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鈴置論考「失敗国家に進む韓国:K防疫は神聖な存在」

鈴置高史氏が「韓国の幼いナショナリズムがK防疫を神聖な存在に押し上げた」と指摘したうえで、「韓国は失敗国家に向かって突き進んでいる」と警告を発しました。今回の鈴置論考、テーマは「K防疫の失敗」ですが、これを敷衍していくと、まさに現代韓国論そのものであるように思えてなりません。

2021/12/22 12:20 追記

オリジナル記事は12月11日に公表したものですが、文末の誤植などを修正したうえで再度、公表します。

対日不法行為の数々

以前からしばしば申し上げてきたとおり、韓国で文在寅(ぶん・ざいいん)政権が2017年5月に発足して以来、同国の日本に対する不法行為がとくに加速しています。

そのなかでも自称元徴用工判決(2018年10月・11月)、火器管制レーダー照射事件(同12月)、日本の対韓輸出管理適正化措置(19年7月)に対するGSOMIA破棄騒動(同8月~11月)などには、ふだん日韓関係に関心を持っていない人も「驚いた」というケースは多かったのではないでしょうか。

ただ、忘れてはならないことがひとつあるとしたら、韓国の日本に対する不法行為は、べつに文在寅政権下だけで発生していたわけではない、という事実です。

たとえば、日本固有の領土である島根県竹島は、1952年に韓国が「李承晩(り・しょうばん)ライン」を一方的かつ違法に宣言して以降、韓国が不法占拠を続けていますし、また、折に触れて竹島問題で韓国は日本を挑発してきています。

当ウェブサイトでは、竹島問題の本質は、歴史的に見てほとんど日本に勝ったことがない韓国が、「日本から領土を自力で取り返した」という虚構を楽しむことにあると見ているのですが、いずれにせよ重要なことは、韓国が法的根拠なしに竹島を不法占拠しているという事実でしょう。

また、2012年10月には韓国人窃盗団が日本の対馬にある観音寺から仏像などの文化財を盗み出し、一部は韓国国内で押収されたものの、そのうちの仏像の一体がいまだに日本に返還されていないという騒動も発生しています。

ユネスコ「文化財不法輸出入等禁止条約」という条約に基づけば、窃盗された文化財はただちに日本に返還されなければならないところ、韓国の「浮石寺」が該当する仏像について、「五~六百年前に倭寇により盗まれたものだ」、などとするムチャクチャな理屈で所有権を主張しているのです。

いずれにせよ、島から仏像に至るまで、韓国は日本のさまざまなものを盗み、それを返さないという意味での不法行為を働いています。韓国が日本に不法行為を仕掛けてくるのは、文在寅政権以降に始まったものではないのです。

(※余談ですが、『フランス文化相が文化財の韓国貸与で押収リスクに言及』でも触れたとおり、現在、韓国は国際社会から「文化財を貸与したら押収されるリスクがある国だ」と認識されているようなのですが、これはこれで韓国の自業自得と言えるかもしれません。)

韓国の文化体育観光部長がフランスの文化相に対し、韓国への文化財貸与を要求したところ、フランス側は「押収リスク」を持ち出した、とする話題がありました。なぜいきなり「押収」という話題が出て来るのかわかりませんが、個人的な見解に基づけば、2012年10月に韓国の窃盗団が日本の対馬から仏像を窃盗した事件とは無関係ではないと思う次第です。仏像の窃盗事件かなり以前の『韓国が盗んだ仏像は日韓スワップの「身代わり地蔵」か』では、2012年10月に発生した、対馬の神社・仏閣などから韓国人窃盗団が仏像や仏典などの財宝を盗み...
フランス文化相が文化財の韓国貸与で押収リスクに言及 - 新宿会計士の政治経済評論

慰安婦像問題

早くも慰安婦像から10周年

こうしたなか、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)を眺めていたら、昨日、こんな記事がありました。

日本大使館前の少女像設置10年 韓国団体がきょうシンポ

―――2021.12.10 14:01付 聯合ニュース日本語版より

これは、自称元慰安婦らの支援団体「正義連」が、ソウルの日本大使館前に「少女像」(※慰安婦像のこと)を設置して10周年を記念するシンポジウムを開く、という話題です。

これもなかなか驚く話です。

この「正義連」は、現在の国会議員でもある尹美香(いん・びこう)元代表が、同団体に寄せられた寄付金や補助金などを私的流用したなどとして、刑事告訴されていることでも知られている組織です(『自称元慰安婦問題とは結局、韓国自身が解決すべき問題』等参照)。

自称元慰安婦問題を巡っては、当ウェブサイトでもかなり以前から追いかけてきたもののひとつですが、これに関して昨日から本日にかけ、興味深い話題がいくつか出て来ました。資金使い込み疑惑で起訴されている元代表が、その資金を焼肉、菓子、交通違反の反則金などに流用していたとされる話題です。そして、今日も自称元慰安婦の支援団体が大使館前で大騒ぎしたようです。自称元慰安婦問題と「使い込み疑惑」自称元慰安婦問題は、次のとおり、端的に言えば「与太話」、「捏造の塊」のような問題です。「①戦時中(1941年12月9日~1945...
自称元慰安婦問題とは結局、韓国自身が解決すべき問題 - 新宿会計士の政治経済評論

