最新の世論調査によれば、維新と立憲の「逆転」が定着して来たかに見えます。当ウェブサイトで「定点観測」している6つの調査に関していえば、そのうち4つの調査で、日本維新の会が立憲民主党を支持率で上回っています。来年の参院選まで、まだ少し時間がありますが、こうした傾向が続くようならば、両党の獲得議席数にも違いは出て来るのでしょうか。
内閣支持率などをどう見るか
当ウェブサイトで長らく追いかけているデータのひとつに、いくつかのメディアが実施する、内閣支持率などの世論調査があります。
といっても、当ウェブサイトで「定点観測」しているのは、基本的に、読売新聞、朝日新聞、時事通信、共同通信の4社のものに加え、産経・FNN、日経・テレ東の2つの合同調査、合計6つです。
そして、これらの世論調査に関しては、必ずしも全幅の信頼を置くべきものではない、というのも、これまでの当ウェブサイトの議論から得られてきた、暫定的な仮説です。
『政治ジャーナリストが立憲民主党とメディアを痛烈批判』などでも紹介したとおり、そもそも新聞、テレビなどの「オールドメディア」が実施する世論調査は、多くの場合、その手段が電話であり、回答している階層にも偏りがあるという可能性も濃厚です。
「衆院選の最大の敗者は立憲民主党とマスメディアである」。以前から当ウェブサイトで展開してきた「持論」ですが、その持論の正しさを裏付ける優れた論考を発見しました。意外なことに、その論考を執筆したのは、マスメディア出身のジャーナリスト・泉宏氏です。泉氏は立憲民主党の泉健太新代表の体制を「厳しい船出」と表現したり、マスメディアの選挙報道を「時代遅れの手法」と批判したり、良い意味でマスメディア出身者らしからぬ論考を展開しているようです。事実と意見を峻別せよ報道や論評の2つの構成要素普段から当ウェブサ... 政治ジャーナリストが立憲民主党とメディアを痛烈批判 - 新宿会計士の政治経済評論 |
しかも、少し前までは、多くの世論調査は、調査手段が「固定電話」に限定されていたという話もあります。
きょうび、若年世帯を中心に、固定電話を引いていない家庭も増えて来たのではないかと懸念されるなか、従来型の固定電話のみを対象とした世論調査だと、結果が偏る(かもしれない)と懸念されるのは、ある意味では当然のことでしょう。
(※もっとも、本稿で紹介する調査のうち、時事通信のものは、個別面接方式だそうです。)
これに加えて、一部の論者の指摘などによれば、各社は世論調査で得られた結果をそのまま公表するのではなく、そのメディアなりの「加工」をしているケースもあるのではないか、という疑問点もあります。
ただ、それと同時に、「世論調査の結果は鵜呑みにしてはならない」のだとしても、それと同時に、全否定すべきものでもありません。
今年10月の衆院選に関しては、各メディアの出口調査等に基づく各党の勢力予想は「大外れ」となったようですが、たとえば普段からの政党支持率については、トレンドを見るうえでは、ある程度は参考になるからです。
(※なお、各メディアとも、たいていの場合、「内閣支持率」「政党支持率」以外にも質問をしているのですが、これらの質問については各社ともバラバラであることも多いことなどから、当ウェブサイトとしては内閣支持率と政党支持率以外の設問については、基本的には追いかけていません。)
内閣支持率:朝日新聞と時事通信以外はだいたい6割
さて、6つの調査のうち、本日時点までに手に入るものが4つあります。
内閣支持率のうち、まだ公表されていないデータについては前月の、公表済みのものについては今月の結果を一覧にしたものが、次の図表1です。
図表1 内閣支持率(2021年11月~12月)
メディアと調査日 | 支持率(前回比) | 不支持率(前回比) |
---|---|---|
朝日新聞(11/6~7) | 45.0%(+4.0) | 27.0%(+1.0) |
日経・テレ東(11/10~11) | 61.0%(+2.0) | 27.0%(+2.0) |
読売新聞(12/3~5) | 62.0%(+6.0) | 22.0%(▲7.0) |
共同通信(12/18~19) | 60.0%(▲0.5) | 22.7%(▲0.3) |
産経・FNN(12/18~19) | 66.4%(+3.2) | 26.2%(▲4.5) |
時事通信(12/10~13) | 44.9%(▲2.2) | 24.0%(+2.7) |
(【出所】各社報道より著者作成)
…。
いかがでしょうか。
先月の朝日新聞の調査、今月の時事通信の調査を除くと、当ウェブサイトにて「定点観測」しているメディアの調査では、いずれも細かな変動はあるにせよ、支持率はだいたい60%台で安定しています。また、不支持率も20%台で揃いました。
もしかして菅総理の遺産…かも?
