林芳正外相が訪問先の英国で韓国の鄭義溶(てい・ぎよう)外交部長官の求めに応じ、短時間の立ち話を行ったと報じられています。芯がない岸田首相のことですので、韓国に下手な譲歩をしないかという点は少し心配ではありますが、外相時代に2回以上、韓国に騙された岸田首相だけに、少なくとも文在寅(ぶん・ざいいん)政権の残り5ヵ月弱、日韓間で本格的な対話がなされることはないと信じたいところです。
日韓外相立ち話は「韓国の求めで」実現?
林芳正外相が今年2回目のG7外相・開発担当相会合に参加するために訪英した、とする話題は、『林外相訪英:マリオさんとルイージさんがFOIP支持』で取り上げたとおりですが、本稿ではもうひとつ、日韓外相の「立ち話」についても取り上げておきたいと思います。
岸田文雄政権の外交が本格始動しました。林芳正外相がマリオさんとルイージさんからFOIPへの支持を得たのは朗報と言えるかもしれません。ただ、バイデン政権が打ち出した北京オリパラを巡る外交ボイコットに煮え切らない態度を取る岸田首相に対しては、個人的には不安材料しかないのもまた事実です。本稿では昨日夜時点までの情報をもとに、G7とFOIPについての状況を簡単にまとめておきたいと思います。今年2回目のG7外相・開発相会合林芳正外相は日本時間の12月10日(金)から13日(月)にかけ、今年第2回目となるG7... 林外相訪英:マリオさんとルイージさんがFOIP支持 - 新宿会計士の政治経済評論 |
時事通信の昨日の記事によれば、英リバプールで現地時間11日夜に開かれた夕食会で、林外相は韓国の鄭義溶(てい・ぎよう)外交部長官と「短時間の立ち話」を行ったのだそうです。
元徴用工、慰安婦で平行線 日韓外相が初対面
―――2021年12月12日11時40分付 時事通信より
この時事通信の記事自体、大変に短い記事ですが、本稿でこれを紹介したのには、「注目すべき部分」があるからです。といっても、注目すべきは記事タイトルの「元徴用工、慰安婦で平行線」や本文中のそれに該当する部分ではありません。
記事末尾の、こんな記述です。
「韓国側から声を掛けてきたという」。
この手の「~という。」という記述、いったい誰がそう述べたのかがわかりません。
ただ、日韓外相の接触では、「いったいどちらが会談を持ち掛けたのか」という点についても大変に重要です。この時事通信の記述が事実だとすれば、日韓関係の「改善」(?)を求めてきているのが韓国の側であるという証拠でもあります。
このあたりについては続報があるのかどうか、注目したいと思います。
日本政府にも韓国と話し合う機運はなさそうだ
一方で、同じ話題については韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)にも出ていました。
韓日外相がG7で初対面 懸案巡り意見交換
―――2021.12.12 17:19付 聯合ニュース日本語版より
もっとも、こちらの記事では先ほどの時事通信の記事と異なり、「意見交換」の具体的な中身には言及されていません。
いずれにせよ、日韓間の諸懸案で両国が完全に膠着していることは間違いなさそうですが、正直、日本政府の側にも韓国とまともに「協議」「交渉」しようとする機運は見られません。
文在寅(ぶん・ざいいん)大統領の任期も5ヵ月を切ったなかで、いまから何らかの話し合いを始めたところで意味がない、と日本政府も思っているのでしょうか。それとも、文在寅政権下の度重なる約束破り、国際法違反などに、愛想を尽かしたからでしょうか。
個人的に、岸田文雄首相の全般的な「煮え切らない態度」には不安しかないのですが、少なくとも対韓外交に関しては、岸田首相は外相時代に、少なくとも2回、韓国に騙された人物でもあります(2015年の世界遺産登録、慰安婦合意)。
「韓国政府を相手とせず」とする路線を確立させたのは安倍晋三、菅義偉の両総理ですが、岸田首相は自身が騙された張本人であることに加え、今のところは前任者の2人の総理の外交路線を守る構えを見せているようにも思えます。
少なくとも、残り5ヵ月間で日韓間に大きな動きはないと信じたいところです。
基本は3つしかない「落としどころ」
いちおう、念のために繰り返し申し上げておくならば、日韓間の諸懸案の「落としどころ」については、基本的には次の3つのいずれかしかありません。