そもそも論ですが、外国公館(大使館や領事館)の前にヘンテコな構築物を置いたり、大騒ぎしたりすることは、「外交関係に関する1961年ウィーン条約」第22条第2項に違反しています。

Article22 of Vienna Convention on Diplomatic Relations, 1961
  1. The premises of the mission shall be inviolable. The agents of the receiving State may not enter them, except with the consent of the head of the mission.
  2. The receiving State is under a special duty to take all appropriate steps to protect the premises of the mission against any intrusion or damage and to prevent any disturbance of the peace of the mission or impairment of its dignity.
  3. The premises of the mission, their furnishings and other property thereon and the means of transport of the mission shall be immune from search, requisition, attachment or execution.

(【出所】国連ウェブサイト “Vienna Convention on Diplomatic Relations, 1961” 【※PDF】)

外交関係に関するウィーン条約第22条
  1. 使節団の公館は、不可侵とする。接受国の官吏は、使節団の長が同意した場合を除くほか、公館に立ち入ることができない。
  2. 接受国は、侵入又は損壊に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害または公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する。
  3. 使節団の公館、公館内にある用具類その他の財産及び使節団の輸送手段は、捜索、徴発、差押え又は強制執行を免除される。

(【出所】外務省ウェブサイト『外交関係に関するウィーン条約』【※PDF】)

慰安婦像問題解決は慰安婦合意でも謳われていた!

条文にいう「公館(the premises of the mission)」とは、この場合、在韓国日本国大使館ないし総領事館のことであり、「接受国(the receiving State)」とは、この場合、韓国政府のことです。

それなのに、韓国政府はこの「前代表が詐欺容疑で起訴されている団体」が設置した「国際条約に抵触する構造物」を、10年間、放置し続けた、ということです。

なんだか、とても脱力してしまう話です。

しかも、この慰安婦像が設置されたのは、2011年12月14日、すなわち日本を東日本大震災が襲った年です。韓国は大震災で傷ついた日本に対し、このような「追い打ち」をかけてきたのです。

ついでに申し上げるならば、欧州債務危機で韓国からの資本流出リスクが高まっていた時期に、日本の野田佳彦首相(当時)が李明博(り・めいはく)大統領(当時)との間で、日韓通貨スワップ協定を総額700億ドルにまで大幅増額することで合意した直後のタイミングでもあります。

日韓通貨スワップという多大な「恩」を、国際法に違反した慰安婦像という「仇で返す」国が韓国だと考えると、本当にやりきれなくなります。

また、慰安婦像の問題点は、それだけではありません。

じつは、日本で安倍晋三政権が、韓国で朴槿恵(ぼく・きんけい)政権が発足して以降、この慰安婦像の問題については、いちど日韓間で「韓国が解決に向けて努力する」ことで合意されているのです。

これが、2015年12月28日の、いわゆる日韓慰安婦合意です。

韓国側と合意を交わしてきた日本側の責任者は、当時の外相だった岸田文雄・現首相であり、また、韓国側の責任者は、尹炳世(いん・へいせい)外交部長官(当時)です。

【参考】いわゆる「日韓慰安婦合意」(2015年12月28日)のポイント
  • ①慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感し、安倍晋三総理大臣は日本国を代表して心からおわびと反省の気持ちを表明する。
  • ②韓国政府は元慰安婦の支援を目的とした財団を設立し、日本政府はその財団に対し、政府予算から10億円を一括で拠出する。
  • ③韓国政府は在韓国日本大使館前に慰安婦像が設置されている問題を巡って、適切に解決されるように努力する。
  • ④上記②の措置が実施されるとの前提で、日韓両国政府は、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されたことを確認し、あわせて本問題について、国連等国際社会において互いに非難・批判することを控える。

(【出所】外務省HP『日韓外相会談』より著者作成)

慰安婦像は日韓関係の象徴

いかがでしょうか。

改めて慰安婦合意の項目③を読んでみると、韓国政府は日本大使館前に慰安婦像が設置されている問題を「適切に解決されるように努力する」とハッキリ約束しています。

それなのに、この問題は今日に至るまで、まったく解決されていません。

慰安婦合意から今年でもう6年が経過しますが、この問題を韓国政府はいったいいつまで放置し続けるつもりでしょうか。

決断力のなさ、調整力のなさでも知られる岸田文雄首相は「韓国に2度も騙された政治家」でもありますが、運命は不思議なもので、慰安婦合意の責任者が日本の首相を務める時代がやって来てしまったのです。

いずれにせよ、慰安婦像は建立の経緯から放置され続けている点に至るまで、さまざまな面で、日韓関係(というよりも韓国という国の存在そのもの)を象徴しているといえるのではないでしょうか。

