日本語には多数の同音異義語が存在しており、漢字を廃止したら社会的に大混乱が生じることが予想されます。こうしたなか、私たちの隣国・韓国では漢字を廃止しましたが、その韓国で今から約5年前、『理解が難しい日本式の漢字語をいつまで使うのか』という、どうにも理解に苦しむ記事が公表されていたようです。
日本語は漢字の存在を前提としている
著者が個人的に好きな論点に、「漢字の威力」というものがあります。
これは、漢字を使えば同じ時間で認識できる文字数が大変に多く、また、同じ音にさまざまな意味を持たせることができる、というものです。
論より証拠と言いますので、まずは次の文章を読んでみてください。
(A)「りっけんみんしゅとうのだいひょうせんがおこなわれているが、しゃかいてきにさまざまなぶつぎをかもしたにほんきょうさんとうとのきょうとうろせんをどうしていくのかをめぐり、だいひょうせんにしゅつばしている4にんのこうほしゃたちは、たいどをあきらかにしていない。こうしたしせいじたい、りっけんみんしゅとうがわたしたちゆうけんしゃ、こくみんのがわをむいていないというぎねんをいだかざるをえないものである。」
暇な方は、ストップウォッチを持って、実際に難病で読み終わるか確認してみてください。
そのうえで、次の文章を読んでみましょう。
(B)「立憲民主党の代表選が行われているが、社会的にさまざまな物議を醸した日本共産党との共闘路線をどうしていくのかを巡り、代表選に出馬している4人の候補者たちは、態度を明らかにしていない。こうした姿勢自体、立憲民主党が私たち有権者、国民の側を向いていないという疑念を抱かざるを得ないものである。」
もちろん、(A)と(B)はまったく同じ文章です。
ただ、おそらく当ウェブサイトの読者の方からすれば、(B)の方が圧倒的に読みやすいのではないかと思いますし、(A)の文章を読むためには、(B)の文章を読むのと比べ、下手をしたら数倍の時間が必要ではないでしょうか。
同音異義語を私たちは頭の中で漢字に置き換えている
日本語という言語をあらわす「ひらがな」「カタカナ」は、基本的に母音がアイウエオの5種類、子音が10種類の50音弱分しかありません(といっても、現実には、これに撥音、促音、長音、濁音、半濁音なども加わる入るため、言語学的には日本語の音韻はもう少し多くの種類があります)。
もしも表音文字だけで文章を作ろうと思えば、もう少し文章が長くなってしまいます。
そして、日本語はおそらく、漢字の存在を前提として言語が成り立っており、上記(A)の文章を耳で聞く人は、暗黙の裡に頭の中で(B)の文章を組み立てているのではないでしょうか。
そして、日本語には多数の同音異義語があります。「りっけん」といわれたら、「立件」、「立憲」などがありますし、「きょうさん」にも「共産」、「協賛」、「強酸」、「きょうとう」にも「共闘」や「教頭」、「しせい」にも「姿勢」、「市井」、「市制」、「市政」など、事例はいくらでもあります。
上記(A)の文章を聴いて、多くの日本人が頭の中で(B)のような文章をすらすら組み立てることができるというのは、ひとえに同音異義語を私たちが頭の中で適切な漢字に置き換えているからなのでしょう。
当ウェブサイトで「立憲民主党」をうっかり「立件民主党」と表記してしまうような誤変換がやたらとたくさんあるのは、著者がそれだけ不注意であるという点もさることながら、日本語に同音異義語がそれだけたくさんあるという意味です。
正直、多数の漢字を覚えておかねばならないという日本語の仕組みが、日本語を習得しようとする外国人にとっては大変な制約であることは想像に難くありません。
ただ、私たち日本人にとっては、この漢字かな交じり文こそが、日本語を日本語たらしめていることは間違いありません。
漢字を使わない韓国語
こうしたなか、日本語と(まったく同じではないにせよ)似たような言語構造を取っているのが韓国語でしょう。
現在、韓国語の文章には、基本的に漢字が使われていません。
このため、著者自身も韓国語の文章を読む際に、たとえば「素材、部品、装備」を略した「素部装」という表現が理解できず、小一時間悩んだ記憶もあります。日本語でいえば、「そざい、ぶひん、そうび」、略して「そぶそう」、というようなものだからです。
このあたり、各言語でどんな文字を使うか、どんな表記をするかはそれぞれの言語を使う国や国民が決めたらよい話ですので、韓国社会が漢字表記を追放したことで何らかの不都合が生じているのかどうかについては、純粋に韓国社会の問題です。
実際、韓国では漢字が用いられていないため、上記(A)(B)の設例だと、(A)のような文章が一般的なのだそうですが、ただ、さすがにこれだとあまりにもわかり辛いでしょう。
