの国際与信は欧米に向かう』では、以前から何度となく当ウェブ...
日本の金融機関にとって韓国は「1%少々の国」だった - 新宿会計士の政治経済評論

この点、韓国に対する与信シェアは、近年だと2012年12月に1.87%にまで上昇していたのですが、直近だと2021年9月末時点で日本の金融機関の対外与信全体に占める韓国のシェアは、1.05%に過ぎません。これが、「日本の金融機関にとって韓国は1%の国」、という意味です。

いずれにせよ、日韓首脳会談は2019年12月に開かれたきり、現在に至るまで1回も開かれていません(※もっとも、コロナ禍で対面会談を開くのが難しい、などの特殊要因もありますが…)。

日韓首脳会談の「予定なし」=官房長官

この点、隣国同士であるにも関わらず、首脳会談すら開かれないという状況は、ひと昔前から見れば「異常だ」という声が、日韓両国から上がっていたでしょう。

そして、文在寅氏が書面インタビューで日本に対し首脳会談の開催を呼びかけたというなかで、これに呼応し、河村建夫・前衆議院議員のような「親韓派」議員が日韓首脳会談を仲介しようとしゃしゃり出て来た可能性もあります。

ただ、昨年の衆院選で、河村氏は地元小選挙区で立候補を断念しました。林芳正・前参議院議員(現在の外相)が立候補すると表明したためです。

したがって、自民党内の「親韓派」の筆頭格のような存在だった河村氏が国会からいなくなり、いよいよ本格的に日韓の議員外交のパイプが消滅しかかっている、という可能性もあります。

こうした仮説を裏付けるのが、木曜日の官房長官記者会見です。

日韓首脳会談の予定ない=韓国大統領の対話呼びかけで官房長官

―――2022年2月10日17:43付 ロイターより

ロイターによると、文在寅氏が岸田文雄首相との対話を呼びかけた点に関連し、松野博一官房長官は10日午後の会見で、今後の首脳会談の予定は「何も決まっていない」と述べたのだそうです。

これも、ある意味では当然の話でしょう。

日韓のすれ違いと「尹錫悦リスク」

岸田首相は「親韓派」?

こうしたなか、一部の論者が、「岸田文雄(氏)は親中、親韓派だ」、「来年の参院選が終われば、どうせ韓国の大統領との首脳会談に応じ、またしても変な譲歩をするに決まっている」、などとする懸念を示していることもまた事実です。

この点、岸田氏が外相を務めていた2015年に軍艦島などの世界遺産登録や日韓慰安婦合意などで韓国に騙された人物だ、という点については、著者自身は憂慮していますが、それと同時に「岸田(氏)が親韓派だ」とする点には同意しません。

2015年に岸田氏が韓国に騙されたのは、「岸田氏が親韓派だったから」ではなく、単純に政治家の資質としての問題でしょう。

今回も佐渡金山の世界遺産登録で韓国との「交渉」に失敗するのではないか、といった懸念もあります(※)が、「好きこのんで韓国に譲歩する」という可能性は、さほど高くないと考えて良いと思います。

(※少しだけ余談ですが、著者自身は佐渡金山の世界遺産登録を巡って、「韓国とは絶対に交渉してはならない」、などと考えているのですが、これについては『やるなら徹底的に:佐渡金山登録を巡る3つのポイント』でも詳述していますので、本稿では割愛します。)

政府は昨日、佐渡金山の世界遺産登録推薦を閣議了解しました。やるなら徹底的にやるべきです。その際のポイントは、①ファクト(事実関係)をベースに、②全世界に対して説明し、③ウソを徹底的に粉砕する、というものです。そして、外務省などは穏便にことを済ませようとしているのかもしれませんが、残念ながらそれは不可能です。なぜなら相手も歴史プロパガンダで世界を騙そうとする気マンマンだからです。佐渡金山の世界遺産推薦を閣議了解日本政府が佐渡金山の世界遺産登録を推薦する方針を巡っては、週末の『佐渡金山世界遺産登録は...
やるなら徹底的に:佐渡金山登録を巡る3つのポイント - 新宿会計士の政治経済評論

というよりも、先日の『鈴置論考に見る文在寅政権の5年と「日韓関係の未来」』でも紹介したとおり、わが国を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏は『韓国は猿芝居外交のあげく四面楚歌に… 「文在寅」退任でも日韓関係は修復せず』という記事のなかで、次のように指摘しています。

