岸田政権が「目玉」のひとつに掲げる経済安全保障を巡って、昨日、日経新聞にその概要が報じられていました。特許公開制限などの4つを柱とした「経済安保法案」を、2022年の通常国会に提出することを目指しているのだそうです。ただ、特許公開制限など、日経が報じた内容自体は悪い話ではありませんが、やはり報道記事を読むと物足りなさを感じざるを得ません。
経済安保法制、日経が「4つの柱」と報じる
『新政権の経済安全保障はJG創設と外為法改正で実現を』などでも触れたとおり、岸田文雄首相は先月の所信表明演説で「経済安全保障」に言及し、財務省出身者でもある46歳の小林鷹之氏を経済安保担当大臣として任命しました。
JGは「ジャパングループ」のこと、そして「グループS」の創設をわが国の輸出貿易管理に関しては、個人的にはどうにも物足りなさを多々感じます。具体的には、日本が外国に対して輸出制限をかける手段が非常に限られているのです。こうしたなか、岸田政権の発足に伴い、岸田首相が「経済安全保障」に言及したことを機に、ふと思い出したのが、「ジャパングループ(JG)創設」という論点です。これについては昨年9月以来、続報がありませんが、これからどうなるのでしょうか。そして外為法改正は実現するのでしょうか。貿易管理外... 新政権の経済安全保障はJG創設と外為法改正で実現を - 新宿会計士の政治経済評論 |
これについて、具体的な姿が見え始めたようです。
日経新聞は昨日、経済安全保障について、政府が2022年の通常国会に向けて「経済安全保障推進法案」の提出を目指していると報じました。
経済安保法案、特許公開制限など4本柱 対中国念頭に/政府、22年通常国会へ提出
―――2021年11月14日 9:41付 日本経済新聞電子版より
リンク先記事は有料会員限定版だそうですが、無料で閲覧できる部分だけでもわかるとおり、機微技術を巡る特許の公開制限、サプライチェーンの強靭化支援などの4項目を柱としているものだそうで、日経はその狙いが「中国を念頭に日本の技術が軍事転用されるリスクなどに備える」ことにある、などとしています。
そういうことじゃないんだよなぁ…
ちなみにこのうち「特許の公開制限」とは、現在の制度上、特許が一定期間が過ぎれば技術情報が公開されてしまう点に関する法制度上の手当てのことです。具体的には、国益にかかわる特許を公開しない代わりに、それによって得られなくなる特許料を国家が補償する、といった外国の仕組みなども参考にされているのだそうです。
遅ればせながら、機微な情報の流出を防ぐための仕組みが盛り込まれること自体は歓迎したいところです。
ただ、正直に申し上げると、「そういうことじゃない」、という部分も多々あります。もう少し踏み込んで言えば、個人的に期待していた経済制裁の手段の拡充などに関する議論が、まったく含まれていないからです。
当ウェブサイトでは先日から何度も指摘しているとおり、たとえば、日本が外国に対し、経済制裁を発動するための条件が、非常に限られていることです。もう少し、外為法などの「地に足が付いた改革」を、個人的には望んでいたのですが…。
物足りないと言わざるを得ません。
外為法改正私案
ちなみに、経済制裁とは、「経済的な手段を使って相手国に打撃を与えること」と定義できますが、日本の場合だと外為法などの規定が不十分なため、たとえば「中国がウイグルやチベットで人権侵害をしている」、「韓国が歴史問題を口実に日本に不法行為を仕掛けている」などの理由で制裁を発動することはできません。
あらためて、外為法上の経済制裁の発動要件は、次の3つのいずれかであるとされます。
外為法上の経済制裁の発動要件
- 国連安保理制裁決議などがなされたとき
- 有志国が実施する経済制裁に日本も参加するとき
- 外為法第10条第1項の閣議決定があったとき
(【出所】外為法等を参考に著者作成)
正直、これだけだと、不十分です。
また、上記のうち、とくに「3」については、発動できる場合が「わが国の平和および安全の維持のためにとくに必要がある場合」に限定されています。
外為法第10条第1項
我が国の平和及び安全の維持のため特に必要があるときは、閣議において、対応措置(この項の規定による閣議決定に基づき主務大臣により行われる第十六条第一項、第二十一条第一項、第二十三条第四項、第二十四条第一項、第二十五条第六項、第四十八条第三項及び第五十二条の規定による措置をいう。)を講ずべきことを決定することができる。(※下線は引用者による加工)
この条文のうち下線部分を、たとえば次のように変更するだけでも、ずいぶんと経済制裁の使い勝手は良くなるはずです。
外為法第10条第1項改正私案
我が国の平和及び安全の維持のため、国際法秩序の維持のため、我が国の利益を保護するため、その他これらに類する事情として政令で定める事実に基づき、特に必要があるときは、<後略>
(【出所】著者作成)
また、経済安全保障関連法も良いのですが、この際、諸外国には存在し、わが国には存在しない「スパイ防止法」についても、是非とも検討していただきたいところです。
いずれにせよ、もう少し詳細な内容については、日経新聞のリーク記事だけでなく、現実の法制などを見て判断する必要がありますが、「目玉」のひとつであるはずの経済安全保障でも失望を誘うようであれば、やはり岸田政権は先行きが思いやられます。
View Comments (13)
>機微技術を巡る特許の公開制限、サプライチェーンの強靭化支援などの4項目を柱としている
四本柱ってどんなのか記事の全文を読めないので、想像してみるのです♪
・特許の公開制限
・サプライチェーンの強靭化
は書いてるからあとふたつですね♪
戦略物資の流出防止は外為法だけど普通の安全保障だから外して、経済安全保障を確保するためには、技術の流出防止、企業活動の継続確保、それと敵対的な行為への牽制が必要なんだと思うのです♪
みっつめの牽制は、新宿会計士様の記事からは含まれていないんだろうな♪って思うので、残りふたつからの想像なのです♪
技術の流出防止は、特許だけじゃなくて人や企業からの流出防止が必要だから、
・外国人研究者とか留学生なんかの管理強化 と
・重要な技術を持った企業の買収防止とか、経営への金銭的な支援かな?