そこで、韓国では次の(C)のように、分かち書きが主流とされているようです。
(C)「りっけんみんしゅとうの だいひょうせんが おこなわれているが, しゃかいてきに さまざまな ぶつぎを かもした にほんきょうさんとうとの きょうとうろせんを どうしていくのかを めぐり, だいひょうせんに しゅつばしている 4にんの こうほしゃたちは, たいどを あきらかに していない。こうした しせい じたい、りっけんみんしゅとうが わたしたち ゆうけんしゃ, こくみんの がわを むいていない という ぎねんを いだかざるを えないものである。」
これだと先ほどの(A)と比べて多少読みやすいかもしれませんが、やはり私たち日本人にとって読みやすいのは、(A)でも(C)でもなく、(B)でしょう。
「脱日本式漢字語」で延々1400文字弱の記事
さて、韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)に本日、いまから5年近く前のこんな記事が、唐突にトレンドに上がっていたようです。
【寄稿】理解が難しい日本式の漢字語をいつまで使うのか
―――2017/01/29 06:03付 朝鮮日報日本語版より
執筆したのは「神学大学院大学」の「外来教授」と名乗る方で、「韓国人がよく使う言葉のなかに、理解が難しい日本式の漢字語、日本語、感じ、英語式表記が少なくない」、「習慣のように使っているのは残念だ」などとして、あとはひたすら、言い換えの例を挙げているという、なかなかに壮絶な記事です。
ほんの一例を挙げると、次のとおり、漢字語を次のように言い換えたらどうだ、という提案です。
- 「切取線」→「断ち切る線」
- 「敬語」→「敬う言葉」
- 「茶飯事」→「ありふれたこと」
- 「役割」→「やるべきこと」
ほかにも、「漢字語の日本語風の発音を韓国語風に言い換える」、「見習を修習」、「仮処分を臨時処分」のように、言い換えになっているのかどうかよくわからない表現がグダグダと1400文字弱も書き連ねられているという代物です。
通常、朝鮮日報の場合、記事は公表されてから数日経つと閲覧できなくなるのですが、どうしてこんな古い記事の閲覧が可能になっているのか、よくわかりません。
ただ、日本でも漢字廃止論を唱える人がときどき忘れたころに出て来るのですが、日本語が漢字で成り立っているという点を踏まえるならば、個人的にはどうにも賛同できないのです。
View Comments (81)
>「立憲民主党」をうっかり「立件民主党」と表記してしまうような誤変換
えっ?誤変換だったんですか?
「意図的誤変換放置」ですよね?
ところで、
>実際に難病で読み終わるか...
これは流石に誤変換かな?
当ウェブサイトで「立憲民主党」をうっかり「立件民主党」と表記してしまうような誤変換がやたらとたくさんあるのは、著者がそれだけ不注意であるという点もさることながら、日本語に同音異義語がそれだけたくさんあるという意味です。
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マイクロソフトのIMEを使うと立件民主党が先頭に出てきますので注意していないと誤変換をしてしまうでしょうね。一太郎はさすが日本語ワープロなので立憲民主党が最初に現れ、意図的に変換しない限り立件民主党と誤変換することもないようです。
ただし、最近巷で流行している立憲共産党の用語については、共産党が破防法の監視団体であり事情によっては立件される可能性があることから私は立憲共産党より立件共産党という用語が正しい意味を表現していると思える理由から敢えて常に立件共産党と表現しています。
以前、IMEの誤変換を揶揄した週刊誌上の広告を思い出しました。
誤変換:終わりの国
⇒織田信長と思しき人物が、「そこな無礼者」と怒鳴っているイラスト付き
誤変換:ベートーベンの大工
⇒ベートーベンと思しき人物が金づちを手にして?となっているイラスト付き
誤変換:濃い多き女
⇒厚化粧の女性が「ンまー失礼な」と怒っているイラスト付き
>実際に難病で読み終わるか確認してみてください。
何秒ですよね、でも面白いのでこのままでも良いかもしれませんね。
漢字を使用しないことが、「脳減症」のような難病を生むのかもしれませんから。
中国語を理解できる人が自国語に置き換えるために作った平仮名交じりの読み下し文
がベースにあるからこその日本語ですよね。
脳減症というのは初耳だけど、認知症みたいなもの?
当該国の秋の風物死「ノーベル症」ですね....