時事通信だけ、支持率が低い理由は、さだかではありません。
ただ、産経・FNNについては、産経ニュースの記事に「調査では内閣支持率に関し、回答が不明確な場合に『どちらかといえば』と再度質問して回答を得た」、という記述が確認できますので時事通信の場合はたんに「重ね聞き」をしていないだけなのかもしれません。
岸田内閣支持率66% 「外交ボイコット」賛否割れる
―――2021/12/20 11:39付 産経ニュースより
(※ただし、「重ね聞きをしていない」というのは、支持率が低い理由としては説明がつきますが、不支持率が他メディアと同等であることとの理由にはなっていないような気がしますが…。)
余談ですが、「最近の内閣支持率は、コロナの新規陽性者数と比例している」という指摘をする人もいます。
もしその仮説が正しく、また、「現在、コロナの新規陽性者数が落ち着いているのはワクチン接種が進んだためだ」という仮説が成り立つのならば、岸田首相の実績に対する支持率というよりは、前任者である菅義偉総理大臣の功績で内閣支持率を押し上げているのか、という疑問もあります。
いずれにせよ、岸田内閣が発足した直後は衆院選の対応に忙殺されていたため、実質的に政権が本格始動したのは11月以降、という見方をするならば、まだまだ政権初期でもありますので、今後、この支持率がどれだけ上がるか(それとも下がるか)については、今後ともチェックする価値があると思う次第です。
「維新>立憲」の構図はより一層くっきりと
ただ、それよりも今回、目についたのが、政党支持率です。
スペースの関係上、自民党、立憲民主党、日本維新の会の3政党について並べてみると、次の図表2のとおり、いくつかの調査では、立憲民主党と日本維新の会の支持率に明らかな逆転が生じていることが確認できます。
図表2 政党支持率(2021年11月~12月、カッコ内は前回比)
メディアと調査日 | 自由民主党 | 立憲民主党 | 日本維新の会 |
---|---|---|---|
朝日新聞(11/6~7) | 36.0%(+2.0) | 9.0%(+2.0) | 9.0%(+6.0) |
日経・テレ東(11/10~11) | 44.0% | 9.0% | 13.0% |
読売新聞(12/3~5) | 41.0%(+2.0) | 7.0%(▲4.0) | 8.0%(▲2.0) |
共同通信(12/18~19) | 43.8% | 11.6% | 12.5% |
産経・FNN(12/18~19) | 38.6%(▲1.6) | 7.2%(▲1.8) | 8.1%(▲3.6) |
時事通信(12/10~13) | 26.4%(▲0.8) | 5.0%(▲0.4) | 4.9%(+0.2) |
(【出所】各社報道より著者作成)
具体的には、先月の日経・テレ東合同の調査に加え、今月だと読売、共同通信、産経・FNN合同の3つの調査で、両政党の支持率に逆転が生じているのです。また、面接方式で行われた時事通信の調査の場合も、0.1ポイントしか開きがありません。
新代表就任の「ご祝儀」もなし
立憲民主党といえば、先月末に47歳の泉健太氏が代表に選ばれたばかりですが、これらの調査結果を眺めている限りにおいては、「新代表が選ばれたからご祝儀的に政党支持率が伸びた」、といった統計的事実は確認できません。
また、10月31日の選挙で確定した現実の勢力は、日本維新の会が30議席増やして41議席に達したにせよ、また、立憲民主党が13議席減らして96議席にとどまったにせよ、依然として立憲民主党が日本維新の会の倍以上の議席を保有しています。
もちろん、世論調査と現実の選挙結果にはズレも生じますが、それにしてもこの「支持率の逆転」現象は、印象的です。
もしかすると、早ければ来年夏の参議院議員通常選挙では、日本維新の会は今よりもさらに躍進し、立憲民主党は今よりもさらに議席を減らす、という展開もありうるかもしれません。
そうなるか・ならないかについては、もちろん、両党のこれからの行動にかかっているのだと思いますし、来年の選挙まであと半年以上ありますので、両党がどんな活躍をするのか(あるいはしないのか)については、これからの課題、といったところでしょう。
ただ、『衆院選での敗者は「立憲共産党」とオールドメディアだ』などでも議論したとおり、立憲民主党などの特定野党を全力で擁護してきたオールドメディアの社会的影響力が退潮となるなかで、日本維新の会と立憲民主党の獲得議席数の差がさらに縮まる、という可能性はそれなりに高いと思う次第です。
