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日韓関係:誰が「次の大統領」になっても変わらない?

誰が次の韓国大統領になったとしても、日韓関係の膠着状況を打破するのは難しいのかもしれません。今朝の『日中韓サミットの見送り報道に見る日韓関係「悪化」論』では、日中韓3ヵ国サミットの見送りに関する読売新聞の報道記事を紹介したのですが、この読売の報道自体が「現時点でサミットを開くことはない」という日本政府のメッセージだったという可能性が出て来ました。さて、これらの報道を、どう見るべきでしょうか。

2021/11/20 追記

記事のタイトル設定がエラーとなっていましたので修正しております。当初の公表バージョンだとタイトルが『あ』になってしまっていました。大変失礼しました。

日中韓サミット見送り巡る「答え合わせ」

今朝の『日中韓サミットの見送り報道に見る日韓関係「悪化」論』では、読売新聞の次の記事をもとに、「韓国が日本政府に非公式に日中韓サミットの開催の延期を伝えてきたことを、複数の日本政府関係者が明らかにした」とする話題を取り上げました。

【独自】日中韓サミット、2年連続で見送りへ…日韓関係「戦後最悪の状況」続く

―――2021/11/13 15:00付 読売新聞オンラインより

巷間では「日韓関係が『悪化』していると言われますが、それは本当でしょうか。そもそも、「悪化」という表現自体に、「日韓関係は好転すべきである」とする暗黙の価値観が含まれているかもしれません。しかし、外交関係において大事なことは、まずは国益を最大化することであり、そのためには「価値と利益を共有する国」との連携を深めることです。こうした基本原理をわきまえたうえで、何より重要なことは、サミットを実施することではないと気付きます。言葉選びに気を付けよう日韓関係の「悪化」これまでに当ウェブサイトで何度と...
日中韓サミットの見送り報道に見る日韓関係「悪化」論 - 新宿会計士の政治経済評論

しかも、読売の記事によれば、文在寅氏が「日中韓サミットに合わせて日韓首脳会談を開き、日本との関係改善を図ることを模索している」にもかかわらず、「議長国の韓国がサミットの開催見送りを日本に伝えてきた」とあります。

こうしたことから、当ウェブサイトでは「同じ記事のなかで記載が矛盾しているようにも見えてしまう」と申し上げたのですが、もっと言えば、日中韓サミットの見送りを検討しているのは、韓国政府ではなく日本政府ではないか、という気がしてなりません。

こうしたなか、韓国メディア『中央日報』(日本語版)には今朝、その「答え合わせ」のような記事が掲載されていました。

読売新聞「韓日中首脳会議2年連続で見送りへ」

―――2021.11.15 07:13付 中央日報日本語版より

最も腑に落ちる説明は「読売報道自体が日本政府のメッセージ」

中央日報には、こういう趣旨のことが記載されています(※日本語表現を一部手直ししています)。

読売新聞の報道と異なり、韓国側は3ヵ国協議をもとに韓日米首脳会議を開催する可能性を依然として念頭に置いている。韓日関係悪化の余波で首脳会議を先送りするのではなく、むしろ首脳会議を通じて関係を改善できる糸口を設けるべきという趣旨からだ。3ヵ国首脳の見送りを日本側に一方的に通知してもいないという」。

文中にある「韓日」とあるのは、文脈から判断して「日韓」の誤りと思われますが、この点はとりあえず脇に置くとしましょう。

中央日報の記事が正しければ、読売新聞の報道自体が、「日本としては日中韓サミットの開催に否定的だ」という、日本政府からのメッセージだ、というのが中央日報の分析であるようです。

個人的には、この説明が最も腑に落ちるように思えます。

この点、あくまでも一般論によれば、首脳会談は開催されないよりも開催された方が良いに決まっています。

しかし、韓国の場合は国際法破り、約束破り、国際条約破りが酷すぎ、下手に首脳会談に応じたら、韓国自身のこうした不法行為の数々が既成事実化されかねません。現在の文在寅(ぶん・ざいいん)氏をまともに相手にすること自体が、大変なリスクでもあるのです。