「認知症」も、当たらずとも遠からず、と思います。
申し分の無いギャグですねえ。ポプランさんと裏縦貫線さんの双方に座布団3枚!!
漢字を捨て去ったあの国でこそ発症する病気でしょう。
脳減賞も当て字で通じると思いますけど、韓国に限っては(低)脳地獄賞で通じると思います。
当て字は訓読み発音は基本的にやらない方が良いのだけどね
有名なのは「防水」と「放水」だったかな。
阿野煮鱒さんが、得意なジャンルなんだけどな。
韓国の社会的混乱の原因は、漢字を使うかどうかだけでは無いと思いますが、理解度の低下はハングルだけにした事が原因だと思います。
大学入試競争が激しければ、大学を増やせば良い。
漢字を覚えるのが大変だから、漢字を止めれば良い。
それがどういう結果を招くかを考えずに、愚民に迎合してきたのが、韓国の歴史だという事です。
そして、一旦そうなると止まって考えることが出来ないのが、朝鮮脳です。
今やってる、ウィズコロナも同じ。
>有名なのは「防水」と「放水」だったかな。
「防水処理」の代わりに「放水処理」された韓国国鉄路線の枕木が冬季に氷結劣化して交換廃棄処分になった事は鉄道ヲタクでは有名なお話です。
それと「放火」と「防火」でしょうね。
韓国の消防士のマニュアルはどうなっているのか…
それから「戦車」と「電車」。
電車の運転手と戦車の操縦士のマニュアルをうっかりして取り違えると大変な事になります。
そういえば、「銀河鉄道999」に装甲列車なるものが登場しましたね。
治安の悪い個所を通過する際に、上下左右に3門づつ大砲を搭載してる車両をわざわざ連結するやつ。でも、あんなもんぶっ放したら、反動で脱線しそうなもんだけど、大丈夫なのだろうか?
恐らく無反動砲を使っているか、或いは左右対称に同時発射しなくてはならないでしょうね。 敵の反対側にいる無実の人達には気の毒ですが。
赤いレーザー光線みたいなのを発射してましたから、反動はないのかも知れません。
今風に言うと、指向性エネルギー兵器でしょうか。
よその国の言葉は、よくわかんないけど・・・・・
>ひとえに同音異義語を私たちが頭の中で適切な漢字に置き換えているからなのでしょう。
ここんとこは、「難病」を「何秒」に脳内変換して読んでたりするので、納得なのです♪
日本語文章は
「URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は」
だけを見ても漢字、ひらがな、カタカナ英語、アルファベット、記号、句読点と賑やかで、それに対して英語文は僅か26文字のアルファベットだけで出来ており対極にあると思います。外来教授のぐだぐだはハングルが英語ほど徹底せず、中途半端さに由来するものだと思います。
故ケネディ大統領も実践していた速読については、英語と日本語でどちらが読みやすいのでしょう。速読はページを見て写真のようにイメージで覚えるそうなので、慣れなのかもしれません。但しひらがなだけの文章を早く読もうとしても、同音異義語については英語のように綴りが違う訳ではないため中途半端なハングルと同じく訳が分からなくなります。
ハングルだけで理工系の教科書が出来るのが不思議です。
江戸時代から明治初期までは、聞いた言葉を頭の中で漢字というか熟語に置き換えるということを日本人はしていなかったようです。明治初期の近代化とともに膨大なワードが日本に入ってきて、先人たちが一生懸命それらのワードに対応するであろう熟語を作っていったのです。
例えば
mechanism → 機序
park → 公園
science → 科学
私たちが当たり前に使用している熟語の多くは明治期以降にできたと考えて差し支えないのではないかと考えています。しかし、残念なことに日本語は母音・子音の数が少ないため、どうしても同じ読みを持つ多くの言葉(熟語)ができてしまいました。例えば「こうえん」を変換すると、「公園」「講演」「公演」「後援」・・・・などたくさんの熟語が出てきます。そのため、聞くだけでは理解できず、いったん漢字に変換しないと理解できないようになっています。
また翻訳するだけではなく、日本独自で作られた「白兵」とか「機動部隊」なんていう言葉もあるようです。このあたりの知識は、今年の4月に亡くなられた高島俊夫さんの「お言葉ですが…」シリーズを読むと理解できると思います。
余談ですが、英語に「機動部隊」という言葉がないため、「Task force(タスクフォース)」という言葉ができたとかいう話を聞いたことがあります。
さて、特に抽象的な概念については、漢字を組み合わせて熟語を作るか、それとも英語(別にドイツ語でもなんでもいいのですが)をそのまま利用しない限りは、まず表現できないはずです。ハングルでは到底無理なことは自明のことでしょう。漢字を捨ててしまえば、抽象的な概念を理解するのは極めて難しいに決まっています。法律も相当抽象的な概念でもあるので、韓国人が法を守らないどころか、理解できないのもこのあたりに起因するのかもしれません。
クマさんのパパ様
> 江戸時代から明治初期までは、聞いた言葉を頭の中で漢字というか熟語に置き換えるということを日本人はしていなかった
非常に興味深いご指摘です。こうした漢字云々以前に、江戸時代から明治時代に変わったとき、様々な価値観がドラスティックに変わったというのが事実だそうで、我々現代人が想像する以上に江戸→明治に「まるで別の国に変わった」という論考を前に読みました。
殆どの輸入語は明治以降だと思いますが、物理学で使う、求心力とか遠心力など、江戸時代の蘭学解禁のころに作られた輸入語は結構ありますよ。
18世紀ころです。
韓国は漢字を廃止してハングルだけにしたが、これが科学分野のノーベル賞がとれない原因ではないかと思っている。ハングルだけでは高度な思考ができないのではないか?