一方、日本の保守の間には『岸田文雄政権は中国と韓国に弱腰』との警戒感が強まっていますから、妥協を引き出すのは安倍晋三政権や菅義偉政権の時より却って難しいかもしれません」。

その場しのぎの外交に終始した文在寅(ムン・ジェイン)政権の5年間。…
韓国は猿芝居外交のあげく四面楚歌に… 「文在寅」退任でも日韓関係は修復せず | ... - デイリー新潮

まったくそのとおりでしょう。

岸田首相ら政権幹部が、前任者である安倍晋三、菅義偉両総理らの行動に背くような言動を取れば、その瞬間、自民党側からの「突き上げ」を喰らうことは間違いありませんので、逆に岸田文雄首相くらいの政治力では、現在の日本政府が韓国に下手な譲歩をすることが難しいと考えて良いでしょう。

リスク要因は「尹錫悦政権」

もっとも、ここにリスク要因があるとすれば、やはり「保守派(?)」の尹錫悦(いん・しゃくえつ)氏が3月の大統領選を制し、次期大統領に就任することです。

そもそも尹錫悦氏が「保守派」なのかどうかはともかくとして、同氏が「保守政党」とされる「国民の力」の公認を得ている事実を踏まえるなら、少なくとも関係国(たとえば米国など)は、尹錫悦氏のことを「保守派」とみなすでしょう。

そうなると、とくにジョー・バイデン米大統領が岸田首相に対し、あるいはアントニー・ブリンケン米国務長官が林外相に対し、「保守派である尹錫悦氏が大統領に就任したのだから、日本も韓国と『仲直り』(?)しなさい」、などと圧力をかけてくる可能性は、十分にあります。

そして、「バイデン-岸田-尹錫悦」というラインが実現してしまった際に、岸田首相らは、米国という「外圧」を利用し、尹錫悦氏と日韓首脳会談を行い、韓国に対し、譲ってはならない点を譲ろうとしてしまうかもしれません。

これこそが、著者自身が最も恐れる「対韓譲歩シナリオ」です。

その意味では、とりあえず岸田首相の自民党総裁としての任期が満了する2024年までは、下手な譲歩をしないでほしいものだ、などと思う次第ですが…。

現在の日韓関係の微妙さ

もっとも、現在の日韓関係の微妙さという意味では、昨日はこんな話題もありました。

韓日米「対北共助」再確認したが…「対北対話」の説明に日本の言及なし

―――2022.02.11 16:08付 中央日報日本語版より

韓国メディア『中央日報』(日本語版)の報道によると、ハワイで現地時間10日に行われた日米韓3ヵ国の高官級協議で、日韓のすれ違いが目立ったようです。

具体的には、韓国外交部が公表した協議後の報道資料によれば、「対北対話を早期再開するためのさまざまな方案に対して具体的な協議を行った」とする内容が盛り込まれたものの、その記述の主語は「日米韓」ではなく「米韓両国」だったのだとか。

これについて中央日報は、「これは北朝鮮の弾道ミサイル発射に強硬な立場で一貫している日本が韓日米の三国間協議では対北対話よりも圧迫を中心に置いた対応を強調した可能性を示唆している」、などと分析しています。

(※ただし、本件についてはそもそも米国側の報道発表が見当たらないため、韓国外交部によるいつもの「一方的な発表」だった、という可能性もありますが…。)

実際、日本の外務省の報道発表を読んでも、この「対北対話」という表現は出て来ません。

北朝鮮に関する日米韓協議(結果)

―――2022/02/11付 外務省HPより

すなわち、現時点では北朝鮮のミサイル事案ひとつとってみても、日韓(というよりも「日米」対韓国)の温度差が極めて大きいのが実情ではないかと思う次第です。

林外相はクアッド外相会談に参加

さて、先ほどは「韓国で政権交代が発生した場合、岸田首相が韓国に対し、妙な譲歩をするのではないか」、といった点を懸念事項として挙げましたが、ひとつ、「楽観的なシナリオ」を提示するとしたら、それは「日米韓」に代替し得る枠組みである「日米豪印」が、順調に軌道に乗りつつある、という点でしょう。

こうしたなか、林外相を巡っては、韓国メディアが「ホノルルで日韓外相会談が開かれる方向で調整中だ」、などと相次いで報じられています(たとえば『韓国紙「顔あわせるたび悪材料:冷ややかな日韓外相」』等参照)。

