高市早苗氏が岸田文雄首相から「いわれなき中傷には毅然と対応していく」との言質を取ったようです。本日の衆院予算委員会で、佐渡金山の世界遺産登録を巡り、高市氏は「必ず今年度に推薦を行うべきだ」と主張したところ、林芳正外相は「今年度の推薦をしないと決めたことはない」と説明したのだとか。
佐渡金山の世界遺産登録見送り報道
先日の『世界遺産登録見送りが10年後の日韓関係に与える影響』では、日本政府が韓国の反発で、今年の佐渡金山の世界遺産推薦を見送る、という観測報道を取り上げました。
こういうことが続けば、長い目で見て、日韓関係は確実に傷つきます。何の話かといえば、一部メディアが相次いで、「政府が佐渡金山の世界遺産登録を見送る方針だ」と述べたことと関連しています。そして、こうした状況を見ていると、今から約9年前に、エドワード・ルトワック氏が上梓した『自滅する中国』という書籍の一節を思い出さざるを得ないのです。世界遺産登録見送り?一般読者、自民党保守派などが反発「2011年12月14日には『従軍慰安婦』を表現する上品ぶった韓国人少女の像が日本大使館の向かい側で除幕された。<中略>こ... 世界遺産登録見送りが10年後の日韓関係に与える影響 - 新宿会計士の政治経済評論 |
具体的には、一部のメディアが「複数の政府関係者が明らかにした」として、政府が佐渡金山の世界遺産推薦を「見送る方向で調整に入った」、などと報じたというものです。
これについて当ウェブサイトでは、「岸田首相が韓国に対し弱腰を示した」という可能性だけでなく、「政府側がわざと一部のメディアにリークして、世論の反応を伺っている」という可能性もある、と考えてきました(もちろん、「岸田首相が先送りを決断した」、という可能性も否定できませんが…)。
そのうえで、こうした「見送り論」が出て来る理由についても、少し補足が必要です。
一部報道によると、「世界遺産委員会が一度不可と判断した推薦候補がその後に登録されたケースはない」ということであり、韓国の「朝鮮人強制労働」という主張に対し、「ちゃんと準備しないままで世界遺産推薦に踏み切り、失敗してしまうと、その後は世界遺産登録ができない」という懸念があることは間違いなさそうです。
歴史問題の2つの本質
こうしたなか、これについては、毅然と否定すべき「朝鮮人の強制労働」というウソを、これまでの日本政府がきちんと否定し切れていなかった、という事情もあります。
この点については当ウェブサイトで何度も指摘してきた、韓国のいう「歴史問題」に共通している次の2つの問題点を思い出しておく必要があります。
日韓歴史問題における本質的な2つの問題点
- ①日韓間の請求権に関するあらゆる問題は、1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決済みであり、自称元徴用工判決はこの日韓請求権協定に違反する状態を作り出している。
- ②韓国側が主張する「被害」の多くは、(おそらくは)韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである。
(【出所】著者作成)
日本政府が現在、韓国に対して主張しているのは、上記①の部分が中心です。
自称元徴用工問題、慰安婦問題がその典型例ですが、そもそも論として、韓国側が日本に対して要求してくる謝罪や賠償などについては、その法的根拠自体が存在しません。要するに、権利もないのに債権者として振る舞っているようなものです(『「韓国は権利もないのに債権国として振る舞う」の指摘』等参照)。
「韓国は、日本に謝罪を要求する権利もないのに債権国のように振る舞っている」。大変に良いたとえです。当ウェブサイトでも韓国による日本に対する不合理な行動の数々を何度となく取り上げてきましたが、これらの行動を端的に指摘するうえで、非常に良い表現だと思う次第です。こうしたなか、韓国では今年3月の大統領選に向け、左派候補が保守(?)候補を突き放しつつあるようです。韓国による対日不法行為の数々当ウェブサイトでは、開始してからのこの5年半あまり、韓国の日本に対する不法行為の数々について、もう数えきれない... 「韓国は権利もないのに債権国として振る舞う」の指摘 - 新宿会計士の政治経済評論 |
