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    Categories: 外交

米国が北京冬季オリパラ「外交ボイコット」を正式表明

米ホワイトハウスのサキ報道官は北京2022オリパラに関し、事実上の「外交ボイコット」をする方針を明らかにしたようです。といっても、五輪自体をボイコットするわけではなく、あくまでも「政府代表を送らない」というものです。こうしたなか、日本は欧米諸国の対中人権制裁に同調しなかった過去もあります。日本がFOIPを推進するという立場にあることを踏まえるならば、岸田政権には迅速な対応を期待したいところでもあります。

本日の「速報」です。

米国が来年の北京冬季オリパラに対し、外交官や政府代表などを派遣しないことを正式に発表したようです。

Press Briefing by Press Secretary Jen Psaki, December 6, 2021

―――2021/12/06付 ホワイトハウスHPより

米ホワイトハウスのジェニファー・サキ報道官は現地時間6日の記者会見で、北京五輪の外交ボイコットについて尋ねられ、次のように答えました。

“The Biden administration will not send any diplomatic or official representation to the Beijing 2022 Winter Olympics and Paralympic Games given the PRC’s ongoing genocide and crimes against humanity in Xinjiang and other human rights abuses.“

意訳すると、「バイデン政権は北京2022冬季オリパラに外交的または公式の代表を送らないことに決めた」、「中国は新疆などでジェノサイド、人道に反する犯罪行為を継続するなど、さまざまな人権侵害などを行っている」、といったものです。

ただし、五輪自体をボイコットするわけではありません。選手団については派遣するからです。

“The athletes on Team USA have our full support.  We will be behind them 100 percent as we cheer them on from home.  We will not be contributing to the fanfare of the Games.“

なお、記者からの質問に対し、サキ氏はこれを「外交ボイコット」と呼ぶことに対し、「まるで1980年代を思わせるが、そうではない」、「我々は選手団については送り出す」と述べています。

“Everybody can call it whatever they want to call it.  I would just remind you that, often, when you use “diplomatic boycott” — that phrase — that brings people back to 1980, and we are not.  The athletes will be participating.”

ただ、バイデン政権の決定は、まさに外交ボイコットと呼ぶにふさわしいものでしょう。

まさに、中国が国威発揚の場と位置付けるであろう五輪で米国が事実上の外交ボイコットを正式に表明したことで、米中対立は新たな局面を迎えた、と言えるかもしれません。

わが国がこれにどう対処するかについては現時点ではよくわかりませんが、このあたり、一部では「親中派」と懸念される、外相に就任したばかりの林芳正氏が、即座に日本も追随して外交ボイコットをすると打ち出すのかどうかには注目したいところです。

また、岸田文雄首相も一部では「決断力がない」などと揶揄されていますが、オミクロン株の蔓延を受けて入国制限を発動したこと(『【速報】オミクロン防疫:すべての外国人入国を禁止へ』等参照)のような迅速な決断ができるかどうかも、今後の政権の方向性を占ううえでのポイントかもしれません。

岸田首相は本日、アフリカで確認された「オミクロン株」の防疫などを目的に、すべての外国人の入国を30日以降禁止すると述べました。また、観光目的の入国について年内をめどに再開の検討に入るという方針については、岸田首相は会見で明言はしませんでしたが、現実的には厳しいのかもしれません。(※なお、18:00付で誤字の修正を加えています。)本日の「速報」であり、メモ的に紹介します。新型コロナウィルスに関連し、アフリカで確認された「オミクロン株」の防疫などを目的に、岸田文雄首相は先ほど、「すべての外国人の入国を禁...
【速報】オミクロン防疫:すべての外国人入国を禁止へ - 新宿会計士の政治経済評論

なお、個人的には米中対立局面で日本が米中双方に対し良い顔をするという選択肢はないと考えており、また、『中国に経済制裁をするための大きな課題は「法の不備」』でも指摘したとおり、欧米諸国の対中協調制裁に日本は同調しなかったという過去もあります。

そもそも基本的価値を共有しない国と関係を深めて良いのか加藤勝信官房長官が昨日の記者会見で、中国による新疆ウイグル自治区の人権侵害を巡る外為法の経済制裁を巡り、「人権問題のみを直接・明示的な理由として制裁を実施する規定はない」と述べました。これについては当ウェブサイト、あるいは拙著『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』でも説明した論点と重なっているのですが、せっかくの機会なので、あらためて「経済制裁と相手国との付き合い方」について考えておきましょう。加藤官房長官が経済制裁に言及加藤勝信官...
中国に経済制裁をするための大きな課題は「法の不備」 - 新宿会計士の政治経済評論

やはり、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を推進するという立場上、ここは迅速に、「日本も同調する」と発表して欲しいと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (41)

  • 中国は「コロナだし」「そもそも呼んでないし」と言い始めてダメージ軽減を図り始めました。
    岸田氏には渡りに船でしょう。

    • 上のコメントは元ジェネラリストの提供でお送りしました。

    • 情報が古かったです。
      「ボイコット発表するかも」の報道を受けて、昨日時点で中国は「断固とした対抗措置」と喧嘩を買う姿勢になっていたようです。
      そこへ米国が正式発表の流れです。

      中国、外交ボイコットに報復予告 招待しない姿勢も―北京五輪
      https://www.jiji.com/jc/article?k=2021120600878&g=int