「日韓外相会談が行われたとしても、どのみち日韓双方の不毛な対立が浮き彫りになるだけだろう」――。この点については、珍しく韓国メディアの分析に同意します。自称元徴用工問題を含め、諸懸案を創り出しているのは韓国の側であり、韓国側がその問題点を認識していない以上、いくら日韓外相が面会したとして、諸懸案解決のキッカケができるとも思えないからです。日韓外相会談に意味はあるのか?先日の『「日韓外相会談に向け調整中」の韓国報道をどう読むか』では、今月13日にハワイで開かれる日米韓3ヵ国外相会合のサイドラインと...
韓国紙「顔あわせるたび悪材料:冷ややかな日韓外相」 - 新宿会計士の政治経済評論

しかし、外務省のウェブサイトに2月10日付で公表されていた林外相の行程を読んでも、日韓外相会談というものは出て来ません。該当するリンクを確認しておきましょう。

林外務大臣のメルボルン・ホノルル訪問

―――2022/02/10付 外務省HPより

外務省によると、林外相は2月10日に羽田を発ち、まずは11日にメルボルンにて日米豪印(クアッド)外相会合に出席。12日にメルボルンを出発してホノルルに着き、日米韓外相会合に出席し、そのままハワイから13日に帰国する、という行程です(時差の関係上、ハワイから帰国すれば翌日となります)。

これは、大変に興味深い行程です。

日本は菅義偉政権時代に「近隣国重視型」から「FOIP重視型」に外交をシフトさせましたが、「古い枠組み」である日米韓3ヵ国外相会合の直前に、「新しい枠組み」である日米豪印4ヵ国外相会合が開かれるというのは、非常に重要な変化でもあります。

クアッド内部牽制がリスクを軽減?

以前の『近隣国重視から価値重視へ:菅総理が日本外交を変えた』でも指摘しましたが、日米豪印クアッドの枠組みには、「日米豪印のいずれかの国で、たとえ政権が代わっても、基本的価値を共有する国同士の連携関係は変わらない」という、一種の「内部牽制」の役割があります。

日本時間の土曜日早朝、菅義偉総理は訪問先の米国で史上初の対面での日米豪印首脳会談に臨みました(厳密には、今年3月のテレビ会議を含めれば、首脳会談としては2回目ですが…)。少しインドのトーンが弱いというのは気になるところではありますが、ただ、今後は「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)が日本外交における基軸となることは間違いありません。まさに菅政権の最後の仕上げ、というわけです。クアッドではなくFOIPが重要先日の『日本外交は「クアッド+台湾」>「中露朝韓」の時代へ』では、「最後の最後まで仕...
近隣国重視から価値重視へ:菅総理が日本外交を変えた - 新宿会計士の政治経済評論

もしも「尹錫悦政権」が韓国で実現してしまったとすれば、米国から「日米韓3ヵ国連携のために日本が韓国に対し折れてくれ」という圧力が働く可能性も出て来ますが、それと同時に、「日米豪印4ヵ国連携」の枠組みも存在していれば、米国にとっては「日米韓3ヵ国連携」の相対的価値は薄まります。

もちろん、豪州やインドが日韓関係を直接に「仲裁」する、という可能性は高くありませんが、米国が日本に対し、無茶な要求をしてくるのであれば、日米関係が危うくなり、ひいては日米豪印4ヵ国連携の枠組みも危うくなりかねません。

このように考えると、豪州・インド両国の存在は、「クアッド内部牽制」を通じ、米国が日本に対し、無茶な要求をする可能性を、少しばかりは軽減する効果が期待できるのかもしれません。

なにより、韓国はFOIPに対し、頑なに参加を拒んでいますし、日本にとってもFOIPの構想上、韓国は「ないもの」としてみなしています(図表3)。

図表3 FOIP

(【出所】防衛白書)

いずれにせよ、米国もいい加減、「日米韓3ヵ国連携」に拘り過ぎる姿勢を改めてほしいとも思う次第ですが…。

新宿会計士:

View Comments (29)

  • >韓国は「ないもの」としてみなしています
    おはようございます。
    「ないもの」、いい感じですね。
    どのみち、そのうち消滅してしまうかも?な、存在ですから、ねー。
    岸田政権がどんなに不甲斐なくても、FOIP とQUAD の存在がとても有り難いです。