企業活動の継続確保は、サプライチェーン強靭化で原材料の枯渇を防ぐほかは、コスト高で重要技術を持った企業がなくなっちゃわないようにするための競争力確保かな?って思うのです♪
そうするとやっぱり経営支援ってことになるのかな?
技術はいずれ陳腐化するから、枯れた重要技術を守るだけじゃなくて新たな技術開発も必要だと思うのです♪
というわけで、四本柱の残り二本は、
・技術情報確保のための人の管理の強化 と
・重要技術を持った企業なんかを保護するための株式取得制限とか、経営安定化や重要技術の開発への資金的な補助
じゃないかな?って思うのです♪
というわけで、誰か答えあわせして欲しいのです♪
あとサプライチェーンの強靭化には、国内生産の推進のほか、備蓄の確保とか調達の多角化みたいなのもあるだろうと思うのです♪
細かい話だけど、今の原油高に対応するため、石油の国家備蓄を価格安定のために放出するとか、そのための備蓄量の増加なんかもあるかもなのです♪
七味さま、みなさま
>技術情報確保のための人の管理の強化
以前当方が韓国サムソンが日本の大手電機会社から技術情報を抜き出すために隠れ事務所を首都圏各所に開設して、篭絡した堕落社員たちから技術を抜き出す(コピーを作らせる)活動をしていたことを小説仕立てで指摘しました。あそこ書いたことはほとんど実話なのでした。
「気を付けよう無料ソウル往復航空券とまずいマッコリ」
>技術情報確保のための人の管理の強化
・法案では、特許事務所(弁理士・特許技術者)からの情報流出を防止する手当がなされているのだろうか?昔は、外国国籍を有する者は弁理士になれなかったが、今は、その規制が撤廃されており、外国籍の弁理士もいる。外国人の特許技術者も多々存在する。
・また、日本出願を行った後、12ケ月以内に欧米に出願する場合、当該明細書を英訳する必要があるが、日本の会社からその依頼を受けた国内の特許事務所が、その英訳を外国、特に韓国の特許事務所に丸投げされているケースがある(国内の翻訳会社に英訳を依頼するよりも、費用が約半分ですむから)。
・ちなみに、菅直人へは、著名弁理士が政治献金している。例えば、下記参照
https://www.senkyo.metro.tokyo.lg.jp/uploads/27teiki-shikin-ka_51.pdf
中には、トヨタから多数の出願を請け負っている御仁もいる。
自己レスなのです♪
サイバー攻撃対応とか反撃とかって、安全保障なのか経済安全保障なのか、良くわかんないのです♪
先端技術なんかも、どっちか良くわかんないので、縦割りで穴が出来ないように、調整とか頑張って欲しいと思うのです♪
韓国は、経済安全保障の対象は中国で、韓国は関係無いと思っているらしいです。
元歯医者さんのブログから
https://sincereleeblog.com/2021/11/15/lockon/
この辺の感覚は、朝鮮脳ならではで、日本人には理解し難いと思いますが、確かにそういう記事は、見かけません。
WOW KOREAより
日本の「死亡者ゼロ」ミステリー、真相解明へ…実際はもっと多い?=韓国報道
https://news.yahoo.co.jp/articles/5bd49e1eb3669e684d5ff9febeb4c3a188c84aea
妄想ニダ。
維新は、当面韓国マスコミに狙われるでしょう、ら
だんな様
ご紹介いただいた記事なんだけど、「コロナ死者数」の定義を弄って、発表よりもホントはもっと多いはずだって言いたいみたいだけど、いまひとつ議論の意味がわかんないのです♪
大阪で超過死亡が多いなら、その原因は新型コロナなんだろうなとは思うけど、どうすれば減らすことができたのかって反省とか今後の改善に繋げるのではなく、ただ「数字がおかしい」って主張することに意味があるとは思えないのです♪
・・・・あたしが知らないだけで、大阪府なんかが「大阪の新型コロナ対策は完璧だった」みたいな自慢をしてて、それに対する批判なのかな?
は(⑉˙ᗜ˙⑉)て??