英語だって26の表音文字を組み合わせた言葉じゃないかという人がいる。しかし英単語のかなりの割合がフランス語由来で、さらにそのフランス語もラテン語やギリシャ語から来ている。
例えば「こうしょきょうふしょう」とひらがなで書かれても初めて見る人には何のことか理解できないかもしれない。「高所恐怖症」ならこの概念を知らなくても「高い所が怖い、ああ、あれのことか」ということになる。高所恐怖症のことを英語では”Acrophobia”という。Acroとはアクロバットやアクロポリスという言葉があるように高い所のこと。Phobeとは嫌い、怖いという意味。どちらもギリシャ語由来。英語を母国語とする人たちはAcrophobiaという言葉を見たとき日本人が「高い所」と「怖い」を思い浮かべるように、容易に高所恐怖症の概念にたどり着くのだろう。
韓国では大学の科学関連の教科書は英語のものを使うらしい。ハングルでは難しい概念を表現するのが困難なのではないか。日本人は義務教育の9年間でかなり苦労して漢字を習うが、そのおかげで複雑な概念を思考できる。韓国人でもハングルの弊害に気が付いて、漢字復活を提唱する人がいるが、ハングルは世界一の文字と考えている人が多いので実現することはないでしょう。ちなみに韓国主催で「世界文字オリンピック」というのがあり、第一回(2009年)ソウル、第二回(2012年)バンコクで開催され、いずれもハングルが金メダル。なお3回目は現在まで開催されていない。
母国語で高度な思考ができることはとても重要ですね。日本語は、それのみで高等教育を完結することができる数少ない言語です(もちろん、最先端の技術を学ぶには英語が必要ですが)。現代中国語も、日本から逆輸入した単語(つまり、中国大陸の文化や概念に存在しなかったもの)が非常に多いです。
よく知らないのですが、ハングルには、字がきれいとか、日本語書体のような「とめ・はね」はあるのでしょうか。簡体字の書道とかあったら、ものすごい幼稚な感じがする・・・
>KNさん
ハングルの筆書き(書道?)はネットで見かけた気がします。
言語から抽象的な思考に必要な機能を排除するという意味では、1984年のnewspeakに近い物を感じますね。
韓国にあるサムスンや現代やSKやLGといった世界に名だたる企業の技術研究や生産技術、製品開発や品質管理といった、いわゆる「高度」で「専門的」な仕事をしている部署では標準語が英語となっている辺りが、ハングルの限界を端的に示しているのではないでしょうか。
また、楽韓さんがよく紹介しているマニュアルの不徹底による様々な事故や社会問題になる程の不良品流出ですが、楽韓さんは安全軽視と、言われた事だけやってればそれで済み、自分の作業内容の意味を考えない文化的背景が原因であるとブログに書いています。
私が思うに半分正解で、もう半分は、そもそも細かい所までしっかりと書き込まれた、守ってさえいれば多くの事故や不良品製造を防げるマニュアルを作成するには、ハングルと言う言語そのものが持つ表現力が貧弱で、大半の人に理解してもらえるように記述するのに無理があるのが理由と考えます。
書き込み内容の後半は、それなりに韓国企業と仕事をしてきた私の私見となりますのであしからず。
朴正熙時代の韓国へ行った事がありますが、大韓航空の機内で新聞配ってて、おみやげに朝鮮日報を1部貰いました。
当然ながら、漢字ハングル混じり文で書かれてましたが、漢字があるのでハングルは分からなくても何となく意味がわかりました。
台湾へ行った時は、言葉は全く分からなくても、屋台で紙に漢字を書いて注文すればできました。
ちなみに台湾は、「過去の文書が読めなくなる」という理由で、日本のように新字体にもせず、繁体字を守るとの事です。