    • 菅内閣のワクチン行政を潰した岸田内閣が安倍内閣のFOIPも潰すのではないかと心配です。

  • お疲れさまです。

    私自身がそうでしたが、50代後半になって初めていろんな情報を知り韓国の実態を知りました。
    現代自動車は、若い世代の韓国コスメ、BTSの受け入れを見て、少しづつ日本に入っていき世代が変わる頃まで長期戦を考えているなと思いました。

    同じことを繰り返さないためにも、正しい近年の歴史教育は必要であると思いました。
    正しい歴史を知って現代自動車を買うのは、個人の自由でございます。

    歴史または社会の授業に、週に1コマでも現代史の授業を入れて欲しいと思いました。

    • > 同じことを繰り返さないためにも、正しい近年の歴史教育は必要であると思いました。

      同感ですが、「正しい歴史」は「客観的に検証可能な歴史」としないと隣国との際限の無い水掛け論になってしまうと思います。

    • J様

      これが難しいところで、減少したとはいえ、まだ、偏向組織、偏向教育機関による偏向教育が横行する危険性があります。あと30年(洗脳された世代が消えるまで)は待つ必要があると思います。

       其れよりも、お子さん、お孫さんに、”教科書丸暗記ではなく、資料の見方、教師・他・人の話の聞き方、それらの検証の仕方”を直接伝授されるのが一番良いかと思います。

    • 教員に近年の歴史を生徒に教えさせるのは危険です。職員室は教職員組合が牛耳っており、左翼系組合思想に洗脳された教員が、左翼系組合が解釈・捏造した歴史教育を行っています。私事ですが、高校時代(田舎の県立高校ですが、毎年東大合格者を出しています)の政治・経済の教員が授業中に「天皇を撃て」「天皇を撃て」「天皇を撃て」と連呼しておりました。この教員は、その後、県立高校の校長となりました。進学率100%の県立高校の教員でこの程度、しかも県の教員管理職登用人事もその程度。これが私立高校であれば、補助金をもらってるくせに、私学教育の独立を振りかざし、左翼系組合が解釈・捏造した歴史教育を行っています。

  • 一般的な見立て(イ・ジェミョンが勝てば日韓関係は悪化する)とは異なり、ユン・ソギョルが勝った方が、日韓関係のハンドリングが難しくなると、私は見ています。韓国の新大統領が、米国の次に日本との首脳会談を希望してきた場合に、「我が国の一貫した立場に基づき」徴用工・慰安婦での宿題未回答を理由に謝絶するべきなのか、国内でも議論が分かれるでしょう。もちろん米国からは、対中包囲網の強化、北朝鮮の行動抑制のため、首脳会談に応じるよう圧力がかかるでしょう。そして首脳会談が行われた場合に、1998年の日韓共同宣言のようなものが出される懸念もあります。不当にゴリ押しした方が既成事実を作り、結局得をするというのは、全く納得がいかず、韓国に天罰が下るべきとの思いは変わりませんが、国際政治ではよくあることです。やはりイ・ジェミョンに勝ってもらいたいけどな。見込み薄そうですよね。

  • >米国から「日米韓3ヵ国連携のために日本が韓国に対し折れてくれ」という圧力が働く可能性

    日韓首脳会談の前提条件は「請求権協定および慰安婦合意違反他」の”是正”です。
    岸田首相は「まずは約束を守らせろ」と米国側に突き付ければいいだけのこと。
    立会当事者でもある米国も顔に泥を塗りまくられてるはずなんですけどね・・。

    韓国に是正責任を問うべきは ”バイデン”ねん。
    韓国が是正責任を負うまでは ”byeでん”ねん。

  • 日米韓がうまく行っていないのなら、その原因は米韓がうまく行っていないのが原因なのに、韓国と話したくないからって現実逃避でこっちにネタ振ってくるのはやめてくれないかな。

  •  なんか米国の押され負けると韓国の方に流れそうですね、岸田政権。
     公約では「中国に厳とした対応をとる」と言っていた記憶がありますが、何もやってません、岸田さん。頼りにならない。

     韓国にクアッドにはいる勇気があるか知りませんが、中央日報が「「反中」をよく思わない高邁な方々に…これは中国嫌悪ではありません=韓国」https://japanese.joins.com/JArticle/287641 という記事を出してます。属国DNA健在と分かる記事ですね。まあ韓国はコウモリを続け、我々自由主義の陣には入らないと。