日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
- ①韓国が国際法や国際約束を守る方向に舵を切ることによって、日韓関係の破綻を回避する
- ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することによって、日韓関係の破綻を回避する
- ③韓国が国際法や国際約束を守らず、日本も韓国に譲歩しない結果、日韓関係が破綻する
(【出所】著者作成)
いうまでもなく、自称元徴用工問題の本質のひとつは、韓国の司法と行政による日韓請求権協定破りです。そもそも韓国の司法府が請求権協定に違反する判決を下したこと、日本政府がこの問題を請求権協定に従って解決しようとしたのに、韓国政府がそれに応じなかったこと、という、「二重の国際法違反」問題にあります。
また、自称元慰安婦問題は韓国政府による「日韓慰安婦合意」破り、韓国の司法府による「主権免除違反判決」など、国際法や国際約束などに違反する行為です。
さらに、竹島問題は、そもそもの1952年の「李承晩(り・しょうばん)ライン」が韓国による国際法違反であり、それに続く竹島の占拠も国際法の根拠を欠いた不法なものであって、本来ならば日本が譲歩する余地は1ミリもありません。
ただし、昨日の『虚構に基づく神聖性が支配する国』などでも議論したとおり、結局のところ、日韓双方で、「膠着した日韓(韓日)関係を打開するためには日韓(韓日)双方による協議が必要だ」、といった議論が出て来る理由は、上記①が期待できないからでしょう。
「神聖なXX」。この「XX」に入るのはK防疫であったり、独島であったり、慰安婦であったり、とさまざまですが、共通しているのは「虚構である」という点です。つまり、虚構に基づく神聖性、というわけです。昨日の『鈴置論考「失敗国家に進む韓国:K防疫は神聖な存在」』でも取り上げた韓国観察者の鈴置高史氏の論考に含まれていたキーワードなども手掛かりに、こうした「虚構」に深く依存した国とどう付き合うかについて考察してみましょう。神聖性で読む韓国最新の鈴置論考昨日の『鈴置論考「失敗国家に進む韓国:K防疫は神聖... 虚構に基づく神聖性が支配する国 - 新宿会計士の政治経済評論 |
結論がおかしい「日韓関係改善論」
ちなみに、「日韓関係改善論」を想像すると、おそらくはこんなストーリーです。
「日韓関係改善論」【想像ベース】
- ①日本にとって現在の韓国は、経済・産業上も、外交・安全保障上も、大変に重要な国である。
- ②しかし、韓国が日本との間でさまざまなもめ事を起こしており、これらについて国際法や国際社会の常識に従った解決も期待できない。
- ③だからこそ、日本が国際法に拘泥するのではなく、多少とも韓国に譲歩し、日韓関係の破綻を防ぐべきだ。
(【出所】著者作成)
この「三段論法」、①と②の部分については賛同していただける方が多いとは思いますが、その流れで③の部分を捻じ込もうとするのには感心しません。
この手の「韓日双方が話し合い」云々の主張は、「韓国が」「一方的に」不法行為を日本に対して仕掛けているという事実を無視した不当なものでもありますし、また、ほんの少しでも日本が譲歩することを前提とした議論自体、本来ならば決して受け入れるべきものではありません。
むしろ、著者自身に言わせるならば、③の部分は次のように書き換えた方が良いと思うのです。
「日韓関係テーパリング論」
- ①日本にとって現在の韓国は、経済・産業上も、外交・安全保障上も、大変に重要な国である。
- ②しかし、韓国が日本との間でさまざまなもめ事を起こしており、これらについて国際法や国際社会の常識に従った解決も期待できない。
- ③もしも韓国が国際法を守らないならば、日本は経済、産業、外交、安全保障などにおける韓国の重要性を下げるべきだ。
(【出所】著者作成)
いずれにせよ、おそらく本日以降、韓国メディアに「韓日関係改善論」のようなものが掲載されるかもしれませんので、あらかじめ牽制しておきたいと思う次第です。
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>「注目すべき部分」がある
あたしにとっては
>夕食会で、韓国の鄭義溶外相と短時間の立ち話を行った。
って部分かな?