最新鈴置論考と韓国のナショナリズム

鈴置氏「幼いナショナリズムが生む国家の蹉跌」

こうしたなかで、昨日はウェブ評論サイト『デイリー新潮』に、こんな記事が掲載されていました。

「K防疫のまやかし」から韓国人は目覚めるか 幼いナショナリズムが生む国家の蹉跌

世界一のコロナ対策と韓国人が誇ってきた「K防疫」。そのお膝元で感染者が急増、12月には医療崩壊も始まった。なぜ、国民こぞって「まやかし」を信じてきたのか――。韓国観察者の鈴置高史が解説する。<<…続きを読む>>
―――2021年12月10日付 デイリー新潮『鈴置高史 半島を読む』より

執筆者は韓国観察者の鈴置高史氏で、記事自体はウェブページで5ページ分、文字数に換算して6000文字近くに達する長文です。ですが、いつもながらの平易な語り口調、豊富な証拠付きの議論は、読者を知的好奇心の渦に引き込み、まったく飽きさせません。

長文であるにもかかわらず、朝鮮半島問題に関心がある人であれば、あっというまに読み終えるだけでなく、「もっと読みたい」「続きが見たい」と、逆の意味でフラストレーションを感じてしまう記事でもあります(あるいは、子供のころ、アニメ番組の続きが見たいと思ったような心理でしょうか)。

鈴置氏「韓国は失敗国家に向け突き進む」

今回の記事は、記事タイトルに「幼いナショナリズム」とあるとおり、「K防疫」に関する解説でもありますが、じつはさらに深い、ファンダメンタル的な記述も多々出て来ます。

乱暴に要約するならば、昨今の新規陽性者の急増で「K防疫」を掲げる文在寅政権への批判が高まっているものの、「『神聖な存在』に対しては、批判の矛先が鈍る」、という指摘です。

K防疫自体は当ウェブサイトでも『「K防疫」韓国で連日7000人台と「医療崩壊」懸念』などで議論したとおりですが、鈴置論考ではこれに韓国メディアの社説などを豊富に引用しながら、「大統領は批判するがK防疫は批判し辛い」という韓国社会のジレンマを説明しています。

新規陽性者数は日本では下げ止まりつつありますが、それでも諸外国と比べ突出して少ないのはたしかです。その一方、韓国で新規陽性者が激増中であり、連日7000人台を記録しています。人口比で考えたら日本でいう2万人弱であり、最悪期だった8月の状況と比べればマシですが、それでも漏れ伝わる報道によれば、医療崩壊ではないかと懸念される兆候も出て来たようです。日本の新規陽性者数は1日100人前後でほぼ安定新型コロナウィルス・武漢肺炎を巡っては、日本では連日、新規陽性者数が全国で100人前後、東京都でも20人弱で、ほぼ安...
「K防疫」韓国で連日7000人台と「医療崩壊」懸念 - 新宿会計士の政治経済評論

そのことを端的に示したのが、次の一文でしょう。

もちろん、文在寅政権の防疫失敗や自画自賛は非難するでしょう。でも、K防疫そのものは批判しにくい。なぜなら、『K防疫』という言葉には政府の手柄だけではなく、『韓国人一人ひとりが優秀である』との含意もあるからです」。

このあたり、表層的な社会事象から一気にファンダメンタルを描き出す手法は、見事というほかありません。

また、コロナ流行初期の「K防疫幻想」が昨年4月15日の国会議員総選挙で政権与党「ともに民主党」を圧勝に導いたこと、その「K防疫」とやらの実態が非常にお寒いものであったことなどについては、鈴置論考で非常に具体的かつ正確に指摘されています。

ただ、個人的に今回の鈴置論考でいちばん気になったのは、こんな記述です。

韓国は失敗国家に向かって突き進んでいます。外交では米中二股を目指したあげく、米中双方からまともな国として扱われなくなりました。内政では左右対立が激化する余り、せっかく芽生えた民主政治が壊れ始めています」。

すなわち、一連のK防疫を巡る混乱も、ファンダメンタル面では「失敗国家に向かって突き進む」という方向性がもたらしている現象のひとつ、といえるのかもしれません。

K防疫は神聖な存在なのです

さて、今回の論考のなかで、鈴置氏はこう指摘します。

本来なら、メディアがこの危うい状況を国民に率直に説明して、奈落の底に落ちるのを食い止めるべきでしょう。ところがメディアの論調は極めて歯切れが悪い。『韓国はすごいぞ!』と国民のナショナリズムに火を付けた結果、今さらそれを否定して国民から総スカンを食うわけにはいかなくなったのです」。

大統領は口を極めてののしっても依然、K防疫は神聖な存在なのです」。

鋭い人ならピンとくるかもしれませんが、ここで「K防疫」をさまざまな表現に置き換えても、同じ文意は成り立ちます。

普段から当ウェブサイトで議論してきたとおり、どうも韓国では、そもそもの事実認定が軽視されるきらいがあります。2021年1月8日の、いわゆる「主権免除違反判決」に関してもそうでしょう。

その意味では、K防疫を敷衍(ふえん)していくと、まさに現代韓国社会そのものにぶち当たるように思えてならないのですが、いかがでしょうか。

新宿会計士: