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韓国長官「現実的かつ合理的な方策を日本側と協議中」

昨日の『三菱重工の即時抗告と日韓膠着打開の「テーパリング」』でも触れましたが、日韓関係を巡り、このところ韓国側では「事態収拾に乗り出さない日本」に対する不安の声のようなものが見えて来ました。ただ、韓国の外交部長官は、この期に及んで「日本との協議が必要だ」、などとする認識をお持ちのようです。韓国メディアの報道によると、鄭義溶(てい・ぎよう)外交部長官は21日、「原則を守りつつ韓日関係をより未来志向的に発展させるいくつかの現実的かつ合理的な方策を日本側とも協議中」、「一部では進歩がある」、などと述べたのだとか。

歴史問題で動こうとしない日本

これまでに何度も報告してきたとおり、自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題の本質とは、韓国による歴史捏造と約束破りであり、韓国が述べる「解決」――日本が韓国に譲歩すること――は、日本にとっては到底受け入れられるものではありません。

この点、日本政府側は、日韓関係を健全なものにするためのキッカケは韓国が作らなければならない、とする姿勢で一貫しており、そのことは菅義偉総理大臣であろうが、茂木敏充外相であろうが、あるいは岸田文雄・現首相であろうが、基本的にはかわりません。

ただ、それと同時に『三菱重工の即時抗告と日韓膠着打開の「テーパリング」』などでも触れましたが、どうも韓国側は事態収拾に向け、「日本の側から動き出してほしい」、と期待しているフシがあります。

先ほど「速報」として、河野太郎外務大臣の談話を紹介しましたが、その続きとして、談話、記者会見、河野氏と駐日韓国大使との面談についても紹介しておきます。とくに、河野氏と駐日韓国大使の面談については、産経ニュースが動画サイト『YouTube』にアップロードしているのですが、その内容を確認すると、河野氏がカメラの前であるにも関わらず、韓国側の「基金案」に対し、通訳を遮り、「ちょっと待っていただきたい」などと激高するなど、さまざまな面で異例ずくめです。河野大臣の発言河野大臣の談話河野太郎外相は先ほど、韓国の...
「河野太郎、キレる!」新たな河野談話と日韓関係 - 新宿会計士の政治経済評論

これに加え、『河村氏引退を「韓日仲裁のパイプが減った」=朝鮮日報』などでも議論したとおり、これまでだと韓国が作り出した「歴史問題」などに対しても、事態収拾に向けて、日本の側から「お膳立て」をしてくれたはずなのに、待てど暮らせど一向にこうした「お膳立て」が行われていません。

「世代交代は間違っている」とする声を掲載した朝日新聞先日の『河村建夫氏引退報道と「古い政治と外交」終焉への期待』を含め、しばしば当ウェブサイトで言及している話題のひとつが、自民党二階派の幹部であるとともに日韓議連の幹事長を務める河村建夫氏の引退です。これに関連し、朝日新聞には「世代交代は間違い」とする「有権者の声」が掲載されているほか、朝鮮日報は「硬直した両国関係を仲裁できる重要なパイプがひとつなくなった」、などと評しているようです。河村建夫氏、地元で引退表明=時事通信先日の『河村建夫氏引退...
河村氏引退を「韓日仲裁のパイプが減った」=朝鮮日報 - 新宿会計士の政治経済評論

韓国外交部長官「日本側とも協議中」

だからでしょうか、ついにこんな話題が出て来たようです。

韓国外交部長官「日本との対話、一部進展…原則守り合理的方案を模索」

―――2021.10.21 15:13付 中央日報日本語版より

韓国メディア『中央日報』(日本語版)の記事によると、鄭義溶(てい・ぎよう)外交部長官は21日、国会「外交統一委員会」で与党議員の日韓関係関連の質問に対し、日本との対話に最近「一部進歩がある」などとしつつ、次のように答弁したのだそうです。

原則を守る方法と、これと連携し、韓日関係をより未来志向的に発展させるいくつかの現実的かつ合理的な方策を模索しており、日本側とも協議中だ」。

…。

これだけだと、なんだか抽象的過ぎ、何が言いたいのかよくわかりません。

ただ、「原則を守る」、「日韓関係を未来志向に発展させる」などとおっしゃっている部分に関しては、韓国の外交部長官というお立場でそれをいう資格があるのかについては大変に疑問です。

少なくとも、自称元徴用工問題に関しては、その本質は、日韓請求権協定に違反する状態を創り出すという意味で、国際法違反の「違法判決」を韓国がどうにかしてくれないことには、日本の側としても動きのとりようがありません。

それに、「協議」というのなら、2019年1月に日本政府が日韓請求権協定に基づいて外交的協議を申し入れたときに、どうして韓国政府はそれを4ヵ月も放置した挙句、李洛淵(り・らくえん)首相(当時)が「対応には限界がある」と述べて匙を投げてしまったのでしょうか。