着座してると立ち話はできないだろうから立食形式だったのかな?って気になっちゃったのです♪
今回のG7外相会議に先立ち、外務省幹部が「日韓外相会談は行わない」と明言していたという情報があります。そのために韓国語通訳を同行させていないとか。
その情報が正しいとすると、今回の「会談」はほんの数分の「立ち話」以上のものではなかっただろうと想像されます。イギリス外相主催の夕食会という場で、移動中に「捕捉」されたら、さすがに全く無視するというわけにもいかず、挨拶くらいには応じるでしょうし、そこで先方がなんやかんやと言ってきても、まともには応じないでしょう。「平行線」というのはかなり丸めた表現で、実態としては、鄭外相がいろいろと持ち掛けようとしたが、林外相は取り合わなかったと言うあたりだったのではないかと想像します。
まあ、韓国メディアはいろいろと手前勝手に報じるでしょうが、気にしなくても良いのではないでしょうか。
>鄭外相がいろいろと持ち掛けようとしたが、林外相は取り合わなかった
「立ち話 あゝ断ち話 立場なし・・。」
m(_ _)m
*情景が浮かびます。
巧い、座布団進呈です。今朝は1枚ということで
はにわファクトリー様
評価していただきありがとうございました。
韓国では大統領の一存で何でもできるから
日本との外交交渉でも、トップ会談で何でもできると勘違いするらしいね
大統領制と首相制の違いは日本では中学生でも知っているのだが、、、
ハンギョレから
韓日外相、G7外相会合機に「短時間の立ち話」…隔たりを再確認
https://news.yahoo.co.jp/articles/f0c58ef5b243169487fc6a3571d42aec01d80f9a
>両長官は同日の対話で「朝鮮半島の恒久的平和定着などに関し韓日、韓米日の協力の重要性を確認」し、「今後、韓日関係を発展させていくため、両国外交当局間で緊密に協議し、意思疎通を図っていくことにした」と外交部は明らかにした。
日本政府が、否定しない範囲の内容の発表ニダ。
韓国には、
「ここはG7であり、おまエラはオブザーバー参加に過ぎない」
という躾が必要です。
でも、G7の場で、棒で殴るわけにはゆきませんね。
殴る代わりに?横流しや背取りの件で吊し上げるのもまた…
瀬取りでありますスミマセン
古書店通いがご趣味だったりしますか?
紳士アリさんの「事案が発生」ワロタw 林外相がピアノ弾いたあと立ち話した、みたいな雰囲気だったらしい。イギリスだったせいかみんなマスク不着用だったみたいですが。
https://nordot.app/842571077471141888
米韓会談もなかったそうでアメリカに対する「日本と対話しているニダ」ポーズにもなってないとは思いますが、まあ外交関係部署ですから向こうが来たらよほどのことがない限り対応しなきゃいけないですしね。日韓には外交局長級定期協議もありますし。外交以外の局長級協議があればニュースにもなりますが、紳士アリさんももう日韓外交協議はしばらく取り上げないと言ってたし、冷めたピザどころじゃないですね。
韓国語通訳がいなかったということは日韓両外相とも英語で立ち話ということだったのでしょうか。通訳を介さないため言語の違いによる尾ひれを付けにくいので韓国側もあまり粘らなかったのかな。しかし立ち話だったのが、あちらでは「会談」したことになっていそうです。
>この手の「韓日双方が話し合い」云々の主張は、「韓国が」「一方的に」不法行為を日本に対して仕掛けているという事実を無視した不当なものでもありますし、また、ほんの少しでも日本が譲歩することを前提とした議論自体、本来ならば決して受け入れるべきものではありません
もし日本の立場が韓国より弱ければ、この様なイチャモンもまともに対応しないといけなかったんだろうな、と思うと、筋やルールを守るにはそれなりの力や力関係が要るって感じますね。
例えば、コンビニさんではお箸とかを自由に取れるように準備してありますが、弁当を一個買ったお客さんがごっそり箸を持って行こうとした場合に、腰を低くして「箸は弁当一個につき一膳です」とか言わないと、勘違いした購入者が「店員の姿勢が気に入らない!」とか、自分の非常識さを棚に上げて店に文句を言うでしょうから。
ルールやマナーを守っている分には「客」だけど、なんらかの逸脱があった時点で最早「客」では無いのに、其れでもなお「客」扱いをされようとする厚かましさ、ってところですかね。
クロワッサン 様
>ルールやマナーを守っている分には「客」
その通りだと思います。
さすがに、何も買わず断りもなく持参したカップ麺に湯を注ごうとしたお客様?にはお帰り願いました。「わたしお腹すいてるんですけど」と苦悩を述べられても知ったことではありません。
変人に散々苦労す(◞‸◟)♪
本当に散々苦労す・・。
↑こんなうたが脳裏を駆ける季節です。
カズ さん
ユーミンのメロディが頭に流れる訳ですね(;^_^A
何も買わず断りもなく持参したカップ麺に湯を注ごうとするなんて、もうお客様じゃなく単なる来店者ですよね。
お帰り願った時にモンスタークレーマー化しなくて良かったですね。
今後も、立ち話やあいさつ程度の扱いにしてほしいですよね。今回もただの立ち話なのに、やや話を盛ってる感がありますが、永遠に話す議題がない・妥協しあうことはなさそうです。永遠に‥‥が望ましいところ。日本国民の支持次第ですが。何をどうしたいのかよく分からない「関係改善」の声が大きくならないように注意していきましょう。
「関係が悪化」してるのではなく、「韓国がウソをつく・法を守らない」だけなのですから。
どちらが要求したかなんて、韓国からに決まってるじゃないか・・・・・・・とも言いきれない岸田政権(涙)。