記事の中では、「韓国では原発専門家としてよく知られている牧田寛博士」とか言う人の解説が載ってるけど、なんで「原発専門家」が畑違いのことを解説してるのかナゾなのです♪
牧田氏の言うみっつの理由もいまひとつ意味がわからないのです♪
ひとつめの
>陽性者の数が十分に把握できなかった
って言うけど、他に死因があっても、新型コロナに感染してたら「コロナ死者数」に含めるべき、とでも言いたいのかな?
「コロナ死者数=新型コロナウィルスが検出された死者数」って定義も有りだとは思うけど、今更、その定義に変更することになんの意味があるのかわかんないのです♪
ふたつめも同じような言葉遊びだと思うのです♪
>これが「変死」のため「コロナ死者」の統計から抜けているとのこと。
新型コロナの死者数って、医師から法律に基づいて報告された死者数をカウントしてるんじゃないか思うのです♪
だから医師による死亡診断がない変死者がカウントされてないのは当たり前だと思うけど、違うのかな?
記事が何が言いたいのかよくわかんないのです♪
「他国では、新型コロナウイルス陽性の変死者もカウントしてるから、(比較しやすいように)日本もカウントすべき」
ということなのかな?
それとも
「医師とか自治体・政府が死者数を減らすために、変死者じゃない人を変死者扱いするってインチキをしてる」
って告発なのかな?
みっつめの
>死亡報告が遅れていること
ってのはさらにナゾなのです♪報告遅れが恒常的なものなら、死者数の減少が統計に現れるより実際には少し前に起こってるってだけのことだと思うのです♪
そうじゃなくて、今だけ報告が遅れてるってのは、その根拠もよくわかんないし、遅れるなら患者が多いときじゃないかな?って思うのです♪
新型コロナが原因で亡くなったけど統計には反映されてない人はただの一人もいない、とまで言う気はないけど、出てきた数字を元に議論するんじゃなくて、数字そのものがおかしいって主張するのは、ちょっと強引に思うのです♪
まずもって、「経済安全保障」という概念が語られるようになったのは、ごくごく最近のことだと思います。なにしろ、ほんの20年ほど前までは、国家安全保障について議論しようとするだけで、「極右反動」とか「軍国主義者」と罵倒され、何かにつけ「軍靴の音ガガガ...」などと唱えられ続けてきましたので。そのような議論すらも封殺するという愚かしい風潮が薄らいできたのは、ようやく最近のことだと思います。
改めて言うまでもなく、国家安全保障は軍事力の問題だけではなく、もっと総合的な観点から検討されるべき問題ですが、国防の問題を議論することに関するタブーが緩んできたために、ようやくもっと広い観点からの議論も可能になってきたように思います。
そこで改めて経済的な観点から日本の安全保障環境を眺めてみると、ろくに手を付けられておらず、穴がたくさん見つかったけれども、さてどこから手を付けたものやらという状況ではないかと思います。まずは、戦略を検討すべき座標軸を据え、その上で優先順位を付けて実現していくよりないでしょう。個人的には、経済安全保障において検討されるべき座標軸は「情報」と「物流」であり、安全保障という観点から、どのように強化していくかがポイントであろうと考えています。
札幌五輪計画の修正版を公表へ 市長、経費削減で理解求める
https://news.yahoo.co.jp/articles/0b2a94128d803a3802675878a35d7acfcb108f9a
冬季五輪の招致を進めるのはいいとして、東京五輪の反省を踏まえて欲しいのです♪
例えば、当初予定より費用がかかる場合はIOCが負担するとか、開催の中止・縮小の判断権を組織委が持って、中止縮小の判断しても違約金とかはなしにするとか・・・・・そういう条件をつけた上で招致して欲しいのです♪
雑談板のつもりで、書き込むとこ間違えちゃいましたm(_ _)m
オリンピックはメリット無いので、もう辞めた方が良いのでは?
バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 様
スポーツが好きな人もいるし、インフラ整備なんかの呼び水にもなるかもだから、やっても良いとは思うのです♪
ただ、リスクを国や自治体ばかりが負う、今のやり方は良くないと思うのです♪
札幌市が計画を修正して経費を削減したっていっても眉唾だと思うのです♪ どんなに立派な計画を立てても、招致が決まったあとにどんどん膨らんでいくんだろうと思うのです♪
だったら、開催都市を決めるときに経費の見積もりなんかも審査するんだろうから、計画以上に経費が膨らむんだったらそれはIOCが負担するってすれば良いと思うのです♪
そうすればIOCも見積もりを真剣に精査するだろうし、条件を飲めないなら別の都市を開催地に選定すれば良いと思うのです♪
我が国の平和及び安全の維持のため、国際法秩序の維持のため、我が国の利益を保護するため、その他これらに類する事情として政令で定める事実に基づき、特に必要があるときは、<後略>
上記を以下のとおりで如何でしょう?
我が国の平和及び安全並びに国際法秩序の維持若しくは我が国の利益の保護のため必要と認めるとき又は政令で定める我が国の利益の侵害を排するため特に必要と認めるときは、<後略>