韓国は、漢字を捨てた事で、過去の文書が読めなくなったのはもちろん、漢字文化圏との交流手段をも捨てたという事で、愚かとしか言いようが無いですね。
「見える化」みたいな言葉、嫌いなんですよねぇ。
しかし自分の仕事で考えても、
・農薬→植物に使う薬
・殺虫剤→虫を殺す薬
あたりはまだしも、
・セット動噴(動力噴霧器)→地面に置いて圧力で液体を霧にして吹き出す機械
・背負動噴→背負って圧力で液体を霧にして吹き出す機械
・トラクター→後ろに機械をつける車
・耕運機→手押しで耕す機械
・ロータリー→後ろに機械をつける車につけて耕す機械
・刈払機→手持ちで草を刈る機械
・フレールモア→後ろに機械をつける車につけて草を刈る機械
なんてなったら、仕事に支障出るなぁ……
「おーい!○○さん、この後、虫を殺す薬を撒きたいから、地面に置いて圧力で液体を霧にして吹き出す機械を、こっちに運んでおいてくれ!」
かなり昔の豊田有恒の短編で、火星だったかに移住した日本人のコロニーで漢字が廃止されたけれども、同音異義語が多すぎるため、全部「運動」→「はこびうごく」のように開いて表現することとしたが、今度は表現が長くなりすぎ、全員がべらんめぇ口調になったという話がありました。
ワープロはおろか、かな漢字変換というシステムの影すらなかった頃の話で、カナタイプしかなかったため、コンピュータ上で日本語の扱いをどうしたもんだか試行錯誤が行われていた時代でした。その頃は、漢字廃止論者も結構勢いがありましたし、明治以来折に触れて浮上する日本語廃止論者もまだまだ健在だったと記憶しています。
でも、ATOKなどのかな漢字変換システムが一般化し、普及したことで、コンピューターで扱いづらいからという理由の漢字廃止論者はほぼ絶滅したように思います。むしろ、漢字の使用制限などするな、好きに使わせろという声もあがるようになりました。
このように考えると、かな漢字変換システムというのは実に偉大で、日本語を日本語足らしめるよう救ったのだと言えるのかもしれません。
かなり昔の雑誌記事で(紀田順一郎さんじゃなかったかなぁ?)、「こんなに早く(1980年代のこと)ワープロなんてものが出てくるってわかってりゃ、現代かなづかいとか新字体なんかやらなかった」と当時日本語改革をしたエラい先生が言ってた、という記事を思い出しました。
とかいいながら、私は漢直(漢示直接変換)を使っていますが。。。
農民 様
医学用語も漢字のオンパレードですよ。
患者さんにはなるべくわかりやすい言葉で言い換えるよう心がけてますが、用語は漢語をそのまま使います。
上部消化管内視鏡→胃カメラ、上腕二頭筋→二の腕の肉、下腿浮腫→脚のむくみ、くらいなら、まあいいでしょう。
心臓、肝臓、食道、胸椎、のような解剖用語は言い換えようがないし、顔面神経麻痺、腰部脊柱管狭窄症、膵頭十二指腸切除術、なんてひらがなで書いたり和語で言い換えたりしようとするのは無理です。漢字でも大体意味は通じますし。
それなのに、韓国では解剖用語を無理に韓語に置き換えようとしてます。胸椎を「むねのほね」、腰椎を「こしのほね」みたいに。でも無駄に長くなりますし、何よりも「むねのほね」だと胸骨と区別できなくなるのですね。違う場所を同じ名前にすると医療事故の温床になります。
その後、解剖用語を戻したのかどうかは知りません。
龍 様
> かな漢字変換システムというのは実に偉大で、日本語を日本語足らしめるよう救ったのだと言えるのかもしれません。
若い頃は漢字制限を主張していた金田一春彦も、老いてからはワープロがここまで普及するなら漢字制限は無用だったみたいな事を言ってたようですね。
かな漢字変換システムの発達と引き換えに、ガリ版印刷は姿を消してしまいました。スタジオジブリ「コクリコ坂から」には校内新聞を鉄筆で書いてガリ版で刷るシーンが出てきましたけど、若い世代には何をやってるのかさっぱりわからないでしょうね。