実際、中央日報の記事でも触れられているとおり、菅義偉総理大臣は昨年、訪日した朴智元(ぼく・ちげん)国家情報院長や金振杓(きん・しんひょう)韓日議連代表らに、日韓関係を健全なものに戻すためのきっかけを韓国が作るべきだと要求。

菅総理の後継者である岸田文雄・現首相も、(いちおう現時点においては)「韓国が先に解決策を示すべき」とする姿勢を堅持しています。

日本の譲歩を勝手に織り込む韓国政府

つまり、日本政府は現在の日韓局面を、「日韓双方の努力で打開すべきもの」とは認識していない、ということであり、こうした状況下で仮に日韓首脳会談を開いたとしても、日本側から言えることは「国際法を守れ、約束を守れ、条約を守れ」以外にありません。

いや、それだけではありません。

日韓首脳電話会談の韓国側の報道発表は「ウソだらけ」』などでも報告したとおり、首脳会談をやったらやったで、韓国側が勝手な内容を発表するリスクも非常に高いため、正直、現在の韓国政府とは、首脳会談を開催すること自体が大きなリスク要因です。

昨日の『岸田首相が日韓電話会談後に良い意味で余計なヒトコト』でも取り上げた、岸田文雄首相と文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領との初の日韓電話首脳会談については、韓国政府側からも発表がありました。これが大変に噴飯物です。日本側の発表とはまったく異なる内容が多く含まれているからです。調べたらすぐにわかるようなウソを、どうして平気で繰り返すのでしょうか。「韓国の特殊性」という、韓国観察者である鈴置高史氏の指摘の正しさを、痛感せざるを得ません。日韓首脳会談:日本側の発表日韓電話首脳会談、岸田首相の「...
日韓首脳電話会談の韓国側の報道発表は「ウソだらけ」 - 新宿会計士の政治経済評論

実際、中央日報によると、韓国政府関係者は読売の報道に対し、次のように述べたのだそうです(※日本語表現を整えています)。

  • いくら議長国とはいえ首脳会議を開催しないと一方的に通知するのは不可能なだけでなく、韓国は依然として早急な環境作りを通じて首脳会議を開催すべきという立場だ
  • 現時点では韓日中首脳会議の開催が現実的に厳しい状況であるのは事実だが、このようなときであるほど首脳間の対話を通じて溝を狭め関係正常化の契機を設けなければならない

当ウェブサイトでは以前から、「韓国の側から歩み寄るつもりはなく、日本の側に何らかの譲歩を求めるというのが、現在の韓国政府の基本姿勢」と考えているのですが、こうした仮説から眺めてみると、この「韓国政府関係者」の発言は、まさに日本の譲歩を暗黙の前提にしているように思えてなりません。

逆に、日本政府としては、どうせあと半年で退任する文在寅氏を相手にして変なリスクを背負いこむことを警戒していたとしても不思議ではないでしょう。

文在寅政権「だけ」が問題なのか?

さて、当ウェブサイトでは以前から、文在寅(ぶん・ざいいん)政権に代わって以降、韓国で日韓友好に反する動きが加速したという点を何度となく指摘して来たのですが、ただ、それと同時に忘れてはならないのは、文在寅政権以前で日韓友好に反する動きがなかったわけではない、という点です。

いや、もっと身もふたもない言い方をすれば、朴槿恵(ぼく・きんけい)前政権時代から、産経新聞の加藤達也支局長(当時)を「大統領に対する名誉棄損」という理不尽な理由で刑事訴追したあたりから、韓国が法治を無視する国だという点に、日本が国を挙げて気付いているべきだったのかもしれません。

つまり、文在寅政権の発足は、日韓関係が壊れるのを加速しただけであって、日韓関係に対する韓国からの否定的な動きは、すでに朴槿恵政権当時(あるいはもっと前)から存在していたとみるのが正しいように思えてなりません。

その一方で、「左派メディア」とされる『ハンギョレ新聞』(日本語版)には週末、こんな記事が掲載されていました。

韓国野党の大統領選候補、「現政権が発足してから韓日関係が崩壊した」

―――2021-11-13 12:08付 ハンギョレ新聞日本語版より

韓国の「保守政党」とされる「国民の力」の大統領候補に指名された尹錫悦(いん・しゃくえつ)氏は12日、記者会見に応じ、文在寅政権の対日外交については次のように酷評したのだそうです。