      ただ、「コロナなので招待しない」はまだ残ってると思います。

  • 何が有っても中国は、オリンピックを開催するでしょう。
    日本政府が、速攻で「外交ボイコット」を打ち出すのは、得策とは思えません。
    しばらく様子見して、米中に対するカードとして取って置くのが、正解だと思います。
    現時点で、必ずしも日本がアメリカに同調する事が、ベストの判断だとは思いません。

    • 私もそう思っています。
      今のタイミングでアレコレ騒ぐことが、単にアメリカの追従のように見えてしまえば、日本を矮小化させることにもなります。
      気持ちはわからなくもないですが、「北京オリンピックをボイコットすればいいんだぁ!」とする主張を実行しても、何か改善できるのか疑問ですから。
      この種の主張は、北京オリンピックよりも中国における人権問題の改善などが目的ですから、オリンピックの外交ボイコットが目的となるような視点でとらえず、問題解決における効果的な結論をタイミングを見て出せばよいと思います。

    • 急いで同調する必要はないでしょうね。当面は記者に聞かれたら、「オミクロン株の動きが解明されてから判断したい」と答えておけば十分でしょう。
      でも、おそらく数日中にも、中国から「外国政府首脳を招待しない」旨アナウンスがあると思いますので、それを受けて「残念だ」くらいのコメントをしておけばOKでしょう。そもそも、東京に中国政府高官って来てましたっけ?ちょっと記憶にはないのですが。

      まあ、これで某国が目論んでいた北京五輪の政治利用への道は完全に閉ざされましたね。

      • 龍さま
        「アメリカ抜きで終戦宣言する」という荒技が有ります。
        ウリナラは、そう簡単に諦めないニダ。

    • それでは韓国の大好きな外交のやり方と本質的に同じですよ.

      日本の同盟国はどこなのか,その国との同盟なしで日本の国防が成立するのか,そして韓国があの外交のやり方で米中から信頼を得られているかもう一度考えてみましょう.

  • 中国は確か、ボイコットに対して、報復を予告していたような。。。

    選手団は送るという事ですが、人質にならないか心配です。
    選手も行かない方がいいのではないでしょうか。

  • 米国が政府関係者を送らない政治的ボイコットを主張するのであれば
    日本は選手も送らないボイコットを実行するのですよね~。
    女性差別だといっいって森会長を辞めさせたのだから、元祖女性差別国の
    中共で開催されるオリンピックには参加できないよね。
    NHKを始めマスコミが声高にコロナだから東京オリンピック中止せよと報道してきたので
    武漢コロナウィルス原産国には行けないよね~。
    記者は中共から保護されるとして、選手は中共から保護されないから
    中共の事を悪口を言ったという名目で簡単に懲役刑までいける国ですからね~。
    態々学術会議めいたものを拵えて、学者を呼び込み牢に入れる国なんですよ。
    そういえば、女性差別問題で叫んでいた「いわゆるフェミ連中」が口を閉じているのは
    やはり共産党の下部組織だと自白しているようなものですよ。

    • ちょろんぼ 様
      中国の女子テニス選手行方不明疑惑もありますしね。
      なぜかMeToo界隈、他女性の人権を訴える方々はその件についてはダンマリです。

  • 独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (そう自分に言い聞かせないと、素人が舞い上がってしまうので)
    「東京オリンピックの時と同じく、新型コロナが心配なので、北京冬季オリンピックへの政府関係者の派遣は、見送ります」と、(日本も含む)世界各国が言い出しそうです。
    駄文にて失礼しました。

    • すみません。追加です。
      「韓国の文大統領が北京冬季オリンピックに行くのか」という注目点が出てきました。もちろん、「北京冬季オリンピックでの米朝韓高官の会合」という韓国の夢は、なくなりましたが、「北京冬季オリンピックでの南北首脳会談のために、文大統領が北京にいく」と発表するかもしれませんが。(北朝鮮が、同意しているかは分かりません)
      駄文にて失礼しました。

  • 一番がっかりしたのは政治的に利用できなくなったブンブンだろうな、と、思いました。

  •  日本の選択肢は多くないので、最終的には英米に追随だと思います。米ではなく英米です。中国による報復の内容を確認して、イギリスが何からの動きをするので、日本はそれに追随すればいいと思います。
     というのも、五輪外交ボイコットそのものが悪手だからです。目的は中国の人権問題改善であり、五輪外交ボイコットはそのカードだったはずです。ボイコットすれば中国のメンツがつぶれるから、中国側からウイグル人やテニス選手に関する情報開示をしろというカードだと思っていましたが、この段階でアメリカがそのカードを切る(実質捨てる)とは思いませんでした。イギリスならもう少しうまく立ち回ると思います。

  • アメリカは他国には同調を強要しないと言いながら、その実、踏み絵を世界に撒きましたね。中国が外交使節団は招待しないと言っているのだから、賛否については沈黙を通しながら使節を派遣しない方法も取れます。しかし、日本は今中国の顔色を伺うようなことをすると国際的な信頼を損ねてFOIPも霧散しかねません。既に日本は政治的に尖閣諸島、台湾を通して中国と決定的に対立しているのだから、アメリカに同調すると宣言する方がしないより得です。
    バイデン大統領は実質的な損害を抑えながら、各国の腹の座り具合を確かめる上手い手を考えました。

  • 引きこもり中年さま
    「韓国の文大統領が北京冬季オリンピックに行くのか」

    行くんじゃないかな。
    知らんけど。

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