今回の総選挙、最大の勝者は、おそらくは議席を4倍近くに伸ばした日本維新の会であり、また、事前に惨敗を予想する意見も見られた自民党も、議席数は15議席減で済んだという意味では、「勝者」といえるかもしれません。一方の敗者はいったい誰なのか。「立憲共産党」と揶揄された野党共闘にも関わらず13議席減らした立憲民主党もさることながら、やはり最大の敗者は、新聞、テレビを中心とするオールドメディアではないかと思うのです。2021/11/01 10:15追記図表に注記を追加しています。オールドメディアさん、予測はどうでしたか?... 衆院選での敗者は「立憲共産党」とオールドメディアだ - 新宿会計士の政治経済評論 |
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維新の支持率が立憲民主党の支持率を上回る現象が定着してきたのは何よりです。国民も馬鹿ではないということですね。
一方で、今日産経の記事に載っていた「オリンピックでの外交ボイコットに賛成か否か」という調査では賛否拮抗しているそうです。ここに危機感を覚えます。
首相やや自民党の要職の姿勢がどうであろうと、国民の明確な意志がない限り、対中姿勢は曖昧なものにならざるを得ないからです。
北京五輪に反対の人はウイグルの人たち可哀想で、賛成の人は選手の人たち可哀想、と言う事でしょう。日本人って優しいなあ。
どちらにしても設問の仕方で引っ繰り返るので、無条件で習中国ヨイショでは無いと思います。
「二番目である」ということだけが唯一のブランドだった立憲食堂さんが、二番目じゃなくなっちゃったら何が残るんでしょうね。協力すれば売り場が広がるってだけで、自分が一応食堂なのに配給制を主張する団体と手を組んでしまうから……
維新の味は多分に関西風だろうしよくわかりませんが、「新しい店は前に騙されたアレより良いらしいよ」という立ち位置になれば、あっというまに地位を奪い取るだろうと見ています。
民主党系の一般認識は「第二党である」ことと「前に騙された」がほとんどでしょう。代わりが居ればポイです。
歴代内閣支持率をまとめて視覚化したサイトがありました。
http://honkawa2.sakura.ne.jp/5236a.html
傾向として最初は支持率が高く、あとは右肩下がりになってゆくのが常のようです。今回の総裁選は今までになく注目を集めた筈なのに、岸田内閣で目立つのは最初の支持率があまり高くないことです。このまま右肩下がりに下がり続けて大丈夫か気になります。
最初の支持率が低い理由はまったく根拠がありませんが、岸田氏の人事を見てがっかりした人が多かったのかもしれません。媚中三人組のまま参院選に臨むのでしょうか。「外交ボイコットすべき」が45%あり、曖昧戦術のままこの数字を無視すると、最悪約半数の支持者が敵に回るかもしれず、上手な政権運営を期待しています。
また普段から政権の箸の上げ下ろしにも批判を展開するマスコミは沈黙したままで、裏を返せばマスコミは媚中三人組を擁護しているとは、ひねくれた見方ですよね。でも、そう思える。
加地伸行氏の本「マスコミ偽善者列伝」の副題に「建前をいいつのる人々」というのがあったのを思い出した。
立憲民主党は何でも反対して建前だけをいいつのる人々の集団。
維新は現実路線。その差じゃないの?
健全な野党。これを待ち望んでいる人は多いはず。
そこから、立憲民主党は共産党に近づくしか無いのか?、公明党は中国の下僕を続けるのか
そもそも宗教が政治に入り込んで良いのか?
維新・国民民主は健全な野党なのか。このまま支持を伸ばして良いのか?
ハッキリしているのは野党が注目を浴びると自民党の腐敗部分が目立つ。
これが来夏の参議院議員選挙に影響を与えること。
岸田政権は民意を汲むのか、臭菌柄の意を汲むのか
親中国派で組んだ内閣のでき次第? でしょうか
欧米では宗教が政治に入り込んでないからね
日本は遅れている
三番じゃ駄目なんですか?とR4さんなら言うでしょうか。
従来から日共と公明とで、共>公になる事がかなりあるのですが実際の選挙で日共がまさる事はほとんどありません。公明は都政なら都民ファ、大阪なら維新、国政では自民と何がなんでも与党につく事が特徴的な政党でその与党パワーを駆使して地力のある事は認めざるを得ない。それがこうしたアンケートでは弱小日共にしばしば負けており、そして選挙ではアンケートを年中覆して居ります。
同じ事が維新と立民との関係でも言えるのでは無いか?
>時事通信だけ、支持率が低い理由は、さだかではありません。「重ね聞きをしていない」というのは、支持率が低い理由としては説明がつきますが、不支持率が他メディアと同等であることとの理由にはなっていないような気がしますが…。
この理由として、以下のように考えればどうでしょうか。
〇今回の調査で重ね聞きすることによって内閣支持が上昇したのは、「浮動的な意見の人」の中に「どちらかというと支持する人」が多数存在したからですが(荒い計算ですが、浮動的な意見の人の内の6割程度)、一方で「浮動的な意見の人」の中に「どちらかというと支持しない人」は、ごく少数であったと考えられる。
だから、重ね聞きをしても、しなくても、不支持率に大きな変動はなかった。