「(文在寅政権の)対日関係が果たして存在するのかと言えるほど、外交そのものがほとんど失踪している状況だ。対日関係を国内政治に引き入れ過ぎなのではないか。現政権が発足して対日外交と韓日関係はほぼ崩壊したと評価しており、それが韓中関係と韓米関係にもかなり良くない影響を及ぼしていると思う」。

「対日関係を国内政治に引き入れ過ぎ」が何を意味するのかについてはよくわかりませんが、「文在寅政権のせいで韓日関係がほぼ崩壊した」というのは、じつに踏み込んだ表現です。日本の側でも「日韓関係は崩壊した」とまで言い切る政治家は、あまり目にしません。

誰が次の大統領になっても同じ

もっとも、尹錫悦氏自身、これまで「検事ひとすじ」で活動してきた人物であり、政治家としてのキャリアがあるわけではなく、かつ、文在寅政権下で検事総長に抜擢されたという経歴なども踏まえるならば、彼を「保守系政治家」とみなすのは正確なのか、疑問に感じる点でもあります。

韓国の次期大統領に選ばれるのが、尹錫悦氏なのか、李在明(り・ざいめい)氏なのか、それ以外の候補者なのか、はたまた大統領選挙が実施されるのかどうか、などについては現時点ではよくわかりません。

しかし、韓国が国際法などをないがしろにした状態を維持し、日本政府が「日韓関係を健全な姿に戻すため、日本が受け入れ可能な解決策を韓国が示してほしい」という一点張りである間は、誰が次の大統領になったとしても、現状の日韓関係の膠着状況を打破することは難しいかもしれません。

あるいは、最悪の場合、日本企業や日本政府も、今後は「韓国は法治国家ではない」という前提を置いて、韓国と向き合わざるを得なくなるのかもしれない、と思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (16)

  • >誰が次の大統領になったとしても、現状の日韓関係の膠着状況を打破することは難しいかもしれません。

    その通りだと思います。選挙で選ばれた大統領ですから世論を気にせずには何もできない。世論は長年の反日政策で反日一色。日本に有利になるようなことはできない。マスコミも同じ。
    このような状況に対して今までは日本が譲歩してきたのでしょうが、今度ばかりは無理。

    • 李承晩が反日で建国した時点で韓国の運命は決まっていたのです
      徹底的な専制政治で思想弾圧でもしない限り 未来永劫韓国の政治に期待はできません

      • アメリカは韓国建国の時に反日を必須条件にしたからね

        • 文在寅大統領でいてくれた方が見極めしやすくて楽かも!

          制度的に問題があったとしても「改名」が簡単に出来るという素晴らしい社会システムの韓国です。

          改名してファミリーネームを「次の文」にしていただければ分かりにくさとも無縁で便利かと。
          次期大統領 次の文在寅氏

          その任期終わったら
          次次期大統領 次の次文在寅氏

          永久に大統領で最後の大統領まで頑張っていただきたい。

          誰が代わっても韓国は変わらないし、刑務所いくつか人ですコストが増えるだけ。
          無意味。

  • 「あ」のまま、突っ張れば良かったのに。

    >日韓関係:誰が「次の大統領」になっても変わらない?
    誰が「次の大統領」になっても、両国民の価値観の相違の乖離が拡大する流れは変わりませんので、徐々に優先順位が下がる方向で変わるでしょう。

  • 尹が大統領になったとて、国際法違反状態への大義名分を大多数の韓国人が支持している現状で、それをひっくり返せるほどの政治基盤があるとは思えない。
    またぞろ旧世代の二重取引外交を復活させるしか方策はないので、むしろ意思を持って日本の存在を無いものとしてもらうか、李でさらに解体するしか日韓関係の前進はないだろう。
    まあリストラクチャー的な期待しかない。

  •  私は必ずしも新宿会計士様の意見に賛同しません。
     尹が大統領になったとき、彼の用日方針に米国や日本国内の媚韓派が余計なことを言い出す可能性を否定できないからです。
     かの国の大統領(酋長)選の前に、誰か日本の政治家が反日導火線に火をつけるような言動をして、在明前さんが地滑り的勝利をしてほしいと思っています。

  • >日韓関係:誰が「次の大統領」になっても変わらない?

    彼らの言葉:知恵を集る(ちえをあつめる)ことによる解決。
    彼らの行動:知恵を集る(ちけいをたかる)ことによる解決。

    与えられる(圧しつけられる)ことしか知らない環境において、彼らに責任感が萌芽することなんて在り得ないのですものね・・。

  •  最初に、尹錫悦氏の「(文在寅政権は)対日関係を国内政治に引き入れ過ぎ」という言葉は「日韓関係を国内政治に利用し過ぎ」という意味だと思います。
     ところで、尹錫悦氏は司法試験に8回連続失敗しながら9回目に合格した不屈の意志の持ち主です。小室圭氏にも是非見習っていただきたいと思います。
     また、検事在任中には「人(権力者)に忠誠は尽くさない。ただ法だけに従う。」と発言して、朴槿恵政権時には朴槿恵大統領を起訴し、文在寅大統領に任命された検察総長時には大統領側近の曹国(チョグク)法相を起訴に持ち込みました。その意味で法に忠実な硬骨漢でした。
     しかし、今回、野党「国民の力」の大統領選挙公認候補に選出された際の受諾演説では「私は人に忠誠を誓わない。国民にだけ忠誠を尽くす」と発言しました。「国民に忠誠を尽くす」ということは、韓国の国民が憲法よりも上位法と考える国民情緒法に忠誠を尽くすことになります。
     法律家としては、「自称元徴用工判決」や「自称元日本軍性奴隷判決」が国際法違反であると認識したとしても、政治家としての尹錫悦氏は国際法違反を認めることはできないでしょう。

  • 尹錫悦氏は自分を検事総長に引き立ててくれた文政権に対しても,文大統領が自身の後継者として多大な期待をかけていたチョググ法務長官の不正の徹底追及を,己の部下が全て剝がされて捜査妨害されても自分が解任されるまで止めようとはしなかったので,彼の「自分は法にのみ従う」という信念は相当なものでしょう.

    ですから彼が大統領になり日韓条約の法的内容に関して法律の専門家として真剣に検討すれば,現在の日韓関係破綻の原因が韓国側が法を無視したことにあるのは完全に理解できるでしょう.

    ですが,もはや現在の韓国において,反日は大統領やその政府が止めようとしても止められない制御不能なレベルに達していると思われます.

    仮にですが,尹錫悦大統領が誕生し,彼が法律の専門家として大法院による自称徴用工への賠償命令の判決が日韓請求権協定に反していて法的に無効だと宣言したり,文政権による日韓慰安婦合意の一方的破棄を撤回すると宣言すれば,即座に民主労組や全教組などを中核とする従北左派が再びローソクデモによって「尹は親日派だ!」と韓国民の反日・反大統領意識を煽り,朴槿恵大統領のように罷免される運命を辿ると私は予想します.

    ですので,どれほど国際法や国際条約あるいは国家間の約束に忠実かつ正直であろうとする意識の強い人物が次の韓国大統領になろうとも,任期途中で吊るし首になりたくなければ,少なくとも日本に対する韓国の国際法違反行為に関しては目を瞑り口を噤む以外に選択肢がないのです.

    寧ろ,米韓同盟を大事にしようとする人物が大統領になられてしまうと,米国のバイデン政権は再び韓国を(多量の米軍兵士の命を代償として手に入れた)大切な玩具として日本の上に置き,韓国政府による様々な用日行為を日本政府に呑めと命じてくる状況に戻ってしまう危険性が極めて高い.それでなくとも米国民主党は伝統的に反日意識が強く日本を抑え込み力を削ぐための重しとして韓国を活用すべしという対日基本戦略を採って来ましたから.その点に関してバイデン民主党政権も例外ではないことは,菅前総理が訪米した際の無礼とも言うべき冷遇ぶりで良く分かりました.

    まあそんな米国と日本は今後も上手に付き合わねばならないのは改めて言うまでもないことですが.日本はこの領土の形状と人口とからどれほど防衛費の対GDP比率を上げようと単独で国防を完結させることは不可能で,米露中というスーパーパワーの何れか1国と同盟関係を結ばなければならない,そしてそれら3国の中では米国が一番マシというのが現実ですから.