したがって、日本政府の①の主張自体は正当なものであり、この主張については是非とも強力に進めていただく必要があるのですが、それだけでは不十分です。やはり、そもそも論として日本政府には上記②の部分に関する努力が足りません。
とくに、『ユネスコ軍艦島遺憾決議、日本は「根元を断つ」努力を』あたりでも言及したとおり、そもそも論として2015年の軍艦島などの世界遺産登録に際しては、日本政府は “forced to work” という表現を使い、国際社会に対し、あたかも強制労働が行われていたかのような誤解を与えました。
不法行為の全コストを、利息付きで韓国にお返ししよう個人的におそれていた事態が実現しました。明治期の産業革命施設の世界遺産登録を巡り、2015年7月に日本の外務省が切った「空手形」が、ブーメランの形で返ってきたからです。複数メディアの報道によれば、ユネスコ世界遺産委員会は22日、「軍艦島の朝鮮人強制連行・強制労働に関する展示方法や展示内容が不十分」とする趣旨で、日本を非難する声明を全会一致で採択したのだそうです。結論からいえば、これについては「放置」せざるを得ず、かわりに「根元を断つ努力」をしなけれ... ユネスコ軍艦島遺憾決議、日本は「根元を断つ」努力を - 新宿会計士の政治経済評論 |
こうした失態を踏まえるのであれば、やはり、準備に万全を期してから世界遺産登録をする、という発想が出てくるのも、ある意味では仕方がない話です。
高市氏の質問
もっとも、「軍艦島」の件に関しても、あるいは今回の佐渡島の件に関しても、どうも日本政府が国際社会に対し、「朝鮮人強制労働は韓国のウソだ」と毅然と否定しているフシは見られません。
しかし、「準備に万全を期してから世界遺産登録を申請する」という言い訳の前に、国際社会に対し、やることをやっているのかといわれれば、そこも大変に微妙でしょう。
こうしたなか、自民党の高市早苗政調会長は本日、衆院予算委員会で、本件について岸田文雄首相、林芳正外相に対して質問を行ったようです。
外相「韓国への外交的配慮ない」 佐渡金山の世界文化遺産推薦で
―――2022/1/24 09:57付 産経ニュースより
産経ニュースによると、高市氏は世界遺産登録について、「必ず今年度に推薦を行うべきだ」と主張し、これに対し林外相は「今年度の推薦をしないと決めたことはない」と説明したのだとか。
また、岸田首相も歴史認識に関し、「私の内閣でも重視している」、「国際社会において客観的事実に基づく正しい歴史認識が形成され、わが国の基本的立場や取り組みに対して正当な評価を受けることを強く求め、いわれなき中傷には毅然と対応していく」と述べたのだとか。
「いわれなき中傷にこれまで毅然と対応してきたのか」という点は脇に置くとして、岸田首相からこのようなコミットを引き出した自体は、歓迎すべきです。
そして、高市氏自身が政調会長という、与党である自民党としての意見を集約する立場にあるという点を踏まえるならば、今回の答弁は自民党側から岸田内閣に対する圧力として働いてほしいものだと思う次第です。
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お手並み拝見しましょう。
神輿は軽いほうがいいという言葉がありますが、軽すぎるとダメな見本のような首相ですね。岸田はちょっと前にツイッターで「決断の責任はすべて自分が負う」と書いてましたが、本当、信用ならない政治家だと思います。佐渡金山の登録もどっちにするのかよくわからないですし、世論の風当たりが予想外に強く当惑してるんでしょう。ワイドショーのコメンテータや中韓の声ではなく、ちゃんと国民の声を聞けといいたいです。どっちにしろ、こんなのが総理の間は自民党には投票しませんが。
今回の高市(自民党)政調会長の質問で、自民党内部や政界での存在感を示して、(たどり着くかは別にして)将来の総理大臣に一歩、近づいたと考えるのは、考えすぎでしょうか。
高市さん、ナイスフォローです。
最初から質問内容決まった出来レースだろ
こういう茶々松君には困ったものですね。冷や水ぶっ掛けて何が楽しいの?
竹島実行支配するなら、それなりの対価を支払っていただいた方が良いとおもうのですが。
韓国になめられて、バカにされて、そのままなのも日本国民の一人として残念でございます。
さすが!高市さん 素敵です!
韓国は江戸時代の佐渡金山に 朝鮮人強制徴用はスジが通らないのに、
難癖のレベルも落ちたもんだよ!