     コウモリのまま自滅する、というのが韓国を待っている未来じゃないでしょうか。

  • 冬季五輪の開催によって向上した中国の国際的地位を見せつけ、それが終われば平和的セレモニーはお仕舞い。南シナ海の支配権を手中にした余勢を駆って、いよいよ悲願の台湾の攻略に手を付けるぞと言うファイティングポーズで、世界を牽制しようとしている中国。

    それに対して、中国のアキレス腱である人権、民族弾圧を盾にとった外交的ボイコットで五輪開催の高揚に冷や水を浴びせ、わざわざ大会期間中に日米豪印FOIP4カ国の外相会談を開催して、これ以上事を構える気なら軍事的、経済的締め付けをさらに強めるぞと明示してみせる海洋国家群。伝統的外交スタンスから考えれば、インドがこの枠組みに加わるのはやや意外とも思えますが、それだけ中国の侵略的姿勢に危機感を覚えるに至っているということなんでしょう。

    この4カ国外相会談の意味については理解しやすいのですが、そのあと間を置かずおこなわれる日米韓外相会談の意味って、一体何なんでしょう。支離滅裂な左派政権の迷走の下、今や韓国は対中牽制の阻害要因に過ぎないことは、日米は勿論のこと、韓国自身よく分かっているはずです。日本はもはやこんな国相手にしても仕方がないと見なしている。韓国も言い訳に終始するだけ、針のむしろに座らされることが確実な会談に、望んで出席したくはないでしょう。やっぱり米国があまり気の進まない2国を呼びつけて、ということなんでしょうか。

    対中包囲網の強化という目的からすれば、言葉を飾るだけに終わることが確実な日韓関係の円滑化を、いまさら仲立ちしてみようなんて意図で、米国がこの時点でこの3カ国会談を用意するとはちょっと考えにくいような気がします。これまで足を引っ張り続け、しかも任期末まで後いくらもない政権の外交当局者を呼びつけてなにか意味があるとすれば、ここで中国という虎の尾を踏ませる言質を韓国から取ることによって、たとえ次期政権も左派が握ったとしても、容易に中国になびくことが困難な状態に持っていこうとするのではないか。ウイグル族を初めとする少数民族への弾圧、南シナ海の国際法を無視した支配の野望、意図的につくり出している台湾海峡の緊張。どれひとつを採っても、共同声明に非難の文言が入れば、激怒した中国の矛先は韓国に向かうのはまず確実でしょうから。

    深い対中経済関係を有する点では共通する日本を同席させることによって、これまで経済的依存を口実に逃げ回ってきた韓国の二股的姿勢の逃げ道を塞ぐという意図がありそうに思えます。

  • どうなんでしょうね?日本側から対韓譲歩する確率は確かに低いけど、問題はアメリカ。
    もし、韓国に保守政権が誕生してムンほど露骨な親北媚中な路線を取らなくなってアメリカさんのご機嫌が直っちゃったら?
    日本に「関係改善」の圧力をかけそうなイヤな予感が…。
    アメリカ人って我々が考える以上に東アジア情勢に対して無知だし、現在の韓国外交のおかしさも単に大統領のせいとしか理解してなさそうだし

    • アメリカ人って我々が考える以上に東アジア情勢に対して無知だし、現在の韓国外交のおかしさも単に大統領のせいとしか理解してなさそうだし・・・完全に同感です。加えて岸田内閣の右顧左眄その場限りの姿勢も相まって気がかりです。

  • > 岸田首相ら政権幹部が、前任者である安倍晋三、菅義偉両総理らの行動に背くような言動を取れば、その瞬間、自民党側からの「突き上げ」を喰らうことは間違いありませんので、逆に岸田文雄首相くらいの政治力では、現在の日本政府が韓国に下手な譲歩をすることが難しいと考えて良いでしょう。

     私は逆に考えてます。
     自民党からの突き上げを喰らってばかりいる岸田氏が自分の独自性や優秀さを誇示しようとする、もっと言えば自己顕示欲を見せつけようとするあまり、韓国に水面下で安易な妥協をするのではないか。

     2年前の低所得世帯30万円の件も先々月の在外邦人入国禁止の件も先週の1日100万人接種もそうですが、どうも岸田氏は叩かれすぎるせいか、自己顕示欲をむき出しにする行動をしばしば取ります。その行動が小賢しくて中途半端なのでますます叩かれるのですけど。

