「日本が強制動員の証拠出せ」と要求する自称元徴用工

「強制徴用された証拠を日本政府が出せ」――。こんな主張が韓国側の自称元徴用工から出てきたようです。ある意味で大変斬新な発想です。通常の法治国家なら、自分が被害者だと主張する異常は、その証拠を自分で出さなければならないのですが、韓国の自称元徴用工訴訟では、この「そもそも原告が被害者である」という事実をどう認定しているのかが疑問です。

自称元徴用工の3つの問題点

自称元徴用工判決問題、すなわち韓国の裁判所が「戦時中強制徴用された」と自称する者たちの訴えを認め、日本企業に損害賠償を命じた問題に関しては、当ウェブサイトではこれまでに何度となく申し上げてきたとおり、本質的には次の3つの問題点から構成されていると考えています。

自称元徴用工判決の3つの問題点
  1. 日韓間の請求権に関するあらゆる問題は、1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決済みであり、自称元徴用工判決はこの日韓請求権協定に違反する状態を作り出している。
  2. 韓国側が主張する「被害」の多くは、(おそらくは)韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである。
  3. 日本政府は2019年、日韓請求権協定に従って、韓国に対し外交的な協議や国際仲裁手続を申し入れるなど、平和的な問題解決に向けた努力を行ったが、韓国政府はこれらを無視した。

(【出所】著者作成)

ウソ、捏造のたぐいではないか?

このうち、世間的に焦点が当たっているのは、おもに1番目と3番目の論点であり、また、日本政府がおもに問題視しているのも1番目と3番目です。

ただ、個人的には2番目の論点についても欠かせないと考えており、この点についてはもっと強く主張しても良い問題ではないかと思うのですが、これに関連し、大変興味深い報道がありました。

韓国メディア『KBS』に掲載された、こんな記事です。

「厚生年金」の記録がないと言った日本… 強制動員隠蔽【※韓国語】

―――2021.12.02 12:34付 KBSより

リンク先記事は韓国語のものですが、翻訳エンジンなどを活用しながら読み解くと、こんな趣旨のことが書かれているようです。

  • 日本の戦犯企業・三菱に強制動員被害への賠償を命じる大法院判決から3年が経過したが、賠償を受けるためには高齢の被害者が強制動員の被害を受けた事実をみずから立証しなければならないのが現実だ
  • しかし、日本政府はその重要な証拠である厚生年金資料を欠いていたり、また、規定を変更することで年金手当を受けることを難しくしたりしてきた

…。

このあたり、大変に不思議な気がします。

韓国側が主張するのは、「強制徴用被害者」(※自称元徴用工のこと)は「強制徴用されて日本で働かされた」はずなのに、厚生年金(※)に加入できたというのは、これが「強制徴用工」ではなく「応募工」だった証拠に思えてなりません。

(※なお、厚生労働省HPの記載によると、「労働者年金保険法」は1942年に制定され、1944年に「厚生年金保険法」に改称されているのだそうです。)

相手国に「証拠を出せ」という不思議

また、「賠償を受けるためには強制動員の被害を受けた事実をみずから立証しなければならない」というのは、まともな法治国家の場合は当たり前の話であり、韓国の裁判ではこのあたりの「原告が被害者だ」という認定が大変に甘いという問題点もあるようです。

そして、KBSによると、昨年3月に(自称)被害者11人が「強制動員」された事実を確認するために、日本年金機構に厚生年金加入記録照会を申請したものの、「記録がない」という答えが返ってきた、などとしています。

このあたり、日本の年金機構の事務処理能力が恐ろしく低いという点は否定しませんが、「自分たちが被害者だ」と主張するのなら、その「自分たちが被害者である証拠」を日本側に出せ、などと要求するというのも、大変に奇妙な行動です。

これについてKBSは、市民団体側が「被害者の追加訴訟を防ぐために資料を意図的に隠蔽しているのではないか」などと疑っている、としたうえで、次のように日本政府を断罪しているのです。

日本政府の偽りと隠蔽、そして韓国政府の無関心の中で強制動員被害者が賠償と謝罪を受けることができる時間はますます減っています」。

強制徴用ないし強制動員された、などと述べるのであれば、証拠を自分たちで出すのは当然のことであるにも関わらず、「日本が強制徴用の証拠を隠蔽している」というのも、すごい言いがかりでしょう。

いずれにせよ、「年金手帳を持っている強制徴用工」という表現の破壊力は強烈だと言わざるを得ないと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 禹 範坤 より:

    奴隷に年金?
    韓国の塩田奴隷の場合はどうでしたかね?

  2. サムライアベンジャー より:

     捕まった泥棒が、「俺が犯人じゃない証拠を調べろ!」と警察に求めるのに似てますねえ。まにを言ってるの???という感じ。

     思考が斜め上なのは知っていましたが、こうやって何度も見ると圧巻。会話が成り立たない人種のようです。ぜひ断交しましょう。

    1. がみ より:

      サムライアベンジャー様

      要するに頑張ってみたけど「強制動員」って思いつきの根拠がどこにもなかったんですね…

  3. j より:

    お疲れさまです。

    日本と韓国ではなく、別の国の二か国関係の問題として客観的に見ると、私は断行案件だなと思います。

    この問題を争点にせず、もりかけを争点にした政党は、議席を減らしています。

    共産党の市会議員さんも、「日本でこの問題で不満がうずまいているのは、わかっている。」と言ってました。

    やっぱり日本共産党は、他の国の共産党と違うと言っているけど、民主的ではないのかなと思いました。

    党内で大きく議論しても、よいのではないでしょうか?

  4. だんな より:

    >「年金手帳を持っている強制徴用工」

    貯金をしていた慰安婦もいましたね。
    要は金寄越せで、「韓国人なら誰でも補償を受けれる」と強制徴用工を集める詐欺が韓国国内で行われ、裁判所がその後押しをしていると考えた方が良いと思います。

  5. 匿名 より:

    >厚生年金資料

    「慰安婦の契約書」と同じく、紙切れになっちゃったから年金手帳捨てちゃったんですかね?

  6. ぴー より:

    日本は韓国を笑えないのではないでしょうか。モリカケ桜で似たようなことを(マスゴミが)してましたよね。連日証拠を出さず疑惑で一国の総理を、日本版魔女裁判で3年間つるし上げたあれは本当に韓国を笑えませんでしたよ(そのせいというかおかげというかそっから地上波を家族が見ているとき以外は見なくなったけど)。

    1. WLT より:

      ええ、だから我々は韓国みたいなことをしている
      マスコミとそれに加担している人を批判しているんですよ。

    2. はにわファクトリー より:

      日本のTVメディア、出版、報道に深く工作勢力が浸透しているのでは疑念を裏付ける状況証拠と思えます。素性国籍をつまびらかにされたくない社員多数がヤっているんじゃないでしょうか。

  7. 七味 より:

    新宿会計士様が読み解いてくれたKBSの記事なんですが、最初のとこから何言ってるのかよくわかんないのです m(_ _)m

    >日本の戦犯企業・三菱に強制動員被害への賠償を命じる大法院判決から3年が経過したが、賠償を受けるためには高齢の被害者が強制動員の被害を受けた事実をみずから立証しなければならないのが現実だ

    賠償を命じる判決が出てるんだったら、判決で得た権利を執行すればいいだけなんじゃないのかな?
    なんで「被害を受けた事実をみずから立証しなければならない」のでしょうか??

    事実認定なしに判決が出たってことなのかな?

    (。−`ω−)ン? K裁判、よくわからないのです♪

    1. クロワッサン より:

      七味さん

      《西日本新聞》ブレーキなき文政権 小出浩樹
      https://www.nishinippon.co.jp/item/n/682112/
      >私が特に「おや」と思ったのは、判決文に「事実認定」と呼ばれる最も基礎的な部分が見当たらないことだ。

      対日関連のK裁判に事実認定は原則不要だと思います(*・ω・)ノ

    2. 名無しの権兵衛 より:

      七味様へ
       今回の記事で「強制動員の被害を受けた事実をみずから立証しなければならない」のは、既に韓国大法院で勝訴判決を受けた「自称元徴用工」ではなく、そのおこぼれを受けるために、これから裁判所に訴えを提起しようとしている「自称元徴用工」の後続部隊だと思います。
       訴えを起こすために、自らが「戦犯企業」に強制徴用されていた証拠として、厚生年金資料の交付を日本年金機構に請求したのだと思います。いうならば「在籍証明」を求めたのでしょう。
       それさえあれば、後は、「戦犯企業に365日無休で、毎日16時間労働させられた」などという自らの証言があれば、裁判所は訴えを認めてくれるのだと思います。

  8. クロワッサン より:

    厚生年金手帳を持ってようが持ってまいが、日本政府からお金を預かった韓国政府が自称元慰安婦なり自称元徴用工なりにお金を払えば解決するお話しなんですけどね。

  9. 元一般市民 より:

    良く分からないなぁ。
    年金手帳を持っているにも関わらず年金記録が無い、ってことの方が強制動員の証拠になる可能性があると思うのだけど・・・
    何故、そこに気が付かないのだろう???

  10. めたぼーん より:

    結論ありきで判決出して、証拠は後付けって、どんな裁判なのかな。

    1. ちかの より:

      めたぼーん様
      あたおか裁判、でーすw

    2. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      「判決が先、評決は後回し」というやつだろ
      陪審員が日付の数字を足し会わせて金額に換算した超有名な物語での裁判
      事後法で気に食わない証人を強制退席させようともしていた
      韓国という国が生まれた時に見た裁判が、事後法で判決が先だったから
      韓国という国の弁護士が「先進国の裁判ってそういうものなんだ」と学習するのも当たり前ってわけだ

  11. 匿名 より:

    もともとが戦費調達の方便として始まった制度ですから何とも言えませんけど、年金がある強制労働なんて聞いたことありませんねぇ
    だいたい本当に年金手帳持ってんですかぁ?嘘臭いなぁ
    まぁ数年の掛金じゃ当時の貨幣価値を懸案しても雀の涙だしそれも日韓条約の賠償に普通に含まれてるでしょうに

  12. 立ち寄り人 より:

    毎日の更新御疲れ様です。今回の難癖はどちらかと言うと、【証拠を出せ】ではなく、記録がないという否定がほしかったのでないでしょうか?確実な証拠がない以上法治国家ならば「推定無罪」になるが、南朝鮮反日では「有罪」証拠になると思いますね。

  13. 頓珍韓 より:

    本来、判決出ていて、行政も手出しができないっていうなら、さっさと執行すれば済む話。
    日本としては「何を御託いっているんだ」、ということでおしまいなのです。
    ただ実際は、韓国は日本の報復が怖くて何もできないのです。
    だから対岸で騒いでいるのです。

    そもそも、このバカ騒ぎを真摯に解決しようとするのであれば、韓国の行政できることとして、今韓国が日本に仕掛けていることは国際法違反行為であることを認めて、事実に基づく証拠を日本に示すこと、が最低限すべきことです。
    しかし、韓国はやらない。
    いや、やれない。
    そりゃー、韓国の司法でさえもできないのですから。

    そして、重要な点は、韓国が事実を認定できないことと同様に、日本も韓国の原告が嘘をついていると認定はできないということがあります。
    「UMAは存在する」という主張に、「嘘だ」と断言することはできません。
    「嘘だ」と反論されてもいないのに「UMAがいないことを証明しろ」とは言う相当な馬鹿がいるのも滑稽ですが。
    故に、「UMAは存在する」という人が客観的な証拠を出さない限り、相手にはできないのです。
    これが常識であり道理であり、普遍的な価値をもった考え方です。
    だから今の日本は「韓国の原告はうそつきだ」とはハッキリとは言いません。
    ですから、まずは現実にある覆しようのない韓国の所業をもって、「韓国は国際法違反国家、約束破り国家」と日本は言い続けており、ミステリアスな話は一切無視をしているのです。

    韓国は「侮日」をすることが、この問題を解決できる方法だと思っているのでしょうか。
    それが自己実現できるやり方として認識しているのでしょうか。
    そうであれば本当に愚かですが、きっとそうではないのでしょう。
    韓国は、問題を解決したい、日韓関係を改善したいなど、そんな気はサラサラないのです。
    彼らの自己実現の目的が、それではないからです。
    だから、日本が構えば構うほど、韓国は喜ぶのです。
    結局は、日本の悪口を言うためだけに、言いがかりをつけているだけなのです。

    近年、日本が韓国を相手にしないことで、韓国の愚かさが際立っています。
    日本は、端的にいって「勝手に騒いで恥を晒してろ」という態度をしています。
    日本がしている態度は、以上のようなことに基づくものと、国際社会に認識していただくように努力し続けるべきでしょう。

  14. がみ より:

    韓国の反日活動家やVANKや捏造歴史市民団体は頭が悪い

    事実と異なるなら証拠を出せ

  15. たこぽん より:

    うちの90になる爺さんに年金が振り込まれて来ました。本人はすっかり忘れていたそうですが戦時中に三菱重工へ動員されていたときの分だそうで、いろいろ調査の結果いまごろ支給されたようです。
    当時の資料はまだ残っているみたいですね。
    動員とか徴用とか聞くと酷使されたような印象を持ちますが、すでに工場がフル稼働できるほどの原材料も届かず機械も故障しがち。仕事といえば工場内の掃除や機械の手入れなどばかりでほとんど遊んでいたそうです。

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