朝鮮半島は、昔から資源もなく周りに誇れる文化もなく、交渉の材料が一つもない国でした。
例えるなら、手札がブタの手持ち資金ゼロの状態でポーカー勝負をしている様なものです。
この状態から、勝ちにいこうとするなら「いかさまだー」と相手に責任を押し付ける事です。
宗主国様なら、イカサマと言われた時点に暴力で解決しています。
しかし、日本はしてもいないイカサマを相手と一緒になって、イカサマの証拠を探してる様なもの。
日本としては、ほら証拠はないよ。納得できたか?としたいところ 韓国はない証拠に対してあれが怪しいこれが怪しいと難癖をつけてきた。
普通なら、手を出してる所に 日本は 勝手に相手の事を慮って 「ああ、アイツは手札も悪く金もないから騒いでるだけか。」と理解をしたうえで かわいそうだからと相手の嘘にのってあげて、これで相手はこちらの優しさに気付き もっと仲良くなれるだろうと思ったのが運のつき。
韓国は日本は馬鹿だくみしやすしと調子にのりつづけて数十年。
ようやく、高市氏の発言が日本人の主流派になったのかと 感慨深いものがあります。
90年代、こんなマトモな事を発言すると 右翼だナンダと役職を辞任させられます。
ホントいい時代になりましたね。
岸田さん、エマニュエル駐日新米国大使来日、高市さん、色々な所から釘を刺されはじめている様子。
岸田内閣支持率66% 佐渡金山「推薦すべき」5割超
https://www.sankei.com/article/20220124-5MMI26GWL5LR7AQL3PDL7ABANQ/
コロナ禍よりも支持率に影響するかも知れませんな。
因みに立憲支持率は、維新より下です。
隣国の木に竹を接ぐような難癖に恐れをなして撤回などは論外という、多くの方々のご意見に完全に同意することはあらかじめお断りしておきますが、ちょっとKYなコメントを。
そもそも論として、わたしはこの佐渡金山の世界遺産登録は、そんなにむきになって推進するほどの問題かという点について、かねがね疑問に思っています。確かに江戸時代の前半期、この金山が幕府の貨幣経済を支える大きな柱だったのでしょう。しかしこの時期は日本が鎖国政策をとっており、日本の世界経済への関わりは微々たるものだったと思います。
日本に住む我々にとっては、佐渡金山の歴史的重要性の認識はそれなりの大きさのものだとは思います。しかし、そういう自国固有の価値観をもって、これを世界遺産に押し込もうというのはどうなのかと思うのです。世界史との関わりについて言えば、メキシコの銀鉱が発見されるまで世界最大の銀算出量を誇った石見銀山の方がはるかに意味があるし、あれが世界遺産に既登録となった今、世界遺産の本来的な意味からして、佐渡金山の登録という事案が、それほど強力に推進しなければならないほどのものかと思うのですが。
そうなんですよねえ。
自分なんかは学が無いもので「世界」遺産なんて名前が付くくらいなんだから、そりゃあ世界史レベルで影響のある物凄いものが、世界遺産として登録されるもんなんだろうと思っていたのですが。
佐渡の金山が登録されるされないかでいったら、そりゃあされた方が日本国民として嬉しいんですけど。
佐渡の金山って世界史レベルに影響与えてたの? みたいに考えると頭に?マークが浮かびます。
そこも含めて、それだけの労力をかける文化的価値があるものなのか。価値があるとすれば、それはどんなものなのか、国民に説明が欲しいところです。
あと、自己コメントに追記ですが。
昔、何かのセミナーで優先度は緊急性と影響度で決まるみたいに教わった覚えがあります。
それを考えると、コロナや中国対策とかに比べると、遺産登録は後回しにしたところで特に問題が出るようにも思えないので。優先度も高くなく、今そこまでリソースを割かないといけない問題でもないと思います。
難癖であれ何であれ
「納得てきんぞ」と抗議する国が一つでもあれば
登録できない
という決まりになったのでは?
日本の凄い運動で
自分もそこなんですよね。明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業なら軍艦島、石見銀山なら禿山になっていない山といった「顕著な普遍的価値」を代表するアイコンが無い。少なくとも報道からは伺い知れない。村おこし以上の価値観の提供が必要でしょうね。