ついに韓国が「徴用工判決問題」でさじを投げたのでしょうか?もう1本、ショートメモです。本日、時事通信にこんな記事が配信されていました。韓国首相、「政府対策には限界」=司法手続き進む徴用工判決(2019年05月15日14時31分付 時事通信より)これは、韓国の李洛淵(り・らくえん)首相が15日、韓国・ソウル市内で行われた討論会で、自称元徴用工らの問題をめぐり、司法手続きが進められている事案に対し、政府対策を打ち出すには、基本的に限界がある。さまざまな論議をしたが、結論は限界があるということだ(※下線部は引用者...
【速報】韓国首相、自称徴用工問題巡り「対応には限界がある」 - 新宿会計士の政治経済評論

それだけではありません。

日本政府が同年5月、国際仲裁手続の付託を韓国側に通告した際も、韓国は結局、その仲裁手続に最後まで応じず、手続自体が期限切れで失効してしまいました(『「河野太郎、キレる!」新たな河野談話と日韓関係』等参照)。

先ほど「速報」として、河野太郎外務大臣の談話を紹介しましたが、その続きとして、談話、記者会見、河野氏と駐日韓国大使との面談についても紹介しておきます。とくに、河野氏と駐日韓国大使の面談については、産経ニュースが動画サイト『YouTube』にアップロードしているのですが、その内容を確認すると、河野氏がカメラの前であるにも関わらず、韓国側の「基金案」に対し、通訳を遮り、「ちょっと待っていただきたい」などと激高するなど、さまざまな面で異例ずくめです。河野大臣の発言河野大臣の談話河野太郎外相は先ほど、韓国の...
「河野太郎、キレる!」新たな河野談話と日韓関係 - 新宿会計士の政治経済評論

つまり、韓国政府が「協議」と言い出すこと自体、大変に筋違いな議論なのです。

自称元慰安婦問題は韓国の「食い逃げ外交」

その一方で、自称元慰安婦問題に関しても、日韓で協議できるところはありません。

自称元慰安婦問題に関しては、2015年12月、当時の外相だった岸田文雄・現首相自身が韓国を訪れ、朴槿恵(ぼく・きんけい)政権当時の外交部長官だった尹炳世(いん・へいせい)氏との間で、日韓慰安婦合意を取り交わしてきました。

慰安婦合意では日本は安倍晋三総理大臣が自称元慰安婦に対し、「日本国民を代表して心からのお詫び」を表明し、あわせて日本国民の貴重な血税から10億円という大金を韓国政府が設立した基金に支払い、それで「最終的かつ不可逆的に」慰安婦問題が解決されたのです。

日本政府は約束どおり、その10億円を韓国側の基金に支払い、日本としての義務を完全に履行しましたが、韓国側は合意の義務をまったく履行しようとしませんでした。というのも、韓国政府はソウルの日本大使館前に慰安婦像が設置されている問題を適切に解決する義務を負っていたはずだからです。

そればかりか、韓国はこの合意を、2017年5月に発足した文在寅(ぶん・ざいいん)政権がいとも簡単に反故にしました。いわば、日本政府の問題解決に向けた努力を、足で踏みにじったのです。

いや、権利だけを受け取って義務を履行せずに逃げたという意味では、「食い逃げ外交」と呼ぶべきでしょうか。

鄭義溶氏「原則が崩れた形で日本と協議できない」

つまり、自称元慰安婦問題にせよ、自称元徴用工問題にせよ、現時点において、日本政府としてはできる努力をすべて尽くしてきたのであり、こうした日本側の努力に対し韓国側が不誠実極まりない態度を取ってきたのであって、現在の日韓関係も、結局はその結果に過ぎないのです。

それなのに、中央日報の記事に戻ると、鄭義溶氏はこれらの問題について、こうも述べたのだそうです。

歴史問題に関しては慰安婦被害者の名誉と尊厳を回復する問題、強制徴用被害者の権利補償問題が大きな原則だ。この原則が崩れた形で日本と協議することはできない」。

ハッキリ言って、お話になりません。

どちらもの問題も韓国の歴史捏造に基づく言い掛かりであり、しかも、百歩譲ってこれらの問題の存在を認めたにせよ、自称元慰安婦問題は日韓請求権協定と2015年12月の合意で解決済み、自称元徴用工問題は日韓請求権協定で解決済みです。

ということは、鄭義溶氏は自ら、「現在の状態だと日本と協議することはできない」と認めてしまった、というわけです。

鄭義溶氏の発言のおかしな点は、ほかにもあります。

菅義偉総理や岸田首相らが一貫して述べているのは、「問題を作り出した側である韓国が、日韓関係を健全な姿に戻すキッカケを作らなければならない」という点ですが、鄭義溶氏はこの点についても、「韓国政府は絶えず案を提示している」、などと反論したのだそうです。

このあたりも、じつにウンザリする屁理屈です。

鄭義溶氏が述べる、「韓国政府は絶えず案を提示している」という点の事実関係もさることながら、「韓国政府が絶えず提示し続けている案」とやらがあまりにもお話にならないからこそ、日韓関係に現在のような膠着状況が生まれているのだ、という言い方もできるのかもしれません。