     今回も韓国との交渉をまとめ上げて合意した事を宣伝して自分の外交能力の高さを見せつける行動に走るのではないか、そこを韓国につけ込まれて本会議であっさり裏切られて佐渡に濡れ衣を着せられる羽目になるのではないか、という事を懸念しています。
     韓国も岸田氏のそういうところを見透かしてるから「岸田ならまた騙せる」と思ってます。
     その結果、岸田氏は政治生命でさえ終わるでしょうけど、濡れ衣を着せられた後からではもう遅い。岸田氏の首くらいではとても割に合いません。

     このような「岸田リスク」を回避するためには、岸田氏を直ちに政調会長へ交代させ、行政から党人事へ移すしかないでしょう。

    • オレさま首相のオレオレ天下だとそのように当方は判断しています。これからもっとひどくなるような危惧を感じています。

    • 自民党からの突き上げ突き上げと言うが
      突き上げは右派からばかりとは限らないのでは
      自民党にも左派とか親韓派とか「韓国が明確に敵になったら日本は困る」と思っている人もいると思われる

    • それ、あると思います。
      記者会見で歯切れよく力強く言ってみせるところに、テクニカルな小賢しさを感じます。
      そういう行動も結局、上から下から左から右から、あっちこっちから突っつかれて反応した結果に見えるんです。
      結果的な着地点がいい場所になるかどうかは運任せだと思います。

  • 現時点で日本にとっての最大のリスク要因は、バイデン政権の不見識・無定見ぶりにあります。仮に尹錫悦氏が大統領に当選となった場合に、アメリカが本気で圧力を掛けてきたら、岸田総理であろうがあるまいが、日本としては抗しようがありません。程度問題こそあれ、不承不承でも受け入れざるを得ないポジションにあります。そしてその際にQUADの存在が対米牽制になり得るかという点に関しても、おそらく何の支えにもならないでしょう。対日圧力を掛けようとする際に、印豪がどのような姿勢であろうが、アメリカが気にするとは思えません。ただ、そのような有様を見れば、インドの腰はますます引けるでしょうから、QUADは形骸化し、機能しなくなるでしょう。

    合理的に考えれば、日本に原理原則を枉げさせるような圧力を掛ける理由も戦略的意味もありませんが、ウクライナ情勢で手一杯のバイデン政権が面倒くさがって早期の「解決」を求めてくる可能性は否定できません。その「無理」に対する反動までちゃんと織り込んだ戦略をバイデン政権が進められるのか、かなり疑問に思います。なにしろ、日本に対してどれほど圧力を掛けようと、日本が反米陣営に回る可能性はほぼありませんので。

    現在の世論動向や自民党内の動向を見る限り、岸田政権が自発的に対韓宥和、対韓妥協に動くことはまずないだろうと思います。しかし、もしも本当にアメリカが強硬な圧力を掛けてきたら、これはもうどうにもなりません。安倍氏や菅氏ならば圧力を撥ね退けられるかもなどというのはただの幻想です。
    まあ、もしも本当に尹錫悦氏が大統領になったら、日韓首脳会談くらいは開催せざるを得ないでしょう。おそらくアメリカからも「助言」があるはずです。その席上、日本がどの程度まで妥協するかは、アメリカからの圧力強度に依存します。個人的には、いかにバイデン政権がダメダメだったとしても、首脳会談を開催したらという「助言」以上のことはしてこないのではないかと思ってますが、ダメダメ度が私の想定を超えている可能性があり得ることまでは否定できませんね。

    余談:
    尹錫悦氏が「保守派」かどうかという点ですが、彼は文在寅大統領によって検察総長に抜擢された人物です。文大統領による人事の傾向からして、彼が保守派ということはまずないでしょう。どれほど検事として優秀であろうと、保守派性向の人を文大統領が抜擢することなどありえないと思われるからです。従って、彼の立ち位置は、良く見ても中道左派だろうと思います。ただ、対立候補である李在明氏が極左、安哲秀氏が左派なので、相対的に右寄りに見えるというだけでしょう。

    • 龍 様
      極左vs左派、だと武藤元大使も言ってたように思います。
      でも武藤さんとしては尹候補が大統領になるほうが、うれしそうな感じなんですよね…。

      • とりあえず極左よりは話が通じるようになる可能性もあるという程度でしょう。尹氏が法曹関係者としてまともであればあるほど、国際法違反という指摘をスルーできないでしょうから。
        まあ、文在寅大統領も李在明候補も弁護士上がりなので、韓国の法曹関係者がどのていどまともでありうるのかは怪しいと言わざるを得ませんが。

1 2