中央日報によると、鄭義溶氏はまた、司法に対して自称元慰安婦問題に関する韓国政府の立場を説明する必要性を問われ、「憲法の精神」に照らし、「司法部の判断を尊重しつつ、現実的な解決を目指す」、などと述べたのだそうです。

このあたり、日韓請求権協定を含めた国際法自体が、韓国政府だけでなく、韓国の司法府をも拘束するものであるという単純な事実を、どうして彼らが理解しないのか(あるいは理解しようとしないのか)は大いなるナゾです。

いずれにせよ、政府当局者がこのように述べること自体、韓国という国が軽視しているのが「日本との関係」だけでなく「国際法そのもの」についてもそうである、、というメッセージを、対外的にばら撒くようなものではないかと思うのはここだけの話です。

新宿会計士:

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  • >鄭義溶氏はこの点についても、「韓国政府は絶えず案を提示している」、などと反論したのだそうです。

    仏像を盗んでおいて、それを返す代わりに100円ショップで買ってきたようなぬいぐるみを差し出して、「な、これでいいだろう」

    これが韓国民の国民性です

  • JPプレスのファンドビルダーさんのコラムであったように、日本が厳しい対応をしなければ韓国は変わらないと思います。

    国際法違反、約束を破ること、人の嫌がる事をこれでもかとしてきて、何もしないのもさびしい気持ちがします。

  • 韓国の国内問題であり、日本企業は被害者に過ぎないという原則に立たないと駄目ですね。

  • 韓国には、外交辞令を一切取り払って
    「おまエラが条約・協定・国家間の約束を守れ。それまで話すことは何もない。あと、慰安婦ではなく売春婦と正しく呼べ」
    くらいはっきり言わないと、いつになっても同じことを喚き続けるでしょうね。

    • イーシャさま
      「誤解ニダ。誤解を改めさせなければならないニダ。」
      となるから、効果が無いでしょう。

      • 「誤解されるのは正しい主張が届いていないせいだ」となり、倍以上の音量で宣伝しだすところまでがお約束。

  • 国政監査でいい加減な事を言ってるだけです。
    日本に来る大使も、同じ事をしていました。
    「事実と関係無く、その場凌ぎに思いついた話をする」という、典型的な朝鮮脳反射だと思います。

  • 日本&韓国「原則守れ」
    日本「えっ」
    韓国「えっ」

     鄭義溶の発言を見るに、"原則"というものの認識は「お硬い形式ばかりで無意味なもの」で、現実的なものがもっとあるのだ、ということですか。マニュアルをバカにするダイナミックコリアってやつですね。現実見ろよはこちらのセリフですが。
     日本側の(というか人類のほとんどの)"原則"は、情に流されずに法や取り決めに従う事。韓国側の"原則"は法や取り決めを差し置いて情を優先すること……とも言えますかね。"原"とする位置が違うというか。基本的価値観が違うようです。まぁその情の部分も捏造の疑い濃厚なので、もはや何が何だか。

  • ”条約を守らない・国家間合意を守らない・嘘つき”国政府に対しては、

    1.国家間の基本「原則」は”条約を守ること。国家間合意を守ること。嘘を吐かないこと”だ。
    2.「協議」をしたいなら、”2019年1月に日本政府が日韓請求権協定に基づいて外交的協議を申し入れたときに、応じなかった。”ことに対し、文大統領が文書での公式謝罪と公式謝罪会見(ライブ配信付き)とをやれ。
    3.「協議」をするのは、文大統領の公式謝罪が真正性があると日本国政府が認めてから。

    を、日本国政府はそろそろ記者会見で発表した方が良いと思います。

    要は、”異常な韓国のプライド(=見栄)”を一度、地に落としてから出なければ、まともな協議はできないでしょう。


    どうして韓国政府はそれを4ヵ月も放置した挙句、李洛淵(り・らくえん)首相(当時)が「対応には限界がある」と述べて匙を投げてしまったのでしょうか。

  •  日本政府の原則は「国際法、条約、国家間の約束を誠実に守る」であるのに対して、韓国政府の原則は「被害者の名誉・尊厳、権利を護り、司法の判断を尊重する」で、お互いに譲る気はサラサラ無い。
     お互いに譲る気が無いのは、譲らなくてもお互い何も困らないからで、どちらかが困る状態になるまでは、現在の状態が続くでしょう。
     現状が何年続いても、日本政府が困ることは考えられないので、先に困る可能性があるのは韓国政府で、考えられるのは次の場合です。
    ➀FRBのテーパリング、中国経済減速などにより、韓国がドル不足に陥る場合
    ➁大法院判決実現(差押財産現金化)が長期化し、原告(自称被害者)が韓国政府を突き上げる場合
     日本政府として、現状が継続しても何も困らないどころか、韓国政府と深く付き合う必要が無くなるので負担が減り、かえって都合が良い。
     また、韓国政府には差押財産の現金化を実行する度胸も成算も無く、仮に、差押財産の現金化が実行された場合でも、日本政府は粛々と強力な対抗措置を実施して韓国との関係を更に希薄化させる道を着々と歩んでいくだけのことで、何も困らない。いや、かえって都合がよい。
     従って、日本政府は、当面、この問題を放置して置けば良いと思います。

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